1 - 沖縄世界自然遺産登録の再検証

2021年に「奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録された。このために行われた活動を社会学的および生物学的に再検証する。

ここでは、本文の中で引用・参照している論文のうち、英語で公開されている論文を日本語に翻訳した論文を公開している。

目次

  1. 目次
  2. 概要 (Abstract)
  3. 背景 (Background)
  4. ネコ駆除派学者の論文 (self-serving-academic)
  5. ネコ駆除派学者の文献 (self-serving-books)
  6. ネコ駆除派学者のプロパガンダ (self-serving-propaganda)
  7. 家畜化と再野生化 (feralization)
  8. 侵入生態学と侵入生物学 (invasion biology)
  9. 日本政府による世界遺産登録 (ja-government)
  10. 自民党の利権構造 (ldp-concession)
  11. 結論 (conclusion)
  12. 参考文献 (references)

駆除派学者の主張

  1. ノネコとは再野生化したイエネコ
  2. ノネコが固有種を絶滅するリスクが高い
  3. NTR ではネコの個体数を減少させることはできない
  4. 予防的アプローチでノネコは駆除すべき
  5. 外来生物は固有生物を絶滅させる (外来生物悪玉論)
  6. 動物愛護の英訳は存在せず、日本の動物愛は世界でも独自で、このプロジェクトは世界的な存在意義がある

本論文で主張

  1. ノネコとはイエネコのその時点の状態であって、恒久的な分類ではない
  2. 家畜化されたイエネコが再野生化したノネコは、暫定的な集団であり、繁殖する集団ではない
  3. 外来生物悪玉論は科学的に誤りである (文献3冊)
  4. 短期での大々的な TNR でネコの個体数を管理できる
  5. ノネコの駆除は生態系保護の解決策にならない
  6. 駆除派の主張するノネコは、ノラネコのことであり、これを殺処分することは動物愛護法違反である
  7. 動物愛護法違反を回避するために、適正飼養条例 (餌やり禁止) を策定させた
  8. 鳥獣保護法による殺処分につなげようとしたが、鳥獣保護法でも殺処分は法律違反である
  9. ネコ駆除派は、沖縄世界自然遺産によるインバウンド観光推進を企図する地元企業や地方自治体、環境省のために論文作成などの活動を行った
  10. 世界自然遺産は人間による自然破壊からの生態系保護を行うものだが、これに反し、自然破壊の開発と観光客誘致を優先するために、ノネコ問題をスケープゴートにした
  11. 沖縄自然遺産の固有種が絶滅の危機にあるのは、生息地の自然破壊や交通事故死が原因であって、ノネコの捕食による影響は小さい
  12. 自然遺産登録するよりも、生息地の生態系を保護することが固有種の保護に繋がるが、自分たちの利権のために自然保護を犠牲にしている
  13. ネコ駆除派学者の主張とは逆に、日本の動物愛護およびアニマルウェルフェアは世界でも遅れている
  14. 日本の動物愛護、アニマルウェルフェアの遅れは、業界団体と日本政府、官僚が癒着して利権構造ができあがっているからである

1.1 - 参考文献 (References)

本論文では、参照された論文、書籍、Web 記事など、参考文献の一覧を記載する。

ネコ駆除派学者の論文、書籍、記事

論文1

Tamao Maeda, et al., “Predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on Tokunoshima Island”, 07 November 2019, Scientific Reports volume 9, Article number: 16200 (2019). scientific reports DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-019-52472-3

本論文は、Predation on Tokunoshima に全文を翻訳したものを掲載している。

論文2

塩野﨑 和美、「奄美大島における外来種としてのイエネコが希少在来哺乳類に及ぼす影響と希少種保全を目的とした対策についての研究」、 2016年3月23日、博士課程学位論文 DOI: https://doi.org/10.14989/doctor.k19908 京都大学学術情報リポジトリ KURENAI

論文3

Kazumi Shionosaki, et al., “Feral cat diet and predation on endangered endemic mammals on a biodiversity hot spot (Amami-Ohshima Island, Japan)”, January 2015, Wildlife Research 42(4):343-352. DOI: 10.1071/WR14161

本論文は、Predation on Tokunoshima に全文を翻訳したものを掲載している。

論文4

KOBAYASHI Shun, et al., “Predation on endangered species by cats in the northern forests of Okinawa-jima Island, Japan”, Mammal Study, 45(1): 63-70 (2019). DOI: https://doi.org/10.3106/ms2019-0017 日本の沖縄島の北部森林におけるネコによる絶滅危惧種の捕食, J-GLOBAL BioOne, paid 10$

本論文は、上記、BioOne にて 10ドルで販売されているため、翻訳の掲載を見送っているが、手元には全文を翻訳したものがある。

書籍5

鹿児島大学鹿児島環境学研究会、『奄美のノネコ ─猫の問いかけ─』、2019年4月29日、南方新社

冊子6

鹿児島大学鹿児島環境学研究会、ノネコ問題普及啓発冊子「人もネコも野生動物も住みよい島」、2017年03月、鹿児島大学鹿児島環境学研究会 鹿児島大学 国立国会図書館

論文7

Kazuaki Kazato, et al., “Identification of the population source of free-ranging cats threatening endemic species on Tokunoshima Island, Japan.”, Mammal Research 65, 719–727 (2020). https://doi.org/10.1007/s13364-020-00528-5

論文8

NPO 法人 徳之島虹の会、「徳之島の世界自然遺産登録とその後を見据えた緊急的ノネコ対策と普及啓発活動」、自然保護助成基金助成成果報告書 vol. 28 (2019) DOI: https://doi.org/10.32215/pronatura.28.0_193 J-Stage

記事9

日本生態学会、日本の侵略的外来種ワースト100

記事10

IUCN、100 of the World’s Worst Invasive Alien Species

条例および管理計画

記事11

奄美群島持続的観光マスタープラン

記事12

環境省那覇自然環境事務所、他、「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(2018 年度~2027 年度)」、2019年3月、鹿児島県奄美市。

記事13

奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画について」、2021年3月15日、鹿児島県奄美市。

記事14

ずっとやんばる ずっとうちネコ アクションプラン - 沖縄島北部における生態系保全等のためのネコ管理・共生行動計画」令和5(2023)年度~令和 14(2032)年度、沖縄県 国頭村 大宜味村 東村、環境省沖縄奄美自然環境事務所 PDF: https://www.pref.okinawa.jp/site/iken/r4/documents/nekokanrikyouseikoudoukeikaku.pdf

記事15

希少種保全のためのノネコ対策事業費」、環境省。

【令和3年度予算(案) 60百万円(46百万円)

記事16

奄美大島・徳之島における自然環境に配慮した森林施業方針」、2022年10月、(環境省) 奄美産木材流通促進協議会、徳之島産林産物生産流通促進協議会、鹿児島県大島支庁

論文および記事

論文21

Joel M. Alves, et al., “A single introduction of wild rabbits triggered the biological invasion of Australia”, Proceedings of the National Academy of Sciences Published: August 22, 2022 DOI: https://doi.org/10.1073/pnas.2122734119

本論文は、Single introduction of wild rabbits Australia に全文を翻訳したものを掲載している。

記事22

DNA プロファイリングがオーストラリアのウサギ疫病の謎を解く (DNA profiling solves Australian rabbit plague puzzle)」、 2022年8月23日、Tii 生命科学 (上記論文21を紹介する記事)

記事23

豪州を「侵略」したウサギの大繁殖、英国から輸入の 24 匹が発端」、2022年08月26日、CNN.co.jp (上記論文21を紹介する記事)

論文24

L. Boitani, et al., “Comparative social ecology of feral dogs and wolves”, Ethology Ecology & Evolution 7: 49-72, 1995. DOI: https://doi.org/10.1080/08927014.1995.9522969

本論文は、Comparative of feral dogs and wolves に全文を翻訳したものを掲載している。

論文25

Hu, et al., “Earliest evidence for commensal processes of cat domestication”, December 16, 2013, 111 (1) 116-120 DOI: https://doi.org/10.1073/pnas.1311439110 PNAS

本論文は、Cat domestication に全文を翻訳したものを掲載している。

論文26

Gerry Everding, Cat domestication traced to Chinese farmers 5,300 years ago, December 16, 2013, Washington University in St.Louis (上記論文25を記事にしたもの)

論文27

Tim Doherty, et al, “Killing cats, rats and foxes is no silver bullet for saving wildlife”, June 12, 2015, The Conversation

本論文は、Killing cats is no silver bullet に全文を翻訳したものを掲載している。

論文28

中下留美子、「大型野生動物の一生の食性履歴を解明する手法の開発」、 科学研究費助成事業 研究成果報告書、平成30年6月8日 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18619/ https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-15K18619/15K18619seika/

参考文献

書籍30

ケン・トムソン、『外来種のウソ・ホントを科学する』、2017/3/3、築地書館

書籍31

フレッド・ピアス、『外来種は本当に悪者か?』、2016/7/14、草思社

書籍32

ピーター・シンガー、『動物の解放 改訂版』、2011/5/20、人文書院

書籍33

枝廣淳子、『アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全』、2018/8/8、岩波書店 プレビュー

書籍34

D.R.グリフィン、『動物に心があるか : 心的体験の進化的連続性』、1979/5、岩波書店 国立国会図書館

書籍35

Christopher R. Dickman, “Overview of the Impacts of Feral Cats on Australian Native Fauna”, May 1996, Australian Nature Conservation Agency, (ISBN: 0 642 21379 9). ResearchGate

本論文の一部を引用し翻訳したものを、Feral Cats on Autstralia に掲載している。

書籍36

Margaret R. Slater, “The Welfare Of Feral Cats”, The Welfare Of Cats pp 141–175, 02 March 2005. https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-1-4020-3227-1_6 DOI: https://doi.org/10.1007/978-1-4020-3227-1 PDF: https://www.academia.edu/download/69587948/978-1-4020-3227-1_6.

章 “The Welfare Of Feral Cats” (pp.141-175) は、上記 DOI により英語での原稿を参照することができる。 本章を日本語に翻訳した原稿があるが、出版元からの公開ライセンス料が高額であったため、翻訳原稿の公開を差し控えることにした。

書籍37

佐藤衆介、『アニマルウェルフェア―動物の幸せについての科学と倫理』、2005年6月1日、東京大学出版会

書籍38

朝倉裕、『絶滅したオオカミの謎を探る ―復活への序章―』、2022年7月5日、狼と森の研究所

書籍39

山田俊弘、『〈絶望〉の生態学 軟弱なサルはいかにして最悪の「死神」になったか』、2023年4月25日、講談社 プレビュー

冊子40

IUCN (2018): “IUCN World Heritage Evaluations 2018”, WHC/18/42.COM/INF.8B2, https://whc.unesco.org/archive/2018/whc18-42com-inf8B2-en.pdf “Japan- Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island”, p37-50.

本冊子の該当ページは、IUCN World Heritage Evaluations 2018 に全文を翻訳したものを掲載している。

冊子41

IUCN (2021) : “IUCN World Heritage Evaluations 2020 and 2021”, WHC/21/44.COM/INF.8B2 https://whc.unesco.org/archive/2021/whc21-44com-8Binf2-en.pdf

本論文は、IUCN World Heritage Evaluations 2020 に全文を翻訳したものを掲載している。

記事42

国立国会図書館、「諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況 ―イギリス、ドイツ、アメリカ―」、2014年9月16日、調査と情報-ISSUE BRIEF- No.830 PDF

書籍43

伊地知 英信、『外来種は悪じゃない: ミドリガメのための弁明』、2023年7月28日、草思社

関連記事1 (日本政府関連)

記事61

吉田 正人、「奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島の世界自然遺産登録の経緯とその課題」、 ランドスケープ研究/86 巻 (2022) 2 号 86 巻 2 号 p. 92-95 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila/86/2/86_92/_article/-char/ja/ DOI: https://doi.org/10.5632/jila.86.92 PDF: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila/86/2/86_92/_pdf

記事62

観光立国推進基本法、国土交通省 観光庁

記事63

明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」、首相官邸

記事64

明日の日本を支える観光ビジョン」、平成28年3月30日明日の日本を支える観光ビジョン構想会議決定

  • 従来目標の2倍の訪日外国人旅行者数 (2020年4,000万人) を設定
  • 「国立公園」を、世界水準の「ナショナルパーク」へ 国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化
  • 日本の国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」に。
  • 「国立公園満喫プロジェクト」として、まずは5か所の国立公園で、「国立公園ステップアップ2020」 (仮称) を策定し、2020年を目標に、 以下の取組を計画的、集中的に実施。2020年までに、外国人国立公園利用者数を年間430万人から1000万人に増やすことを目指す。

記事65

観光インフラ整備プログラム施策集」、平成28年12月27日観光戦略実行推進タスクフォース決定

国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化 予算額 H28二次補正 102.9億円 H29当初 100.2億円

記事66

「明日の日本を支える観光ビジョン」主要施策に関わる取組について、平成29年1月31日、内閣官房、国土交通省環境省

PDF

国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化 予算額 H28二次補正 102.9億円 H29当初 100.2億円

PDF

国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化 環境省 国立公園満喫プロジェクト等推進事業 H28二次補正 102.9億円 H29当初 100.2億円

記事67

「明日の日本を支える観光ビジョン」主要施策に関わる要求・要望等について、平成30年1月23日、内閣官房、国土交通省環境省

PDF

国立公園の「ナショナルパーク」としてのブランド化

  • 「国立公園満喫プロジェクト」を開始 (H28年)
  • 「ステップアッププログラム2020」に基づき、以下の取組等を実施
  • 以下の取り組みを推進するため、H29当初予算 (100.2億円) を H29補正予算 (20億円) 及び H30当初予算 (117.0億円) において増額
  • 8つの国立公園で「ステップアッププログラム2020」の実施により得られた成果を、他の公園へ水平展開 (H29年度~)

記事68

日本の世界遺産一覧」、文化庁

関連記事2 (徳之島)

記事71

「人が餌をあたえるネコが希少種を捕食する ― 人の生活圏で暮らすネコが自然環境に与える影響を解明 ―」、 2019年11月19日、森林総合研究所 PDF (上記論文1 のプレスリリース)

記事72

亘 悠哉、「ネコによる希少種の捕食 -人の餌やりで深刻化-」、2020年10月、グリーン・パワー 2020年10月号。

ResearchGate PDF

記事73

徳之島において外猫(ノネコとノラネコ)を養っているのは人が与えるキャットフードかも」、 2020年2月26日、「子猫のへや」2020年2月の猫ニュース (上記論文1 の解説記事)

報告書74

どうぶつ基金、「徳之島ごとさくらねこ TNR プロジェクト事業報告書」、2015年11月15日~2016年1月27日

どうぶつ基金 プレスリリース PDF

年度飼いネコノラネコ合計手術済み手術済み
20143318471,178100.85%
201573411484102.07%
201611236247451.05%
合計5161,6202,136251.17%

記事75

どうぶつ基金、「徳之島ごとさくらねこ一斉 TNR 事後調査報告(最新データ)」、 2017年09月19日、(公財) どうぶつ基金・出張手術

年度飼いネコ飼い主不明ネコどうぶつ基金 合計飼い猫飼い主不明地方創生加速化交付金 合計環境省
2014‐20165161,6202,136000108
2017000738689410
合計5161,6202,13673868941108

TNR を行った飼い主不明ネコ = 1620 + 868 = 2488 (匹)

記事76

どうぶつ基金、「離島一斉 TNR に関する実態調査のご報告~さくらねこの島のその後~」、2023年1月23日

PDF

関連記事3 (奄美大島)

記事81

「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画 (2018年度~2027年度)」、環境省那覇自然環境事務所 https://www.city.amami.lg.jp/kankyo/nonekokanri.html PDF

記事81 では、奄美大島 5 市町村の 2017年12月末までの飼い猫の TNR 頭数を 1,813頭、ノラネコの TNR 頭数 2,033頭 としている。

記事81

「かわいい けれど、、、ネコは外来種 奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」、2018年7月、環境省那覇自然環境事務所 PDF

徳之島でも捕獲したノネコは TNR による再放獣をしていません。

記事82

鹿児島県奄美市、野良猫 TNR 事業について年度別野良猫 TNR 事業実績(PDF:44KB)

年度手術実施数備考
2013103
2014246
2015150
2016138
2017200
2018572
合計1409

奄美市ノラネコ TNR 実施状況

記事83

鹿児島県奄美市、ネコ対策のこれまでの成果

飼い猫(奄美市のみ)

年度総登録数新規登録数
20111,5051,505
20121,591142
20131,730153
20141,776218
20152,016344
20162,249288
20172,610558
20182,832253
20192,685179
20202,138270
20212,163164
20222,086122
年度手術率備考
201333.2%
201444.2%
201550.0%避妊去勢手術助成開始
201649.0%
201747.2%条例改正
201854.1%
201955.8%飼養状況確認を開始
202081.8%
202184.9%
202289.9%

ノラネコ(奄美市のみ)

年度処置頭数処置頭数計
2013103103
2014246349
2015150499
2016138637
2017200837
20185721,409
20196552,064
20203552,419
20213522,771
20221392,910
合計2,910-

ノネコ(島内全体)

年度ノネコ捕獲頭数譲渡頭数安楽死頭数
201843430
20191251230
202027270
20211241240
20221011010
202329250
合計4494430

記事85

シマッチュと猫の関係史 - 奄美大島において猫は希少動物を絶滅させない。、ブログ

関連記事4 (やんばる地域)

記事91

沖縄県「やんばる」でノラ猫の捕獲をしていた!」、2019年4月14日、どうぶつ基金

記事92

「やんばる型森林業の推進 ~環境に配慮した森林利用の構築を目指して~ 施策方針」、平成25 (2013) 年3月、沖縄県農林水産部森林緑地課 PDF

記事93

「沖縄島北部行動計画の事業進捗状況とりまとめ結果(平成29年7月現在)」 PDF

関連記事5 (西表島)

関連記事6 (世界遺産登録以外の沖縄諸島)

記事101

劣悪な環境で猫38匹を飼育、動物愛護法違反容疑で女を逮捕 沖縄・南大東、「多頭飼育崩壊」の状態か」、2022年11月30日、琉球新報

関係者によると、女は島内で野良猫の保護活動をしており、交流サイト(SNS)などで全国から活動資金の援助や猫のえさ、ペット用品の提供を呼び掛けていた。 飼育する建物は元倉庫で、床は猫のふん尿や猫の毛などが数センチの高さに堆積し、数カ月前には猫の死骸が多数放置されていた。 電気や水道などの設備はなく、飼育環境は崩壊した状態。衰弱や病気がうかがえる猫もおり、虐待とみなされてもおかしくはないという。

同村は9月、「南大東村飼い猫の適正な飼養および管理に関する条例」に基づき、猫を飼育する家屋に立ち入り調査を実施。飼育環境の改善を勧告したが、その後も是正されなかったという。

記事102

SOS 出せず「猫助けたい」思い裏目に 多頭飼育崩壊の経緯、南大東の女性語る 沖縄

関連記事7 (ノネコ駆除反対派の記事)

天売島の記事を忘れずに!

記事111

五箇さんに聞く!「“外来種”は悪者?」-“外来種問題”から学ぶ、自然との向き合い方-

記事112

2 - 翻訳論文

日本語に翻訳した英語論文を公開しています。

ここでは、本文の中で引用・参照している論文のうち、英語で公開されている論文を日本語に翻訳した論文を公開しています。

翻訳論文のリスト

2.1 - predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on tokunoshima island

論文 “predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on tokunoshima island” の日本語訳です。

原題: “predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on tokunoshima island”

著者: 前田 玉青 [a], 中下 留美子 [b], 塩野崎 和美 [c] [d], 山田 文雄 [b] & 亘 悠哉 [b] [e]

2019年11月7日、Scientific Reports volume 9、Article number: 16200 (2019)。

DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-019-52472-3


[a]: 京都大学野生動物研究センター, 京都市左京区田中関田町 2-24, 郵便番号606-8203, 日本. https://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/
[b]: 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 (FFPRI), 1 Matsunosato, Tsukuba, Ibaraki, 305-8687, Japan. https://www.ffpri.affrc.go.jp/ffpri.html
[c]: 奄美野生動物研究所, 2662 Ogachi, Tatsugo-cho, Kagoshima, 894-0105, Japan.
[d]: Amami Wildlife Research Center Co., Ltd, 10-11-2F Naze Suehiro-cho, Amami, Kagoshima, 894-0027, Japan.
[e]: email: ywatari@affrc.go.jp



徳之島における人為的な飼いネコによる絶滅危惧種の捕食について

概要

外来種を効果的に管理 (駆除) するためには、外来種が在来の生態系に与える影響を解明することが重要である。 豊富な外来種の餌が存在すると、外来種の捕食者の個体数が増加し、在来の餌に対する捕食圧が高まる (ハイパープレデーション: hyper-predation)。 外来の獲物だけでなく、人間による餌付けも「ハイパープレデーション」を引き起こす可能性が高い。 しかし、これまでの研究では、これに対する人工資源の寄与は過小評価されていた。 ここでは、糞便と安定同位体分析を組み合わせて、徳之島で放し飼いにされているネコの短期および長期的な食性を明らかにした。

「ノネコ (feral cats)」の糞の 20.1% に森林に生息する種の証拠が含まれていたが、安定同位体分析 (stable isotope analysis) により、ネコはほとんど人工的な資源に依存していることが示唆された。 さらに、一般線形モデル解析により、彼らの食性は景観変数 (landscape variables) と強い相関があることが示された。 これらの結果から、侵略的な放し飼いのネコは人為的な餌付けに助けられ、人里離れた地域から生物多様性の高い自然地域へと移動していることがわかった。 ネコの管理は捕獲が中心だが、地域住民に放し飼いのネコに餌を与えないよう教育することや、ペットのネコを室内で飼うことも重要であることが、今回の調査結果からわかった。

1. 目的

生物の侵入は、世界的な生物多様性の損失 1 2 の主要原因の一つであり、特に世界の島嶼生態系 3 4 において顕著である。 外来種を効果的に管理 (control) するためには、外来種が侵入した地域でどのように生き残り、個体数を増やしていくかを明らかにすることが重要である。 個体群の確立は,侵入 (invasion) を成功させるために不可欠なプロセスの一つである 5 6。 つまり、導入された種がその数を増やすことに成功しない限り、その影響は明らかにならないかもしれない 7 8。 種の特性、生物学的・非生物学的環境、一時的な出来事などの様々な要因が、そのような定着の結果、その後の生息数の増加、侵入種の生態学的影響に影響を与えうる 8 9ハイパープレデーション は、外来捕食者の影響を強めるプロセスの一つであると考えられる 10。 この仮説では、豊富な一次餌生物の存在が捕食者数を助成し、捕食者が成長し、その後、比較的少ない在来餌にさらに深刻な影響を与えると予測される 11 12

「ノネコ (feral cats)」 (Felis catus) は最も影響力のある移入種の一つであり 13、特に島嶼生態系において、数多くの哺乳類、鳥類、爬虫類の絶滅や減少の原因となっている 13 14 15 16 17 18 19。 多くの研究で、導入された餌生物 (アナウサギ (European rabbit)、クマネズミ (black rat)、ハツカネズミ (house mouse) など) が、在来生物に対する「ノネコ (feral cats)」の ハイパープレデーション の原因と疑われることが報告されている 11 18 20。 最も有名な例は、マッコーリー島での事例で、侵入した「ノネコ (feral cats)」が固有種のインコ (マッコリーアオハシインコ Cyanoramphus novaezelandiae erythrotis) の絶滅を招いた 7。 島では60年間、「ノネコ (feral cats)」とインコが共存していたが、ウサギが導入されると「ノネコ (feral cats)」が急増し、その後 10年でインコが食べ尽くされた。

導入された獲物だけでなく、人間による直接的・間接的な餌付けもネコの個体数を支え、在来種に対する捕食圧を高め、その絶滅を加速させている 10 21 22 23。 いくつかの先行研究では、人が餌を与えるネコが地域の生態系に大きな影響を与えることが報告されている 21 24。 しかし、ほとんどの研究は都市部や都市周辺部に生息する在来種の捕食者に限定されていた 23

徳之島は日本の南西部に位置し、在来の哺乳類捕食者がいない状態で進化した独特の生物相を持つ生物多様性ホットスポットである 25。 本島や隣接する奄美大島、沖縄島では、放し飼いにされたネコが、アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi)、ケナガネズミ (Diplothrix legata)、トゲネズミ (トクノシマトゲネズミ Tokudaia tokunoshimensis、アマミトゲネズミ T. osimensis、オキナワトゲネズミ T. muenninki) などの絶滅の恐れがある固有種を食べているため 26 27、これらの種の個体数減少の原因になっていると考えられている 28 29 (図1)。 実際、日本の環境省によるカメラトラップ調査では、ネコの出現数と絶滅危惧種であるアマミノクロウサギの出現数に負の相関があり、ネコの存在がウサギの分布を制限する可能性を示している 30。 徳之島の地方自治体と環境省は、固有種の保護のため、2014年から放し飼いのネコを捕獲している。 ここでは、森林で捕獲されたネコを「ノネコ (feral cats)」、住宅地や農地で捕獲されたネコを「ノラネコ (stray cats)」と呼ぶことにする。 「ノネコ (feral cats)」は保護施設で飼育され、一部は不妊手術後に新しい飼い主に引き取られることもあるが、「ノラネコ (stray cats)」は森に入って在来動物を捕食しないことが暗黙の前提となっているので、不妊手術後に野生に返す (TNR) ことにしている。 環境省が毎月実施しているルート調査では、2014年以降、アマミノクロウサギ (Amami rabbits)、トクノシマトゲネズミ (Tokunoshima spiny rats, T. tokunoshimensis)、ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rats) の絶滅危惧 3類の遭遇率が上昇し、ネコの遭遇率は減少していることが明らかになるなど、この管理プログラムは一定の成果を上げている 31 また、放し飼いのネコが在来種に大きな捕食圧をかけていることも指摘されている。

科学的には、「ノネコ (feral cats)」は完全に自立していて人間とほとんど交流がないことを意味し、「ノラネコ (stray cats)」は飼い主はいないが、人間の世話に頼っていることを意味する 32 「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の区分は、ネコが森林と住宅地の間をほとんど移動しないという行政の想定を示唆しているが、徳之島では放し飼いのネコに関する調査が行われていないため、この区分が科学的に適切かどうかはまだ不明である。 徳之島は小さな森林地帯が特徴であり 33、「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」は森林の野生動物と集落の人工食料の両方にアクセスできる可能性がむしろ高いと考えられる。 森林の中心部でも農地から数キロメートルしか離れておらず、放し飼いのネコが両方にアクセスできるほど近い 34 35 36 37。 沖縄本島北部 (ヤンバル) や奄美大島では、ネコの糞の 7.1〜50% に人間のゴミが検出された 26 27しかし、糞便分析は、食料品目によって消化率が異なるため、実際の人工資源への依存度を正確に推定することはできない 38 その代わり、安定同位体分析は、特定の食品への被験者の依存度を明らかにするための強力な方法である 39。 いわゆる「ノネコ (feral cats)」に人間の食べ物を与えるならば、在来種への高い捕食を減らすためには、飼いネコの室内飼育や飼い主のいないネコへの餌やりをやめることが効果的と考えられる。 ネコの資源依存性が証明されれば、この問題に対する社会の認識を高め、在来種の保護のための効果的な戦略を策定する上で強力な支援となるだろう。

本研究では、徳之島における放し飼いネコの食性を評価し、「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の両方が森林や住宅地にアクセス可能であり、森林内の固有種を捕食することもあるが、人間が提供する資源に強く依存しているという我々の仮説を検証した。 このようなネコの食餌状態は、人間由来の食物資源によって引き起こされる ハイパープレデーション の発生に必要な条件の一つである。

具体的には、以下の 3つの疑問に取り組んだ。
(1) 「ノネコ (feral cats)」は「ノラネコ (stray cats)」よりも絶滅危惧種をよく食べているか?
(2) 人工餌の提供は、放し飼いのネコ「の食生活を実質的に支えているか?
(3) 森林の餌生物 (絶滅危惧種を含む) と放し飼いのネコへの人工餌の貢献度は、周囲の景観が異なる捕獲地点間で異なるか?

これらの疑問に答えるため、捕獲した放し飼いのネコから糞便と毛髪のサンプルを採取し、糞便分析安定同位体分析を実施した。

図1.

