predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on tokunoshima island

論文 “predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on tokunoshima island” の日本語訳です。

原題: “predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on tokunoshima island”

著者: 前田 玉青 [a], 中下 留美子 [b], 塩野崎 和美 [c] [d], 山田 文雄 [b] & 亘 悠哉 [b] [e]

2019年11月7日、Scientific Reports volume 9、Article number: 16200 (2019)。

DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-019-52472-3


[a]: 京都大学野生動物研究センター, 京都市左京区田中関田町 2-24, 郵便番号606-8203, 日本. https://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/
[b]: 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 (FFPRI), 1 Matsunosato, Tsukuba, Ibaraki, 305-8687, Japan. https://www.ffpri.affrc.go.jp/ffpri.html
[c]: 奄美野生動物研究所, 2662 Ogachi, Tatsugo-cho, Kagoshima, 894-0105, Japan.
[d]: Amami Wildlife Research Center Co., Ltd, 10-11-2F Naze Suehiro-cho, Amami, Kagoshima, 894-0027, Japan.
[e]: email: ywatari@affrc.go.jp



徳之島における人為的な飼いネコによる絶滅危惧種の捕食について

概要

外来種を効果的に管理 (駆除) するためには、外来種が在来の生態系に与える影響を解明することが重要である。 豊富な外来種の餌が存在すると、外来種の捕食者の個体数が増加し、在来の餌に対する捕食圧が高まる (ハイパープレデーション: hyper-predation)。 外来の獲物だけでなく、人間による餌付けも「ハイパープレデーション」を引き起こす可能性が高い。 しかし、これまでの研究では、これに対する人工資源の寄与は過小評価されていた。 ここでは、糞便と安定同位体分析を組み合わせて、徳之島で放し飼いにされているネコの短期および長期的な食性を明らかにした。

「ノネコ (feral cats)」の糞の 20.1% に森林に生息する種の証拠が含まれていたが、安定同位体分析 (stable isotope analysis) により、ネコはほとんど人工的な資源に依存していることが示唆された。 さらに、一般線形モデル解析により、彼らの食性は景観変数 (landscape variables) と強い相関があることが示された。 これらの結果から、侵略的な放し飼いのネコは人為的な餌付けに助けられ、人里離れた地域から生物多様性の高い自然地域へと移動していることがわかった。 ネコの管理は捕獲が中心だが、地域住民に放し飼いのネコに餌を与えないよう教育することや、ペットのネコを室内で飼うことも重要であることが、今回の調査結果からわかった。

1. 目的

生物の侵入は、世界的な生物多様性の損失 1 2 の主要原因の一つであり、特に世界の島嶼生態系 3 4 において顕著である。 外来種を効果的に管理 (control) するためには、外来種が侵入した地域でどのように生き残り、個体数を増やしていくかを明らかにすることが重要である。 個体群の確立は,侵入 (invasion) を成功させるために不可欠なプロセスの一つである 5 6。 つまり、導入された種がその数を増やすことに成功しない限り、その影響は明らかにならないかもしれない 7 8。 種の特性、生物学的・非生物学的環境、一時的な出来事などの様々な要因が、そのような定着の結果、その後の生息数の増加、侵入種の生態学的影響に影響を与えうる 8 9ハイパープレデーション は、外来捕食者の影響を強めるプロセスの一つであると考えられる 10。 この仮説では、豊富な一次餌生物の存在が捕食者数を助成し、捕食者が成長し、その後、比較的少ない在来餌にさらに深刻な影響を与えると予測される 11 12

「ノネコ (feral cats)」 (Felis catus) は最も影響力のある移入種の一つであり 13、特に島嶼生態系において、数多くの哺乳類、鳥類、爬虫類の絶滅や減少の原因となっている 13 14 15 16 17 18 19。 多くの研究で、導入された餌生物 (アナウサギ (European rabbit)、クマネズミ (black rat)、ハツカネズミ (house mouse) など) が、在来生物に対する「ノネコ (feral cats)」の ハイパープレデーション の原因と疑われることが報告されている 11 18 20。 最も有名な例は、マッコーリー島での事例で、侵入した「ノネコ (feral cats)」が固有種のインコ (マッコリーアオハシインコ Cyanoramphus novaezelandiae erythrotis) の絶滅を招いた 7。 島では60年間、「ノネコ (feral cats)」とインコが共存していたが、ウサギが導入されると「ノネコ (feral cats)」が急増し、その後 10年でインコが食べ尽くされた。

導入された獲物だけでなく、人間による直接的・間接的な餌付けもネコの個体数を支え、在来種に対する捕食圧を高め、その絶滅を加速させている 10 21 22 23。 いくつかの先行研究では、人が餌を与えるネコが地域の生態系に大きな影響を与えることが報告されている 21 24。 しかし、ほとんどの研究は都市部や都市周辺部に生息する在来種の捕食者に限定されていた 23

徳之島は日本の南西部に位置し、在来の哺乳類捕食者がいない状態で進化した独特の生物相を持つ生物多様性ホットスポットである 25。 本島や隣接する奄美大島、沖縄島では、放し飼いにされたネコが、アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi)、ケナガネズミ (Diplothrix legata)、トゲネズミ (トクノシマトゲネズミ Tokudaia tokunoshimensis、アマミトゲネズミ T. osimensis、オキナワトゲネズミ T. muenninki) などの絶滅の恐れがある固有種を食べているため 26 27、これらの種の個体数減少の原因になっていると考えられている 28 29 (図1)。 実際、日本の環境省によるカメラトラップ調査では、ネコの出現数と絶滅危惧種であるアマミノクロウサギの出現数に負の相関があり、ネコの存在がウサギの分布を制限する可能性を示している 30。 徳之島の地方自治体と環境省は、固有種の保護のため、2014年から放し飼いのネコを捕獲している。 ここでは、森林で捕獲されたネコを「ノネコ (feral cats)」、住宅地や農地で捕獲されたネコを「ノラネコ (stray cats)」と呼ぶことにする。 「ノネコ (feral cats)」は保護施設で飼育され、一部は不妊手術後に新しい飼い主に引き取られることもあるが、「ノラネコ (stray cats)」は森に入って在来動物を捕食しないことが暗黙の前提となっているので、不妊手術後に野生に返す (TNR) ことにしている。 環境省が毎月実施しているルート調査では、2014年以降、アマミノクロウサギ (Amami rabbits)、トクノシマトゲネズミ (Tokunoshima spiny rats, T. tokunoshimensis)、ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rats) の絶滅危惧 3類の遭遇率が上昇し、ネコの遭遇率は減少していることが明らかになるなど、この管理プログラムは一定の成果を上げている 31 また、放し飼いのネコが在来種に大きな捕食圧をかけていることも指摘されている。

科学的には、「ノネコ (feral cats)」は完全に自立していて人間とほとんど交流がないことを意味し、「ノラネコ (stray cats)」は飼い主はいないが、人間の世話に頼っていることを意味する 32 「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の区分は、ネコが森林と住宅地の間をほとんど移動しないという行政の想定を示唆しているが、徳之島では放し飼いのネコに関する調査が行われていないため、この区分が科学的に適切かどうかはまだ不明である。 徳之島は小さな森林地帯が特徴であり 33、「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」は森林の野生動物と集落の人工食料の両方にアクセスできる可能性がむしろ高いと考えられる。 森林の中心部でも農地から数キロメートルしか離れておらず、放し飼いのネコが両方にアクセスできるほど近い 34 35 36 37。 沖縄本島北部 (ヤンバル) や奄美大島では、ネコの糞の 7.1〜50% に人間のゴミが検出された 26 27しかし、糞便分析は、食料品目によって消化率が異なるため、実際の人工資源への依存度を正確に推定することはできない 38 その代わり、安定同位体分析は、特定の食品への被験者の依存度を明らかにするための強力な方法である 39。 いわゆる「ノネコ (feral cats)」に人間の食べ物を与えるならば、在来種への高い捕食を減らすためには、飼いネコの室内飼育や飼い主のいないネコへの餌やりをやめることが効果的と考えられる。 ネコの資源依存性が証明されれば、この問題に対する社会の認識を高め、在来種の保護のための効果的な戦略を策定する上で強力な支援となるだろう。

本研究では、徳之島における放し飼いネコの食性を評価し、「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の両方が森林や住宅地にアクセス可能であり、森林内の固有種を捕食することもあるが、人間が提供する資源に強く依存しているという我々の仮説を検証した。 このようなネコの食餌状態は、人間由来の食物資源によって引き起こされる ハイパープレデーション の発生に必要な条件の一つである。

具体的には、以下の 3つの疑問に取り組んだ。
(1) 「ノネコ (feral cats)」は「ノラネコ (stray cats)」よりも絶滅危惧種をよく食べているか?
(2) 人工餌の提供は、放し飼いのネコ「の食生活を実質的に支えているか?
(3) 森林の餌生物 (絶滅危惧種を含む) と放し飼いのネコへの人工餌の貢献度は、周囲の景観が異なる捕獲地点間で異なるか?

これらの疑問に答えるため、捕獲した放し飼いのネコから糞便と毛髪のサンプルを採取し、糞便分析安定同位体分析を実施した。

図1.

図1

徳之島でセンサーカメラで撮影された固有哺乳類を殺す「ノネコ (feral cats)」。 (a) アマミノクロウサギ (Amami rabbits)、(b) ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rats)。 (a) 写真は2017年に撮影したもので、環境省那覇自然保護事務所の許可を得て提供。 (b) 2018年、筆者撮影 (森林総合研究所、亘 悠哉)。

2. 結果

2.1. 糞便分析 (Fecal analysis)