図1

徳之島でセンサーカメラで撮影された固有哺乳類を殺す「ノネコ (feral cats)」。 (a) アマミノクロウサギ (Amami rabbits)、(b) ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rats)。 (a) 写真は2017年に撮影したもので、環境省那覇自然保護事務所の許可を得て提供。 (b) 2018年、筆者撮影 (森林総合研究所、亘 悠哉)。

2. 結果

2.1. 糞便分析 (Fecal analysis)

「ノネコ (feral cats)」208匹 (雌75匹、雄123匹、不明10匹)、「ノラネコ (stray cats)」54匹 (雌22匹、雄30匹、不明2匹) を捕獲し、糞便サンプル 198個 (「ノネコ (feral cats)」174個、「ノラネコ (stray cats)」24個) を得た (図2)。 合計 13.4% (35匹; 「ノネコ (feral cats)」31匹、「ノラネコ (stray cats)」4匹) のネコの耳がカットされており、これは「ノラネコ (stray cats)」として捕獲されて避妊手術を受けたことを意味している (表S1)。 また、糞便サンプルの少なくとも 17.7% に森林性動物が、30.8% に農耕地性動物が検出された (表1)。 さらに、「ノネコ (feral cats)」の糞便サンプルの 20.1% に森林動物の痕跡があり、「ノラネコ (stray cats)」の 0.0% と比較して有意に高かった (フィッシャーの直接確率検定、p<0.01)。 農作物 (「ノネコ (feral cats)」: 31.6%、「ノラネコ (stray cats)」: 20.8%) と人工物 (「ノネコ (feral cats)」: 24.1%、「ノラネコ (stray cats)」: 20.8%) の出現頻度に有意差は見られなかった (p>0.05)。 糞便サンプルの 13.5% から 6種の絶滅危惧種 (少なくとも43個体)、南日本固有種の亜種アカヒゲ (Erithacus komadori komadori) 40、琉球列島固有種のアマミノクロウサギ (Amami rabbit)、ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rat)、トクノシマトゲネズミ (Tokunoshima spiny rat)、ジネズミ亜科 (Crocidura spp.)、アマミハナサキガエル (Amami tip-nosed frog、Odorrana amamiensis) 41、が検出された。 この調査では、外来種の餌はクマネズミとニワトリだけだった 42

捕獲したネコの平均体重は 3.3±1.0kg (範囲: 1.0~6.0kg、雄: 3.6±0.9kg、雌: 2.7±0.7kg) である。 したがって、ネコの1日あたりの推定平均消費バイオマス (DCB) は 379±143g (範囲: 146~629g) と推定された。 アマミノクロウサギとニワトリの体重は捕獲したネコの最大 DCB を超えていたため、これらの種については最大 DCB (629g) を体重とした。 その結果、この方法で説明できるネコの食餌量は 24.2% (森林動物: 15.5%、農耕地動物: 8.7%) にとどまることがわかった。 森林動物では、絶滅危惧種であるケナガネズミ (7.7%) とアマミノクロウサギ (6.7%) が、農耕動物ではクマネズミ (6.9%) が主な貢献者であった。

図 2.

図2

琉球列島の奄美群島にある徳之島と、ネコの捕獲場所の地図。

2.2. 同位体混合モデル (Isotopic mixing model)

「ノネコ (feral cats)」189匹、「ノラネコ (stray cats)」52匹、室内ネコ (indoor cats) 9匹の毛を分析した。 炭素の安定同位体比は -17.4 ± 1.4‰、-17.2 ± 1.2‰、-16.9 ± 1.7‰、窒素の安定同位体比は 7.0 ± 0.9‰、7.1 ± 0.8‰、6.8 ± 0.8‰ であった (図3 および 4)。 分散分析 (ANOVA) では、「ノネコ (feral cats)」、「ノラネコ (stray cats)」、「室内ネコ」の間で安定同位体比に有意差は見られなかった [δ13C: F(2,247) = 1.15, p = 0.319; δ15N: F(2,247) = 0.43, p = 0.651]。

ネコの食餌資源候補として、異なる銘柄の乾燥キャットフード (n=9) とアマミノクロウサギ (n=7)、ケナガネズミ (Ryukyu rat) (n=7)、クマネズミ (n=7) の毛髪サンプルを入手した。 森林動物,農耕地動物,人工資源の炭素の安定同位体比は、それぞれ -24.8 ± 2.6‰、-20.9 ± 2.1‰、-18.9 ± 2.5‰ であり、窒素の同位体比は 1.6 ± 1.3‰、6.4 ± 1.3‰、4.6 ± 1.2‰ であった。 同位体比の ANOVA により、資源ごとに有意な変動があることがわかった。δ13C: F(2,33) = 16.43, p < 0.001; δ15N: F(2,33) = 43.84, p < 0.001 事後 (Post hoc) テューキーの検定 (Tukey’s test) により、森林動物が他の動物より有意に δ13C が低いことが示された (p < 0.01)。 農耕地の動物は δ15N が最も高く、人工資源は 2番目に高く、森林の動物は最も低かった (p < 0.01)。

保護されたネコの δ13C と δ15N の時間に対する変化を 図S1 に示す。 δ13C と δ15N の回帰モデルの推定漸近値 (TEF) はそれぞれ 2.3±0.3、2.8±0.1 であった。

R (SIAR) による安定同位体分析によると、「ノネコ (feral cats)」(67.8%; 95% 最高密度域: 62.8-72.8%) および「ノラネコ (stray cats)」(69. 0%、59.3-78.8%) のエネルギー消費において人工資源が最も大きな構成要素となっていることがわかった。 これに次いで、農耕地動物 (「ノネコ (feral cats)」: 17.9%、13.4-22.3%、「ノラネコ (stray cats)」: 18.5%、9.7-27.3%)、森林動物 (「ノネコ (feral cats)」: 14.3%、11.6-17.1%、「ノラネコ (stray cats)」: 12.4%、9.7-27.3%) となった (図 5)。 さらに、糞に森林性動物の痕跡があるネコのみを対象に SIAR を実施した場合 (図S3)、未検出個体よりも森林に近い場所で捕獲される傾向があるにもかかわらず、この高い人工資源依存性が残っていた (図S2、付録)。 野生動物への依存度の推定値は、糞便分析から算出された寄与度 (森林動物: 15.5%、農耕地動物: 8.7%) と概ね一致している。

2.3. ネコの食事に及ぼす景観要素 (landscap elements) の影響

因子分析では、住宅地被覆率と建物密度はともに因子1 に正の荷重を、森林被覆率と農地被覆率はそれぞれ因子2 にそれぞれ負の荷重と正の荷重をかけた (表S2)。 一般線形モデル (GLM) の結果、人工資源への依存は住宅地被覆率 (因子 1) および体重と正の相関があり、農耕動物への依存は農地被覆率 (因子 2) と正の相関があり、住宅地への依存は森林被覆率 (因子 2) と正の相関があるが体重とは負の相関があった (表2)。

表1

糞便分析の結果。FO、アイテムの出現頻度、NI、餌アイテムの数。 * これらの種 (アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi) と ニワトリ (Gallus domesticus)) は最大 DCB よりも重いため、最大 DCB を用いて DCB への寄与度を算出した。 ** 捕獲したラット (n = 12) の平均体重を算出した。

ItemsFO (%)NIDCB への寄与率 (%)体重 (g)IUCN レッドリスト 2017体重の参考値
合計 (n=198)ノネコ (n=174)ノラネコ (n=24)合計 (n=198)ノネコ (n=174)ノラネコ (n=24)
森林動物種 (Forest species)17.720.10.04040015.5
ケナガネズミ (Diplothrix legata)6.16.90.0121207.7483EN_27
アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi)4.04.60.08806.72880*EN_43
トクノシマトゲネズミ (Tokudaia tokunoshimensis)3.03.40.06601.3162.4ENYamada (未発表)
亜種アカヒゲ (Erithacus komadori Komadori)0.50.60.01100.022.4VU_44
シロハラ (Turdus pallidus)0.50.60.01100.178_27
アマミハナサキガエル (Odorrana amamiensis)0.50.60.01100.160VU_45
アマミマダラカマドウマ (Diestrammena gigas)5.15.70.0101000.03_45
オオゲジ (Thereuopoda clunifera)0.50.60.01100.03.5_27
農耕地動物種 (Farmland species)30.831.620.8706558.7
クマネズミ (Rattus rattus)24.226.420.8534856.998**
ジネズミ亜科 (Crocidura spp.)6.67.50.0151500.17(C. orii) EN (C. watase) NT_46
ニワトリ (Gallus gallus domesticus)1.01.10.02201.71500-*_47
不明 (Unknown)
ウグイス (Horornis diphone)1.01.10.02200.015.8_48
未確認の鳥 (Unidentified birds)15.717.80.031310
両生類・爬虫類 (Amphibians/Reptiles)3.54.00.0770
直翅類 (Orthoptera)8.66.325.017116
カマキリ目 (Mantodea)1.01.10.0220
甲虫目 (Coleoptera)3.02.94.2651
未確認の昆虫 (Unidentified insects)41.446.64.282811
甲殻綱 (Crustacea)1.51.70.0330
腹足類 (Gastropods)0.50.04.2101
人工物 (Artificial objects)23.724.120.847425
植物 (Plants)42.432.250.0847212

図3

図3

「ノネコ (feral cats)」、「ノラネコ (stray cats)」、室内ネコにおける (a) 炭素および (b) ニトロゲンの安定同位体比。 エラーバーは標準偏差を、枠内の太いバーは中央値を表す。

3. ディスカッション

本研究では、糞便分析と安定同位体分析を組み合わせることで、徳之島における外来ネコ科動物の食性を明らかにした。 「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の食性の違いは、ネコが捕獲された各生息地での過去数日間の食性を反映する糞便分析でのみ検出された。 同位体混合モデルによると、ネコの長期的な食餌に大きな違いはなく、糞便に森林動物の痕跡があるネコでさえ、大部分が人工的な資源に依存していることがわかった。 ネコたちは数日間森を訪れ、そこで在来の絶滅危惧動物を狩った後、村に戻り、主食であるキャットフードを食べていたと思われる。 また、捕獲された「ノネコ (feral cats)」の多くは耳に TNR の印がある、つまり、住宅地で「ノラネコ (stray cats)」として捕獲されたものであり、この比率は「ノラネコ (stray cats)」の比率と大きな差はないことがわかった。 それはまた、森と村の間のネコの移動も示唆している。 固有哺乳類はネコによって大きな影響を受けているが 28 31、本研究ではネコ自身が人間由来の資源に依存していることが示された。 また、安定同位体分析および糞便分析の結果、導入された餌 (獲物) が利用できる他の多くの島の場合とは異なり、農耕地動物、すなわちクマネズミへの依存度が比較的低いことが示唆された 16。 これは、徳之島の森林におけるクマネズミの密度が低いためと思われる 30。 実際、城ヶ原が行ったネズミの生息調査では、トゲネズミが森林内で優勢で、クマネズミはほとんど捕獲されなかった (未発表データ)。

放し飼いの飼い主のいないネコは、通常、在来資源に依存する 「ノネコ (feral cats)」と、人工資源に依存する「ノラネコ (stray cats)」に分類される 32GLM (一般線形モデル) の結果、各資源への依存度は、その資源が得られたと想定される土地利用と正の相関があることがわかった。 **また、森林に近い捕獲場所では、森林に生息する動物への依存度が高くなっており、「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」を明確に分けることはできず、**特に自然環境に隣接する人間の居住区では、放し飼いのネコが在来種への脅威となる可能性が示唆された。 森林が十分に大きければ、人工資源への依存は最小化され、純粋な「ノネコ (feral cats)」が繁殖することになる。 つまり、徳之島の森林のような小さな生息地は、他の種類の影響と同様に、人為的な資源助成の影響を受けやすい可能性がある 27。 さらに、肉食獣はしばしば線路や道路を好んで移動するため 49 50、道路は、住宅地からの森林へのアクセスを良くし、かつ人々は道路を利用してペットを自然地域に捨てやすくする効果がある。

徳之島の地方自治体によると、2014 年 4 月から 2018 年 3 月までに 2,797 匹の「ノラネコ (stray cats)」が捕獲され、不妊手術が行われた。 しかし、捕獲されたネコのうち、耳に TNR の印がされたネコは 13% に過ぎず、この割合は増えていない。 この結果は、島にネコが大量に生息し、繁殖に成功していることを暗示している。 我々は、安定的かつ無尽蔵な人間由来の資源によって、ネコがこれだけの個体数を維持できていると考えているが、人工的な資源がネコの個体数に与える影響を評価するには、さらなる調査が必要であろう。 管理によって固有種の哺乳類はある程度回復したようだが、人間による資源補助をコントロールしない限り、放し飼いのネコを排除することは難しいかもしれない。

全体として、本研究は、侵入した放し飼いネコが人為的な餌に依存しており、その影響が生息地から遠く離れた生物多様性の高い自然地域にまで及ぶ可能性があることを示している。 この発見は、侵入種のネコの個体数の最適な管理方法について、新たな知見をもたらすものである。 捕食者管理の主な方法は、徳之島で行われている捕獲と致死的管理 (letahl control) である 10 51 しかし、継続的な介入が必要なため、このような管理はしばしば非常に高価であり、プロジェクト全体の失敗につながることもある 51人間が引き起こす「ハイパープレデーション」の場合、ネコが人工的な資源にアクセスできないようにすることが、長期的に捕食者の数を減らすための、より費用対効果の高い方法となる。 このテーマに関する研究は、捕食者対策プログラムをより適切に計画するために重要となるであろう。 もし、現地の人々が生態系への影響を意識せずに捕食動物にさらなる資源を提供しているのであれば、人間による ハイパープレデーション の科学的根拠を紹介することで、ペットや近隣の野生動物を適切に扱う意識が向上する可能性がる。 この方法は、長期的には捕食者の個体数を効果的に減少させるが、通常、資源補助が急激に減少すると、在来の餌生物に対する捕食圧が一時的に増加する 29 52。 このため、効果的な保護戦略を立てるには、致死的管理 (lethal control) や資源供給抑制 (resource subsidization control) など、いくつかの方法を組み合わせる 必要がある。

徳之島では、ペットのネコを室内で飼うことや、飼い主のいないネコに餌を与えることを禁止する条例がある。 しかし、(同位体) 混合モデルでは人工資源への依存度が高かったことから、これらの規制を守っていない人が多いと思われる。 私たちの研究は、人々を教育し、そのような規制を支持する必要性を証明する重要な科学的根拠を提供するものである。 さらに、この研究は、短期的には TNR ネコが絶滅危惧種に与える影響の可能性を示唆している。 したがって、この方法の有効性と妥当性を再検討する必要がある。

本研究はまた、同位体混合モデルが示唆する高い依存性にもかかわらず、人工物を含む糞便は 24% に過ぎなかったことから、人為的な補助 (anthropogenic subsidization) の影響を検出する上での糞便分析の限界を指摘するものである。 したがって、この方法の有効性と妥当性を再検討する必要がある。 また、同位体混合モデルが示唆する高い依存性にもかかわらず、人工物を含む糞便は 24% に過ぎなかったことから、本研究は人為的な助成の影響を検出する上での糞便分析の限界を指摘するものである。 これまでの研究では、ネコの糞便や胃/腸の内容物から人工物が検出されたが、人工物の出現頻度が低く、その質量を推定することが困難なため、その後の依存度計算から除外されることがほとんどだった 27 53 54。 これらの研究は、人間による摂食の影響を大幅に過小評価している可能性があるため、正確な摂食量を推定するためには、安定同位体分析などの複数の方法を組み合わせた方がよいだろう 55

本研究では、ネコの個体数に対する人間による資源補助 (resource subsidization) の発生を示唆したが、放し飼いのネコと固有種に関する人口統計学的および動物行動学的 (ethological studies) はまだ不十分である。 食の依存度が高いからといって、それが単に資源選択の結果である可能性があるため、必ずしもその資源が個体数を維持するために不可欠であるとは限らない。 人間の餌やりによる「ハイパープレデーション」の仮説を検証し、その過程と結果を正確に理解するためには、人間の餌やりがネコの個体数にプラスの影響を与え、かつネコによる捕食が固有哺乳類にマイナスの影響を与えるのか、に関する研究が不可欠である。 たとえば、人為的な資源補助 (anthropogenic resource subsidization) によりネコの個体数が増加するのであれば、ネコの密度と住民の密度が正の相関を示すであろう。

結論として、本研究は、放し飼いのネコに対して人為的な資源補助 (anthropogenic resource subsidization) が行われていることを示す強力な状況証拠を提供するものである。 それは、人為的な「ハイパープレデーション」の可能性を指摘し、地域的・世界的な侵入種の捕食者への対策管理を推進するための重要な裏付けとなる。

図 4.

図4

ネコの安定同位体比とその潜在的資源。

エラーバーは標準偏差を表す。 農耕地動物、人工資源はそれぞれクマネズミ、ペットフードを表している。 森林動物の安定同位体比は、アマミノクロウサギとケナガネズミの平均値である。

図 5.

図5

人工資源、農耕地動物、森林動物など3種類の資源に対する捕獲したネコの依存度。 エラーバーは 95% の高密度領域を表す。 数値は R (SIAR) 56 での安定同位体分析から導き出した。

表 2.

赤池情報量規準の補正版 Δ (AIC) < 2 (family = Gaussian) を使用した、選択した一般線形モデル (GLM) のモデル平均化の結果である。 見出し行は、応答変数と3つのリソースのそれぞれへの依存度を表す: *p < 0.05, **p < 0.01, ***p < 0.001.

説明変数人工資源農耕地動物森林動物
推計 (x 10 -3)zp推計 (x 10 -3)zp推計 (x 10 -3)zp
住宅地 (因子1)10.652.59**−0.110.06−5.830.83
+農地/-森林 (因子2)−0.100.0816.082.84**−2.092.85**
体重16.623.54***0.720.27−22.153.33***
姓 (雄)−4.430.541.140.230.560.13
MEM1−9.432.24*−11.832.29*22.823.53***
MEM2−0.380.2111.162.13*−6.360.89
MEM300−10.792.09*5.850.84
MEM4−0.030.030.020.01−0.030.02
MEM5−1.310.45−16.083.24**24.453.93***
MEM6−0.040.04142.62**−14.622.18*

4. 調査方法

4.1. 調査地域

徳之島 (北緯27度45分、東経128度58分) は、日本の南西部、琉球列島に位置する島である (図2)。 面積は 247.85 km2、人口は約25,000人 33。 徳之島は、降水量が多い亜熱帯に属する (平均気温21.6℃、年間平均降水量1912mm)。 南北に山 (最高峰645m) が連なり、その周りを琉球石灰岩の台地が取り囲んでいる。 この島は主に作物畑と常緑広葉樹林で構成されており、それぞれ面積の28%と43%を占めている。 作物畑としてはサトウキビが多く、森林としてはスダジイ (Castanopsis sieboldii) やオキナワウラジロガシ (Quercus miyagii) などの常緑樹が主要な構成要素となっている。

琉球列島 (Ryukyu Archipelago)、特に徳之島を含む中部琉球は、少なくとも後期中新世 (1163-533万年前) までにユーラシア大陸から分離していた 57。 在来の上位捕食者は沖縄島産ハブ (Protobothrops flavoviridis) とヒメハブ (Ovophis okinavensis) であり 58、多くの固有種や亜種は在来の哺乳類捕食者がいない中で進化してきた 40。 アマミノクロウサギは徳之島と隣接する奄美大島の固有種で、ケナガネズミ (Ryukyu long-haired rat) は徳之島、奄美大島、沖縄本島北部の固有種、徳之島トゲネズミ (Tokunoshima spiny rat) は徳之島にのみ生息するなど、固有性の高いものが多い 41。 これら3種の哺乳類を含む固有種のほとんどは、国際自然保護連合 (IUCN 2017) や日本の環境省 (2017) のレッドリストに記載され、絶滅の危機に瀕している。

4.2. サンプルの採取と食餌の分析

ネコの食性は通常、胃内容物や糞便分析で評価される 16 59これらの方法は短期的な食餌の状況を把握できるが、ペットフードのような消化率の高いものや、ゴミのような計測不能なものの寄与が過小評価される。 安定同位体分析は、主要な食品の長期的な寄与に関する情報を提供し、消化率の違いによる影響が少ないため、主要な食品を特定するための代替方法となる。 しかし、餌となる可能性のある種は同位体値が似ている可能性があるため、特にネコのような一般的で日和見的な捕食者の場合、分類学の解像度が低くなる場合がある。 糞便分析と安定同位体分析を組み合わせることで、もう一方の欠点を補い、より正確で長期的な食餌履歴を明らかにすることができる 60 61

本研究では、徳之島で実施された個体数管理プログラムで捕獲された「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」から毛および糞便を採取した。 「ノネコ (feral cats)」は村から 500m以上離れた森林地帯で、「ノラネコ (stray cats)」は村の中やその周辺で捕獲された。 「ノネコ (feral cats)」も「ノラネコ (stray cats)」も、キャットフードやフライドチキンを入れた金属製の箱罠で捕獲し、動物病院に連れて行って避妊手術を行った。 毛髪は手術中に獣医師が採取した。 避妊手術の後、数日間はネコを別々のケージで飼育し、糞の採取を行った。 「ノネコ (feral cats)」のサンプルは 2014年 12月から 2018年 1月まで、「ノラネコ (stray cats)」のサンプルは 2017年 11月に採取している。 各ネコについて、捕獲場所、捕獲日、性別、体重を記録した。 過去に TNR を経験した個体であるサクラネコ (耳に切り込みの印のあるネコ) が 2017年 11月以降に捕獲された場合、以前に捕獲されたノラネコ (stray cats) の写真と比較し、まだサンプリングされていないことを確認した。

4.3. 糞便分析 (Fecal analysis)

糞便サンプルはビニール袋に入れ、-20℃ で凍結保存した。 糞は 1mm メッシュのふるいにかけて水流下で洗浄し、65℃ のオーブンで 12 時間以上乾燥させた。 各食品は種レベルで同定され、森林に生息する種 (森林動物)、農地や住宅地に生息する種 (農耕地動物)、人工資源、未同定の動物・植物材料の4つの主要生息環境のいずれかに割り当てられた。 ウグイス (Horornis diphone) を除いて、ほとんどの種が森林内または非森林内にのみ生息する 30 41 44。このため、ウグイス を “未同定” に分類した。 クマネズミは、絶滅危惧種が生息する森林にはほとんど生息していないため、「農耕地動物」に分類した。 未同定の動物/植物の原料は、以降の食性分析から除外した。 それぞれのスキャットに含まれる獲物の個体数は、顎や切歯などの特徴的な骨をもとにカウントした。 餌生物種ごとに出現頻度と最小個体数を推定した。

安定同位体分析に用いる餌生物種の候補を絞り込むため、Bonnaud ら 62 および塩野﨑ら 27 の方法に従って、ネコの DCB に対する各餌生物種の寄与率を推定した。 ネコは通常1日1回排便するため 63 64、式は次のように書ける。

$$ 寄与率 = \frac{餌生物の平均体重\ \times\ N\ I/n}{ネコの平均\ DCB}\ \times\ 100\ \left( % \right) \tag{1} $$

ここで、n はスキャットサンプルの総数、NI はスキャットで見つかった個々の餌の最小総数である。 自由生活する真獣類の捕食者の DCB は、下記 (2) のアロメトリック方程式 (allometric equation) 65 66 を用いて推定することができる。

$$ DCB = 3.358\ \times\ \left( 捕食者の体重 \right)^{0.813}\ \times\ \frac{2.86}{18}\ \left( g \right) \tag{2} $$

ここで、2.86 は餌の 65% の水分を考慮したものであり (100/(100 - 65) = 2.86)、18 は乾燥餌 1グラムあたりの代謝エネルギー kJ で平均エネルギー量を表す 65 66。 獲物の体重の上限をネコの最大 DCB としたのは、ネコが大きな獲物を捕らえたとき、一部を食べて残りを残す可能性が高いからである 67。 以前、寄与率が 1%以上の餌生物種で SIAR を行ったところ、95% HDR 区間の最小値は 3.0% であるという結果を得ている。 そこで、ネコにとって重要な餌生物種を、寄与率が 3% 以上の種と定義した。 その結果、森林に生息する2種 (アマミノクロウサギ、リュウキュウアカネズミ) と農耕地や住宅地に生息する1種 (クマネズミ) がこの閾値を満たし、以降の安定同位体分析に使用された。 「ノネコ (feral cats)」と「ノラネコ (stray cats)」の糞の間で、各餌生物の出現頻度をフィッシャーの直接確率検定で比較した。

4.4. 安定同位体分析 (Stable isotope analysis)

ネコと獲物の毛を根元も含めて丸ごと摘み取り、ビニール袋に入れて保管した。 また、「ノネコ (feral cats)」および「ノラネコ (stray cats)」と比較するために、ペットフードしか与えられていない室内飼いのネコの毛のサンプルも採取された。 さらに、「保護ネコ (sheltered cats)」 (「ノネコ (feral cats)」として捕獲され、その後 23〜536日間シェルターで飼育され、ペットフードを与えられたネコ) の毛を採取し、栄養強化係数 (TEF: trophic enrichment factor) を推定した。 毛髪サンプルはすべて、徳之島の地方自治体と環境省がそれぞれ「動物の愛護および管理に関する法律 (the Act on Welfare and Management of Animals)」、「野生鳥獣の保護および狩猟の管理に関する法律 (Protection and Control of Wild Birds and Mammals and Hunting Management Law)」に基づいて行っているネコの個体数管理事業から提供されたものである。

ネコの糞便分析の結果から、ネコの食餌資源は、森林動物 (アマミノクロウサギ、ケナガネズミ)、農耕地動物 (クマネズミ)、人工資源 (ペットフード) の3種類を想定した。 クマネズミは村や農地で金属製の箱の罠を使って捕獲され、首から毛が抜かれた。 絶滅危惧種であるアマミノクロウサギとケナガネズミは、環境省が保管する冷凍死体 (主に交通事故で死亡) から許可を得てサンプルを入手した。 代表的な人工資源として、徳之島のネコに与える主食であるペットフードを分析した。 ペットフードの成分が穀物、魚、肉、大豆と人間の食事に似ているため、残飯や生ゴミなど他の人工資源と同位体比が似ている可能性がある 68

水上ら (2005a, 2005b) 69 70 と同様の方法で、試料中の炭素と窒素の安定同位体比を分析した。 毛髪を 2:1 のクロロホルム-メタノール溶液ですすぎ、脂質を除去した後、風乾させた。 脂質は炭水化物やタンパク質に比べて 13C が枯渇しやすく 71、その量も個人差が大きいため、脂質を除去することが推奨されている 72。 ペットフードは 65 ℃ のオーブンで 12時間以上乾燥させ、フードミルで粉砕した。 サンプルはブリキのカップに封入し、Delta V 同位体比質量分析計 (Thermo Fisher Scientific, Bremen, Germany) に接続した FlashEA 1112 元素分析装置 (Thermo Fisher Scientific) で燃焼させた。 同位体分析の分析誤差は、δ13C で 0.1‰ 以内、δ15N で 0.2‰ 以内であった。

4.5. 同位体混合モデル (Isotopic mixing model)

R パッケージの “siar” を用いてベイズ型混合モデル SIAR を適用し、ネコの各資源への依存度を推定した 73SIAR モデルは、ディリクレ事前分布を用いた マルコフ連鎖モンテカルロ (MCMC) 法で、もっともらしい食餌組成を見つけるのに適している 73

通常、δ13C は 0‰-1‰、δ15N は 3.4‰、栄養段階 (trophic level) ごとに増加すると仮定されている 71 74。 しかし、TEF は環境、栄養レベル、組織、種、試料処理手順によって異なる場合がある 39 60 61 75 76。 本研究で適切な TEF を推定するために、保護されたネコの同位体比を分析した。 保護されたネコは捕獲後、同じペットフードを与えられていたため、その同位体比はペットフード + TEF の同位体比に収束することになるであろう。 ΔδX (保護ネコの δX - ペットフードの δX; X = 13C または 15N) を応答変数、ネコがシェルターで過ごした日数を説明変数として、漸近指数モデル (asymptotic exponential model)

$$ y\ =\ Ae^{Bx}\ +\ C $$

を使用した。 TEF を推定された漸近値 (パラメータ C) と定義した。

森林動物 (アマミノクロウサギ、ケナガネズミ)、農耕地動物 (クマネズミ)、人工資源 (ペットフード) の同位体比を算出した。 森林動物の同位体比は、 (アマミノクロウサギ、ケナガネズミ) 2種の同位体比の平均値と定義した。

MCMC は 50,000 回実行し、最初の 5,000 サンプルは破棄し、サンプルの自己相関を避けるために 10 {すなわち、[グループ数 × (発生源数 + 同位体数)] = 2 x (3 + 2)} で間引きした。

4.6. 一般線形モデル (General linear model)