「ノネコ (feral cats)」208匹 (雌75匹、雄123匹、不明10匹)、「ノラネコ (stray cats)」54匹 (雌22匹、雄30匹、不明2匹) を捕獲し、糞便サンプル 198個 (「ノネコ (feral cats)」174個、「ノラネコ (stray cats)」24個) を得た (図2)。 合計 13.4% (35匹; 「ノネコ (feral cats)」31匹、「ノラネコ (stray cats)」4匹) のネコの耳がカットされており、これは「ノラネコ (stray cats)」として捕獲されて避妊手術を受けたことを意味している (表S1)。 また、糞便サンプルの少なくとも 17.7% に森林性動物が、30.8% に農耕地性動物が検出された (表1)。 さらに、「ノネコ (feral cats)」の糞便サンプルの 20.1% に森林動物の痕跡があり、「ノラネコ (stray cats)」の 0.0% と比較して有意に高かった (フィッシャーの直接確率検定、p<0.01)。 農作物 (「ノネコ (feral cats)」: 31.6%、「ノラネコ (stray cats)」: 20.8%) と人工物 (「ノネコ (feral cats)」: 24.1%、「ノラネコ (stray cats)」: 20.8%) の出現頻度に有意差は見られなかった (p>0.05)。 糞便サンプルの 13.5% から 6種の絶滅危惧種 (少なくとも43個体)、南日本固有種の亜種アカヒゲ (Erithacus komadori komadori) 40、琉球列島固有種のアマミノクロウサギ (Amami rabbit)、ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rat)、トクノシマトゲネズミ (Tokunoshima spiny rat)、ジネズミ亜科 (Crocidura spp.)、アマミハナサキガエル (Amami tip-nosed frog、Odorrana amamiensis) 41、が検出された。 この調査では、外来種の餌はクマネズミとニワトリだけだった 42

捕獲したネコの平均体重は 3.3±1.0kg (範囲: 1.0~6.0kg、雄: 3.6±0.9kg、雌: 2.7±0.7kg) である。 したがって、ネコの1日あたりの推定平均消費バイオマス (DCB) は 379±143g (範囲: 146~629g) と推定された。 アマミノクロウサギとニワトリの体重は捕獲したネコの最大 DCB を超えていたため、これらの種については最大 DCB (629g) を体重とした。 その結果、この方法で説明できるネコの食餌量は 24.2% (森林動物: 15.5%、農耕地動物: 8.7%) にとどまることがわかった。 森林動物では、絶滅危惧種であるケナガネズミ (7.7%) とアマミノクロウサギ (6.7%) が、農耕動物ではクマネズミ (6.9%) が主な貢献者であった。

図 2.

図2

琉球列島の奄美群島にある徳之島と、ネコの捕獲場所の地図。

2.2. 同位体混合モデル (Isotopic mixing model)

「ノネコ (feral cats)」189匹、「ノラネコ (stray cats)」52匹、室内ネコ (indoor cats) 9匹の毛を分析した。 炭素の安定同位体比は -17.4 ± 1.4‰、-17.2 ± 1.2‰、-16.9 ± 1.7‰、窒素の安定同位体比は 7.0 ± 0.9‰、7.1 ± 0.8‰、6.8 ± 0.8‰ であった (図3 および 4)。 分散分析 (ANOVA) では、「ノネコ (feral cats)」、「ノラネコ (stray cats)」、「室内ネコ」の間で安定同位体比に有意差は見られなかった [δ13C: F(2,247) = 1.15, p = 0.319; δ15N: F(2,247) = 0.43, p = 0.651]。

ネコの食餌資源候補として、異なる銘柄の乾燥キャットフード (n=9) とアマミノクロウサギ (n=7)、ケナガネズミ (Ryukyu rat) (n=7)、クマネズミ (n=7) の毛髪サンプルを入手した。 森林動物,農耕地動物,人工資源の炭素の安定同位体比は、それぞれ -24.8 ± 2.6‰、-20.9 ± 2.1‰、-18.9 ± 2.5‰ であり、窒素の同位体比は 1.6 ± 1.3‰、6.4 ± 1.3‰、4.6 ± 1.2‰ であった。 同位体比の ANOVA により、資源ごとに有意な変動があることがわかった。δ13C: F(2,33) = 16.43, p < 0.001; δ15N: F(2,33) = 43.84, p < 0.001 事後 (Post hoc) テューキーの検定 (Tukey’s test) により、森林動物が他の動物より有意に δ13C が低いことが示された (p < 0.01)。 農耕地の動物は δ15N が最も高く、人工資源は 2番目に高く、森林の動物は最も低かった (p < 0.01)。

保護されたネコの δ13C と δ15N の時間に対する変化を 図S1 に示す。 δ13C と δ15N の回帰モデルの推定漸近値 (TEF) はそれぞれ 2.3±0.3、2.8±0.1 であった。

R (SIAR) による安定同位体分析によると、「ノネコ (feral cats)」(67.8%; 95% 最高密度域: 62.8-72.8%) および「ノラネコ (stray cats)」(69. 0%、59.3-78.8%) のエネルギー消費において人工資源が最も大きな構成要素となっていることがわかった。 これに次いで、農耕地動物 (「ノネコ (feral cats)」: 17.9%、13.4-22.3%、「ノラネコ (stray cats)」: 18.5%、9.7-27.3%)、森林動物 (「ノネコ (feral cats)」: 14.3%、11.6-17.1%、「ノラネコ (stray cats)」: 12.4%、9.7-27.3%) となった (図 5)。 さらに、糞に森林性動物の痕跡があるネコのみを対象に SIAR を実施した場合 (図S3)、未検出個体よりも森林に近い場所で捕獲される傾向があるにもかかわらず、この高い人工資源依存性が残っていた (図S2、付録)。 野生動物への依存度の推定値は、糞便分析から算出された寄与度 (森林動物: 15.5%、農耕地動物: 8.7%) と概ね一致している。