R 環境下でガウス構造を持つ GLM (link = “identity”) を用いて、景観要素 (landscape elements) が放し飼いネコの食性に及ぼす影響を分析した。 説明変数は、捕獲地周辺の土地利用変数、性別、体重、空間的自己相関である。

土地利用変数には、森林、住宅地、農地の被覆率と建物の密度が含まれる。 土地被覆データは国土数値情報ダウンロードサービス (National Land Numerical Information download service) から、建物位置は国土地理院 (Geospatial Information Authority of Japan) ホームページから取得した。 人間に餌を与えられているネコは、通常、飼い主の家から 300-800m 以上移動することはない 77 78。 また、本研究における「ノネコ (feral cats)」は、村から 500m 以上離れた場所で捕獲されたものと定義した。 そこで、捕獲位置から半径 100m、200m、500m のバッファーを作成した。 土地利用変数は互いに強い相関があるため、説明的因子分析を用いてそれらを要約した。 最尤因子抽出 (maximum likelihood factor extraction) による探索的因子分析 (exploratory factor analysis) を行い、237 匹のネコの捕獲地点 165 カ所周辺の景観要素の因子構造を決定した。 主成分分析 (principal component analysis) ではなく因子分析 (factor analysis) を用いる理由は、因子分析の軸が土地利用パターンという観点で解釈しやすいからである。 並列分析の結果、2 因子解 (two-factor solution) が推奨された。 この 2 因子を解釈するために、プロマックス (Promax: 斜交 oblique) 回転を採用した。 ネコの食性に対する空間的な近接性の影響を考慮するために、空間的な自己相関変数 (Spatial autocorrelation variables) を追加した。 ドロネーの三角測量法 (Delaunay triangulation method) を用いてモランの固有ベクトルマップ (MEM: Moran’s eigenvector maps) を構築し、R パッケージ「adespatial」を用いて各捕獲位置のスコアを算出した 79。 より細かい空間構造を表す大きな MEM 値は、半径 100-500m のバッファー内の土地利用と重なる可能性があるため、まず MEM1-10 を検討し、その後モデルを選択した。 最大の有意な MEM 値は MEM6 であったため、以降の解析では MEM1〜6 のみを使用した。

モデルの選定は、マルチモデル推論方式で行った。 「MuMIn」パッケージ 80 を用いて、グローバルモデルに基づくすべてのサブセットを生成し、補正版赤池情報量規準 (AIC) に基づいてランク付けを行った。 モデルの平均化を行い、ΔAIC < 2 のすべてのモデルの平均化されたパラメータ推定値を作成した。

Received: 22 October 2018; Accepted: 14 October 2019;

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2.2 - Feral cat diet and predation on endangered endemic mammals on a biodiversity hot spot (Amami-Ohshima Island, Japan)

論文 “Feral cat diet and predation on endangered endemic mammals on a biodiversity hot spot (Amami-Ohshima Island, Japan)” の日本語訳です。

原題: “Feral cat diet and predation on endangered endemic mammals on a biodiversity hot spot (Amami-Ohshima Island, Japan)”

著者: 塩野崎 和美 [A] [D], 山田 文雄 [B], 石川 拓也 [C], 柴田 昌三 [D]

Wildlife Research, 2015, 42(4), p343-352

http://dx.doi.org/10.1071/WR14161

[A]: Graduate School of Global Environmental Studies, Kyoto University, Yoshidahonmachi Sakyo-ku, Kyoto 606-8501, Japan.
[B]: Forestry and Forest Products Research Institute (FFPRI), 1 Matsunosato Tsukuba, Ibaraki 305-8687, Japan.
[C]: Office for Environmental Management of Enclosed Coastal Seas, Ministry of the Environment, 1-2-2 Kasumigaseki Chiyoda-ku, Tokyo 100-8975, Japan.
[D]: Corresponding author. Email: shionosaki.kazumi.62a@st.kyoto-u.ac.jp



生物多様性ホットスポット (日本の奄美大島) におけるノネコの食性と絶滅危惧種である固有哺乳類の捕食状況

2015年1月

概要

背景

奄美大島では、絶滅危惧種であるアマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi)、ケナガネズミ (Diplothrix legata)、アマミトゲネズミ (Tokudaia osimensis) などの固有哺乳類に、ノネコが悪影響を及ぼすことが懸念されている。 しかし、島のために緊急に実現可能なノネコ管理の必要性を裏付けるようなノネコの食性調査は行われていない 1

目的

本研究の目的は、奄美大島におけるノネコの食性をスキャット (糞便) 分析により解析し、島の絶滅危惧哺乳類に対する野良猫の潜在的捕食影響を推定することである。

方法

餌生物の数、餌生物の割合、出現頻度 (サンプル中に特定の餌生物が含まれるスキャットの割合)、バイオマスの割合 (同じ餌生物のバイオマスを全消費バイオマスで割って 100倍した値)、1日の消費バイオマス (daily consumed biomass: DCB) を推定した。

主な成果

絶滅危惧種の固有哺乳類 3 種が、ノネコの食事の主な餌種であった (DCB 全体の 65%)。 DCB に占めるこれらの種の割合は、ケナガネズミ (34.7%)、アマミトゲネズミ (21.9%)、アマミノクロウサギ (12%) であった。

結論

奄美大島では、哺乳類、特に絶滅危惧種の固有哺乳類がノネコの主な餌種となっていた。 在来種と外来種の齧歯類 (ネズミ) が共存する奄美大島では、ノネコは外来種 (クマネズミ Rattus rattus で 22.2%) よりも在来種 (56.6%) を多く食べていました。

結論から導かれること

ノネコは、島の絶滅危惧種である固有哺乳類に大きな影響を与えている可能性がある。 これらの固有種を長期的に存続させるためには、ノネコの積極的な管理を検討する必要がある。

はじめに

島嶼環境では、ノネコ (Felis catus) が固有種に大きな影響を与える (Fitzgerald 1988; Macdonald and Thom 2001)。 ノネコは、世界中の数多くの島々で、多くの固有種の絶滅、局所的根絶、個体数減少を引き起こしている (Courchamp et al. 2003; Nogales et al. 2004; Bonnaud et al. 2011a; Medina et al. 2011)。 島の固有種は、対捕食者行動や形態学的および生活史的反応が欠如しているため、外来種に対して脆弱である (Stone et al. 1994; Medina et al. 2011)。 ノネコは日和見的な一般捕食者である (Bonnaud et al. 2011a)。 哺乳類、鳥類、爬虫類、昆虫など、多くの種類の固有種や外来種を、最も入手しやすいときに捕食する (Konecny 1987; Fitzgerald 1988; Fitzgerald and Turner 2000; Nogales et al. 2004; Bonnaud et al. 2011a; Medina et al. 2011)。

ノネコの供給源であるイエネコは、日本で最も人気があり、豊富に存在するペット哺乳類の一つである。 最近の統計によると、国内では約 1,000 万匹のネコがペットとして飼われている (日本ペットフード協会 2014)。 飼い主のいないネコの数についての調査は存在しないが、ノネコやノラネコは日本のいたるところで見られ、小さな島の小さな村でも見られる。 日本には、ネズミの被害から経典を守るために、仏典とともにイエネコが持ち込まれたのが最初とされている (Hiraiwa 2009)。 それ以来、ネコはネズミ駆除に役立つペット、癒しのペットとして、多くの海洋島を含む全国に広がっている。 世界の他の海洋島と同様に、ノネコは、日本のいくつかの島で絶滅危惧種の固有種に悪影響を与える問題のある侵略種として認識されている (Nagamine 2011)。 しかし、日本ではノネコの生態や食性などに関する研究はほとんど行われておらず (Kawakami and Higuchi 2002; Kawauchi and Sasaki 2002; Jogahara et al. 2003)、ノネコが固有種に与える影響を詳細に評価することは困難である。 日本は、生物多様性のホットスポットとして、固有種が例外的に集中している重要な生物地理学的地域である。 しかし、同時に、例外的な生息地の喪失 (Myers et al. 2000; Bonnaud et al. 2011a) や外来種による悪影響も経験してきた。 したがって、ノネコが日本列島の固有種に与える影響を明らかにすることは、重要かつ緊急の課題である。

Towns et al. (2006) が指摘したように、特に獲物が希少な場合、食性研究は個体群への影響を示す指標としては不十分である可能性がある。 しかし、それらは、絶滅危惧種や固有種に対するノネコの影響を解釈するための第一歩となる (Paltridge et al. 1997)。 さらに、絶滅危惧種の固有種が多く生息する島では、ノネコの食性に関する研究結果が、固有種を捕食している重要な証拠とされてきた (Medina and Nogales 2009)。 Bonnaud et al. (2011a) は、島嶼部におけるネコの食性に関する今後の研究は、(1) 十分なサンプル数 (>100) を確保し、(2) 主な餌生物のカテゴリーを、出現頻度だけでなく、全餌生物に占める割合やバイオマス、相対的な存在量の指標で示し、(3) サンプル不足で研究されていない島嶼地域 (たとえば、カリブ海、インドネシア、日本、仏領ポリネシア) について調べるべきだと結論付けた。

日本では、沖縄本島最北端のヤンバルでノネコの食性が最も集中的に研究されている。 これは、ヤンバルがいくつかの絶滅危惧種の重要な生息地であり、ネコの糞からノグチゲラ (Sapheopipo noguchii)、ケナガネズミ (Diplothrix legata) およびオキナワトゲネズミ (Tokudaia muenninki) など絶滅の危機にあるいくつかの固有種の存在が確認されているからである (Kawauchi and Sasaki 2002; Jogahara et al. 2003)。 オキナワトゲネズミが急速に減少し、絶滅寸前にまで至った主な原因は、ヤンバルでのノネコによる捕食と考えられている (Yamada et al. 2010)。 奄美大島 (以下、奄美島) の生態系はヤンバル地域の生態系と似ており、ノネコによる捕食の脅威にさらされていると考えられるいくつかの固有種や絶滅危惧種も生息している。 移入された哺乳類は、可能であれば島でノネコの一般的な餌食となる (Fitzgerald and Turner 2000; Bonnaud et al. 2007, 2011b) が、絶滅危惧種の固有種はこれまでの研究ではほとんど発見されていない (Bonnaud et al. 20 11a)。たとえ、島の齧歯類がネコの捕食に対して最も脆弱な固有の哺乳類分類群であったにもかかわらずである (Nogales et al. 2004)。 環境省によるノイヌとノネコの予備的糞便分析 (2009年) によると、奄美大島では絶滅危惧種の 3 種の固有哺乳類、 アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi)、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ (Tokudaia osimensis) がノネコに捕食されていると考えられている。 しかし、この糞便 (スキャット) 分析ではネコの糞便とイヌの糞便を区別できなかったため、ノネコの実際の食性やこれらの固有哺乳類に対するネコの捕食の影響は詳細には解明されていなかった。 したがって、この島のノネコの食性の研究が必要であると考えられる。 そこで、本調査では、餌生物の数、総餌生物の割合、出現頻度、総バイオマスの割合を算出した。 また、ネコの1日の食物要求量における各餌生物の重要性を知るために、1日の消費バイオマス (daily consumed biomass: DCB) と DCB に占める各餌生物の割合も推定した。 Bonnaud et al. (2007) が示唆したように、パーセント頻度では個々の餌生物の数や重量が考慮されないため、糞便中の餌生物のパーセント頻度よりも、毎日摂取したバイオマスの方がより完全に食性を表現することができる。 また、DCB における各餌生物の寄与率は、消費されたバイオマスの総量ではなく、各餌生物の重量差や、日々の餌生物の組み合わせの違いを考慮することができる。 この島の餌生物の体重はさまざまに異なっているため、ネズミや昆虫などの小さな餌生物の寄与率は、バイオマス全体で見ると過小評価されていると考えられる。

本研究の目的は、糞便分析を用いて奄美大島におけるノネコの食性を分析し、島の絶滅危惧哺乳類に対するノネコの潜在的な捕食影響を推定することであった。

材料および方法

調査対象地域

奄美大島 (北緯28度19分、東経129度22分) は、九州の南 380km、沖縄の北 250kmに位置する日本の南にある琉球列島の島である (図1)。 島の大きさは 721km2 で、日本で2番目に大きな離島である。 気候は温暖 (夏の平均気温 27.7℃、冬の平均気温 15.5℃) で湿潤 (年間平均降水量 2840mm) である。 大陸性の島で、最高峰の 694m は暁新世の地層で構成されている。 島の北部は漸新世の琉球石灰岩に覆われた比較的平坦な地形で、主に農地であるが、南部は山地である。 山林の一部はパルプ材生産に、低地の一部は果樹園やサトウキビ畑に利用されている。 しかし、奄美大島の大部分は依然として原生の亜熱帯常緑広葉樹林に覆われており、その大半を占めるのが オキナワウラジロガシ (Quercus miyagii)、スダジイ (Castanopsis sieboldii)、およびリュウキュウマツ (Pinus luchuensis) である。 島の南東部沿岸には、マングローブ林が広がっている。 島の 85% を森林が占めているが、法律で開発から守られているのはそのうちの 1% にも満たない (Sugimura et al. 2003)。 44,000 人以上が暮らす住宅地のほとんどは主に海岸沿いに位置しており、絶滅の危機に瀕している固有の哺乳類の生息地にいくつかの小さな村が点在している (図1)。

琉球列島は、150万年前にユーラシア大陸から分離した (Sugimura et al. 2003)。 奄美大島は琉球列島の一部として孤立しており、その島嶼環境の中で動植物が進化してきた。 その結果、この島には多くの固有種および亜種の陸生動物が生息している (Sugimura et al. 2003、Watari et al. 2007)。 奄美大島の陸生固有種のほとんどは森林や山地に生息している。 このように、伐採や農耕などの人間活動による撹乱により、これらの種の生息地が減少した (Sumeura et al. 2003)。 また、1970年代以降、外来種による捕食が固有種の個体数を減少させるのではないかという懸念も出てきた (Sugimura et al. 2003)。 それらの多くは、これらの要因によって脅かされており、国際自然保護連合のレッドリスト (IUCN 201) および環境省日本版レッドリスト (2002年、表1) に掲載されている。

クマネズミ、ノイヌ (Canis Familyis) 2、ノネコなどの侵入性捕食性哺乳類の一部が奄美島に持ち込まれており、おそらく人間の入植者によって島に持ち込まれたものと推測されている。 ネコが島に持ち込まれた時期は不明だが、せいぜい 2000 年前と考えられている (Nishinakagawa et al. 1993)。 1979年、毒ヘビのホンハブ (Trimeresurus flavoviridis) の駆除のために奄美大島に意図的に導入されたフイリマングース (Herpestes auropunctatus) は、その後生息域を広げている (Yamada 2004)。 島嶼部の固有種は通常、捕食性哺乳類と共進化しておらず、反捕食行動をとらないため、これらの侵入哺乳類は脅威の捕食者となっている (Stone et al. 1994; Courchamp et al. 2000; Medina et al. 2011)。 マングース (Sugimura et al. 2000; Yamada et al. 2000) やノイヌ (Sugimura 1994; Nakano and Murai 1996; Watari et al. 2007) の食性に関するいくつかの研究により、これら、特にノイヌが奄美大島の絶滅危惧固有種に悪影響を与えていることが判明した。 ノネコの場合、固有哺乳類を捕食する様子が個人的に観察されており (Sugimura et al. 2003)、2005年にはアマミノクロウサギを口にくわえたノネコが自動センサーカメラで撮影されている (Izawa 2007 を参照)。 これらの報告を受けて、5 つの地方自治体は、2011 年までに捕食の影響を軽減するために屋外の飼いネコに対する規制を施行することになった。 この規制では、ネコの飼い主がネコを地方自治体に登録することが義務付けられている。 ネコの登録記録によると、奄美本島ではネコを飼っている世帯が 1,494 世帯 (全世帯の 5%)、飼われているネコの数は 2,869 匹で、そのうち 991 匹が飼い主の家の外で飼育されており (鹿児島県、非公開データ 2012)、ノネコと同様に絶滅の危機に瀕した固有種を捕食する可能性がある。

Fig1 Fig. 1. 本調査における奄美大島の固有哺乳類の生息地を中心としたノネコの糞の採取地点の地図。

表1. 2009年8月~2012年12月に奄美大島で102の糞便群から発見されたノネコの食性組成と日本版レッドリストを参照した絶滅危惧種である固有種の餌種情報 (環境省2014年度版)

食品カテゴリー食性構成 No. Prey%Prey%FO%BO日本レッドリスト (2014) の状態 3個体数の傾向個体数のサイズ平均体重 (g)平均体重の参考文献
哺乳類1548895.199.12
  クマネズミ4726.8639.2222.18Non-native4175Kaneko 2005
  ケナガネズミ4525.7143.1447.57危機 (EN)減少中2000–4800483Ito, pers. comm. 2013
  アマミトゲネズミ4425.1438.2413.05危機 (EN)減少中不明110Shinohara et al. 2013
  アマミノクロウサギ169.1415.6916.28危機 (EN)減少中不明548.05This study
  ジネズミ亜科21.141.960.05危機 (EN)減少中不明9Abe 1967
(C. orii)
準絶滅危惧 (NT)
(C. watase)
鳥類42.293.920.69
  ルリカケス10.570.980.49危急 (VU)減少中>5800183Ishida 1997
  シロハラ10.570.980.2Common473Ueda 1997
  未確認の種21.141.96_6
爬虫類10.570.980.09
  リュウキュウアオヘビ10.570.980.09Common435.07
昆虫類169.1415.690.09
  直翅目746.860.03Common41.7Fitzgerald and Karl 1979
  アマミマダラカマドウマ52.864.90.04Common43Watari et al. 2008
  オオゲジ21.141.960.02Common43.5Ishi, pers. comm. 2013
  未確認の種21.141.96_6
植物物質21.57
人間のゴミ7.84
合計175

No. Prey: ノネコの糞の中の獲物の数
%Prey: 全餌食に占める割合
%FO: ノネコの糞に含まれる出現頻度
%BO: ネコが摂取した各餌種の平均体重に基づく総バイオマスの割合
平均体重: ネコが摂取した各餌種の平均バイオマス

糞便 (スキャット) 収集と食性分析

ノネコの食性については、糞便分析を用いて調査した。 糞便分析は、肉食哺乳類の食性を調べるために最もよく用いられる方法の一つである (Trites and Joy 2005; Fukue et al. 2011)。 本研究で調べたネコの糞は、2009年8月から 2011年12月までのほぼ毎月、奄美大島の様々な場所で機会をみて採取したものである。 ノネコの糞は主に、環境省と研究者が実施した固有種のトレイル調査で林道沿いや林道を歩いて収集されたものである。 奄美大島の森林ではノネコの密度が比較的低く、ノネコは糞を埋める習性があるため、森林内でノネコの糞を見つけるのは容易ではなかった。 通常、林道沿いの道を超低速 (3-4km h-1) で 3-5 時間歩いて数個 (0-4 個) の糞便を発見し、糞便のサンプリングポイントごとに GPS 装置で記録している。 糞の多くは絶滅危惧種の固有哺乳類の生息地である森林内で採取され、これらはノネコの主な餌と考えられている。

住宅地の中には固有哺乳類の生息地に近い場所や生息地内にある場所もあるため、これらの住宅地から 2km 以上離れた場所でも、少数の糞便が採取された (図1)。 オーストラリア (Lilith et al. 2008) と英国 (Thomas et al. 2014) におけるペットのネコに関する以前の研究によると、ペットのネコの行動範囲は比較的狭く、飼い主の家からの最大移動距離は300〜656メートルと推定されていた。 奄美大島では、ペットのネコの生息域も狭いと考えられるため、ペットのネコの糞とノネコの糞の混同を避けるためには、2km の距離が必要であると考えられた。 採取した糞は、ラベルを貼ったビニール袋に入れ、冷凍保存した。 外来肉食哺乳類の糞は、ノネコ、ノイヌ、マングースの 3 種類が山林地帯で発見された。 ノネコの糞は、大きさ、形、匂い、状態 (ネコの糞は、ネコ自身が砂で覆うことがある) などで識別した。 それぞれの糞便の幅 (直径 1~2.2cm) は、ネコの糞便を識別するための主な基準であった (Elbroch 2003)。 通常、同じ場所で 2 ~ 6 個の糞便が発見されるため、これらを同一ネコの糞便グループとしてカウントし、まとめて分析した。 糞便は、水流下で1 -mmスクリーンを持つ篩の上で洗浄し、70℃のオーブンで 24 時間以上乾燥させた。 それぞれの糞便から毛、顎、骨、歯、羽毛、昆虫の破片など、すべてのアイテムを手作業で分離した。 各アイテムを識別し、参考資料と比較することで、それぞれの種を決定した。 顎や切歯などの特徴的な骨をもとに、各糞便群に含まれる獲物の個体数をカウントした。

Bonnaud et al. (2011a) の勧告に従い、全体および年・季節ごとに、餌生物の数、餌生物の割合、出現頻度 (特定の餌生物を含む糞便の割合)、バイオマスの割合 (同じ餌生物のバイオマスを総消費バイオマスで割って x 100 した値) を推定した。 また、ノネコの 1 日の食物要求量に対して重要な餌料種を見つけるために、1 日の消費バイオマス (DCB) を計算した。 DCB は、ノネコの糞に含まれる詳細な食餌を表している。 DCB における各餌生物種の寄与率は、総バイオマスの寄与率よりも、各餌生物種の重量差の影響を受けにくいと考えられる。 したがって、DCB では、総バイオマスよりも重い種の寄与が小さく、より軽い種の寄与がより大きいであろうという仮説を立てた。 DCB を算出するためには、餌となる個体数 (NI) と餌アイテムの平均体重が必要である (Bonnaud et al. 2007; Campos et al. 2007; Medina et al. 2008)。 ネコはおよそ 1 日に 1 回排泄する (Fitzgerald and Karl 1979; Liberg 1982; Konecny 1987)。 したがって、ネコ 1 匹あたりの 1 日あたりの餌生物数および DCB は、糞便あたりの個々の餌生物数によって推定できる (Bonnaud et al. 2007)。 DCB は、以下の式で算出した。

$$ DCB = \sum NI \times (事前項目の平均体重). $$

例えば、糞からアマミトゲネズミ 2 匹とクマネズミ 1 匹が見つかった場合、DCB は 2 x 110 g + 1 x 175 g = 395 g と計算される。 獲物の平均体重は、以前の文献から引用した。 これまでの研究で、ノネコの 1 日平均食物摂取量の範囲は 170~328 g と推定されている (Fitzgerald and Karl 1979; Liberg 1982, 1984; Keitt et al. 2002)。 1 日の最大摂取量は 452g (Keitt et al. 2002)、546g (Bonnaud et al. 2007) と推定されている。 ノネコの DCB は、アロメトリック方程式を用いて算出することもできる (Nagy 1987; Keitt et al. 2002)。 Nagy (1987) による、自由生活の真獣類哺乳類を維持するための DCB を推定する式は、次のとおりである。

$$ DCB = 3.358 (捕食者の体重 (g))^{0.813} \times \frac{2.86}{18} . $$

Keitt et al. (2002) によれば、2.86 は餌生物の 65% の水分含有量を考慮し、18 は餌生物の乾物の推定平均代謝エネルギー含有量を 1 グラムあたりキロジュールで表したものである (Nagi 1987)。 DCB の算出には、2008年から 2011年にかけて奄美大島で捕獲されたノネコ (n = 96) の体重データを使用した。 ノネコの平均体重は 3.3kg (最大: 5.1kg、最小: 1.8kg) であった。 奄美大島のノネコの推定平均 DCB は 375g (最大: 548g、最小: 237g) であった。 私たちが推定した DCB は、過去の研究結果とほぼ同じだった。 そこで、Bonnaud et al. (2007) に従い、本研究では、推定最大 DCB (548g) を用いて、ネコ 1 匹あたり、1 日あたりのバイオマスの割合を算出した。 アマミノクロウサギは、奄美大島のノネコの餌のひとつである。 ウサギの体重は 2000~2880g (Yamada and Cervantes 2005) で、これは奄美大島のノネコの DCB より多い。 ノネコがウサギなどの大きな獲物を捕まえたとき、捕まえた獲物の一部を食べ、残りを後に残すことがある (Fitzgerald and Karl 1979)。 Bonnaud et al. (2007) に従い、糞からウサギの遺体を発見した場合、最大 DCB (548g) をアマミノクロウサギの体重として使用した。 また、各糞便の DCB は、推定最大 DCB を超えないように計算した。 ウサギやオオネズミの遺骸が糞便に含まれていた場合、そのバイオマスは 548g - (他のすべての餌生物の合計 (g)) として計算した。 DCB における各餌種の平均寄与率を算出した。

結果

よく捕食される生物

奄美大島の山林や林道から、合計 102 個 (2009年 22個、2010年 57個、2011年 23個) のネコの糞を採取した。 8 個の糞 (出現頻度7.8%、表1) には、ナイロンやプラスチック素材などの人間のゴミが含まれていたが、これらの糞には野生動物の遺体 (骨や毛) も含まれていた。 したがって、本研究では 102 個の糞をすべてノネコの糞とみなした。 サンプル数は、主要な餌を特定するには十分であったが、年間および季節ごとの食性の変化を分析するには不十分であった。 先行研究によると、(1) Trites and Joy (2005) は、経時的に中程度の効果量を区別するために、主要な餌の遺体を特定するには最低 59 個の糞が必要で、食性を比較するには 94 個のサンプルが必要であると結論付け、(2) Bonnaud et al. (2011a) は、ネコの食性研究は十分なサンプル数 (>100) で表すべきとした。 全体として、15 の食品カテゴリーで 205 の食品が特定され、合計 175 の個別の獲物が見つかった (表1)。 1 つの糞便群には平均 1.7 個の獲物が含まれていた。 糞便の中で最も頻繁に見つかったのは哺乳類の死骸 (95.1%)、昆虫 (15.7%) が 2 番目に多く、鳥の死骸は糞便の 3.9% のみで見つかった。 植物材料 (21.6%) および人間の排泄物 (7.8%) も猫の糞便から検出された (表1)。 ただし、植物材料や人間の排泄物などの項目は、餌となる種のバイオマス比率を計算するときに除外した。

猫の糞から 5 種の哺乳類が確認され、4 種は IUCN レッドリスト (IUCN 2013) に掲載されている絶滅危惧種の固有種だった。 哺乳類では、ケナガネズミ (43.1%)、外来種のクマネズミ (39.2%)、アマミトゲネズミ (38.2%) が上位を占めている。 糞便では、固有の哺乳類 (76.5%) が外来哺乳類 (39.2%) よりも有意な差を伴ってより頻繁に発見された (X2 = 6.14, d.f. = 1, P = 0.01)。 ルリカケス (Garrulus lidthi) もネコの糞から発見された固有種であるが、1 例 (0.98%) しか同定されなかった。 ネコの糞から見つかった昆虫のほとんどは、奄美大島の固有種ではなく、在来種だった。 この研究で捕食された外来種は、クマネズミのみであった。

バイオマス消費量

消費されたバイオマスのうち、哺乳類 (99.1%) が主要な獲物のカテゴリーであった。 哺乳類の餌生物種では、ケナガネズミ (47.6%) が最も多く、次いで外来種のクマネズミ (22.2%)、アマミノクロウサギ (16.3%)、アマミトゲネズミ (13.1%、表1) である。 アマミノクロウサギは頻繁に捕食される種ではなかったが、バイオマスでは 3 番目に消費される獲物であることがわかった。 一方、トゲネズミは頻繁に捕食される種 (38.2%) であったが、バイオマス量では優勢な捕食種ではなかった。 その他の餌生物 (鳥類、爬虫類、昆虫) は、バイオマスに占める割合が小さい。

1 日の消費バイオマス (DCB)

奄美大島のノネコの 3 年間の 1 日消費バイオマス (DCB; 平均値 ± s.d.) は、 378.4 g ± 181.6 だった (表2)。 島のノネコの食性の DCB では、哺乳類 (97.2%) が最も消費される獲物のカテゴリーであった (表2)。 DCB の構成比は、ケナガネズミ (34.7%) が圧倒的に多く、次いでクマネズミ (28.6%)、アマミトゲネズミ (21.9%) である。 アマミノクロウサギ (11.9%) は DCB への寄与が小さかった。 その他の餌生物 (鳥類、爬虫類、昆虫類) は、DCB にほとんど寄与していない。 全体として、絶滅危惧種の固有哺乳類は、島のノネコの食事における DCB に最も貢献する餌生物種 (68.5%) であり、出現頻度が高く、消費されるバイオマス総量に最も貢献していた。 しかし、DCB における重い餌料種 (ケナガネズミ 34.7%、アマミノクロウサギ 11.9%) の寄与率は、全バイオマスの寄与率 (それぞれ 47.6%、16.3%) より小さく、DCB における軽い餌料種 (アマミトゲネズミ 21.9%、クマネズミ 28.6%) は、全バイオマスの寄与率 (それぞれ 13.1%、22.2%) より大きくなっていることがわかった。