2.3. ネコの食事に及ぼす景観要素 (landscap elements) の影響

因子分析では、住宅地被覆率と建物密度はともに因子1 に正の荷重を、森林被覆率と農地被覆率はそれぞれ因子2 にそれぞれ負の荷重と正の荷重をかけた (表S2)。 一般線形モデル (GLM) の結果、人工資源への依存は住宅地被覆率 (因子 1) および体重と正の相関があり、農耕動物への依存は農地被覆率 (因子 2) と正の相関があり、住宅地への依存は森林被覆率 (因子 2) と正の相関があるが体重とは負の相関があった (表2)。

表1

糞便分析の結果。FO、アイテムの出現頻度、NI、餌アイテムの数。 * これらの種 (アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi) と ニワトリ (Gallus domesticus)) は最大 DCB よりも重いため、最大 DCB を用いて DCB への寄与度を算出した。 ** 捕獲したラット (n = 12) の平均体重を算出した。

ItemsFO (%)NIDCB への寄与率 (%)体重 (g)IUCN レッドリスト 2017体重の参考値
合計 (n=198)ノネコ (n=174)ノラネコ (n=24)合計 (n=198)ノネコ (n=174)ノラネコ (n=24)
森林動物種 (Forest species)17.720.10.04040015.5
ケナガネズミ (Diplothrix legata)6.16.90.0121207.7483EN_27
アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi)4.04.60.08806.72880*EN_43
トクノシマトゲネズミ (Tokudaia tokunoshimensis)3.03.40.06601.3162.4ENYamada (未発表)
亜種アカヒゲ (Erithacus komadori Komadori)0.50.60.01100.022.4VU_44
シロハラ (Turdus pallidus)0.50.60.01100.178_27
アマミハナサキガエル (Odorrana amamiensis)0.50.60.01100.160VU_45
アマミマダラカマドウマ (Diestrammena gigas)5.15.70.0101000.03_45
オオゲジ (Thereuopoda clunifera)0.50.60.01100.03.5_27
農耕地動物種 (Farmland species)30.831.620.8706558.7
クマネズミ (Rattus rattus)24.226.420.8534856.998**
ジネズミ亜科 (Crocidura spp.)6.67.50.0151500.17(C. orii) EN (C. watase) NT_46
ニワトリ (Gallus gallus domesticus)1.01.10.02201.71500-*_47
不明 (Unknown)
ウグイス (Horornis diphone)1.01.10.02200.015.8_48
未確認の鳥 (Unidentified birds)15.717.80.031310
両生類・爬虫類 (Amphibians/Reptiles)3.54.00.0770
直翅類 (Orthoptera)8.66.325.017116
カマキリ目 (Mantodea)1.01.10.0220
甲虫目 (Coleoptera)3.02.94.2651
未確認の昆虫 (Unidentified insects)41.446.64.282811
甲殻綱 (Crustacea)1.51.70.0330
腹足類 (Gastropods)0.50.04.2101
人工物 (Artificial objects)23.724.120.847425
植物 (Plants)42.432.250.0847212

図3

図3

「ノネコ (feral cats)」、「ノラネコ (stray cats)」、室内ネコにおける (a) 炭素および (b) ニトロゲンの安定同位体比。 エラーバーは標準偏差を、枠内の太いバーは中央値を表す。

3. ディスカッション

本研究では、糞便分析と安定同位体分析を組み合わせることで、徳之島における外来ネコ科動物の食性を明らかにした。 「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の食性の違いは、ネコが捕獲された各生息地での過去数日間の食性を反映する糞便分析でのみ検出された。 同位体混合モデルによると、ネコの長期的な食餌に大きな違いはなく、糞便に森林動物の痕跡があるネコでさえ、大部分が人工的な資源に依存していることがわかった。 ネコたちは数日間森を訪れ、そこで在来の絶滅危惧動物を狩った後、村に戻り、主食であるキャットフードを食べていたと思われる。 また、捕獲された「ノネコ (feral cats)」の多くは耳に TNR の印がある、つまり、住宅地で「ノラネコ (stray cats)」として捕獲されたものであり、この比率は「ノラネコ (stray cats)」の比率と大きな差はないことがわかった。 それはまた、森と村の間のネコの移動も示唆している。 固有哺乳類はネコによって大きな影響を受けているが 28 31、本研究ではネコ自身が人間由来の資源に依存していることが示された。 また、安定同位体分析および糞便分析の結果、導入された餌 (獲物) が利用できる他の多くの島の場合とは異なり、農耕地動物、すなわちクマネズミへの依存度が比較的低いことが示唆された 16。 これは、徳之島の森林におけるクマネズミの密度が低いためと思われる 30。 実際、城ヶ原が行ったネズミの生息調査では、トゲネズミが森林内で優勢で、クマネズミはほとんど捕獲されなかった (未発表データ)。