表2. 2009年8月から 2011年12月までの奄美大島におけるノネコの 1 日の消費バイオマス (DCB) と平均 DCB (g) に占める各餌種の寄与率

餌種%DCB
哺乳類97.2 ± 14.8
  ケナガネズミ34.68 ± 41.0
  クマネズミ28.60 ± 39.8
  アマミトゲネズミ21.88 ± 36.1
  アマミノクロウサギ11.96 ± 29.7
  ジネズミ亜科0.09 ± 0.6
鳥類0.64 ± 4.5
  ルリカケス0.34 ± 3.4
  シロハラ0.30 ± 2.9
爬虫類0.93 ± 9.2
  リュウキュウアオヘビ0.93 ± 9.2
昆虫類1.23 ± 10.1
  直翅目1.06 ± 10.1
  オオゲジ0.10 ± 0.9
  アマミマダラカマドウマ0.07 ± 0.3
平均 DCB (g)378.43 ± 181.6

ディスカッション

ノネコの食性と島の餌生物の特徴との関連性

奄美大島におけるノネコの食性における主な餌種は哺乳類であり、出現頻度、消費バイオマス、DCB を解析した結果、最も重要な餌種はケナガネズミであることがわかった。 哺乳類のうち、ノネコの食性における主な餌となる外来動物はクマネズミのみで、他はすべて絶滅危惧種の固有哺乳類である。 奄美大島に生息するクマネズミは、歴史的に東アジアから持ち込まれたと推定されている (Kambe et al. 2013)。 餌生物のバイオマスや利用可能性が異なる他の島で行われたノネコの食性に関するいくつかの研究では、導入されたネズミやウサギが一般的な餌生物であり (Liberg 1982; Fitzgerald and Turner 2000; Bonnaud et al. 2007; Nogales and Medina 2009)、絶滅危惧種の固有種はほとんど見つからなかった (Bonnaud et al. 2011a)ネズミとウサギがいる場合、ウサギ、特に若いウサギ (体重 500g 未満) が主な餌となり、ネズミはあまり食べられない (Alterio and Moller 1997; Fitzgerald and Turner 2000; Keitt et al. 2002; Nogales and Medina 2009)。 また、2 種以上のネズミが存在する場合、小型で攻撃性の低い種がネコに食べられることが多い (Fitzgerald and Veitch 1991)。 奄美大島では、ケナガネズミ が最も頻繁に消費される獲物で、アマミノクロウサギ はあまり消費されていない。 したがって、ケナガネズミの平均体重 (483g: Amami Wildlife Conservation Center, Ito, pers. comm. 2013) は、若いウサギの体重に近いことから、他の島で若いウサギが担っている役割をケナガネズミが担っていると推定される (Liberg 1982; Alterio and Moller 1997)。 奄美大島のノネコにとって、ケナガネズミは捕まえやすいため、最も重要な獲物と考えられている。 ケナガネズミは主に樹上生活をしており、木の窪みを巣として利用するが、地上での動きは非常に遅く (Abe and Abe 1994; Katsu 1994)、木の上でも地上でもネコに捕食されやすいと考えられる。 さらに、アマミノクロウサギは、小さいうち (平均体重が 300g 以下: Amami Wildlife Conservation Center, Ito, pers. comm. 2013) は、数ヶ月間巣穴に隠れている (Yamada and Cervantes 2005) ので、ケナガネズミよりも食べられる頻度が低い可能性がある。 アマミトゲネズミと導入したクマネズミは同程度の頻度で捕食されていたが、トゲネズミよりクマネズミの方が多いと思われるのに、春と夏の DCB ではトゲネズミがクマネズミより多く食べられていた。 トゲネズミはクマネズミより小さく、島の他の在来種と同様、ネコの捕食に対する抗捕食行動がないと考えられている (Stone et al. 1994)。 したがって、トゲネズミはノネコの格好の餌食にもなってしまうのである。 さらに、トゲネズミは在来の捕食者であるホンハブ (Trimeresurus flavoviridis) による攻撃を避けるために跳躍行動を進化させたと考えられている (Kaneko 2005)。 トゲネズミのこうした動きは、ノネコの注意を引く可能性がある。 一方、クマネズミは捕食性の哺乳類と共進化してきたため、捕食に対する防御機能を備えている (Stone et al. 1994; Courchamp et al. 2000; Bonnaud et al. 2011a; Medina et al. 2011)。 クマネズミの動きは、固有哺乳類の動きと比べると、かなり速い。 他の食物カテゴリー (鳥類、爬虫類、昆虫) は、この島のノネコの食事にはあまり重要な要素ではない。

私たちのサンプル数は、年変動や季節変動の正確な結果を分析するのに十分な量ではなかった (Trites and Joy 2005)。 しかし、3 年間を通して、ノネコの主な捕食対象は哺乳類であり、DCB で 97% を下回ることはなかった (図2)。 主な餌となる哺乳類の DCB 組成の割合は、夏から秋にかけてはケナガネズミが、冬から春にかけてはクマネズミやアマミトゲネズミが多く消費され、季節によって変化すると考えられる (図3)。 奄美諸島における獲物の入手可能性の年変動および季節変動は研究されていないが、ノネコなどの一般的な捕食者は、その入手可能性に応じて獲物の種を変えることはよく知られている (Fitzgerald and Turner 2000; Bonnaud et al. 2007)。 したがって、島におけるノネコの食性の季節変動は、餌の利用可能性に関連している可能性があると推測される。 今後、十分な糞便サンプルの収集と、餌の入手可能性に関する情報を収集し、島におけるノネコの食性の年変動と季節変動を分析することが必要である。 より多くのノネコの糞を集めるためには、鬱蒼とした林道よりも糞が見つけやすい開けた林道を定期的に探索し、捕獲したノネコの糞を利用することを検討する必要がある。

Fig2

図2. 2009 年 8 月から 2011 年 12 月までの年ごとの 1 日あたりの消費バイオマス (DCB) に基づく、奄美諸島におけるノネコによる餌種の寄与率。 平均 DCB (g) は各バーの上に表示されている。 他の種には鳥、爬虫類、昆虫が含まれる (詳細は 表2 を参照)。n は、糞便サンプル数。

Fig3

図3. 2009 年 8 月から 2011 年 12 月までの季節ごとの 1 日あたりの消費バイオマス (DCB) に基づく、奄美大島におけるノネコによる餌種の寄与率。 平均 DCB (g) は各バーの上に表示されている。 (n は糞便サンプル数, 春は 3 月から 5 月、夏は 6 月から 8 月、秋は 9 月から 11 月、冬は 12 月から 2 月)。 他の種には鳥、爬虫類、昆虫が含まれる (詳細は 表2 を参照)。

島嶼生態系におけるノネコの餌としての固有哺乳類の役割

島嶼生態系におけるノネコの食性に関する他の研究では、通常、導入された哺乳類 (ネズミやウサギ) が最も消費される餌種であり、固有哺乳類はほとんど見つかっていない (Bonnaud et al. 2011a)。 しかし、固有種と移入種の哺乳類が共存する奄美大島では、固有種の哺乳類が移入種の哺乳類よりも多く消費されている。 Bonnaud et al. (2011a) は、ノネコの食性に関する研究では、固有種の絶滅危惧種は稀であると説明している。 これは、これらの研究がこれらの種の生息域で実施されていないことと、ほとんどの研究が希少種の検出を目的として設計されていないためである。 また、ノネコの食性において、豊富ではない種がまれであることは明らかである。 奄美大島の場合、固有種の絶滅危惧哺乳類がノネコの主な捕食対象であったのは、これらの種の生息地で調査を行なったからだけでなく、マングース撲滅プロジェクトの結果、これらの種が思った以上に多く生息している可能性があるためである。 Fukasawa et al. (2013) および Watari et al. (2013) によると、固有種の絶滅危惧種は 2008年以降、数が回復しているそうである。

固有種の哺乳類であるケナガネズミやアマミノクロウサギは、クマネズミやトゲネズミに比べると比較的大型だが、ノネコの格好の獲物である。 したがって、これらはノネコの 1 日の必要量に十分な量の食物を提供する重要な餌種である。 アマミトゲネズミは小型であるが、大量に導入されているクマネズミよりも捕食されやすいため、頻繁に消費されていた。 DCB 寄与率は、出現頻度や総バイオマスよりも、ノネコの食性における各餌種の重要性を特定することができた。 なぜなら、DCB 寄与率は、餌の数や重量だけでなく、餌の重量に大きな差があり、日常消費における餌の組み合わせが多様であることを判断することができるからである。 総バイオマスの場合、餌の組み合わせの違いにより、重い種の寄与率が考慮されず、DCB の寄与率よりも過大評価される可能性がある。 たとえば、アマミノクロウサギの DCB の割合 (12%) はアマミノクロウサギの割合 (21.9%、表2) よりはるかに少ないが、アマミノクロウサギの総バイオマスの割合 (16.3%) はアマミノクロウサギの割合 (13.1%、表1) に比べ高い。 DCB 全体に占める割合の結果、ノネコは 4 つの主要な餌となる哺乳類にそれぞれ有意な悪影響を与える可能性があることが示された。 このように、奄美大島ではノネコを全く管理しない場合、せっかく回復した固有哺乳類の個体群が容易に絶滅に追い込まれる可能性がある。

ノネコによる捕食の影響とその評価

島嶼部のノネコは、島嶼部固有の哺乳類に最も大きな悪影響を与えており、この影響は侵略的な餌生物の存在によって悪化する (Medina et al. 2011)。 導入された豊富な餌が存在すると捕食者の個体数が増加するため、結果的に侵略的捕食者は希少な固有種にさらなる悪影響を及ぼすことになる (Courchamp et al. 1999, 2000)。 この説明は、たとえば奄美大島のクマネズミの場合にも当てはまる。 クマネズミは生息数が多く、広範囲に分布しているが、絶滅の危機に瀕している固有の哺乳類は、生息地が奄美群島の特定の狭い地域に限られている。 さらに、絶滅危惧種の固有哺乳類の繁殖率は低く (Hayashi and Suzuki 1977; Kaneko 2005; Yamada and Cervantes 2005)、たとえば、アマミノクロウサギは年に 1 回しか繁殖せず、その子数は概ね 1 匹である (Yamada and Cervantes 2005)。 したがって、野良猫が推定最大 DCB (548g) を食べた場合、1 日あたり最大でアマミノクロウサギ 1 匹、ケナガネズミ 1.1 匹、アマミトゲネズミ 5 匹、クマネズミ 3.1 匹が猫に捕食されると推定される。 これらの推定数は、たとえノネコが少数であっても、絶滅危惧種の固有哺乳類の個体群に深刻な悪影響を及ぼす可能性があることを示している。 私たちの研究により、絶滅危惧種の固有哺乳類が、奄美諸島のノネコにとって重要な餌種であることが明らかになった。 私たちの次のステップは、これらの固有の哺乳類の個体群に対するノネコの影響を評価することである。 ノネコの影響評価は、たとえば、Keitt et al. (2002)、Bonnaud et al. (2009, 2011b)、Mitchell and Beck (1992) など、他のいくつかの研究によって行われている。 捕食の影響に関する評価は、これまで数理モデルや直接観察によるものがほとんどであった。 直接観察の場合は、海鳥などの餌生物の生息地やコロニーなど、捕食活動が観察しやすい開けた場所が必要である。 奄美大島の固有哺乳類の生息地は主に森林地帯であり、これらの種は夜行性でコロニーを形成しないため、捕食の直接観察は非常に困難である。 数理モデルには、餌生物種の生活史、個体群動態、個体数や、捕食者種の個体数などの情報が必要である。 しかし、奄美大島の固有哺乳類のこれらのデータは、あまり知られていない。 奄美大島の絶滅危惧種の固有哺乳類のうち、アマミノクロウサギの個体数は推定されているが (Sugimura et al. 2003)、アマミトゲネズミとケナガネズミは不明である (表1)。 他の記録データには、動物園で飼育されているアマミノクロウサギの繁殖率が含まれる (Sakoh et al. 1991)。 このため、固有哺乳類、特にアマミトゲネズミとケナガネズミについては、さらなる研究が必要であると思われる。 最近、島のノネコの個体数がカメラトラップ法によって調査された。 そこで、今回の調査結果を用いて、奄美大島で 1 年間にノネコが殺した獲物種の数を算出することができる。 したがって、ノネコの影響を評価するためのデータを収集することが、次のステップとして重要である。 また、固有哺乳類の研究も、これらの種を理解して保護するために必要である。 今回の研究で、我々は島でのノネコの食性とその餌となる絶滅危惧種の哺乳類の数を初めて報告した。 その結果、絶滅危惧種の固有哺乳類に対するノネコの捕食の十分な証拠が示された。

島の固有種を守るためのノネコ対策

ノネコの管理方法のひとつに駆除があり、島では 83 のキャンペーンが実施されている (Campbell et al. 2011)。 ノネコの駆除に成功した島の多くは、5km2 以下の小さなサイズの島で、島内の人間の人口も少なかった (Nogales et al. 2004, 2013; Campbell et al. 2011)。 Nogales et al.(2013) の駆除可能基準によると、奄美大島は面積 720km2、複雑な地形、人口が 6 万 3 千人と多いこと、住民がノネコを受け入れるか無関心であることから、根絶はかなり困難であると思われる。 Nogales et al. (2004) が示唆するように、大きな島からノネコを根絶するためには、新しい技術が必要である。 ポール・クロ島では、2004年にネコの駆除キャンペーンが実施されたが、これは新たな駆除技術を導入したものではなく、小型のミズナギドリに対するノネコの捕食による強い脅威を排除するための新しい戦略が採用された (Bonnaud et al. 2010)。 この戦略は、ミズナギドリのコロニーの近くと、ネコの糞が見つかった場所で集中的に捕獲することだった (Bonnaud et al. 2010)。 ポール・クロ島 (6.4km2) は奄美大島よりはるかに小さいが、この制御戦略が適用できるかもしれない。 実際、日本の環境省では、年に一度、固有哺乳類の中核生息地で 1 ヶ月間のノネコ捕獲プロジェクトを実施している。 しかし、捕獲が固有哺乳類の核となる生息地をすべてカバーしていないこと、実施期間が短すぎることなどから、望ましい効果は得られていない。 Nogales et al. (2013) は、ノネコの個体数の制御は、種が一つの島に固有である場合に優先的に行うべきであると勧告している。 アマミトゲネズミは奄美大島にのみ生息しており、ノネコの主な餌種の一つである。

また、ノネコの駆除は、ネズミなどの外来雑食動物の影響が大きくなり、在来種に悪影響を及ぼす可能性がある (Rayner et al. 2007)。 したがって、Nogales et al. (2013) は、可能であれば、ノネコの根絶を複数種の根絶キャンペーンに組み込むべきであると推奨した。 クマネズミは、奄美大島では主に農地や住宅地の周辺に分布し (Fukasawa et al. 2013)、奄美大島の南 60km に位置し、動物相や植物相が似ている徳之島でも分布していると考えられる (Yabe and Wada 1983)。 Fukasawa et al. (2013) によると、外来種マングースの根絶キャンペーンの後、外来種のクマネズミが在来の齧歯類に及ぼす検出可能な影響は存在しなかったが、これはマングースの捕食の影響がクマネズミに対する固有種の齧歯類に対する影響よりもはるかに小さかったためである。 ネズミの個体数動態は、捕食者ではなく、資源の利用可能性や降雨量などの生息地の複雑さによって左右されると考えられる (Russell et al. 2011)。 したがって、奄美大島では、適応的な管理としてノネコ駆除キャンペーンを計画し、管理者はクマネズミの個体数の爆発的増加など、望ましくない結果の兆候に注意を払う必要がある。

ノネコはもともと繁殖力が強く、その子ネコは島の暖冬を乗り越えやすいかもしれない。 したがって、できるだけ多くの固有哺乳類の中核的生息地で、トラップなどによる駆除を年間を通じて定期的に実施し、絶滅の危機にある固有哺乳類の個体群を保護するためにノネコ禁止区域を設定する必要がある。 ノネコの駆除と同時に、これらの生息地の近くにいるネコの飼い主が、家の外でネコを放し飼いにしないような規制も必要である。 こうした実用的な管理戦略以外にも、外来種による固有哺乳類の捕食の影響や、駆除プログラムが生物多様性にもたらす恩恵に関する環境教育が必要である (Donlan and Keitt 1999)。 本研究で得られた野良猫による固有哺乳類への影響の証拠は、生態系や外来哺乳類捕食の問題が類似している沖縄本島のヤンバル地域や徳之島にも適用できることが予測される。 しかし、外来種の管理は遅れているため、これらの地域でもノネコの影響調査や早急な対策が必要である。

謝辞

このテーマを研究する機会を与えてくれた安倍晋太郎、タタラ マサヤに感謝する。 ネコの糞の採取に協力してくれた奄美野生生物保護センターの職員と奄美マングースバスターズのメンバーに感謝する。 また、糞便分析に協力してくれたカミクボ マリ、豊中高校生物部員、昆虫重量データを提供してくれたイシダ ヒカルに感謝する。 『Wildlife Research』への投稿を推薦してくれた Sugoto Roy に感謝する。 原稿に有益なコメントをいただいた2名の匿名の査読者に感謝する。

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脚注 (訳注)


  1. (訳注) 「feral cats」は、鳥獣保護法では「ノネコ」と呼ばれている。詳細は、ノネコ を参照。 ↩︎

  2. (訳注) 「feral dogs」は、鳥獣保護法では「ノイヌ」と呼ばれている。詳細は、ノイヌ を参照。 ↩︎

  3. (訳注) IUCN レッドリストカテゴリー https://www.iucnredlist.org/ja、日本レッドリスト https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/ ↩︎

  4. 絶滅危惧種でないため、日本のレッドリストには掲載されていない ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  5. アマミノクロウサギの体重として、ノネコの 1 日当たりの最大消費生物量を使用 (詳細は「材料と方法」を参照) ↩︎

  6. 識別不能 ↩︎ ↩︎

  7. 推定 ↩︎

2.3 - Identification of the population source of free-ranging cats threatening endemic species on Tokunoshima Island, Japan

論文 “Identification of the population source of free-ranging cats threatening endemic species on Tokunoshima Island, Japan” の日本語訳です。

原題: “Identification of the population source of free-ranging cats threatening endemic species on Tokunoshima Island, Japan” 著者: 風戸 一亮 [1] [2], 亘 悠哉 [3], 宮下 直 [1]

Published online: 25 August 2020

Mammal Research 65, 719–727 (2020)

Springer Link

DOI: https://doi.org/10.1007/s13364-020-00528-5

[1]: 東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物多様性科学研究室、東京都文京区弥生1-1-1、〒113-8657、日本
[2]: 現住所: 日本工営株式会社、東京都千代田区麹町5丁目4番地、〒102-8539、日本
[3]: 森林総合研究所、茨城県つくば市松の里1、〒305-8687、日本


概要

放し飼いのネコ Felis silvestris catus は、特に島嶼部の固有種に害を及ぼしている。 効果的な管理方法には、景観レベルでの彼らの生息地利用と個体数の源泉を理解することが必要である。 私たちは、人間の居住地だけでなくさまざまな固有生物が生息する日本の徳之島で放し飼いにされているネコの個体数の起源を特定することを目的とした。 自治体から全島の捕獲データを提供され、ネコ密度に影響を与える景観要因 (住宅地、農地、林地、牛舎密度) を調査した。 生体捕獲データの分析によると、放し飼いのネコの密度 (1 km2 あたり) は牛舎や森林地帯の密度と正の相関があり、住宅地と負の相関があることがわかった。 聞き取り調査の結果、半数近くの牛舎で放し飼いのネコを飼っていることが判明した。 放し飼いのネコの発生源の生息地は、人間が支配する風景の中で牛舎が密集し、森林の割合が高い地域であると思われる。 牛舎でネコに餌をやることで、島の個体数増加のボトムアッププロセスが強化される可能性がある。 徳之島の固有種に対するネコの影響を軽減するためには、牛舎でのネコの餌付けをやめる取り組みが重要である。 関係者との合意形成のためには、放し飼いのネコがもたらす生態学的リスクについて、さらなる研究が必要である。

キーワード

Felis silvestris catus, Habitat selection, Invasive species management, Hyper-predation

はじめに

侵略的外来種は、地球規模の生物多様性損失の主な原因となっている。 特に、外来哺乳類は世界中の種の絶滅の 58% の原因となっている (Doherty et al. 2016)。 生物多様性の保全のために、侵略的捕食者の管理が緊急に求められている (Butchart et al. 2010; Mack et al. 2000; McGeoch et al. 2010; Doherty et al. 2017)。

放し飼いのイエネコ Felis silvestris catus (屋外の飼いネコ、ノラネコ、ノネコを含む、Spotte 2014 参照) は最も成功した侵略種の一つで、世界中で定着し、島から大陸までの地域で在来種に有害な影響をもたらしている (Bonnaud et al. 2011; Medina et al. 2011; Nogales et al. 2013; Courchamp et al. 2003; Woinarski et al. 2017; Woolley et al. 2019; Kays et al. 2020)。 特に、歴史的に捕食性哺乳類が存在しなかった島では、ネコによる在来種に対する捕食の影響は深刻で (Bonnaud et al. 2011; Medina et al. 2011; Nogales et al. 2013; Courchamp et al. 2003)、少なくとも 63 の脊椎動物分類群の絶滅に貢献している (Loss and Marra 2017)。 放し飼いのネコに関するその他の問題としては、トキソプラズマ症やトキソカリア症などの感染症の伝播 (Deplazes et al. 2011; Macpherson 2013; Gerhold and Jessup 2013; Lepczyk et al. 2020; Wilson et al. 2020) やヤマネコ (Felis silvestris) との交配 (Pierpaoli et al. 2003) がある。

放し飼いのネコの影響を減らすために、主にヨーロッパ、アメリカ、オセアニアで管理戦略が実施されており、毒餌の使用、射撃、罠、TNR (捕獲、去勢、リターン)、フェンスなどがある (Campbell et al. 2011; Courchamp et al. 2003; Foley et al. 2005; Ringma et al. 2019)。 日本では、小笠原諸島、奄美諸島、沖縄本島、西表島、天売島など、ネコによる固有種の影響がある島では、捕獲や TNR が主なアプローチとなっている (Nagamine 2011; Kagoshima Environmental Studies Program 2019)。 日本列島の一部の自治体では近年、ネコの飼育に関するガイドラインや餌やりの制限を定めているが (Kagoshima Environmental Studies Program 2019)、多くの国で報告されているように、地域住民や保護団体がこれらのガイドラインやネコの管理に反対することが多い (Lilith et al. 2006; Oppel et al. 2011; Marra and Santella 2016)。

ネコの個体群を管理するためには、一般に、生息地と対象個体群を制限する要因に関する情報が必要である (Moseby et al. 2009)。 放し飼いのネコは、人間があまり近づかない自然地域を除き、人間による餌やりやゴミなどの人為的資源に依存することが多い (Doherty et al. 2014; Pillay et al. 2018; Kays and Dewan 2004)。 しかし、ほとんどの研究は、個体数の少ない比較的狭い地域での生息地利用に焦点を当てているため、広い空間スケールでの個体群源についてはほとんど知られていない (ただし、Flockhart et al 2016 参照)。 したがって、ネコ個体群の個体数や重要な資源を特定することで、TNR などの一時的な処置に代わる、ネコへの餌やりの禁止やネコの室内飼育など、より効果的な管理方法を確立できる可能性がある (Trouwborst et al. 2020)。

徳之島は、日本南西部の琉球列島に位置する。 多くの固有種や亜種は、在来の哺乳類の捕食者がいないこの地で進化した (Maeda et al. 2019)。 この島は、生物多様性保全上、非常に重要な地域であり、世界自然遺産に推薦されている (環境省 2018)。 しかし、放し飼いのネコによる固有種の捕食が深刻な問題になっている。 例えば、この島で放し飼いにされていたネコの餌には、絶滅危惧種のアマミノクロウサギ Pentalagus furnessi (IUCN レッドリストカテゴリー: EN)、ケナガネズミ Diplothrix legata (EN)、トクノシマトゲネズミ Tokudaia tokunoshimensis (EN)、亜種アカヒゲ Erithacus komadori Komadori (VU)、アマミハナサキガエル Odorrana amamiensis (VU) などがあった (Maeda et al. 2019)。

その結果、2014年からは固有動物相の保全を目的としたネコの管理が行われている。 放し飼いのネコ (つまり、屋外で飼われているネコ、ノラネコ、ノネコなど。たとえば、Spotte 2014) を見た目から区別するのは難しいため、徳之島の管理プログラムでは捕獲場所に応じて放し飼いのネコを分類している。 人間が支配する風景の中で捕獲されたネコは、森に入ったり固有種を捕食したりしないことが暗黙の想定となっているため、便宜上「ノラネコ (stray cats)」と識別され、避妊手術 (TNR) 後に野生に戻される。 森林の風景で捕獲されたネコは便宜的に「ノネコ (feral cats)」として識別され、不妊手術後に保護施設に保管され、場合によっては新しい飼い主に譲渡されることもある。 しかし、最近の研究では、動物の長期的な食習慣を表す安定同位体分析によって明らかになったように、森林で絶滅危惧種を捕食する「ノネコ (feral cats)」は主にキャットフードに依存していることが明らかになった (Maeda et al. 2019)。 また、「ノラネコ」 (18.6%) と「ノネコ」 (14.6%) の TNR 個体の再捕獲率は同程度だった (Maeda et al. 2019)。 これらの結果から、この島における放し飼いネコの便宜上の分類はほとんど意味がなく、「ノラネコ」と「ノネコ」ともに固有種へのリスクがあることを示している。 さらに、放し飼いのネコ科動物の個体群の発生源は人間の住む地域にある可能性が高く、ネコ科動物はそこから森林地帯に頻繁に移動し、その結果、固有の絶滅危惧種に対する人間主導のハイパープレデーション (hyper-predation) が引き起こされる。 そのため、人間によるネコの供給源の補助をコントロールしない限り、放し飼いのネコを排除することは難しいかもしれない。 このような状況において、「ノラネコ」と「ノネコ」の区別にとどまらず、放し飼いのネコの個体数を把握することは、地域住民との合意形成を図り、この島における侵略的外来ネコの問題を解決するために不可欠なアプローチであると考えられる。

本研究では、放し飼いネコの分布を決定する要因を検討することで、人間が支配する景観における放し飼いネコの個体数の発生源を特定することを目的とした。 その評価として、地方自治体から提供された放し飼いネコの広域捕獲データと土地利用データを組み合わせて、重回帰分析を行った。 次に、重回帰分析の結果、徳之島で放し飼いのネコを飼育している可能性が高いのは牛舎であったため、牛舎の所有者にインタビュー調査を行い、放し飼いのネコへの給餌の程度を明らかにした。

方法

調査対象地域

徳之島 (北緯27度45分、東経128度58分) は、日本南西部の琉球列島に位置し (図1a)、徳之島、天城、伊仙の 3 つの町に分かれている。 島の面積は 248 km2、人口は約 24,000 人 (Kagoshima Prefecture 2019) である。 徳之島は亜熱帯地域にあり、降水量が多い (平均気温 21.6℃、年平均降水量 1912mm) (Kagoshima Prefecture 2019)。 徳之島は総人口の約 3 割を第一次産業従事者が占めている (Kagoshima Prefecture 2019)。 農地は総面積の 27.8% を占め、そのほとんどがジャガイモやサトウキビの栽培に使われている (Kagoshima Prefecture 2019)。 温暖な気候を生かし、畜産も盛んである。 農業生産額の約 34 %が子牛の生産であり、島内には約 1000 戸の畜産農家がいる (Agriculture and Livestock Industry Promotion Organization 2019)。 ポルトガルでの報告 (Ferreira et al. 2011) と同様に、徳之島でも牛舎でネコが頻繁に観察された。 森林面積は島の 42.5% を占め、スダジイ Castanopsis sieboldii や オキナワウラジロガシ Quercus miyagii などの常緑のオークが主体となっている (Kagoshima Prefecture 2019)。 徳之島は、約 200 万年前にユーラシア大陸から分離した島で、多くの固有種が生息している (Ota 1998)。 さらに、沖縄島産ハブ Protobothrops flavoviridis などの毒ヘビは、年間約 30 件のヒトの咬傷を占めており (Kagoshima Prefecture 2018)、地域住民の大きな関心事となっている。

3 つの自治体と環境省は、固有種の保全のため、2014 年から放し飼いのネコの捕獲を開始した。 「ノラネコ」 (住宅地や農地、住宅地や農地に残る雑木林など、人間が支配する景観で捕獲されたネコ) を不妊手術 (TNR) 後に野生に戻し、不妊手術を受けた個体を識別するために耳先カットを地元の徳之島自治体が行っている。 「ノネコ」 (森林景観で捕獲されたネコ) は、不妊手術後、新しい飼い主への譲渡の可能性を考慮してシェルターで飼育されている。 2014 年から 2017 年の間に、TNR 作戦によって 2612 匹の「ノラネコ」がリリースされ、235 匹の「ノネコ」が取り除かれた (Maeda et al. 2019)。

図1.

図1

a 徳之島の空間的土地利用図。 b 全島の 1km メッシュスケールで、捕獲努力によって調整された捕獲個体数 (CPUE: 捕獲数/捕獲日数) の空間分布

トラップ捕獲データ

金属製の捕獲器 (トラップ) による「ノラネコ (stray cats)」の捕獲データは、徳之島の 3 つの地方自治体から提供された。 前述および Maeda et al. (2019) で説明したように、「ノラネコ (stray cats)」はすべて人間が支配する風景で捕獲された。 2018 年 4 月から 2019 年 8 月までのトラップ設置場所と稼働日の記録を掲載している。 データが入手可能な場所では、島全体の 1 km メッシュで捕獲された成ネコの数と捕獲日数 (TD) が取得された。 重複カウントを避けるため、過去に捕獲してマーキングしたネコ (耳の先端をカットした個体) は除外し、初めて捕獲した成ネコのみを対象とした。 捕獲された個体数をトラップ作業日数で調整したもの (単位努力あたりの捕獲数: CPUE と呼ぶ) を密度指標として解析に使用した。

土地利用と空間変数

放し飼いのネコの分布に影響を与える景観構造を明らかにするため、1km メッシュごとに住宅地、農地、林地の割合と牛舎の数を算出した。 土地被覆データは国土地理院の Web サイトから取得し、上記の面積割合は ArcGIS 10.6 (ESRI Japan) を使用して計算した。 ここでいう雑木林とは、人間が支配する景観の中で断片的に残された常緑広葉樹や松が生い茂る地域を指す。 土地被覆データは主成分分析 (PCA) の最初の 2 つの軸によって要約され、各メッシュの主成分スコアが計算された。 牛舎の位置は、南大島農業共済から提供された位置を一部変更したものである。 変数の空間的自己相関は、メッシュスケールよりも大きな空間効果の可能性を考慮して計算された。 Moran の固有ベクトルマップ (MEM) は、2 次元空間座標に基づいて構築された (Legendre and Legendre 2012)。 空間構造を表す 5 つの MEM 軸 (MEM1 ~ MEM5) はドロネー三角測量法 (Delaunay triangulation method) を使用して抽出され、R パッケージ「adespatial」を使用して各メッシュの MEM スコアが計算された。

統計解析

自治体から提供された捕獲データの解析には、TD 数 10 以上のメッシュを使用した。 負の二項分布による一般化線形モデル (GLM) を用いて、放し飼いのネコの密度と土地利用の関係を調査した。 応答変数は捕獲されたネコの数、説明変数は PC1、PC2、牛舎密度、MEM1 ~ MEM5 で、各メッシュでの TD を説明するオフセット項 (Faraway 2006) を使用した。 オフセット項は、捕獲努力による捕獲個体数 (CPUE) を標準化することを可能にする。 最高のパフォーマンスを持つモデルは、マルチモデル推論アプローチを使用して選択された。 R パッケージに実装されている「MuMIn」は、グローバルモデルに基づいてモデルのすべてのサブセットを生成するために使用され、これらは赤池情報量基準 (AIC) に基づいてランク付けされた。 モデルの平均化を使用して、ΔAIC < 2 のすべてのモデルの平均パラメータ推定値を生成した。

インタビュー調査

全島の畜産農家を対象にヒアリング調査を行い、牛舎内のネコにどの程度餌を与えているかを評価した。 アンケート用紙の送付では回答率が低くなることが予想されたため、アンケート用紙の配布ではなく、対面インタビューを採用した。 獣医師が牛の定期診断のために農家を訪問する機会を利用して、可能な限りインタビューを実施した。 放し飼いのネコを飼っているかどうか、飼っている場合は何匹くらい飼っているのか、といった質問も行った。 また、牛舎規模の代用として飼育頭数も取得した。 給餌されたネコの数と繁殖牛の関係は、ピアソンの相関係数 (r) を使用して検定された。

結果

人間が支配する景観における放し飼いネコの分布状況

2018 年 4 月から 2019 年 8 月まで 1km メッシュ 97 個で捕獲記録を取得し、このうち捕獲努力量が 10TD を超える 69 メッシュを今回の解析に使用した。 これらのメッシュでは、6086 日間の捕獲日数で合計 462 匹のネコ (再捕獲された個体を除く) が捕獲された。 平均して、捕獲されたネコの数と捕獲日数はメッシュあたりそれぞれ 6.7 匹と 88.2 TD であり、平均 CPUE (ネコ/TD) は 0.08 で、範囲は 0〜1.0 だった (図1b)。 捕獲したネコの数、TD、再捕獲したネコの数の空間分布を補足資料 1 に示す。

土地被覆データの PCA では、第 1 軸 (PC1) と第 2 軸 (PC2) の組み合わせで分散全体の 95% が説明されることが示された。 住宅地の変数は PC1 にプラスの負荷をかけるが、林地エリアにはマイナスの負荷をかける (図2a)。 農業地域は PC2 にマイナスの負荷をかけている (図2b)。 PC1、PC2 の空間分布を補足資料 2 に示す。 牛舎密度とこれらの主成分スコアの関係の相関係数は小さく (PC1: r = 0.363, PC2: r = -0.389)、深刻な共線性の問題はないことが示された。

GLM のモデル平均化により、捕獲作業あたりのネコの捕獲数は、牛舎密度と正の相関があり (図3、図4)、PC1、MEM1、MEM3 とは負の相関があることがわかった (図3)。 これは、人間が支配する風景の中で、牛舎や森林が多いところでは放し飼いのネコの密度が高く、住宅地が多いところでは低いことを示している。 MEM1 との有意な相関は、北西部よりも南西部で放し飼いのネコが多いことを示す (図5)。 同様に、MEM3 の効果は、北西部におけるさらなる空間構造の存在を示している (図5)。 TNR の実施と上記の環境変数 (牛舎密度:r = - 0.101, PC1:r = 0.163, MEM1:r = - 0.234, MEM3:r = - 0.038) には相関が見られなかったため、ネコ密度の空間変動は TNR による減少では説明できないことがわかった。

図2.

図2

景観変数の主成分分析で得られた PC1 (a)、PC2 (b) の景観要素の因子負荷量

図3.

図3

GLM (一般化線形モデル) のモデル平均化により求めた、ネコの CPUE (単位捕獲努力量あたりの捕獲量) を説明する変数の係数である。 数値は平均値 ±95% CI (信頼区間) である。 MEM は島内のモランの固有ベクトルマップ、PC は主成分分析 (PCA) における最初の2軸を表し、土地被覆データを要約したものである。

図4.

図4

1km メッシュスケールでの牛舎密度と CPUE (単位捕獲労力あたりのネコの捕獲数) の関係。 灰色の部分は、単純回帰直線の 95% 信頼区間を表す。

図5.

図5

島におけるモランの固有ベクトルマップ (MEM) の第 1 軸と第 2 軸のスコアの空間分布。 大きな四角は MEM のスコアが高いことを、白い四角と黒い四角はそれぞれプラスとマイナスのスコアを表す。

インタビュー調査

訪問した130軒の牛舎のうち、71軒の農家がインタビュー調査に答えてくれた。 調査した牧場の約 45% (32/71) が放し飼いのネコを飼っており、これらの牧場は島内に点在していた (補足資料3)。 ネコの給餌数と牛舎の大きさとの間には関係がなかった (r = 0.09, t = 0.65, df = 48, p = 0.52)。

ディスカッション

徳之島における放し飼いネコの分布について、以下の 2 つの大きな知見を得ることができた。 (1) 人里離れた土地における放し飼いネコの密度は、牛舎密度や森林面積の増加とともに増加する。 (2) 牛舎では、放し飼いのネコに頻繁に餌が与えられている。 これらの結果は、人間による餌付けが、徳之島における放し飼いネコの大規模な個体群の確立に大きく寄与した可能性を示唆している。 放し飼いのネコは、固有哺乳類を採食する一方で、人間が補助する餌に依存することが知られているため (Maeda et al. 2019)、人間が支配する景観で放し飼いのネコが増加すると、森林地帯に放し飼いのネコが流出し、固有種に影響を与える可能性がある。 このプロセスを、導入された餌のボトムアップ効果によって導入された捕食者の生息数が増加し、それによって在来の餌に対する捕食圧が高まるハイパープレデーションにちなみ、「人間主導のハイパープレデーション」と名付けた (Courchamp et al. 2000).

放し飼いネコの個体の源泉

人間が支配する景観の広域捕獲データを用いて、ネコの密度と牛舎の間に正の関係を検出した。 いくつかの研究で、放し飼いのネコが牛舎で頻繁に観察されることが報告されている (Ferreira et al. 2011; Horn et al. 2011) が、集団レベルでの分析はほとんど行われていない。 牛舎におけるネコの増加については、以下のような、いくつかのメカニズムが提案されている。 (1) 人による餌付け (Barratt 1997; Ferreira et al. 2011; Piquet et al. 2019)、および (2) 牛の餌を食べに集まる外来種のクマネズミ (Rattus rattus) や受動的な鳥など、自然の餌の利用率が高く、水が利用できること (Rosario et al. 2015; Leirs et al. 2004)。 インタビュー調査の結果、調査した牛舎の 45% で放し飼いのネコが餌付けされていることが判明した。 したがって、人によるネコへの餌付けが、この島で放し飼いネコの個体の源泉を作る主な要因になっていると思われる。

また、森林面積が多く住宅面積が少ない地域では、放し飼いネコが多く生息していることがわかった。 これは、集落からの食料資源が豊富な住宅地には放し飼いのネコが多いという知見 (Doherty et al. 2014; Morin et al. 2018) に反するものである (Tennent and Downs 2008; Vincent et al. 2018)。 しかし、徳之島では農村部でゴミ収集日 (週2回) が定められており、ゴミは屋外に出され、同日午前中に収集業者が回収するため、ネコの餌の入手は限られている。 また、人間による餌付けで資源が十分に確保されたため、トラップによる捕獲効率が低下したという説明もある。 しかし、人間による給餌が一般的であり、牛舎の密度が高い地域では CPUE が高かったため、この可能性は低いと思われる。 住宅地に残る森林地帯 (PC1) のポジティブな効果は、休息場所や節足動物や移入ネズミなどの自然食料資源を利用できることに起因すると考えられる。

特に、ネコの密度と MEM1 の負の相関は、1km メッシュのスケールよりもはるかに大きな空間パターンを示している。 MEM1 は、北西から南西に向かって放し飼いネコが増える密度勾配を示している。 この傾向の理由は明らかではないが、より小さなスケールで重要な要因が、景観要素の空間的なまとまりによって、より広い勾配にスケールアップしているのかもしれない。 北西部と南西部では、納屋密度に明確な差はないが、景観構造は異なるようだ。 北西部では、人間が支配する景観の中で、小さな森林地帯を持つ住宅地が多いが、南西部では逆の傾向が見られ、それが密度勾配を生んだと考えられる。

管理への含意と今後の課題

徳之島は世界自然遺産に推薦されており、外来種の管理はその重要な要件となっている (環境省 2018)。 この島のネコ問題は、社会システムと生態系システムのユニークで複雑な相互作用と密接に関係している。 この50年間、畜産業は盛んだった。 さらに、農家の方々は、ネコが毒蛇の主な獲物でもある外来ネズミの個体数を抑制することで、毒蛇の数を減らしていると考えているようだ (調査時に教えていただいた)。 これにより、島全体で放し飼いにされるネコの個体数が増加し、森林の固有種が脅かされているようだ。

近年、徳之島では「ノネコ (feral cats)」の管理が進み、固有種が徐々に増加する一方、森林地帯で観察されるネコは減少している (Sawanobori 2019)。 しかし、人間が支配する地域からネコが侵入し続けていることを考えると、人間が供給する資源によって放し飼いのネコを支えるボトムアップの効果を抑制しない限り、固有種の個体数を維持することは困難と思われる (Maeda et al. 2019)。 今回の結果から、牛舎でのネコへの給餌をやめることは重要だが、ネコに給餌する人たちとのコンセンサスを得るためには、さらなる検討が必要であることがわかった。 たとえば、放し飼いのネコが家畜と人間の両方に感染させる人獣共通感染症のリスクを定量化する必要がある (Tenter et al. 2000)。 また、放し飼いのネコが実際に移入ネズミの個体数の減少に寄与し、毒蛇の数を減らしているかどうかも明らかにする必要がある。 また、放し飼いのネコに頼らないネズミ駆除の代替法も検討する必要がある。 毒餌は、非標的種への影響が少なく、一般的に信頼性の高い方法として広く用いられているが (Capizzi et al. 2014; Brown et al. 2006)、森林の固有種であるトクノシマトゲネズミへの影響については慎重に評価する必要がある。 また、ネコに餌を与える背景について、より体系的かつ定量的なアンケートを実施し、どのような情報 (たとえば、ネコの生態系への影響、人獣共通感染症のリスク、生物制御剤としてのネコの貢献度など) がネコに餌を与える人々の行動を変えるのに効果的かを検討する必要があります。 徳之島では、森林景観は放し飼いのネコの主な生息地ではない。 しかし、人間が支配する景観 (特に牛舎) が森林景観に近い地域 (つまり、両方がネコの生息域に含まれる地域) では、ネコが両方の景観を自由に行き来できるため、固有種に影響を与える可能性がある。 実際、GPS 首輪を用いた事前調査では、人間が支配する景観で捕獲されたネコの最大移動距離の範囲は 0.5~12km で、その期間内に半数が森林地帯に入ることがわかった (Kazato et al. unpublished data)。 島の北部では、人間の住む風景と森林の風景が比較的近く、人間の住む風景から森林の風景への波及が頻繁に起こる可能性がある。 このような地域では、ネコの管理を強く優先させる必要がある。

本研究の結果は、牛舎で放し飼いのネコに餌を与えることが、放し飼いのネコにとって重要な支援となり、その集団にボトムアップ効果を誘導していることを示唆している。 個体の年齢や繁殖情報を含む捕獲データを追加することで、放し飼いのネコの個体数パラメータを推定することができ、ネコの繁殖や生存に対する牛舎の役割を定量的に評価し、放し飼いのネコを減らすための有効な捕獲プログラムを開発する根拠となる。

謝辞

この研究の初期段階での協力者である T. Maeda、Qi Huiyuan に感謝する。 R. Sawanobori、NPO法人徳之島虹の会、徳之島猫管理協議会の皆様には、訪問時に大変お世話になり、心より感謝申し上げる。 また、アテンドにご協力いただいた K. Kimura にも感謝する。

著者の貢献

Y. Watari と T. Miyashita がコンセプトデザインを行い、Y. Watari がプロジェクト運営を担当した。 K. Kazato は現地調査と分析を実施した。 K. Kazato、Y. Watari、T. Miyashita が結果を解釈した。 K. Kazato が原稿を作成し、Y. Watari と T. Miyashita による批判的な修正を加えた。 すべての著者が最終版を承認した。

資金調達情報

本研究は、独立行政法人 環境再生保全機構の環境研究・技術開発基金 (JPMEERF20184004) および日本学術振興会 科研費番号 JP 1K19868 の助成を受けて実施したものである。

倫理基準の遵守

利益相反行為について

著者らは、利益相反がないことを宣言する。

Ethics approval

亘 悠哉は、一般社団法人リサーチ・インテグリティ推進協会が認定する「被験者研究倫理講座」を修了した (修了報告書番号: AP0000017354)。

参加への同意について

適用外。

掲載の同意について

適用外。

オープンアクセス

この記事はクリエイティブ コモンズ表示 4.0 国際ライセンスに基づいてライセンスされており、元の著者と出典に適切なクレジットを表示する限り、あらゆる媒体または形式での使用、共有、翻案、配布、複製が許可される。 クリエイティブ コモンズ ライセンスへのリンクを付け、変更が加えられたかどうかを示す。 この記事に掲載されている画像やその他の第三者の素材は、素材へのクレジット表示で特に示されていない限り、記事のクリエイティブコモンズ ライセンスに含まれている。 素材が記事のクリエイティブコモンズ ライセンスに含まれておらず、意図した使用が法的規制で許可されていない場合、または許可されている使用を超えている場合は、著作権所有者から直接許可を得る必要がある。 このライセンスのコピーを表示するには、http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ にアクセスしてください。

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2.4 - A single introduction of wild rabbits triggered the biological invasion of Australia

論文 “A single introduction of wild rabbits triggered the biological invasion of Australia” の日本語訳です。

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2122734119

Joel M. Alves https://orcid.org/0000-0001-6138-9134 joel.alves@arch.ox.ac.uk, Miguel Carneiro https://orcid.org/0000-0001-9882-7775, Jonathan P. Day, +6, and Francis M. Jiggins https://orcid.org/0000-0001-7470-8157 fmj1001@cam.ac.ukAuthors Info & Affiliations Edited by Daniel Simberloff, University of Tennessee at Knoxville, Knoxville, TN; received December 28, 2021; accepted May 31, 2022

August 22, 2022

119 (35) e2122734119

https://doi.org/10.1073/pnas.2122734119

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野ウサギの一度の持ち込みがオーストラリアの生物学的侵略の引き金となった

意義

生物学的侵略は世界的な脅威であり、その成功を促進する要因を理解することは、緩和策を開発する上で極めて重要である。 生物学的侵略の成功には、侵略種や環境の特性が関係しているが、遺伝学の役割を実証することはより困難であった。 私たちは、ゲノムデータと歴史的データを組み合わせて、最も象徴的な生物学的侵略の 1 つが、オーストラリアにたった 1 度導入されたウサギによって引き起こされたことを示し、このつながりを明らかにした。 ウサギは、野生の祖先のために自然環境によりよく適応した可能性がある。 この系統が到着する以前には、多くの導入個体が拡散しなかったことから、導入個体の遺伝的組成が侵略の成功を決定する上で重要な役割を果たしたと考えられる。

概要

生物学的侵入は、環境と経済の混乱の主な原因となっている。 生態学的な要因が彼らの成功の重要な決定要因である一方で、遺伝学の役割を実証することはより困難である。 ヨーロッパウサギによるオーストラリアの植民地化は、記録された歴史の中で最も象徴的で壊滅的な生物学的侵略の一つである。 ここでは、70年の間に何度も導入されたにもかかわらず、この侵略は数匹の動物が一度に放たれたことが引き金となり、大陸を数千キロメートルにわたって拡散したことを示すものである。 その結果、1859年にトーマス・オースティンという入植者が輸入したイギリスウサギであるという歴史的証言の遺伝的裏付けが得られ、侵略的集団の起源を彼の出身地であるイギリスにさかのぼることができた。 また、地域的な個体群を確立したものの、地理的に広がっていない追加導入の証拠も見つかっている。 ゲノムと歴史的データを組み合わせることで、家畜を主成分とする初期の導入とは異なり、侵入したウサギは野生の祖先を持つことがわかった。 ニュージーランドやタスマニアでも、導入から数十年後にウサギが害獣になった。 これらの侵略に共通するのは、自然環境に適応した新しい遺伝子型の登場であったということである。 これらの発見は、侵入した個体の遺伝的構成がいかに導入の成功を左右するかを示し、生物学的侵入に複数の導入が必要となるメカニズムを提供するものである。


生物は、その生息域を越えて拡散すると、局所的な個体群を形成するか、生き残れないことが多い。 しかし、時には外来種が増殖し、順応性の高い在来種を駆逐してしまうこともある。 生物学的侵略と呼ばれるこれらの現象は、環境 (1) や経済を混乱させる大きな原因となっており、過去50年間に全世界で1兆2880億米ドルのコストがかかったと推定されている (2)。 人間活動や気候変動により、生物種が生息域外に移動する割合が増え、国際化が進む世界では、生物侵入のリスクはかつてないほど高まっている。 このような壊滅的かつ不可逆的な影響から、生物学的侵略につながる導入とそうでないものがある理由が注目されている (3, 4)。

生物学的侵略には生態学的要因が重要で、ある種は侵略に成功し、ある種の環境は侵略に弱いという性質がある (5)。 また、侵入した個体群の遺伝学が、これらのプロセスの結果に重要な役割を果たすことが示されている (6)。 さらに近年では、集団の絶滅につながる確率的なプロセスを克服するために、「散布体の導入圧 (propagule pressure)」 (導入回数と導入個体数) が重要な役割を果たすことがわかってきた(3, 4)。 しかし、「散布体の導入圧」によって、導入された集団の遺伝的構成が変化することで、定着しているが局地的な集団が侵略的になる可能性も指摘されている (4)。 このメカニズムは、より大きな遺伝的変異を導入することで、近親交配の抑制が軽減されるか、自然淘汰が作用して集団を新しい環境に適応させるための遺伝的変異を提供することができる (34)。 また、「散布体の導入圧」が高いと、侵襲的な適応遺伝子型が導入される確率が高くなることもある (47)。

生物学的侵略における遺伝的要因の役割を理解するために、遺伝データと歴史的記録を組み合わせて、歴史上最も象徴的で、徹底的に記録された生物学的侵略の1つであるウサギのオーストラリアへの植民地化を調査した。 ヨーロッパウサギ (Oryctolagus cuniculus) は、その存在のほとんどをイベリア半島と南フランスに限定していた (8, 9)。 中世には、ウサギは人間によって広範囲に移入され、今日では、ウサギは複数の大陸にまたがり、世界中に広がる数百の島々に存在する、最も広範な哺乳類の一つである(1011)。 本来の生息域ではキーストーン種であるにもかかわらず (12)、ほとんどの導入地ではウサギは害獣とみなされ、農業への被害、生息地の劣化、在来種の絶滅の原因となっている (13)。 紀元前30年頃、バレアレス諸島でウサギが大発生し、住民がローマ皇帝に助けを求めたと Strabo (Geographica, III, v) に記されているように、この侵略的な潜在能力は人類の歴史を通じて記録されている。 1500年前、ポルトガルの歴史家ジョアン・デ・バロス (João de Barros, 1496-1570) は、15世紀にマデイラ島のポルト・サント島にあった集落が、一匹の妊娠した雌ウサギから発生したウサギの蔓延のために放棄せざるを得なかったことを記している (14)。 ウサギによる生物学的侵略の中でも、オーストラリアへの影響は最も大きく、農家はウサギに覆われた土地を放棄し、農業分野全体を混乱させた (15, 16)。 個体数抑制の努力にもかかわらず、ウサギはオーストラリアにおける主要な外来種の一つであり、在来の動植物に影響を与え(17)、農業界だけで年間2億ドル、ノブタの22倍 (18) のコストを負担していると推定されている。

種が導入されてから侵略的になるまでにタイムラグがあることはよく観察されることだが (19)、このよくわからない現象は、オーストラリアのウサギで明確に示された。 ウサギがオーストラリア本土に初めて導入されたのは、1788年に第一艦隊でシドニーに運ばれた5匹のイエウサギ (カイウサギ) が、入植家畜の記録 (20) に記載されているためである。 それから数十年後、シドニー周辺の家では、ウサギが普通に飼われていた (21)。 最初の輸入から数年間は、ウサギの移動が頻繁に行われ、ウサギの群れが全国で報告された (22)。 1870年には、海岸沿いの主要な集落でウサギが広く飼われるようになった (22)。 これらの個体群は家畜由来とされることが多かったが、これは野生のウサギが家畜に比べて入手しにくく、輸送や繁殖、管理に適していなかったためと思われる (20)。 これらの個体群は、人なつっこい、派手な毛色、垂れ下がった耳など、通常野生のウサギにはない形質が報告されていることから、家畜由来であることが裏付けられる(20-22)。 オーストラリア全土にウサギが生息しているにもかかわらず、その個体群の大部分は野生に定着しなかったか、その地域の範囲を超えて広がることはなかった (21, 22)。 しかし、19世紀後半になるとウサギの個体数が飛躍的に増え、全国に広がっていった (21)。 年間 100 km の速度で、イベリア半島でウサギが自生地の13倍の面積をカバーするのに50年かかり、これは外来哺乳類としては史上最速の植民地化速度であった (21)。 20世紀初頭には、ウサギはオーストラリアの風景で目立つ存在となり、「灰色の毛布」が大地を覆っていると表現されるようになった (15)。

19世紀後半にオーストラリア本土で観察された個体数の増加は、ニュージーランドやタスマニアでも再現された。 いずれの場所でも、1800年代前半にはウサギが普通に取引されており、地域的な個体群は存在したものの、広まることなく侵略的なものになってしまった (11, 22)。 これらの初期の導入は、家畜からのものであった可能性が高く、イエウサギ (domestic rabbits) の導入が明示されている記録もあり (15)、1856年にニュージーランドでロップイヤーウサギなどの特定の品種が導入されたこともある (2023)。 しかし、1860年代に入るとウサギの数が急激に増え始め、最終的には両地とも害獣駆除が必要なほど厄介な存在となった (1122)。

歴史的な文献では、ウサギが局地的な種であったのが侵略的な種に変化したのは、しばしば1つの導入によるものだとされている。 オーストラリア本土の領地で狩猟用のウサギを飼おうとしたイギリス人入植者トーマス・オースティンは、イギリスの家族にウサギを送るよう要請した (2024)。 1859年10月6日、トーマスの弟ジェームスは、イングランド南東部バルトンズボローの家屋敷周辺で捕獲した家畜と野生のウサギを船 Lightning 号で送った (20, 24)。 同年のクリスマスに、24 匹のウサギを乗せた貨物はメルボルンに到着した (2526)。 これらのウサギは、ビクトリア州ジーロング近郊のバーロン・パークのトーマス・オースティン氏の所有地に持ち込まれた。 3 年以内に、1862年の Chronicle 紙には「オースティンのウサギ」の数が数千に達したことが記載され (20)、1865年にはオースティン自身が「イングランドのウサギの異常な繁殖力」に対する声明として、自分の領地で2万匹のウサギを殺したことを Geelong Advertiser に報告している。 1906年までに、ウサギは西海岸に到達する数千キロメートルをカバーし、歴史的な報告は古典的にバーロン・パークから拡大したと主張している。 このような通説があるにもかかわらず、これまでの研究では、オーストラリアのウサギの個体群にこのような拡大と一致する遺伝的パターンを見つけることができず(27)、最近のゲノムワイド研究では、単一起源仮説に異議を唱え、代わりに侵略的ウサギはいくつかの独立した導入によって生じたと主張した (28)。

なぜウサギは、局地的で無害な種から侵略的な種に変化したのか? 広大な牧草地が開発され、肉食動物の個体数が牧畜民によってコントロール (駆除) されるなど、人為的な環境の変化はウサギにとって有益であり、オーストラリア本土が徐々に侵略されやすくなったかもしれない (21)。 しかし、ウサギが個体群を形成してから侵略的になるまでに観察されたタイムラグは、ニュージーランドやタスマニアなど他の場所でも再現され、他の要因が作用していることが示唆された。 このように、環境条件の異なる3つの場所でウサギの個体群動態が並行して変化していることから、この生物侵入の成功には、環境以外の要因が重要な役割を果たした可能性があると考えられる。 一つの可能性は、自然環境により適応した新しいウサギの遺伝子型が導入されたことであり、トーマス・オースティンのウサギの野生の遺伝的祖先が、このメカニズムを提供した可能性がある。 これは、オースティンのリリースが、我々が知る限りオーストラリア本土への野生のウサギのリリースを明示した唯一の史料であり (22)、その後オースティンのウサギは、ウサギが害獣となり始めた1860年代にニュージーランドに導入された (1520) ことから妥当であろう。

生物学的侵略の原因を探るため、オーストラリア本土、タスマニア、ニュージーランドの各地で採集されたウサギの遺伝子データと、オーストラレーシアの遺伝子プールに貢献したと考えられる集団の遺伝子データを解析した (図1)。 これにより、オーストラリアにおける侵略的なウサギの発生が、単一の導入によるものか、複数の導入によるものかを検証することができた。 これは重要なことで、もし侵略のきっかけが環境変化であったなら、複数の地域個体群が拡大する可能性が高いからである。 しかし、きっかけが特定の侵略的な遺伝子型の到来であれば、全国のウサギがその導入に由来することになる。 次に、侵略的なウサギが野生の祖先を持つかどうかを検証した。これにより、初期の導入よりも地域の条件によく適応していた理由が説明された。 最後に、トーマス・オースティンによるリリースがウサギの侵略的な遺伝子型を生み出したかどうかを調べることで、我々のデータを歴史的な記録に結びつけることになる。