放し飼いの飼い主のいないネコは、通常、在来資源に依存する 「ノネコ (feral cats)」と、人工資源に依存する「ノラネコ (stray cats)」に分類される 32GLM (一般線形モデル) の結果、各資源への依存度は、その資源が得られたと想定される土地利用と正の相関があることがわかった。 **また、森林に近い捕獲場所では、森林に生息する動物への依存度が高くなっており、「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」を明確に分けることはできず、**特に自然環境に隣接する人間の居住区では、放し飼いのネコが在来種への脅威となる可能性が示唆された。 森林が十分に大きければ、人工資源への依存は最小化され、純粋な「ノネコ (feral cats)」が繁殖することになる。 つまり、徳之島の森林のような小さな生息地は、他の種類の影響と同様に、人為的な資源助成の影響を受けやすい可能性がある 27。 さらに、肉食獣はしばしば線路や道路を好んで移動するため 49 50、道路は、住宅地からの森林へのアクセスを良くし、かつ人々は道路を利用してペットを自然地域に捨てやすくする効果がある。

徳之島の地方自治体によると、2014 年 4 月から 2018 年 3 月までに 2,797 匹の「ノラネコ (stray cats)」が捕獲され、不妊手術が行われた。 しかし、捕獲されたネコのうち、耳に TNR の印がされたネコは 13% に過ぎず、この割合は増えていない。 この結果は、島にネコが大量に生息し、繁殖に成功していることを暗示している。 我々は、安定的かつ無尽蔵な人間由来の資源によって、ネコがこれだけの個体数を維持できていると考えているが、人工的な資源がネコの個体数に与える影響を評価するには、さらなる調査が必要であろう。 管理によって固有種の哺乳類はある程度回復したようだが、人間による資源補助をコントロールしない限り、放し飼いのネコを排除することは難しいかもしれない。

全体として、本研究は、侵入した放し飼いネコが人為的な餌に依存しており、その影響が生息地から遠く離れた生物多様性の高い自然地域にまで及ぶ可能性があることを示している。 この発見は、侵入種のネコの個体数の最適な管理方法について、新たな知見をもたらすものである。 捕食者管理の主な方法は、徳之島で行われている捕獲と致死的管理 (letahl control) である 10 51 しかし、継続的な介入が必要なため、このような管理はしばしば非常に高価であり、プロジェクト全体の失敗につながることもある 51人間が引き起こす「ハイパープレデーション」の場合、ネコが人工的な資源にアクセスできないようにすることが、長期的に捕食者の数を減らすための、より費用対効果の高い方法となる。 このテーマに関する研究は、捕食者対策プログラムをより適切に計画するために重要となるであろう。 もし、現地の人々が生態系への影響を意識せずに捕食動物にさらなる資源を提供しているのであれば、人間による ハイパープレデーション の科学的根拠を紹介することで、ペットや近隣の野生動物を適切に扱う意識が向上する可能性がる。 この方法は、長期的には捕食者の個体数を効果的に減少させるが、通常、資源補助が急激に減少すると、在来の餌生物に対する捕食圧が一時的に増加する 29 52。 このため、効果的な保護戦略を立てるには、致死的管理 (lethal control) や資源供給抑制 (resource subsidization control) など、いくつかの方法を組み合わせる 必要がある。

徳之島では、ペットのネコを室内で飼うことや、飼い主のいないネコに餌を与えることを禁止する条例がある。 しかし、(同位体) 混合モデルでは人工資源への依存度が高かったことから、これらの規制を守っていない人が多いと思われる。 私たちの研究は、人々を教育し、そのような規制を支持する必要性を証明する重要な科学的根拠を提供するものである。 さらに、この研究は、短期的には TNR ネコが絶滅危惧種に与える影響の可能性を示唆している。 したがって、この方法の有効性と妥当性を再検討する必要がある。

本研究はまた、同位体混合モデルが示唆する高い依存性にもかかわらず、人工物を含む糞便は 24% に過ぎなかったことから、人為的な補助 (anthropogenic subsidization) の影響を検出する上での糞便分析の限界を指摘するものである。 したがって、この方法の有効性と妥当性を再検討する必要がある。 また、同位体混合モデルが示唆する高い依存性にもかかわらず、人工物を含む糞便は 24% に過ぎなかったことから、本研究は人為的な助成の影響を検出する上での糞便分析の限界を指摘するものである。 これまでの研究では、ネコの糞便や胃/腸の内容物から人工物が検出されたが、人工物の出現頻度が低く、その質量を推定することが困難なため、その後の依存度計算から除外されることがほとんどだった 27 53 54。 これらの研究は、人間による摂食の影響を大幅に過小評価している可能性があるため、正確な摂食量を推定するためには、安定同位体分析などの複数の方法を組み合わせた方がよいだろう 55

本研究では、ネコの個体数に対する人間による資源補助 (resource subsidization) の発生を示唆したが、放し飼いのネコと固有種に関する人口統計学的および動物行動学的 (ethological studies) はまだ不十分である。 食の依存度が高いからといって、それが単に資源選択の結果である可能性があるため、必ずしもその資源が個体数を維持するために不可欠であるとは限らない。 人間の餌やりによる「ハイパープレデーション」の仮説を検証し、その過程と結果を正確に理解するためには、人間の餌やりがネコの個体数にプラスの影響を与え、かつネコによる捕食が固有哺乳類にマイナスの影響を与えるのか、に関する研究が不可欠である。 たとえば、人為的な資源補助 (anthropogenic resource subsidization) によりネコの個体数が増加するのであれば、ネコの密度と住民の密度が正の相関を示すであろう。

結論として、本研究は、放し飼いのネコに対して人為的な資源補助 (anthropogenic resource subsidization) が行われていることを示す強力な状況証拠を提供するものである。 それは、人為的な「ハイパープレデーション」の可能性を指摘し、地域的・世界的な侵入種の捕食者への対策管理を推進するための重要な裏付けとなる。

図 4.