図1.

img イベリア半島からオーストラリア、ニュージーランドに至るアナウサギの植民地化ルート。 矢印は導入を示す。 オーストラリア本土の破線は、バーロン・パーク内のトーマス・オースティン氏の土地から大陸にウサギが広がった最前線を示す (Stodart and Parer, ref. 21 に基づく)。

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結果

以下の3つに属する 187人 の全エクソームシーケンシング (WES) を解析した。

  1. オーストラリア本土 (n = 62)、タスマニア (n = 2)、ニュージーランド (n = 5) のオーストラレーシア集団
  2. フランス (n = 55) とイギリス (n = 55) のノウサギの集団
  3. 8 種類のウサギの品種に属するイエウサギ (n = 8) (SI Appendix, Table S1) サンプル全体の平均カバレッジは 30.5 倍だった。 捕獲対象は 32.10Mb で、ゲノムの 1.17% に相当する。 フィルタリング後のバリアント (変異) 総数は 1,987,606個となった。

連続的な植民地化により、ウサギ集団の遺伝的多様性が減少した。

オーストラリアのウサギは、ヨーロッパ大陸からイギリスにウサギが持ち込まれ、そこからオーストラリアに持ち込まれるという、一連の植民地化プロセスの結果であると考えらる。 これらの導入に伴う集団ボトルネックにより、ヨーロッパ大陸 (フランス) からイギリスまでは 10.6%、イギリスからオーストラリア本土までは 12.3% の遺伝的多様性が減少した (図2ASI Appendix, Table S2)。 このような遺伝的多様性の緩やかな減少は以前にも報告されており (29)、植民地化に伴う集団ボトルネックに続いて急激な集団拡大が起こった場合に予想される。

図2.

img ウサギ集団の遺伝的多様性。 (A) 異なるウサギ集団の平均遺伝的多様性。 ドットは、各染色体を均等に重み付けした平均値を示す。 信頼区間は、サブサンプリングと染色体置換で得られた100本のブートストラップ推定値の0.025と0.975の分位に相当する。 (B) フランス (灰色)、イギリス (青色)、オーストラリア本土 (赤色) の展開された対立遺伝子頻度スペクトル (SFS) である。 x 軸は、派生した対立遺伝子頻度を示す。 y 軸は、各カテゴリのバリアント数を示す。 信頼区間は、サイトを置換してリサンプリングした 95% ブートストラップ信頼区間に対応する。 タンパク質コード配列 (CDS) のバリアントのみを対象とした解析で、1集団あたり 25個体に制限されている。 両分析におけるオーストラリアの推定値には、キャタイ (Cattai) とシドニー (Sydney) のウサギは含まれていない。

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ヌクレオチドの多様性の減少に加え、近年の集団ボトルネックにより、希少な遺伝的バリアント (変異) が優先的に失われる (30)。 このパターンを調べるために、ノウサギの塩基配列を使って対立遺伝子を祖先型と派生型に分類し、展開された対立遺伝子頻度スペクトルをプロットした。 連続した集団ボトルネックを裏付けるように、低頻度の対立遺伝子の数が最も多かったのはフランスで、次いでイギリス、オーストラリア本土の順だった (図2B)。 これは、Tajima の D 統計 (対立遺伝子頻度スペクトルの要約) に反映されており、フランスからイギリス、そしてオーストラリアへと徐々に大きくなっていく (SI Appendix, Table S2)。

オーストラリア本土への一度の導入で発生した侵略的ウサギ

オーストラリアのウサギの起源は1859年の一度の導入とする説が多いが、遺伝子解析や歴史的な記録から、現在のウサギの集団は複数の導入や移動の結果であるとする説もある (22, 28)。 これを解決するために、オーストラリア本土全体の集団における遺伝子構造のパターンを調べました (図3A)。 その結果、2か所からの 5 匹のウサギを除いて、地域間で高い遺伝的類似性があることがわかった。 これは主成分分析 (PCA、principal component analysis) (図3B) で示されており、オーストラリア本土のウサギは 3 つの異なるグループに分類され、そのうちの最大のグループ (62個体中57個体) には国全体、数千キロメートルに及ぶ地域のウサギが含まれる。 地理的にはるかに狭い地域で 2 つの小さな群れが発見された。それは、4 匹のウサギからなるグループはシドニーのものと、もう 1 匹はシドニーの北西に位置するキャタイ国立公園の 1 匹のウサギだった。 この結果を裏付けるために、NJ 法による系統樹を用いてウサギの遺伝的類似性によるクラスタリングを行った (SI Appendix, Fig S1)。 ここでも、シドニーとキャタイのウサギは、オーストラリアの他の地域のウサギの主要グループとは独立したクラスターを形成していた。

図3.

img ウサギの集団の遺伝的構造と祖先。 (A) サンプルの位置を示したオーストラリア本土の地図。灰色の丸はキャタイ、白の丸はシドニーに対応する。 (B) ノウサギとイエウサギの主成分分析。破線の円はキャタイとシドニーの個体を強調している。 (C) 3つの祖先集団 (K = 3) を仮定して Admixture で推定した祖先の割合。 各バーは 1つの個体を表し、祖先の割合に応じて色分けされている。 (D) オーストラリア本土の個体群、ニュージーランド、タスマニア、イギリスからのウサギ ()、イエウサギ () の間で共有される遺伝的ドリフトを反映したウサギ集団の f 3 統計データ。 棒グラフは SE に対応する。 (E) TreeMix プログラムを用いて、対立遺伝子頻度データを用いて再構築された集団間の歴史的関係。 枝の長さは遺伝的ドリフトの量を反映し、スケールバーはサンプル共分散行列のエントリの平均 SE を10倍したものを示している。 数字は、SNP のブロックを 1,000回リサンプリングして算出したブートストラップ サポートの割合である。

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オーストラリア本土に野生のイギリスウサギと家畜のウサギが持ち込まれた。

オーストラリアのウサギの起源に関する歴史的な記述はさまざまで、最初にイエウサギが導入されたという記録がほとんどで、後に野生のイギリスウサギが導入されたという記述もある。 ウサギのゲノムは離散的な祖先集団の混合物であると仮定した Admixture 解析 (SI Appendix, Fig S2) (31) により、これらの導入源を調査した。 この解析により、PCA と NJ 法による系統樹が裏付けられ、オーストラリア本土における 3 つの異なる遺伝子グループの祖先が明らかになった (図3C, K = 3)。 大陸を越えてやってきたウサギの多くは、その祖先の割合がはっきりしており、おそらく集団のボトルネックによって源流集団とは遺伝的に異なるものになったことを反映していると思われる (32)。 シドニーのウサギは、1788年に第一艦隊でシドニーに運ばれた5匹のイエウサギの歴史的記録 (20) と一致して、主にイエウサギに由来すると思われる。 キャタイのウサギのゲノムで最も大きな祖先の割合がイギリスのウサギと共有されていることから、この地域にはイギリスから別の導入があったことが示唆される。 これらの祖先のパターンは、私たちが以前に行った分析でも裏付けられている。つまり、PCA と NJ 法による系統樹の両方で、シドニーの集団はイエウサギに最も似ており、キャタイのウサギはイギリスの集団に含まれる (図3B および SI Appendix, Fig S1)。 シドニーのウサギはすべて同一の mtDNA ハプロタイプ (haplotype) を共有しており、これはほとんどのイエウサギに見られるハプロタイプと密接な関係がある (図4A および SI Appendix, Fig. S3)。

図4.

img ミトコンドリア系図。 (A) 系統の先祖の地理的位置の再構築により、ミトコンドリア ゲノム全体で再構築された最大クレード信頼性ツリー (Maximum clade credibility tree)。 枝やラベルは、出身母集団に応じて色分けされている。 ラベルコードは、国や地域に対応している。 強調表示されたラベルは、キャタイとシドニーの個体を示している。 (B) オーストラリア本土、タスマニア、ニュージーランドの集団に推定される移動回数の中央値。 エラーバーは 95% 信頼区間。 赤色の値は、BSSVS モデルの 95% 以上に含まれている。

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オーストラリア本土の集団に対するイエウサギと野生のイギリスウサギの相対的な貢献度を調べるため、アウトグループ f 3 統計 (33) を計算した。 フランスをアウトグループとしたこの統計では、対立遺伝子頻度の相関を利用して、2つの集団がどの程度遺伝的ドリフトを共有しているか、つまり共通の祖先を持つかを調べることができる。 その結果、キャタイのウサギが最もイギリスの野生の祖先を持ち、シドニーが最も少ないことが判明した (図3 D)。 オーストラリアの他地域のウサギは中間的だった。 このパターンは、国内の祖先を考慮すると逆転する (図3 D)。 国内での祖先はシドニーが最も多く、キャタイが最も少なく、それ以外は中間的だった。 したがって、これらの結果は、侵略的なオーストラリアのウサギの主な遺伝子型は、家畜 (イエウサギ) と野生 (ノウサギ) の祖先が混在していることを示すものである。

そこで、オーストラリア本土を亜集団に分け、集団の対立遺伝子頻度を用いて集団の樹を構成する TreeMix 法 (図3 E) を用いて、集団間の歴史的関係を再構築した。 その結果、キャタイのウサギは遺伝的に区別され、オーストラリアの他の地域のウサギよりもイギリスウサギに近いことが確認され、イギリスウサギが別に導入されたことに由来することが判明した。 シドニーの集団はイエウサギに最も近縁である。 本土の残りの地域にわたる集団は近縁であり、ツリー上では中間の位置にある。 ウサギの家畜化はフランスで行われたにもかかわらず (3435)、我々のツリーでは、イエウサギとフランスウサギは同じクレードに分類されない。 これは、イエウサギを生んだフランスの集団をサンプリングできなかったことや、集団間の混合により、分岐木で表現できない集団関係があることを反映しているのかもしれない。

ミトコンドリア DNA は、オーストラリアに導入された雌のウサギの数が少なかったことを示唆している。

オーストラリアウサギの雌系統の進化史を調べるため、ヨーロッパ大陸からオーストラリアへの植民地化ルートを網羅するミトコンドリア ゲノム配列の系図を再構築した。 ツリーの再構築の際に、出身母集団を離散的な形質として含めることで、雌ウサギの過去の移動を再構築することができた。 ミトコンドリア系統の祖先位置を推測すると、オーストラリア本土のウサギは樹上で少数のクラスターに分類され、他の場所から導入された少数の雌ウサギに由来することがわかる (図4 A)。 これは、バーロン・パークのリリースが、わずか 13 匹に由来する可能性を示唆する歴史的記録と一致する (ディスカッション)。 サンプル中のミトコンドリア ゲノムを生んだ導入雌ウサギの数を定量化するために、ツリートポロジーの不確実性を考慮しながら国間の遷移をカウントした (マルコフジャンプ、文献 36)。 このことから、我々のデータセットに含まれるオーストラリア本土のウサギは、ヨーロッパから導入された 5 匹の雌に母方の祖先を遡ると推定される (図4B; 95%信憑性区間: 3~5匹)。

たった一度の導入が、急速に拡大し、オーストラリアの大部分を植民地化した。

歴史的な記録によると、トーマス・オースティンの所有地であるバーロン・パークがあるビクトリア州からオーストラリア本土にかけて、ウサギの個体数が極めて急速に拡大したと報告されている (図1)。 個体が集団の発生源から遠く離れ、新しい地域が植民地化されると、遺伝的ドリフトにより対立遺伝子の頻度が変化する。 これと一致して、全国から採取した個体のペア間で遺伝的距離と地理的距離に相関があることがわかった (r = 0.361; マンテル検定: P < 0.001; 図5 A、赤い点、シドニーとキャタイを除く)。 しかし、シドニー/キャタイのウサギとオーストラリア本土の他の地域との間の遺伝的距離は、サンプル間の地理的距離を考えると、一貫して予想よりも大きい (図5 A、灰色と白のポイント)。 このことは、オーストラリア本土のウサギのほとんどは、大陸を横断して拡大した単一の導入から生じたが、キャタイとシドニーのウサギは別の起源を持つという仮説を支持するものである。

図5.

img 範囲拡大が遺伝的変異と構造に与える影響。 (A) オーストラリア本土の 62 サンプルにおける一対 (ペアワイズ) の遺伝的距離と地理的距離の相関関係。 遺伝的距離は、分離部位のみを用いて算出。 赤で示した回帰直線は、キャタイ (白) とシドニー (灰色) を除くすべてのペアの間で計算された。 同じ場所のサンプル間のペアワイズ比較はプロットされていない (1,891件の比較のうち24件)。 (B) シドニーとキャタイを除くオーストラリア本土のウサギの主成分分析。 カラーパレットは、バーロン・パークにあるトーマス・オースティンの物件までの距離をキロメートル単位で反映し、シンボル形状は出身地の個体数を示す。 (C) オーストラリア本土の 4 つの異なる地域における遺伝的多様性。 サンプリングは均一ではないので、遠方の 4 箇所 (ビクトリア/NSW、南オーストラリア、クイーンズランド、西オーストラリア) に焦点を当て、各地域で地理的に最も近い 7 個体を集約した。 ドットは、各染色体を均等に重み付けした平均値を示す。 95% 信頼区間は、染色体の置換を伴うサンプリングによって得られた 100回のブートストラップ推定値からのものである。 (D) オーストラリアにおけるアレルサーフィン (対立遺伝子サーフィング) の影響。 オーストラリア本土の4つの異なる集団における、イエウサギおよびイギリスの集団に存在しない対立遺伝子の頻度について。 遺伝的多様性の推定に使用したのと同じ 7 匹のウサギについて、アレル頻度 (Allele frequencies) を報告している (C)。 棒グラフは集団別に色分けされている。

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オーストラリア本土のウサギの主成分分析では、バーロン・パークまでの距離に応じてサンプルを色分けし、この範囲拡大のパターンをさらに説明する (図5 B、シドニーとキャタイを除いた分析)。 第1主成分は集団の北方への初期拡大を反映し、第2主成分は西オーストラリア州とクイーンズランド州の個体を東西軸に分離している。 これは、バーロン・パークの北側で最初に拡大した後、これらのより遠い地域を植民地化するために取られたルートを反映していると考えられる。

集団が拡大し、新しい地域が植民地化されると、創始者効果 (founder effects) が繰り返され、遺伝的多様性が失われることがある (37)。 そこで、オーストラリア本土のウサギ集団の遺伝的多様性を計算することで、導入地点であるバーロン・パーク (ビクトリア州) からの距離が長くなると遺伝的多様性が低下するかどうかを検証した。 サンプリングが均一でないため、遠方の4カ所 (ビクトリア/NSW、南オーストラリア、クイーンズランド、西オーストラリア) に絞った。 それぞれの場所でバーロン・パークに最も近い個体は、それぞれ 72km、979km、1,323km、2,521km の距離にあった。 バーロン・パークから遠くなるにつれて集団の遺伝的多様性は低下し、ビクトリア州/NSW州が最も多様性が高く、西オーストラリア州が最も低いことがわかった (図5 C)。

遺伝的多様性の低下と並行して、地理的な拡大が進むと、アレルサーフィンと呼ばれるプロセスによって希少対立遺伝子が高頻度になることがある (38, 39)。 これは、新しい突然変異や希少な対立遺伝子が、急激な個体数増加の恩恵を受け、拡大の波の先頭に立つときに起こる。 オーストラリア本土のウサギの植民地化は、一度の導入で広い地域に急速に拡大した可能性が高いため、この理論的予測を自然環境下で実証的に検証するための理想的な枠組みである。 オーストラリア本土に最初に持ち込まれたウサギで希少または存在しない変異体を選択するために、オーストラリア本土のウサギの起源となった 2 つの集団であるイギリスウサギとイエウサギのサンプルから存在しない対立遺伝子を特定した。 アレルサーフィン モデルで予測されたように、これらの当初稀だった対立遺伝子 (アレル) は、ビクトリア州バーロン・パークのリリースサイトから遠ざかるほど頻度が増加する傾向があった (図5 D)。

オーストラリア本土のウサギはイギリスの南西部からやってきた。

史料には、オースティンが輸入したイギリスの野生のウサギは、サマセット州バルトンズボローにある彼の家族の敷地周辺で捕獲されたと記されている (序論)。 これが正しいかどうかを検証するために、イギリスとオーストラリア本土の異なる地域間の対立遺伝子頻度の相関を調べた。 イギリスのサンプルを採集した郡でグループ分けし、フランスをアウトグループとしながら、これらの集団とオーストラリア本土 (キャタイ/シドニーを除く) との間の f 3 統計量を計算した。 その結果、ハンプシャー、ドーセット、グラモーガン (図6A、赤丸) が、オーストラリア本土のウサギと最も遺伝的類似性が高い 3 カ所であることが判明した。 驚くべきことに、これらの集団はすべてイギリスの南西部、バルトンズボロー付近 (図6ASI Appendix, Fig. S4 AC) にある。

図6.

img オーストラリアの個体群のイギリス起源。 (A) イギリス南部の地図。丸印は、オーストラリアとの祖先の共有度合いを反映した f 3 統計値によって色分けされた17の集団。 個体群は、各ウサギの英国の郡に基づいて定義された。 赤い三角形は、バーロン・パークに輸入された野生のウサギの原産地とされるオースティン家の屋敷があったバルトンズボロー村の位置を示している。 (B) オーストラリアの個体群 (キャタイとシドニーを除く) と共有されている英国の個体のシングルトンの割合と、バルトンズボローまでの距離 (キロメートル) との相関関係。 英国ではシングルトンであるが、イエウサギに存在するアレル (対立遺伝子) は解析から除外された。

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オーストラリア本土のウサギの出所を調べる別のアプローチとして、希少なバリアントを調べました。 これらは近縁の集団間で高度に分化していることが予想され、最近の人口動態に関する情報を与えてくれる (40, 41)。 それぞれのイギリスウサギについて、私たちが採取した他のイギリスウサギには見られないバリアント (つまりシングルトン) を取り出し、そのうちの何パーセントがオーストラリア本土のサンプルに見られるかを尋ねた。 オースティンのウサギの家系と英国の家系が混在していることによる交絡効果を避けるため、家系に存在する変種は除外した。 希少なバリアントは、南西イングランドとオーストラリア本土のウサギの間でより頻繁に共有されていることがわかり、侵略的集団の源はバルトンズボローであるという仮説を再び支持した (図6 B; 共有されたシングルトンの割合とバルトンズボローへの距離のピアソンの相関: r = 0.611, P < 0.001).

タスマニアの個体群は、オーストラリア本土のウサギとイエウサギが混在 (混血?) している。

タスマニアウサギの起源を調べるため、地理的に離れた場所から採取した 2 つの個体の塩基配列を決定した。 これらのウサギは、我々のデータセットで最も遺伝的多様性が低いものだった (SI Appendix, Table S2)。 イエウサギがタスマニアの遺伝子プールに大きく貢献したことを示唆する証拠が複数ある。 第一に、PCA と集団樹 (population tree) において、タスマニアは一貫してシドニーや国内の集団と近縁である (図3 BE)。 第二に、Admixture 解析では、最大の祖先成分がイエウサギと共有されている (図3 C)。 最後に、f 3 統計によると、家畜の祖先がかなり寄与していることを示しており、シドニーウサギに取って代わられているだけである (図3 D, )。 これらの結果を総合すると、タスマニアのウサギはシドニーと同様、家畜に由来する部分が大きいことが示唆される。

歴史的記録によると、オーストラリア本土でバーロン・パークに放たれた直後からタスマニアウサギの個体数が増加したと報告されており、このウサギがタスマニアで放たれた可能性がある (序論)。 これと一致するように、Admixture 解析では、タスマニアウサギは国内とオーストラリア本土の集団の間で混在 (混血?) していることがわかった (図3 C)。 さらに、タスマニアウサギは PCA 上では家畜とオーストラリア本土のウサギの中間であり (図3 B)、ミトコンドリア DNA の解析により、雌のウサギが本土からタスマニアに持ち込まれた証拠が見つかった (図4 B)。 PCA、Admixture 解析、f 3 統計のすべてがイギリスからの直接の祖先の証拠を示していないことから、イギリスからタスマニアへのウサギの直接の導入について、我々のデータには有意な裏付けはない (図3 BD)。

ニュージーランドのウサギは、野生のイギリス、家畜、オーストラリア本土の祖先が混在 (混血?) している。

ニュージーランドの 2 つの主要な島である、北島 (n = 2) と南島 (n = 3) から採取した 5 匹のウサギの塩基配列を決定した。 この結果は、家畜のウサギがニュージーランドの集団の祖先の重要な構成要素であることを明確に示唆している。 f 3 統計は、ニュージーランドとオーストラリア本土の集団における家畜が祖先であるレベルが同程度であることを示し (図3 D, )、Admixture 解析はかなりの家畜の祖先であることを示している (図3 C)。 また、イギリスからニュージーランドに直接導入された証拠もあり、f 3 統計と Admixture 解析の両方で、シドニーやタスマニアの場合よりもイギリスの祖先が多いことがわかる (図3 C および D, )。 実際、ニュージーランドの 3 つのサンプルの Admixture プロットにおけるイギリスの祖先のレベルは、キャタイを除いてデータセットの中で最も高い。 これは、ミトコンドリア ゲノムの分析によっても裏付けられており、ヨーロッパからの直接導入が支持されている (図4)。 さらに、Admixture 解析 (SI Appendix, Fig S2, K = 7) と f 3 統計 (SI Appendix, Fig S4 B and D) はともに、南西イングランドを起源とするオースティンのウサギとは異なり、ニュージーランド ウサギは東イングランドの集団とより関係が深いことを示している。

イギリスの祖先の程度はサンプルによって異なり、その結果、ニュージーランド国内では顕著な遺伝的構造が見られる (図3 BCSI Appendix, Fig S1)。 このパターンをさらに調べるために、ニュージーランドの集団を PCA で見られる 2 つのグループに分け、TreeMix を使って集団関係を再構築した。 これにより、ニュージーランド ウサギの中には、イエウサギと近縁なものもあれば、イギリス ウサギと近縁なものもあることが確認された (SI Appendix, Fig S5)。 これらの違いは、ウサギの産地が北島か南島かとは関係なく、独立した起源を持つ地域集団が存在することを示唆している。 これらの結果を総合すると、イギリスからニュージーランドへの直接導入があったことがわかるが、イギリスの祖先の程度はサンプルによって異なる。 また、オーストラリア本土のウサギがニュージーランドに導入された証拠もあり、Admixture 解析で最も小さい祖先成分はオーストラリア本土と共有されている (図3 C)。

ディスカッション

生態学では、ある種の導入が生物学的侵略になる理由と、そうでない理由が大きな問題になっている。 しかし、生物学的侵略の初期段階には多数の同時進行要因が存在し、それぞれの導入の起源、数、時期に関する詳細な記録がないため、このプロセスを解剖することは困難であると言われている。 ウサギのオーストラリアへの植民地化には、出来事や関わった人々に関する詳細な歴史的文献が添付されており、遺伝学と歴史学を組み合わせて、史上最も象徴的な生物学的侵略の一つを理解し、その成功につながった要因を検討するユニークな機会となった (図1)。 オーストラリアにおけるウサギの歴史的文献には、生物学的侵略に共通するパターンとして、当初は数多くの導入があり、小さな地域個体群が形成されたが、タイムラグを経て個体数が劇的に増加し、ウサギが侵略的になったことが記されている。 したがって、重要な疑問点とは、「ウサギが侵略的になったのは、何が変わったからなのか?」ということである。

生物学的侵略は、侵略種や環境の特性に起因することが多いが、「散布体の導入圧」 (導入回数や導入個体数) の重要性を示す証拠が増えてきている (4)。 ウサギの場合、1859年にトーマス・オースティンがバーロン・パークで野生のイギリス ウサギを放したときまでに、オーストラリア本土に 90 匹以上の輸入があったという歴史的記録が残っている。 この 90 匹のうち、少なくとも 30% が野生へのリリースと報告されている (22)。 1788年に第一艦隊でシドニーに持ち込まれたイエウサギの原型が、その後のリリースによるものであったとしても、複数の分析で現代のシドニーのイエウサギの祖先を支持する結果が得られた。

ウサギが広範囲に導入された証拠があるにもかかわらず、シドニーにウサギがやってきてから生物学的侵略が起こるまで 70 年以上かかっている。 密林に覆われたグレートディヴァイディング山脈という自然の障壁が、シドニー ウサギの西方への進出を阻んだのかもしれないが、そのことが他の場所に定着した個体群に影響を与えることはないだろう。 より可能性が高いのは、初期のウサギの導入が侵略的なものにならなかったのは、後に人為的な圧力によって環境要因が変化し、侵略しやすい景観になったからかもしれない。 特に牧畜業の拡大は、ウサギの個体数の増加に継続的な食料源を供給することになる (16)。 さらに、牧畜民は捕食者の個体数を抑制しており、オーストラリア本土では捕食者がウサギの個体数をコントロールしていることを示す証拠が豊富にある (22)。 もし、環境変化だけが侵略の引き金であったなら、複数の地域個体群が生息域を拡大したと予測される。 その代わりに、我々の結果は、侵略的なオーストラリア本土のウサギが単一の導入に起因する明確な遺伝的証拠を提供し、これらのウサギは遺伝的に以前のリリースよりも侵略しやすいことが示唆された。 これは、1859年にトーマス・オースティンがビクトリア州のバーロン・パークに所有する土地で、この侵略的な遺伝子型をリリースしたことを示唆する歴史的記録を裏付けるものである。

オーストラリア本土へのウサギの侵入のダイナミクスは、そのスピード、規模、地理的範囲、そして既知の起源から、集団遺伝学の理論を検証するための理想的なデータセットとなる。 ウサギがバーロン・パークから遠ざかるにつれて遺伝的多様性は減少しており、拡大の波の先頭で創始者イベント (founder events) が繰り返されたことと一致する。 変異 (バリアント) の喪失と同時に、範囲拡大の手前で急速に増加した集団で発生した希少な対立遺伝子が、ドリフトによって頻度を上げることがあり、これはアレルサーフィン (対立遺伝子サーフィン) と呼ばれるプロセスである (38, 39)。 アレルサーフィン理論に関する文献は豊富であるにもかかわらず、それを実証的に示した研究はほとんどない (42)。 その結果、侵入元集団で希少または存在しない対立遺伝子が、侵入元であるビクトリア州からさらに離れた集団で一般的である可能性が高いことがわかった。

今回の結果を歴史的な記録と照らし合わせると、1788年にウサギが初めて上陸した後、オーストラリア全土でウサギの導入が頻繁に行われ、時には地域個体群を確立したことが明らかになった。 シドニーの他に、侵略的にならなかったイギリス ウサギの別の導入の証拠を発見した。これは、シドニーから 50km 離れたキャタイ国立公園からの 1 つのサンプルに基づくものである。 我々の分析を通じて、この個体は一貫して、オーストラリア本土のウサギよりもイギリスの野生のウサギに近縁と思われた。 キャタイ ウサギの分岐の高さは、Phillips らがオーストラリア全土の mtDNA ハプロタイプ頻度を比較した際にも注目された (43)。 これらのウサギが侵略的にならなかった理由は不明だが、周辺地域がバーロン・パークのウサギによって植民地化された後、キャタイのリリースが行われた可能性がある。

シドニーとキャタイに別々に導入されたことがわかり、我々がサンプリングしていないローカルな集団として存在する他の導入の可能性があることが明らかになった。 1870年からの歴史的記録では、南オーストラリア州のカパンダで、バーロン・パークでのリリースと並ぶ重要性を持つ 2 番目の大規模なウサギの拡散があり、1979年にバーロン・パークからの拡張と統合されたことが示唆されている (16, 21)。 南オーストラリアの近くに別のウサギの系統が導入されたという証拠は見つからなかった。 このことは、今回のリリースがバーロン・パークの同じストックに由来する可能性が高いこと、あるいはこの集団が今回採取した地域には拡大していないことを意味する。 より細かいサンプリングにより、地理的に広がっていない、バーロン・パークとは無関係な起源を持つ個体群がさらに発見されると思われる。 それにもかかわらず、この結果は、オーストラリア本土のウサギの大多数が、トーマス・オースティンによる 1 回の導入に由来することを示す圧倒的な証拠となった。