図4

ネコの安定同位体比とその潜在的資源。

エラーバーは標準偏差を表す。 農耕地動物、人工資源はそれぞれクマネズミ、ペットフードを表している。 森林動物の安定同位体比は、アマミノクロウサギとケナガネズミの平均値である。

図 5.

図5

人工資源、農耕地動物、森林動物など3種類の資源に対する捕獲したネコの依存度。 エラーバーは 95% の高密度領域を表す。 数値は R (SIAR) 56 での安定同位体分析から導き出した。

表 2.

赤池情報量規準の補正版 Δ (AIC) < 2 (family = Gaussian) を使用した、選択した一般線形モデル (GLM) のモデル平均化の結果である。 見出し行は、応答変数と3つのリソースのそれぞれへの依存度を表す: *p < 0.05, **p < 0.01, ***p < 0.001.

説明変数人工資源農耕地動物森林動物
推計 (x 10 -3)zp推計 (x 10 -3)zp推計 (x 10 -3)zp
住宅地 (因子1)10.652.59**−0.110.06−5.830.83
+農地/-森林 (因子2)−0.100.0816.082.84**−2.092.85**
体重16.623.54***0.720.27−22.153.33***
姓 (雄)−4.430.541.140.230.560.13
MEM1−9.432.24*−11.832.29*22.823.53***
MEM2−0.380.2111.162.13*−6.360.89
MEM300−10.792.09*5.850.84
MEM4−0.030.030.020.01−0.030.02
MEM5−1.310.45−16.083.24**24.453.93***
MEM6−0.040.04142.62**−14.622.18*

4. 調査方法

4.1. 調査地域

徳之島 (北緯27度45分、東経128度58分) は、日本の南西部、琉球列島に位置する島である (図2)。 面積は 247.85 km2、人口は約25,000人 33。 徳之島は、降水量が多い亜熱帯に属する (平均気温21.6℃、年間平均降水量1912mm)。 南北に山 (最高峰645m) が連なり、その周りを琉球石灰岩の台地が取り囲んでいる。 この島は主に作物畑と常緑広葉樹林で構成されており、それぞれ面積の28%と43%を占めている。 作物畑としてはサトウキビが多く、森林としてはスダジイ (Castanopsis sieboldii) やオキナワウラジロガシ (Quercus miyagii) などの常緑樹が主要な構成要素となっている。

琉球列島 (Ryukyu Archipelago)、特に徳之島を含む中部琉球は、少なくとも後期中新世 (1163-533万年前) までにユーラシア大陸から分離していた 57。 在来の上位捕食者は沖縄島産ハブ (Protobothrops flavoviridis) とヒメハブ (Ovophis okinavensis) であり 58、多くの固有種や亜種は在来の哺乳類捕食者がいない中で進化してきた 40。 アマミノクロウサギは徳之島と隣接する奄美大島の固有種で、ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rat) は徳之島、奄美大島、沖縄本島北部の固有種、徳之島トゲネズミ (Tokunoshima spiny rat) は徳之島にのみ生息するなど、固有性の高いものが多い 41。 これら3種の哺乳類を含む固有種のほとんどは、国際自然保護連合 (IUCN 2017) や日本の環境省 (2017) のレッドリストに記載され、絶滅の危機に瀕している。

4.2. サンプルの採取と食餌の分析

ネコの食性は通常、胃内容物や糞便分析で評価される 16 59これらの方法は短期的な食餌の状況を把握できるが、ペットフードのような消化率の高いものや、ゴミのような計測不能なものの寄与が過小評価される。 安定同位体分析は、主要な食品の長期的な寄与に関する情報を提供し、消化率の違いによる影響が少ないため、主要な食品を特定するための代替方法となる。 しかし、餌となる可能性のある種は同位体値が似ている可能性があるため、特にネコのような一般的で日和見的な捕食者の場合、分類学の解像度が低くなる場合がある。 糞便分析と安定同位体分析を組み合わせることで、もう一方の欠点を補い、より正確で長期的な食餌履歴を明らかにすることができる 60 61

本研究では、徳之島で実施された個体数管理プログラムで捕獲された「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」から毛および糞便を採取した。 「ノネコ (feral cats)」は村から 500m以上離れた森林地帯で、「ノラネコ (stray cats)」は村の中やその周辺で捕獲された。 「ノネコ (feral cats)」も「ノラネコ (stray cats)」も、キャットフードやフライドチキンを入れた金属製の箱罠で捕獲し、動物病院に連れて行って避妊手術を行った。 毛髪は手術中に獣医師が採取した。 避妊手術の後、数日間はネコを別々のケージで飼育し、糞の採取を行った。 「ノネコ (feral cats)」のサンプルは 2014年 12月から 2018年 1月まで、「ノラネコ (stray cats)」のサンプルは 2017年 11月に採取している。 各ネコについて、捕獲場所、捕獲日、性別、体重を記録した。 過去に TNR を経験した個体であるサクラネコ (耳に切り込みの印のあるネコ) が 2017年 11月以降に捕獲された場合、以前に捕獲されたノラネコ (stray cats) の写真と比較し、まだサンプリングされていないことを確認した。