この結果は、侵略的なウサギはオーストラリア本土への複数回の導入によって生じたと主張する最近の遺伝学的研究とは対照的である (28)。 著者も認めているように、彼らは祖先であるヨーロッパと国内の個体群をサンプリングしていなかった。これは、我々にとって侵略的なウサギが単一の導入から生じたことを識別するために重要だった。 この情報がないまま、著者たちは2つの論拠に基づいて結論を出した。 第一に、彼らは距離による孤立の兆候を見つけられなかった。 しかし、これは、シドニーに導入された大規模なサンプル (および我々のデータセットに含まれていない他のリリースも含まれる可能性がある) が含まれているため、不明瞭になった可能性がある。 第二に、著者らは、メルボルンやシドニーなどの集団で私的対立遺伝子 (private alleles) が多いことと合わせて、オーストラリア本土内の部分構造を、独立した導入の兆候であると解釈した。 これはシドニーの場合だが (我々のデータでも支持されている)、これらの影響は、集団の拡大が遺伝的多様性に及ぼす影響でも説明できる。

バーロン・パークで放たれたウサギがなぜ侵略的になったのか、他の多くのウサギの放流はそうならなかったのかが重要な問題である。 我々の結果は、これらのウサギの遺伝的構成が重要であったという仮説を支持している。 オースティンのウサギはイングランドで野生で捕獲されたウサギと記載されており (21)、我々のデータはこれらの個体の野生の祖先を明確に裏付けている。 さらに、オーストラリア本土のウサギは、オースティンのウサギが捕獲されたイングランド南西部のウサギに遺伝的に最も近い。 我々の結果は、トーマス・オースティンの親戚であるジョーン・パーマー (24) の次の言葉とも一致している。 「(…) 祖父のウィリアムは、バーロン・パークに十数匹の委託品を送るようトーマス叔父さんに頼まれた時、バルトンズボロー周辺では野生のウサギは決して一般的ではなかったので、かなり難しい仕事だと思った。 彼がなんとか 6 匹を捕獲したのは非常に困難だった。これらは、巣から取り出されて飼いならされた、半分成長した標本だった。 村人たちがペットとして、あるいは食べるために小屋で飼っていた灰色のウサギを 7 匹買ってきて、その数を補ったのである。(…) 」 侵略的なオーストラリアのウサギは、家畜の祖先の要素もかなり含んでおり、バーロン・パークのウサギが、旅行中に繁殖した野生と家畜のウサギに由来することと一致する。 我々のデータでは、オーストラリア到着後に起こった交配を否定できないが、イギリスから送られた 13 匹とオーストラリアに到着した 24 匹が食い違っていることから、ジョーン・パーマーが語ったように、80日間の旅の前かその間に交配を行った可能性が高いと考えられる。 この少ない匹数は、ミトコンドリア解析で、我々のサンプルに含まれるオーストラリア本土のウサギが、導入された 5 匹の雌に由来すると推定されることとも一致する。

オーストラリア本土で見られた最初の導入から生物学的侵襲までのタイムラグは、タスマニアとニュージーランドでも繰り返された。 イギリスの野生の祖先を持つウサギの導入も、これらの侵略の引き金になった可能性がある。 どちらの場所でも、再野生化したウサギ (feral rabbits) の個体数が深刻な害獣になることなく数十年続いたという歴史的な記録が残っている (序論)。 しかし、両地域でほぼ同時に、1860年代にオースティンがオーストラリア本土に輸入されたことをきっかけに、ウサギの数が爆発的に増加した。 1864年から1867年にかけてニュージーランドでウサギの解放が成功したことを示す歴史的証拠があり、その中にはオースティン自身が提供したウサギのバッチも含まれていた (1520)、それ以前の記録では1858年に野生型とされるウサギの解放が成功したと記されている (23)。 さらに、表現型の変化から、ウサギが侵略的になったのと時を同じくして、古典的な家畜の形質が野生の形質に移行したことが示唆される。 タスマニアでは、1869年にタスマニア州測量総監のジェームズ・カルダーが、個体数の増加は野生のイギリスのウサギで見られる灰色の毛色への移行と一致するとコメントしている (20)。 我々のデータは、タスマニアとニュージーランドのウサギの集団が、野生の祖先の要素をかなり含んでいることを裏付けている。 タスマニアの場合はオーストラリア本土を経由し、ニュージーランドの場合はイギリスから直接来たというデータが出ている。 遺伝的証拠と歴史的証拠を総合すると、ウサギの個体群の拡大は、野生の遺伝的祖先の導入と関連しているという考えが支持される。

シドニー、タスマニア、ニュージーランドのような集団に家畜の祖先がかなりいることが我々のデータでわかった場合でも、イギリスの野生の祖先を持つウサギがやってきたことが、生物学的侵略が起こるきっかけになったのかもしれない。 侵略的な集団が、すでに小さな地域集団が占有している地域に拡大する場合、地域集団から侵略的な集団への遺伝的導入が広範囲に及ぶことがある (44)。 これは、最初の侵略的な移入集団が到着したとき、彼らは居住動物と交尾するので、侵略的な集団が拡大するにつれて、居住集団の対立遺伝子が確立される可能性があるためである。 その結果、元の居住集団から侵略的集団への非対称的な遺伝子移入が広範囲に及ぶことになる (44)。

再野生化したウサギ (feral rabbits) が野生での生存に適応できないような形質がたくさんある。 ウサギを含む家畜は、形態 (毛色や大きさなど) から行動 (人なつっこさや恐怖反応など) に至るまで、野生動物とは大きく異なる形質を持っている (45, 46)。 これは保全生物学ではよく知られた現象で、再野生化した動物 (feral) と野生動物 (wild) の交雑 (hybridization) は、遺伝的多様性を侵し、不適応な対立遺伝子の導入を許すことによって、野生集団の存続に危険をもたらす (47, 48)。 ウサギの場合、再野生化した個体群 (feral populations) が繁栄することもあるが、これは捕食や競争が少ない島嶼部で起こることが多く、家畜化 (domestication) せずに飼いならされることが多い (11, 49, 50)。 また、集団の遺伝的祖先が野生であることも、オーストラリアの環境に対する新たな適応を進化させる能力に影響を与えた可能性がある。 オーストラリアの大部分は乾燥または半乾燥気候であるため、ウサギは体温調節を助けるために体型の変化を進化させてきた (51)。 初期の再野生化した集団 (feral populations) には、こうした状況に適応するための遺伝的変異が欠けていた可能性がある。

トーマス・オースティンが兄に頼んで、イギリスの実家から野生のウサギを送ってもらってから、150年以上が経った。 この依頼は、彼の知らぬ間に、大陸全体の風景を一変させ、20世紀最大の牧畜のペスト (pastoral pest) を生み出すという連鎖を引き起こした。 ここでは、歴史的な記録と遺伝子データを組み合わせて、イングランド南部のオースティン家の敷地から、ウサギの拡大範囲の最奥である西オーストラリア州までのウサギの植民地化ルートを再構築した。 オーストラリアでウサギが引き起こした生態学的・経済的被害は悲劇的であり、他に例を見ないものであったが、生物学的侵略の原因やダイナミクスの理解に大きく貢献する枠組みをうっかり作り出してしまった。 我々の結果は、侵略が起こるまでに多くの導入が必要であったことから、「散布体の導入圧」の重要性を裏付けている。 しかし、単に個体数や導入回数だけでなく、その個体の遺伝的構成が生物的侵略を引き起こす可能性があることを示唆している。 Zenni と Nunēz (3) は、侵略が成功した場合と失敗した場合の遺伝的差異を調査する研究が不足していることを指摘した。 このリンクを作成することにより、環境変化がオーストラリアを侵略に対して脆弱にした可能性がある一方で、史上最も象徴的な生物学的侵略の1つに火をつけたのは、野生のウサギ (wild rabbits) の小さなバッチの遺伝子構成であったことを示している。

素材 (Materials) と方法 (Methods)

サンプリング (Sampling) と DNA 抽出 (DNA Extraction)

この研究では合計 187 個体を使用した。 このうち 179 匹は、フランス (n = 55)、イギリス (n = 55)、オーストラリア本土 (n = 62)、タスマニア (n = 2)、ニュージーランド (n = 5) で 1865 年から 2018 年の間に採集された野生で捕獲されたウサギであった。 さらに、 ベルギーウサギ (Belgian Hare)、シャンパンシルバー (Champagne Silver)、イングリッシュシルバー (English Silver)、フォーヴ・ド・ブルゴーニュ (Fauve de Bourgogne)、フレミッシュジャイアント (Flemish Giant)、フレンチアンゴラ (French Angora)、ヒマラヤン (Himalayan)、ウィーンホワイト (Vienna White)、という品種のイエウサギ 8 匹の塩基配列を決定した。 153 個体の塩基配列データは以前の研究 (29) から入手し、34 の新しいサンプルはこの研究のために特別に塩基配列を決定した (SI Appendix, Table S1)。 オリジナルの配列データは、BioProject ID PRJNA783625 の Sequence Read Archive (SRA) にある。

ライブラリー調製 (Library Preparation)、キャプチャー エンリッチメント (Capture Enrichment)、シーケンシング (Sequencing)

ゲノム DNA の抽出は、Qiagen DNAeasy Blood and Tissue Kit (Qiagen) を用い、製造元のプロトコルに従って行った。 個々のバーコード付きライブラリは、KAPA LTP Library Preparation Kit for Illumina platforms (KAPA Biosystems) を用いて、メーカーのプロトコルに従って DNA 抽出液から調製した。 PCR 増幅後、qPCR KAPA Library Quantification Kit (KAPA Biosystems) を用いてライブラリーを定量した。 qPCR 定量に基づいてライブラリの 2 つのプールを調製し、製造業者のプロトコルに従って NimbleGen 溶液ベースのキャプチャー (NimbleGen SeqCap EZ Developer Library、Roche) でキャプチャーし、濃縮した。 このキャプチャーは以前の研究 (29) で使用されたもので、OryCun 2.0 ウサギ リファレンス ゲノムの Ensembl 遺伝子アノテーション (リリース 2.69) に基づいている (34)。 ターゲットの総サイズは 32.10Mb で、これは 2.73Gb のウサギのアセンブリの 1.17 %に相当する。 キャプチャー濃縮後、イルミナ HiSEq. 4000 の 1 レーンで 150bp ペアエンドリードを用いて各プールを独立にシーケンスした。

バイオインフォマティクス (生物情報科学, bioinformatics) と バリアントコール (Variant Calling)

生のシーケンスリードの品質は、FastQC (52) で評価した。 Trimomatic (バージョン0.32) (53) を用い、trailing = 15 (閾値品質 15 を下回るとリードの末尾の塩基をカット)、slidingwindow = 4:20 (スライディング ウィンドウトリミングを行い、ウィンドウ内の平均品質が閾値 20 以下になるとカット)、illuminaclip = TruSeq3-PE. fa:2:20:10:1:true (アダプターのコンタミネーションを除去する。この値は、マッチングするアダプター配列を含む入力 fasta ファイル、シードミスマッチ、回文クリップしきい値、単純クリップしきい値、最小アダプター長、回文モードでペアリードにリードスルーが検出された場合に両方のリードを残すオプションの順に対応する。)
オーバーラップしたペアエンドリードは、Pear (version 0.96) (54) を用いてデフォルトのパラメータでマージした。 bwa-mem (バージョン 0.7.10) とデフォルトのパラメータを用いて、コラプスリードとペアエンドリードをウサギ参照ゲノム OryCun 2.0 にアライメントした。 PCR の重複は、Picard Tools, version 1.126 (55) の MarkDuplicates モジュールを用いて除去した。

GATK (バージョン3.3.0; https://www.broadinstitute.org/GATK) は、インデルの周りの局所的なリアライメントに使用された。 バリアントコーリングは、GATK モジュール HaplotypeCaller (バージョン4.1.8.1) を使用して、マッピング品質が 30 (56) 以上のリードのみを使用して、各ターゲットの周囲に 300 bp のパディングを行った後、モジュールGenotypeGVCFs を使用してすべてのサンプルのジョイント ジェノタイピングを行い、各サンプルについて実施した。 VariantFiltration モジュールを用いて、次のパラメータでバリアントをフィルタリングした。 QD < 2.0、QUAL < 30、FS > 60.0、MQ < 40.0、MQRankSum < -12.5、ReadPosRankSum < -8. 0、ここで QD は (QUAL フィールドからの) バリアント信頼度を非参照サンプルのフィルターなしの深さで割った値、FS はリードの鎖の偏り (順鎖のみ、または逆鎖のみで見られる変動) を検出するためのフィッシャーの正確検定を用いて、段階的にスケーリングした P 値、MQ は全サンプルにわたるリードのマッピング品質の二乗平均平方根: MQRankSum は、マッピングの質に関する Mann-Whitney 順位和検定からの U ベースの z 近似値 (参照塩基を持つリードと代替対立遺伝子を持つリードを比較)、ReadPosRankSum は、代替対立遺伝子を持つリードのリード末端からの距離に関する Mann-Whitney 順位和検定からの U ベースの z 近似値 (代替対立遺伝子がリードの末端付近にのみ見られる場合、これは誤差を示している)。 カバレッジの深さ (DP) が 10 で、遺伝子型の質 (GQ) が 30 の遺伝子型のみが保持された。 VCFtools (57) を使って、データセット全体にわたってフィルターされた位置と単型対立遺伝子をすべて取り除いた。 Plink (58) は、特定の集団のデータのサブセットを作成し、欠損データの割合やマイナーアレル数の閾値を選択するために使用された。 MapDamage (バージョン 2.06) (59) は、過去のサンプルの損傷パターンを定量化するために使用され、100,000 リードにダウンサンプリングした後、死後に損傷した可能性のある塩基の品質スコアをダウンスケールした。

集団遺伝分析 (Population Genetic Analysis)

我々はまず、Plink2、バージョン 1.02 (リファレンス) を用いた PCA により、ウサギ個体群の集団構造を調査した。 ジェノタイピング率が 95 %以上のバリアントのみを対象とし、この解析には損傷による変異が濃縮された古い過去のサンプルが含まれるため、頻度の低いバリアント (マイナーアレル数 = 3) は除外した。 また、ウサギのペア間で異なるヌクレオチドの割合 (p-距離モデル) に基づき、FastMe (バージョン 2.0) (60) を用い、1,000 ブートストラップで近傍結合樹を構築した。 最後に、ウサギ個体群の祖先と集団構造を、Admixture プログラム、バージョン 1.23 (31) を用い、K 値 を 1 から 7 の範囲で分析した。

トーマス・オースティン (オーストラリア、ビクトリア州Winchelsea、Barwon Park Mansion、座標: -38.224758、143.995314) の敷地内のウサギ放飼地点までの距離を用いた分析では、個々のサンプル採集地点の座標と R パッケージ Geosphere (61) を用いて地理的距離を計算した。 正確な座標がないサンプルについては、記述されている最も近い場所の座標が採用された。

完全なミトコンドリア (mtDNA) ゲノムから系図を構築するために、プログラム BEAST、version 1.10.4 (62) を使用した。 fasta 形式ファイルでゲノム配列を作成するために、SAMtools version 1.3 (http://samtools.sourceforge.net) を使用して、mtDNA にマッピングされているすべてのリードを抽出した。 これらは、HTSBOX pileup (https://github.com/lh3/htsbox) を用いてマジョリティーアレルの Fasta ファイルに変換され、マッピング品質が 30 のリードと品質が 30 の塩基のみが保持された。 これらのフィルター後、リード深度が 4 倍以下の部位は欠損データに分類された。 ヨーロッパウサギ mtDNA ゲノムの 17,245 bp のうち、合計 1,245 bp は、サンプル間で欠損データが多かったため、全配列の末尾でトリミングされた。 mtDNA 配列の 20 %以上の部位が欠損している個体は解析から除外され、合計 152 個の mtDNA ゲノムが得られた。 我々は、イエウサギに由来するウサギ参照ゲノムに属する配列を含めた (GenBank リファレンス: AJ001588)。

Fasta 形式のファイルは、AliView (version 1.26) を用いて結合され、nexus 形式のファイルに変換され、データは次の 5 つのカテゴリーに分割された。第1コドン位置、第2コドン位置、第3コドン位置、制御領域、およびその他。 BEAUti (version 1.10.4) を用いて XML ファイルを作成し、BEAST の入力とした。 各サンプルの原産国は、系統解析において離散形質 (discrete trait) として扱われた (63)。 国間の移行率は、非対称代替モデルを用いて推定した (つまり、どの国のペア間でも、移動の 2 つの方向に対応する 2 つの率を推定した)。 ベイズ確率的探索変数選択 (BSSVS) 手順を用いて、統計的に支持される国間の遷移を特定した (63)。 ヌクレオチド置換モデルは、推定塩基頻度と 4 つのカテゴリーからなるガンマ部位不均一性モデル (64) を用いた Hasegawa–Kishino–Yano (HKY) を使用した。 対数正規緩和分布 (lognormal relaxed distribution) の無相関緩和クロック (uncorrelated relaxed clock) を使用した。 祖先の状態はすべての祖先について再構築され、ツリーのプロットに使用された。 我々は、Minen and Suchard (36) のアプローチを用いて、異なる国間の移動イベントの数を推定した。 1 億ステップの連鎖長で、1,000 ステップごとにサンプリングし、異なるランダムシードで4回の独立した実行を行った。 Tracer (version 1.7.1) を使用してログを解析し、バーンインとしてマルコフ連鎖モンテカルロ (MCMC) 連鎖の開始から削除するサンプル数を特定するために収束をチェックした。 歴史的な記録から、イエウサギとヨーロッパウサギがオーストラレーシアに持ち込まれたことは明らかであるが、その逆はないため、我々はこのケースに限定して分析を行った。 そのために、オーストラレーシアの集団 (オーストラリア、ニュージーランド、またはタスマニア) からフランス、イギリス、または国内への状態遷移のカウントが0より大きいサンプルを MCMC チェーンから取り除いた。 残りのツリーを TreeAnnotator v.1.10.4 で解析し、最大クレード信頼性ツリーを作成し、Figtree (version 1.4.4; https://github.com/rambaut/figtree) で可視化した。 mtDNA ゲノムの中央結合ハプロタイプネットワークを、欠損データのある位置をトリミングした PopART で構築し、合計 133 の分離部位を残した (version 1.7) (65)。

ジェノタイピングの不確実性を考慮するため、ANGSD (version 0.935) に実装されている確率的枠組みを用いて、部位頻度スペクトル (SFS)、遺伝的多様性、Tajima の D を計算した (66)。 解析対象は、タンパク質コード配列 (Orycun 2.0 ウサギ リファレンスゲノムのアノテーション version 0.104 に基づく) と、エクソームキャプチャープローブでカバーされている領域 (均一なカバレッジを保証するため) に限定した。 ウサギの参照ゲノムからマッピングされていないスキャフォールドは解析から除外した。 解析した領域の合計サイズは 18.87 Mb であった。 次のパラメータを使用してバリアントをフィルタリングした。baq 1 -remove_bads -C 50 -minMapQ 30 -minQ 30。 ここで、-baq 1 は塩基ごとのアライメント品質計算を実行して、一塩基多型 (SNP) 検出の精度を向上させる (67)、 -C は過剰な不一致に対して MapQ を調整し、minMapQ は読み取りの最小マッピング品質であり、minQ はしきい値を下回る qscore を持つ塩基を破棄する。 検出されたバリアントの祖先状態を推測するために、3 つの異なるノウサギ種を反復マッピングして構築した擬似参照ゲノムを使用した (68)。 SFS 分析では、3 つの個体群を 25 個体までダウンサンプリングし、領域の代表性を最大化した。 キャタイとシドニーのオーストラリア個体はこの分析から除外された。 SFS のブートストラップ信頼区間は、部位を置換して再サンプリングし、統計量を 1,000 回再計算して求めた。 ヌクレオチド多様性 (π) は各染色体について別々に推定し、各染色体を均等に重み付けして平均値を算出した (69)。 ヌクレオチド多様性推定値のブートストラップ信頼区間は、染色体を 1,000 回置換して再サンプリングすることによって得られた。 染色体 6 (Chromosome 6) は遺伝的多様性が異常に高い異常値であったため、計算から除外した。 これらの分析では、両方の統計の推定値に偏りをもたらす可能性がある、過去のサンプルの損傷による突然変異の影響を最小限に抑えるために、最新のサンプルのみが使用された。

さらに、TreeMix プログラム (70) を使用して、オーストラリアの異なる集団間の歴史的関係を調査した。 これにより、集団間の対立遺伝子頻度相関に基づく最尤ツリーが作成される。 イベリア半島 (スペイン) からの 1 羽のウサギをアウトグループとして使用した。 この個体について作成されたシーケンシングデータの種類は全ゲノムであり、今回の解析にはエクソーム標的と重複する配列のみが用いられた。 連鎖不平衡による部位の非依存性を考慮し、100SNP のブロックサイズ (k) を使用し、100SNP のブロックを再サンプリングして 1,000 ブートストラップを実行した。 結果のツリーは、DendroPy パッケージ (version 4.1.0) (71) の sumtrees 関数で要約した。 集団間の混血のパターンを調べるために、TreeMix にも実装されている Reich et al. (33) の3集団統計 (f 3) を使用した。 このツリーは、過剰補正によって長さゼロの枝が発生するため、サンプルサイズ補正をオフにして計算した。

我々は、ウサギの個体数拡大が個体間の遺伝的距離に与える影響を調べた。 このために、Geosphere パッケージを使用して個体間の地理的距離を計算し、Plink (58) を使用して遺伝的距離を計算した (-distance オプション “square0 1-ibs” を使用して、状態ごとの恒等正方行列を生成する)。 遺伝的距離と地理的距離の相関の統計的有意性を評価するために、マンテル検定を用いた。 これを行うために、サンプルの位置を 1,000 回並べ替え、そのたびに r 2 を再計算することで、ピアソンの r 2 統計量のヌル分布を作成した。

我々は、イギリスまたは国内の個体群サンプルに存在しない対立遺伝子を同定し、放飼場所からの距離が異なるオーストラリアの個体群全体でその頻度を調べることにより、オーストラリア本土全域におけるウサギ拡大の前波における対立遺伝子サーフィンの発生を調査した。 現代の個体のみを使用し、特にビクトリア州/ NSW 州、南オーストラリア州、クイーンズランド州、西オーストラリア州の 4 つの異なる集団に焦点を当てた。 これらの個体群について、バーロン・パークに最も近い個体はそれぞれ 72km、979km、1,323km、2,521km の距離にいた。 各集団について合計 7 個体を使用した (SI Appendix, Table S1)。 ビクトリア州/ NSW 州では 7 個体以上の塩基配列を決定したため、バーロン・パークに最も近い 7 個体を選んだ。 データプロットは R パッケージ ggplot2 (72) を用いて作成した。

データ入手方法

オリジナルの生配列データは、BioProject ID PRJNA783625 (73) の Sequence Read Archive (SRA) (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/sra) で公開されている。 パラメータとミトコンドリア DNA (mtDNA) 配列を含む BEAST XML 入力ファイルは、https://figshare.com/s/78d2b37cd102f3586b8e で入手できる。 この研究では、以前に公開されたシーケンスデータを使用した (29)。

謝辞

本研究は、Programa Operacional Potencial Humano-Quadro de Referência Estratégica Nacional、欧州社会基金、ポルトガル高等教育省からの助成金により J.M. A. (SFRH/BD/72381/2010) および M.C. (CEECINST/00014/2018/CP1512/CT0002)、COMPETE プログラムを通じた FEDER 資金、および科学技術財団 (FCT) を通じたポルトガル国家資金 (PTDC/BIA-EVL/30628/2017) によるものである。 F.M.J. は Biotechnology and Biological Sciences Research Council の助成金 BB/V000667/1 および BB/V000756/1 を受けた。 西オーストラリア州からの材料入手は、Invasive Animals Cooperative Research Centre のプロジェクト (ウサギ出血性疾患ブースト展開) により可能となった。 Susan Campbell 氏、Peter West 氏、RabbitScan チームの皆様には、一般からのサンプル提出を円滑に進めていただいた。 Rasmus Nielsen 氏には、本研究で使用した解析について洞察に満ちた示唆をいただいた。

サポート情報

Appendix 01 (PDF)

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2.5 - Comparative social ecology of feral dogs and wolves

論文 “Comparative social ecology of feral dogs and wolves” の日本語訳です。

L. Boitani & P. Ciucci

Dipartimento di Biologia Animale e dell’Uomo, Università di Roma “La Sapienza”, Viale dell’Università 32, 00185 Roma, Italy

Received 26 August 1994, accepted 29 November 1994, Published online: 19 May 2010

Ethology Ecology & Evolution 7: 49-72, 1995

https://doi.org/10.1080/08927014.1995.9522969



野犬とオオカミの比較社会生態学

概要

本論文では、野犬 (feral dogs) 1 とオオカミの社会生態学的特性を比較し、野犬の社会生態を自然環境における適応価値の観点から評価するとともに、家畜化の過程でオオカミの社会生態パターンがどの程度変化したかを評価する。 野犬とは、人間が意図的に提供する食物や住居を持たず、野生状態で生活し、人間との直接的な接触を継続的に強く避ける犬であるとし、野犬の生態に関する現在の情報をレビューし、特にイタリアのアブルッツォ州の野犬の生態に関する3年間の長期プロジェクトに言及する。 オオカミと野犬の行動学的および生態学的特徴を比較することで、野犬の生態の一部は自然淘汰圧を免れ、主に「進化の慣性 (evolutionary inertia)」つまり「人工淘汰の付帯徴候 (epiphenomena)」の表現であると仮定する。 野犬の社会性、人口統計、繁殖、空間利用、活動パターン、摂食生態の適性に関連する測定結果は、私たちの当初の仮説を支持する傾向にある。 つまり、野犬は繁殖的に自立しておらず、幼少期の死亡率が高く、食料、協力者、空間を間接的に人間に依存しており、その人口統計は予測できないメカニズムに支配されていると考えられる。 しかし、異なる生態条件や複数世代のタイムスケール、野犬グループ内の支配的な犬種や交配歴が分析した社会生態学的特徴の発現に果たす役割など、さらなる研究が必要である。

キーワード: Canis, wolf, canid evolution, social ecology, feralization, domestication.