4.3. 糞便分析 (Fecal analysis)

糞便サンプルはビニール袋に入れ、-20℃ で凍結保存した。 糞は 1mm メッシュのふるいにかけて水流下で洗浄し、65℃ のオーブンで 12 時間以上乾燥させた。 各食品は種レベルで同定され、森林に生息する種 (森林動物)、農地や住宅地に生息する種 (農耕地動物)、人工資源、未同定の動物・植物材料の4つの主要生息環境のいずれかに割り当てられた。 ウグイス (Horornis diphone) を除いて、ほとんどの種が森林内または非森林内にのみ生息する 30 41 44。このため、ウグイス を “未同定” に分類した。 クマネズミは、絶滅危惧種が生息する森林にはほとんど生息していないため、「農耕地動物」に分類した。 未同定の動物/植物の原料は、以降の食性分析から除外した。 それぞれのスキャットに含まれる獲物の個体数は、顎や切歯などの特徴的な骨をもとにカウントした。 餌生物種ごとに出現頻度と最小個体数を推定した。

安定同位体分析に用いる餌生物種の候補を絞り込むため、Bonnaud ら 62 および塩野﨑ら 27 の方法に従って、ネコの DCB に対する各餌生物種の寄与率を推定した。 ネコは通常1日1回排便するため 63 64、式は次のように書ける。

$$ 寄与率 = \frac{餌生物の平均体重\ \times\ N\ I/n}{ネコの平均\ DCB}\ \times\ 100\ \left( % \right) \tag{1} $$

ここで、n はスキャットサンプルの総数、NI はスキャットで見つかった個々の餌の最小総数である。 自由生活する真獣類の捕食者の DCB は、下記 (2) のアロメトリック方程式 (allometric equation) 65 66 を用いて推定することができる。

$$ DCB = 3.358\ \times\ \left( 捕食者の体重 \right)^{0.813}\ \times\ \frac{2.86}{18}\ \left( g \right) \tag{2} $$

ここで、2.86 は餌の 65% の水分を考慮したものであり (100/(100 - 65) = 2.86)、18 は乾燥餌 1グラムあたりの代謝エネルギー kJ で平均エネルギー量を表す 65 66。 獲物の体重の上限をネコの最大 DCB としたのは、ネコが大きな獲物を捕らえたとき、一部を食べて残りを残す可能性が高いからである 67。 以前、寄与率が 1%以上の餌生物種で SIAR を行ったところ、95% HDR 区間の最小値は 3.0% であるという結果を得ている。 そこで、ネコにとって重要な餌生物種を、寄与率が 3% 以上の種と定義した。 その結果、森林に生息する2種 (アマミノクロウサギ、リュウキュウアカネズミ) と農耕地や住宅地に生息する1種 (クマネズミ) がこの閾値を満たし、以降の安定同位体分析に使用された。 「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の糞の間で、各餌生物の出現頻度をフィッシャーの直接確率検定で比較した。

4.4. 安定同位体分析 (Stable isotope analysis)

ネコと獲物の毛を根元も含めて丸ごと摘み取り、ビニール袋に入れて保管した。 また、「ノネコ (feral cats)」および「ノラネコ (stray cats)」と比較するために、ペットフードしか与えられていない室内飼いのネコの毛のサンプルも採取された。 さらに、「保護ネコ (sheltered cats)」 (「ノネコ (feral cats)」として捕獲され、その後 23〜536日間シェルターで飼育され、ペットフードを与えられたネコ) の毛を採取し、栄養強化係数 (TEF: trophic enrichment factor) を推定した。 毛髪サンプルはすべて、徳之島の地方自治体と環境省がそれぞれ「動物の愛護および管理に関する法律 (the Act on Welfare and Management of Animals)」、「野生鳥獣の保護および狩猟の管理に関する法律 (Protection and Control of Wild Birds and Mammals and Hunting Management Law)」に基づいて行っているネコの個体数管理事業から提供されたものである。

ネコの糞便分析の結果から、ネコの食餌資源は、森林動物 (アマミノクロウサギ、ケナガネズミ)、農耕地動物 (クマネズミ)、人工資源 (ペットフード) の3種類を想定した。 クマネズミは村や農地で金属製の箱の罠を使って捕獲され、首から毛が抜かれた。 絶滅危惧種であるアマミノクロウサギとケナガネズミは、環境省が保管する冷凍死体 (主に交通事故で死亡) から許可を得てサンプルを入手した。 代表的な人工資源として、徳之島のネコに与える主食であるペットフードを分析した。 ペットフードの成分が穀物、魚、肉、大豆と人間の食事に似ているため、残飯や生ゴミなど他の人工資源と同位体比が似ている可能性がある 68

水上ら (2005a, 2005b) 69 70 と同様の方法で、試料中の炭素と窒素の安定同位体比を分析した。 毛髪を 2:1 のクロロホルム-メタノール溶液ですすぎ、脂質を除去した後、風乾させた。 脂質は炭水化物やタンパク質に比べて 13C が枯渇しやすく 71、その量も個人差が大きいため、脂質を除去することが推奨されている 72。 ペットフードは 65 ℃ のオーブンで 12時間以上乾燥させ、フードミルで粉砕した。 サンプルはブリキのカップに封入し、Delta V 同位体比質量分析計 (Thermo Fisher Scientific, Bremen, Germany) に接続した FlashEA 1112 元素分析装置 (Thermo Fisher Scientific) で燃焼させた。 同位体分析の分析誤差は、δ13C で 0.1‰ 以内、δ15N で 0.2‰ 以内であった。

4.5. 同位体混合モデル (Isotopic mixing model)

R パッケージの “siar” を用いてベイズ型混合モデル SIAR を適用し、ネコの各資源への依存度を推定した 73SIAR モデルは、ディリクレ事前分布を用いた マルコフ連鎖モンテカルロ (MCMC) 法で、もっともらしい食餌組成を見つけるのに適している 73

通常、δ13C は 0‰-1‰、δ15N は 3.4‰、栄養段階 (trophic level) ごとに増加すると仮定されている 71 74。 しかし、TEF は環境、栄養レベル、組織、種、試料処理手順によって異なる場合がある 39 60 61 75 76。 本研究で適切な TEF を推定するために、保護されたネコの同位体比を分析した。 保護されたネコは捕獲後、同じペットフードを与えられていたため、その同位体比はペットフード + TEF の同位体比に収束することになるであろう。 ΔδX (保護ネコの δX - ペットフードの δX; X = 13C または 15N) を応答変数、ネコがシェルターで過ごした日数を説明変数として、漸近指数モデル (asymptotic exponential model)

$$ y\ =\ Ae^{Bx}\ +\ C $$

を使用した。 TEF を推定された漸近値 (パラメータ C) と定義した。

森林動物 (アマミノクロウサギ、ケナガネズミ)、農耕地動物 (クマネズミ)、人工資源 (ペットフード) の同位体比を算出した。 森林動物の同位体比は、 (アマミノクロウサギ、ケナガネズミ) 2種の同位体比の平均値と定義した。

MCMC は 50,000 回実行し、最初の 5,000 サンプルは破棄し、サンプルの自己相関を避けるために 10 {すなわち、[グループ数 × (発生源数 + 同位体数)] = 2 x (3 + 2)} で間引きした。

4.6. 一般線形モデル (General linear model)

R 環境下でガウス構造を持つ GLM (link = “identity”) を用いて、景観要素 (landscape elements) が放し飼いネコの食性に及ぼす影響を分析した。 説明変数は、捕獲地周辺の土地利用変数、性別、体重、空間的自己相関である。

土地利用変数には、森林、住宅地、農地の被覆率と建物の密度が含まれる。 土地被覆データは国土数値情報ダウンロードサービス (National Land Numerical Information download service) から、建物位置は国土地理院 (Geospatial Information Authority of Japan) ホームページから取得した。 人間に餌を与えられているネコは、通常、飼い主の家から 300-800m 以上移動することはない 77 78。 また、本研究における「ノネコ (feral cats)」は、村から 500m 以上離れた場所で捕獲されたものと定義した。 そこで、捕獲位置から半径 100m、200m、500m のバッファーを作成した。 土地利用変数は互いに強い相関があるため、説明的因子分析を用いてそれらを要約した。 最尤因子抽出 (maximum likelihood factor extraction) による探索的因子分析 (exploratory factor analysis) を行い、237 匹のネコの捕獲地点 165 カ所周辺の景観要素の因子構造を決定した。 主成分分析 (principal component analysis) ではなく因子分析 (factor analysis) を用いる理由は、因子分析の軸が土地利用パターンという観点で解釈しやすいからである。 並列分析の結果、2 因子解 (two-factor solution) が推奨された。 この 2 因子を解釈するために、プロマックス (Promax: 斜交 oblique) 回転を採用した。 ネコの食性に対する空間的な近接性の影響を考慮するために、空間的な自己相関変数 (Spatial autocorrelation variables) を追加した。 ドロネーの三角測量法 (Delaunay triangulation method) を用いてモランの固有ベクトルマップ (MEM: Moran’s eigenvector maps) を構築し、R パッケージ「adespatial」を用いて各捕獲位置のスコアを算出した 79。 より細かい空間構造を表す大きな MEM 値は、半径 100-500m のバッファー内の土地利用と重なる可能性があるため、まず MEM1-10 を検討し、その後モデルを選択した。 最大の有意な MEM 値は MEM6 であったため、以降の解析では MEM1〜6 のみを使用した。

モデルの選定は、マルチモデル推論方式で行った。 「MuMIn」パッケージ 80 を用いて、グローバルモデルに基づくすべてのサブセットを生成し、補正版赤池情報量規準 (AIC) に基づいてランク付けを行った。 モデルの平均化を行い、ΔAIC < 2 のすべてのモデルの平均化されたパラメータ推定値を作成した。

Received: 22 October 2018; Accepted: 14 October 2019;

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最終更新 2023/11/29: fix translated papers (3a5ede0)