序論

中石器時代の人間の文化と自然環境が高度に統合され、犬が人間の居住地に出入りする機会が多かったため、野犬はおそらく犬の家畜化の開始直後にユーラシア大陸に存在していた。 また、北アメリカ大陸では、野犬はヨーロッパ人が接触するずっと前から存在していたと考えられている (MCKNIGHT 1964)。 オーストラリアのディンゴ (dingo) と、その祖先と思われるユーラシア大陸南部のパリア犬 (pariah dogs) (ZEUNER 1963; BRISBIN 1974, 1977; CLUTTON-BROCK in press) は、数千年前にすでに再野生化 (feralization) のプロセスが進行していたことを示す少なくとも 2 つの顕著な例である。 18世紀、地中海沿岸の大都市 (イスタンブール、アレキサンドリア) を徘徊する野良犬 (stray dogs) と野犬 (feral dogs) は、多くの著者によって一貫して報告され、実際にほとんど別の亜種として記述されている (cf. BREHM 1893)。 温暖な気候と豊富な食料資源は、飼い犬 (house) - 野良犬 (stray) - 野犬 (feral) の状態を経て、村や町の周辺に犬の個体群を存続させるのに有利であったと考えられる。 特に、地中海沿岸の生活様式や環境条件は、野良犬や野犬の個体群を維持するのに非常に適していると考えられる (比較的温暖な気候、小さな獲物、放し飼いの家畜、ゴミ捨て場、「共有地 (commons)」に対する緩い関心と管理) (BOITANI & FABBRI 1983)。 1981年にイタリアで実施された全国的な犬の国勢調査 (census) において、BOITANI & FABBRI(1983)は、野犬 (feral dogs)、すなわち人間に直接接触せず、依存せずに生活する飼い犬 (domestic dogs) は約 8 万頭と推定され、野良犬 (stray dogs) や飼い主によって村から周辺地域に自由に出入りしているすべての犬を含む、放し飼いの犬 (free-ranging dog) の総数の 10% に相当することを明らかにした。 人間や自然環境に大きな影響を与えるにもかかわらず、放し飼いの犬 (free-ranging dogs) は最近までほとんど調査されておらず、その生態 (ecology) に関する研究もほとんど報告されていない (BECK 1973; SCOTT & CAUSEY 1973; NESBITT 1975; CAUSEY & CUDE 1980; BARNETT & RUDD 1983; DANIELS 1983a, 1983b; GIPSON 1983; DANIELS & BEKOFF 1989a, 1989b; BOITANI et al. in press)。

オオカミと犬は、しばしば別々の名前 (オオカミは Canis lupus、犬は Canis familiaris) が付けられるが、分類学上の基準では同じ種であり、現在ではオオカミがすべての種類の犬の祖先であると広く受け止められている。 約12,000年にわたる人間による自然淘汰と人工淘汰の結果、犬の表現型 (phenotype) の多様性は増幅された。 犬の適応度 (fitness) は、「自然な」人間の文脈でテストすると高く見えるが、自然淘汰の力だけで一致させた場合の犬の能力はほとんど知られていない。

この論文では、野犬 (feral dogs) とオオカミの生態学的・生活史的特徴を比較している。 つまり、これらの相違点と類似点を分析することで、家畜化の過程で野生の子孫の行動および生態パターンがどの程度変化し、自然環境における犬の適応度に影響を与えたかを理解することができる。 私たちは、野生での存在が最近 (つまり数世代) であり、進化の観点から脱家畜化 (de-domestication) プロセスを完了した集団に属さない野犬 (feral dog) 集団を主に対象としている (PRICE 1984)。 したがって、ディンゴとパリア犬 (pariah dogs) は、かなり安定した「野生」の表現型 (phenotype) を達成するのに十分な数の世代にわたって自然淘汰にさらされてきたため、分析から除外している。つまり、ディンゴは家畜性 (domesticity) を完全に失っているため、もはや野生の動物とは見なされないことが多い (PRICE 1984)。 しかし、(i) 野犬 (feral dog) 集団が自然淘汰にさらされる期間が (世代的に) 比較的短いこと、(ii) 品種や交配歴の違いにより、集団内・集団間の個体差が大きいことを考えると、野犬 (feral dog) の社会生態学的形質の適応的価値は期待できないと考えている。 また、350種類以上ある犬種に見られる大きなばらつき (variability) が、社会生態学的特性 (社会的態度、縄張り意識など) の発現の程度を決める上で大きな役割を果たす可能性があることも明らかである。 しかし、犬種が野犬 (feral dogs) の生態に与える影響に関する情報がまだ得られていないにもかかわらず、確立された野犬集団の中に「純粋な」現代犬種が見られることはほとんどなく、極端な犬種傾向は淘汰されると考えることができるかもしれない。

野犬の群れ (feral dog groups) とオオカミの群れ (wolf packs) が自然環境で暮らす中で明らかになった生態戦略の違いの認識は、オオカミや他の社会的な野生のイヌ科動物 (wild canids) の生態学的特性の進化的および適応的価値に関する我々の理解を試すものとして捉えることができるかもしれない。 我々の基礎をなす仮説は、野犬 (feral dog) の生態の多くの側面は、緩やかな自然淘汰の力の結果であるが、主に「進化の慣性 (evolutionary inertia)」の表現であり、かつ/または犬の人工淘汰の結果や付帯徴候 (epiphenomena) であるというものである。

我々の比較アプローチでは、オオカミと野犬 (feral dogs) の行動学的および生態学的特徴のうち、データが入手可能で、同様の方法論が採用されているものに焦点を当てる。 特に、1984年から1988年にかけて、中央アペニン山脈 (イタリア、アブルッツォ州) の山岳地帯で、無線追跡によって野犬 (feral dogs) の 1 グループに対して行われた調査プログラム (ANDREOLI 1987, CIUCCI 1987, FRANCISCI et al. 1991) については、BOITANI et al. によって包括的に報告されている (in press)。 特に、人口統計 (demography) と社会性、繁殖と生活史、空間利用パターン、活動パターン、食性などのパラメータを分析する。

現在、野犬 (feral dog) の生態に関するデータは限られているが、我々は既存の文献の批判的レビューを試みた。 しかし、生物学的特性の地理的変化や「代表的 (representative)」な研究集団の選択など、家畜化の研究に見られる同じ問題が私たちの場合にも当てはまるかもしれない (PRICE 1984) ので、結論の一般化は制限される。

野犬 (feral dogs) と再野生化 (feralization) モデル

野犬 (feral dogs) は、同種の (homogeneous) 動物のカテゴリーではない。 野犬 (feral dog) の研究を行う上で重要な課題のひとつが、調査対象となる犬の本当の状態を把握することであり、これまでいくつかの異なる定義が提案されてきた (CAUSEY & CUDE 1980; BOITANI & FABBRI 1983; DANIELS & BEKOFF 1989a, 1989b)。 野犬 (feral dogs)、野良犬 (stray dogs)、その他の放し飼い犬 (free-ranging dogs) の区別は、時に程度の問題である (NESBITT 1975)。 犬のカテゴリーは、行動学的または生態学的特性に基づいて分類されている (SCOTT & CAUSEY 1973, CAUSEY & CUDE 1980)。 つまり、イヌの起源 (DANIELS & BEKOFF 1989a, 1989b)、イヌの主な生息地 (農村 vs 都市の放し飼い: BERMAN & DUNBAR 1983; 公共施設へのアクセスが制限されないもの: BECK 1973)、イヌの種類と人間への依存度 (WHO 1988)。 BOITANI et al. (in press) は、野生の自由な状態で生活し、人間から意図的に供給される直接的な食物やシェルターがなく (CAUSEY & CUDE 1980)、人間に対する社会化の証拠 (DANIELS & BEKOFF 1989a) を示さず、むしろ人間との直接的な接触を強く回避し続ける犬を野犬 (feral dogs) と定義した。 野犬 (feral dogs) と他の放し飼いの犬 (free-ranging dogs) を区別するために、目視とラジオトラッキングによる観察が行われた。 このような定義の多様性が、異なる研究の結果を比較することの難しさの一因となっている。 さらに複雑なのは、進化論的な観点から再野生化 (feralization) を考えた場合、再野生化とは逆の家畜化 (domestication) プロセス (HALE 1969, BRISBIN 1974, PRICE 1984)、あるいは行動上の個体発生的な (ontogenetic) (発達) プロセス (DANIELS & BEKOFF 1989c) として捉えることができる。 つまり、この 2 つの解釈は、異なるレベル (集団と個体) に焦点を当てており、異なる時間スケール、さらには異なる理論的および研究アプローチ (DANIELS & BEKOFF 1989c) を暗示している。

実際、「飼い犬 (owned)」「野良犬 (stray)」「野犬 (feral)」は閉じたカテゴリーではなく、犬は生涯を通じてその状態 (status) を変える可能性がある (SCOTT & CAUSEY 1973, NESBITT 1975, HIRATA et al 1987, DANIELS 1988, DANIELS & BEKOFF 1989a) ことは、ほとんどの著者が認めており、DANIELS & BEKOFF (1989c) による、再野生化 (feralization) とは個体の一生の中でときどき発生する、行動上の個体発生的な (ontogenetic) プロセスという見方を支持している。 BOITANI et al. (in press) が調査した 11 頭の成犬のうち、確かに野生で生まれたのは 3 頭だけで、他の犬は村の人口から集められたもので、野良犬 (stray) から野犬 (feral) の状態に移行している。 状態 (status) の変化は、いくつかの自然的および人為的な原因に依存する可能性がある (図1)。つまり、犬は、人間の管理から逃れたり、遺棄されたり、単に野良 (stray) の母親に生まれたりすることによって野良犬 (stray) になる可能性がありる (BECK 1975)。 野良犬 (stray dog) は、人間の環境から追い出されたとき、あるいは BOITANI et al. (in press) が調査したグループのメンバーの大半のように、近くに存在する野良 (feral) 集団に取り込まれたり (co-opted)、あるいは単に受け入れられたとき (DANIELS 1988; DANIELS & BEKOFF 1989a, 1989c)、再野生化 (feral) する。 また、同じ研究において、放し飼いの犬 (free-ranging dogs) の中には、提案されたカテゴリーに基づいて予想される行動や態度に近いものを示すことがあることがわかった。 このことは、犬の状態変化は必ずしも急進的かつ突然であるとは限らず、その土地の刺激や条件によって、個々の寿命かなりの部分を必要とする可能性があることを示唆している。 地域の環境が変われば、個々の犬の傾向も変わってくるかもしれない。 野良犬 (stray dog) が人間に飼われるようになると、家畜化 (way back、つまり「飼い犬 (house dog)」のカテゴリーに戻る) ことが観察されることがある。 さらなるステップ (つまり、野犬 (feral) から野良犬 (stray)、あるいは飼い犬 (owned) の状態への移行) は、一般的にはありえないが、BOITANI et al. (in press) により観察され、最近では、我々の一人 (P. CIUCCI unpubl.) により、野犬 (feral dog) を飼い犬状態 (domestic status) に戻す実験が行われた (そのいずれも野犬 (feral dogs) として生活しながら、野生で生まれていない個体を指す)。 しかし、これまでに収集された証拠は、野犬 (feral dogs) が社会的に独立した単位で生活し (すなわち、他の犬と社会的に結びついている場合)、人間からの干渉がない場合、その状態が逆転する可能性は極めて低い (すなわち、新しい世代を通じて再野生化 (feralization) の過程が強化される) ことが示唆された。 このような観点から、我々の野犬 (feral dogs) の定義 (cf. BOITANI et al. in press) は、DANIELS & BEKOFF (1989c) の「再野生化 (feralization) は人間に対する恐怖反応の発達によって起こるものであり、必ずしも飼い犬の祖先からの有意な遺伝的分岐 (divergence) を伴わない」という見解に一致する。

Fig1

人口統計 (demography) とグループ構成 (group composition)

社会システム (Social system)

オオカミに見られる典型的な社会システムは、社会ユニットのすべてのメンバー (オスとメス) に拡張された直線的な階層構造であり、支配者と被支配者の距離は、個々の敵対行動 (agonistic behaviour) に基づいて調整される (MECH 1970, ZIMEN 1982)。 オオカミの社会構造は、優位性が特権 (たとえば、「つつき順」) とイニシアチブ (移動、狩猟、縄張り防衛、繁殖など) の両面で反映されるため、個々の行動の単なる集積よりも、個々のメンバー間でより高い機能統合が可能なようである。 実際、社会的統制の形態は、集団の機能性と生存率を高めるために、個人の傾向に影響を与える可能性がある。 たとえば、生殖に関する社会的統制 (すなわち、生殖の遅延、PACKARD et al. 1983) は、集団内の生殖個体数を調節すると同時に、生殖しない成犬の利用可能性を通じて子犬の生存確率を高めるかもしれない (HARRINGTON et al. 1983)。 野犬 (feral dogs) の場合、社会構造は本質的に一夫一婦制の繁殖ペア (monogamous breeding pairs) とその仲間 (ペアメンバーの子犬および/または亜成犬) の集合体であるように思われる。 オオカミと同様の儀式化された形で観察されている (L. BOITANI et al. unpubl. data) 敵対行動は、個体レベルには及ばないようで、すべての個体を含み集団活動 (たとえば生殖) に対して社会統制の形態をとる、より高い社会構造 (すなわちオオカミの階層的規模) には変換されないようである。 高次の社会組織の欠如が、野犬 (feral dog) 群の個体間の闘争的対立 (agonistic confrontations) の性質、強度、頻度に関係しているのか、オオカミの社会性に重要であると思われる行動や生理学 (physiology) の面での社会的感受性 (susceptibility) が犬に欠けているのか、あるいはこれらすべてに関係しているのかは、明らかではない。 実際、野犬 (feral dogs) の場合、観察された種内社会的行動は、その初期段階における人間との接触の影響を反映しているだけかもしれない (SCOTT & FULLER 1965)。 このことは、野良 (feral) の条件下で生活している犬であっても、飼い犬 (house) や野良犬 (stray) のカテゴリーから採用された場合には、さらに重要である。 もしそうであれば、野犬 (feral) の社会的態度は、野犬の世代数が増えるにつれて、オオカミの社会的態度に近くなっていくことが予想される。 また、異なる品種が社会的行動にどの程度影響を与えるかについても、慎重に検討する必要がある。

社会ユニット (Social unit)

イヌ科動物の場合、群れは安定した集団として狩猟、子育て、共同のテリトリーを守る社会的単位であり (MECH 1970)、その構成員は通常、関連する個体である (BEKOFF et al. 1984)。

特にオオカミは、基本的に一家族単位 (MECH 1970, HABER 1977, PETERSON 1977) の群れで生活し、空いたテリトリーに異性の成獣 2 頭が出会うことで形成され、繁殖する (ROTHMAN & MECH 1979, FRITTS & MECH 1981)。 機能的な単位としてのパックの形成と持続は、そのメンバー間の社会的な絆、つまり人間でいえば「愛情の絆」のようなものに基づいている (MECH 1970: 46)。 野生では「家族ではない」パックのケースも報告されているが、すべてのパックには共通してオスとメスのペアがいる (MECH & NELSON 1990)。

イタリアの野犬 (feral dogs) は、狼のパックの特徴を限定的にしか示さず、最も注目すべきは、他の場所で研究された野良犬 (stray) や野犬 (feral) のほとんどのケース (SCOTT & CAUSEY 1973; NESBITT 1975; CAUSEY & CUDE 1980; BERMAN & DUNBAR 1983; DANIELS & BEKOFF 1989a, 1989b) と同様に、同じ社会ユニットのメンバーは一般的に関連していなかった (BOITANI et al. in press)。 しかし、社会単位全体が安定した繁殖ペアを中心としていたとしても、野犬 (feral dogs) の間の関係や社会的絆の種類は、他のイヌ科動物 (candis) で知られているような群れ生活の正確なルールを反映していなかった (KLEIMAN & EISENBERG 1973, BEKOFF et al. 1984, GITTLEMAN 1989)。 そこで、野犬 (feral dogs) の社会的単位としては、パック (pack) ではなく、むしろ「グループ (group)」がより適切であると考えられる。

グループのサイズと密度 (density)

グループのサイズは、SCOTT & CAUSEY (1973) では 2 から 5 個体、CAUSEY & CUDE (1980) では 14 グループに 2 から 6 個体で、両方ともアラバマ州で行われた。 DANIELS & BEKOFF (1989b) は、アリゾナ州の野犬 (feral) 集団で 1 パックあたり 2 から 4 頭と報告している。 NESBITT (1975) は、イリノイ州の野犬 (feral dogs) を 5 年間調査した結果、平均的なグループサイズは 5 から 6 頭であることを明らかにした。 BOITANI & RACANA (1984) は、バジリカータ (南イタリア) で野犬 (feral dogs) がほとんどペアで見られると報告している。 BOITANI et al. (in press) は、グループサイズは 3 から 6 頭の成犬であるとしている。 都市部での放し飼い犬 (free-ranging dog) の調査では、大部分の動物が単独またはペアで目撃されることが多いと報告されている (BECK 1975, BERMAN & DUNBAR 1983, DANIELS 1983a, HIRATA et al. 1986, DANIELS & BEKOFF 1989b, MACDONALD & CARR in press)。 都市部と農村部で集団の規模が小さいのは、食料資源が乏しい場合には集団生活によるメリットが少ないため (BECK 1973, DANIELS & BEKOFF 1989b)、あるいは、都市部では食料資源が豊富で、協同での「狩り」が有利でないため (BERMAN & DUNBAR 1983) という可能性もある。 残念ながら、これらの考察はいずれも、空間的にも時間的にも、食糧資源の正確な推定によって裏付けられていない。

オオカミのパックのサイズは大きく異なり、一般に冬には 1 パックあたり 2 から 15 個体の範囲であり (MECH 1986)、アラスカからは最大 36 個体のパックが報告されている (RAUSCH 1967)。 しかし、各地の平均的なパックサイズは 7 頭以下であるようだ (MECH 1970)。 オオカミの群れの動態に関する情報は飼育下でも野生でも得られているが (たとえば、ZIMEN 1982; MECH 1977a, 1986)、群れのサイズが調節される要因は明確に定義されていない。 パックのサイズは、死亡率と加入率、および群れのメンバーが分散する時間の関数である (PACKARD & MECH 1980)。 しかし、群れのサイズに影響を与える最終的かつ最も重要な要因は餌の豊富さであると思われ、餌の入手可能性の変化が群れのサイズに比例して変化するからである。 つまり、MECH (1977a) は、ミネソタ州でシカが減少した時期に、平均のパックサイズ (真冬) が 5.7-8.6 から 3.7 に減少したと報告し、MESSIER (1985) は、ケベック州の獲物密度の高い地域と低い地域でそれぞれ平均のパックサイズが 5.7 と 3.7 になったと報告している。 群れの大きさは年間を通じて一定とは考えられず (MECH 1977a, 1986)、獲物密度の低い地域では 12月から 3月にかけて大きな変動 (最大 12%) が観察されている (MESSIER 1985)。

野犬 (feral dogs) のグループ構成は、BOITANI et al. (in press) により、明らかに内在的な制御メカニズムがないにもかかわらず、むしろ安定していることが明らかにされた。 1984年から1987年にかけて、群れの数を減らしたり増やしたりした出来事は、すべて外的要因 (人間の迫害と野良犬 (stray dogs) の入手可能性) に関連していると考えられ、予測可能な適応的価値はなかったと考えられる。 性成熟した個体の死はすべて偶発的であり、人間の干渉によって引き起こされたが、野犬 (feral) の親から生まれた新生児は、長期的な集団の安定にほとんど寄与しなかった。 野犬 (feral) グループは、村の野良犬 (stray) から新たなメンバーを獲得することで、その規模を維持することができた。 つまり、調査終了時には、グループ内の 1 頭を除くすべての犬が野良犬 (stray) 出身だった。 ペアで結ばれていた成犬が死に、一頭残された成犬が異性の性的に成熟した個体と共棲するという、偶然の繁殖ペアの崩壊は、リクルートメカニズムの引き金になるようだ。 この新メンバーが、今度は野犬 (feral) グループ全体に社会的に受け入れられるようになった。 イヌ科動物 (candis) の繁殖期は、大規模な社会的相互作用を伴い、その結果、ペアの絆が強くなる可能性がある (KLEIMAN & EISENBERG 1973)。 社会的相互作用の増大は、外部の成犬との共連れ (co-option) (村の犬との相互作用はこの時期に多く観察される) を促進し、強いペアの絆はそれ以上の共連れ防止に大きな原因となっていると思われる。 これらの推測は有望な仮説かもしれないが、グループサイズの自己調整メカニズムを予見しておらず、また、外部の犬が集団に接近し参加しようとしたときの内集団個体の行動反応に関するデータがないため、弱体化しているのだという。

食料資源の量と分布は、しばしば社会集団の主要な原因、およびグループサイズの決定要因と呼ばれることがよくある (MACDONALD 1983, VON SCHANTZ 1984, MACDONALD & CARR 1989 and in press)。 BOITANI et al. (in press) は、調査地のゴミ捨て場が、季節を問わず過剰な食料を供給する役割を担っていることを論じた。 つまり、グループサイズは、生態学的要因よりも社会的要因に言及されている。 これらの犬の著しい定住性 (philopatry) は、領域継承仮説 (Territory Inheritance Hypothesis) (LINDSTROM 1986) の一般的な前提を満たすものであることは興味深いことである。 つまり、肉食動物の集団生活の進化に関するこの仮説は、親の縄張りへの個体の帰属をより重要視し、BOITANI et al. (in press) が得た結果と一致する最適な集団サイズを予測するものである。 しかし、LINDSTROM の仮説を評価する上で重要な、系統的な亜成犬と分散者との適応度の異なる測定値を報告できなかった。 野犬 (feral dog) の生態は、これらの理論的一般化に対して合理的な検証を行うために、より深く、より長期的な研究を行う必要がある。 さらに、イヌ科動物 (canid) の進化戦略の理論的分析 (BEKOFF et al. 1984) は、人為的および自然的な淘汰圧力の下で生きてきた動物に実施しても、その価値は限定的であると考えられる。

オオカミの群れに見られるような社会構造や社会的絆の欠如が、機能的な単位 (狩猟、縄張り防衛、子供の世話など) として効果的に協力できる野良犬の数に上限を与えていると考えるのが妥当であろう。 このことが、オオカミのパックと比較して、野犬 (feral dog) のグループサイズが小さいことの一因かもしれない (SCOTT & CAUSEY 1973, NESBITT 1975, CAUSEY & CUDE 1980, DANIELS & BEKOFF 1989b, BOITANI et al. in press)。 しかし、イタリアでは、オオカミも野犬 (feral dogs) も、その程度は違えど、人間の迫害と干渉がおそらく最も重要な (そして予測不可能な) 要因であり、直接的または間接的に群れと集団の人口動態に影響を与えているにもかかわらず、状況はイタリアでは曖昧に見える。 このことは、イタリア (1.25/100 km2, ZIMEN & BOITANI 1975) やスペイン (1.5-2/100 km2, VILA et al. 1993) のオオカミが、北アメリカの同緯度のオオカミと比較して、個体数が減少した時期でも低い密度値 (3.4/100 km2, MECH 1986) であることも、説明できると考えられる。 BOITANI et al. (in press) が精力的に行った野外調査による野犬の密度は、1.3-2.0頭/100km2 と控えめに見積もられており、イタリアのオオカミ密度 (ZIMEN & BOITANI 1975) に近いと思われる。 このことは、アブルッツォ州の野犬 (feral dog) グループは、オオカミに作用するのと同じ生態学的要因 (人間による迫害を含む) によって規制される傾向があることを示唆しているが、まったく異なるメカニズムで規制されている可能性がある (BOITANI et al. in press を参照)。

逆に、北アメリカにおけるオオカミの密度は、基本的に有蹄類の (ungulate) バイオマスの入手可能性によって調節されているようであり (KEITH 1983)、オオカミの社会行動を通じて、その数値的・機能的反応に影響を及ぼしている。

繁殖 (reproduction) と生活史 (life histories)

繁殖 (Breeding)

飼い犬 (Domestic dogs) は、季節的なパターンはないものの、通常1年に2回繁殖する。 野犬 (feral dogs) では、BOITANI et al. (in press) は、平均7.3ヶ月 (範囲6.5~10ヶ月) の発情期間隔を見つけた。 分娩 (parturitions) の 50% は2-5月に発生していることから、春に繁殖が増加し、それ以外は年間を通じて分散していることがわかる。 春に集中しているのは事実だが、メスの間で実際に繁殖の同期がとれているかどうかはまだ判断できない。 MACDONALD & CARR (in press) は、彼らの犬において、より同期した繁殖を報告し、これを集団の安定期と呼んでいる。 つまり、この仮説は、BOITANI et al (in press) のデータと一致し、さらなる観察が必要である。 春と秋に繁殖が増えることは GIPSON (1972) が報告し、DANIELS & BEKOFF (1989b) がその可能性を示唆している。 繁殖が行われる時期は、子犬の生存率の観点から重要な適応的価値を持ち、イタリアの野生イヌ科動物 (wild canids) は一般に4月 (Vulpes vulpes) と4〜5月 (Canis lupus) に出産する (BOITANI 1981)。 ただし、この点に関しては、観察された野犬 (feral dogs) の発情周期 (oestrus cycles) の春の集中が、他の野生のイヌ科動物 (wild canids) との収束戦略 (converging strategy) を非常に早い段階で示している可能性は極めて低い。 犬の集団の寿命と生存率の低さから、戦略を成功させるための十分な時間を確保することはできない。 これはむしろ、オオカミ (SEAL & MECH 1983, SEAL et al. 1987) やケープ狩猟犬 (CUNNINGHAM 1905) から推測されるような、内因性の繁殖リズムを光周期に同期させる生理的可能性という祖先の条件の名残なのかもしれない。 一方,研究グループの繁殖雌の同期性の欠如 (BOITANI et al. in press) は、子孫の発情周期の年間を通しての偶然の分布と同様に、人為的淘汰による先祖代々の生殖形質の変化、つまり、生殖に対する社会的統制に対する感受性の喪失および光周期同期からの逃避 (PACKARD et al. 1985)、の現れかもしれない。

オオカミの同じ群れの中で 2 頭の子をうまく育てた例もあるが (MURIE 1944, VAN BALLENBERGHE 1983, MECH & NELSON 1989)、繁殖は単一の支配雌 (dominant female) に制限するのが一般的であり (たとえば、RABB et al 1967, MECH 1970, ZIMEN 1976, PACKARD & MECH 1980, HARRINGTON et al 1982)、それは従属的動物の生殖遅延によって達成されている (PACKARD et al.1983, 1985)。 イタリアで調査された野犬 (feral dog) グループ (BOITANI et al. in press) では、(従属的な) 成犬の性行動に対する社会的コントロールの形跡は見られなかった。 すべてのメスが生殖を行い、人口増加の可能性を最大限秘めたグループとなった。

巣作り (Denning) と父親による養育 (parental care)

BOITANI et al. (in press) は、野犬 (feral dog) の雌の 1 頭による巣作りと子犬の飼育が 5 か月以上続き、グループが分裂したケースを 1 例だけ観察した。 他のすべての巣作り活動において、雌は常に他のグループメンバーによる世話や脅威を受けることなく子犬を育て、巣穴はグループの伝統的なコアエリア内またはその近辺に設置された。 巣穴のメスは、ほとんどの時間を巣穴で過ごし、最も近い餌場へ頻繁に訪れる。 グループの伝統的な生息範囲内で子育てをする雌の巣には、他のグループのメンバーが訪れることが多かったが、ひと腹の子 (litters) の共同養育の兆候は見られなかった (BOITANI et al. in press)。 生後数週間の子犬は、母親が餌を与えている間、巣穴で放置されることが多く、捕食による乳児死亡率がかなり高いことが考えられる (BOITANI et al. in press)。 DANIELS (1988) および DANIELS & BEKOFF (1989b) により、野犬 (feral dogs) では、グループから離れた場所で巣作りと子犬を飼育することが報告されている。 一方、群れで生活するイヌ科動物 (canids) の適応戦略として、巣作りの際のグループ分割は、群れの同種親の養育 (アロパレンタルケア) の負担を軽減し、支配的な雌による子殺しの脅威を軽減する方法として示唆されている (DANIELS & BEKOFF 1989b) が、他方、子育てへの集団参加は、雌を子動物の世話から解放し、他の捕食者から子をより保護するという正反対の理由から適応的である (KLEIMAN & EISENBERG 1973)。 群れ分裂の淘汰圧がない場合、グループのテリトリー内で巣を作ることで、侵入者や潜在的な捕食者からの保護を高めることができる。

オオカミの場合、巣穴は一般に群れのテリトリー内にあり (LOWHEAD 1983, CIUCCI & MECH 1992)、巣穴期間中の群れの動きはすべて巣穴の位置に影響され、成獣と1歳児は定期的に戻って子犬に吐き戻して食べさせたり世話をしたりする (MURIE 1944, MECH 1970, CARBYN 1974, VAN BALLENBERGHE et al. 1975, HARRINGTON & MECH 1982)。 オオカミでは、親族の子孫の共同飼育における補助動物 (非繁殖期の成犬や1歳児) の役割は、近年、個体選択の観点から解釈されており (PACKARD & MECH 1980, HARRINGTON & MECH 1982, HARRINGTON et al. 1983)、利他主義の一形態ではなく、一時的に繁殖を延期する個体の最適繁殖戦略の一部とみなされている (PACKARD et al.1983)。

野犬 (feral dogs) の場合、雄の介助なしに子犬を育てるのは、人間が介助を行った家畜化の過程によるものかもしれない。 実際、イヌはすべてのイヌ科動物 (canids) の中で唯一、父親による養育 (parental care) が全くない (KLEIMAN & MALCOM 1981)。 このことは、野犬 (feral dogs) のグループでは、成犬でほとんど生殖が延期されることがないにもかかわらず、どの性別の補助動物もいないことが明らかであることも説明できるだろう。 すなわち、部下の性的行動に対する社会的統制がないこと (PACKARD et al.1985) が、潜在的な補助動物の有無に影響すると思われる。

同腹子数 (Litter size) と子犬の生存率 (pup survival)

犬は17頭まで産むことが知られているが、10頭までが最も一般的な範囲である (KLEIMAN 1968, KLEIMAN & EISENBERG 1973)。 野犬 (feral dogs) については、NESBITT (1975) によって 5 頭の同腹児と、他の 2 頭の同腹児の合計 8 頭が報告されており、DANIELS & BEKOFF (1989b) は 2 回の同腹児から合計 10 頭の子犬が報告されている。 ただし、同腹児数の推定は、出生時および出生後の死亡率がすでに推定値の低下に寄与している可能性がある場合、子犬が移動する前 (2〜4週齢) にめったに発生しない最初の目撃に依存している。 BOITANI et al. (in press) の報告によると、平均同腹児数 (3.63 頭/腹、n = 11) は、他の場所で野犬 (feral dogs) について以前に報告されたものよりも小さく、また、MACDONALD & CARR (in press) が同じ調査地域で異なる期間とグループ構成で得た数値 (5.5 頭/腹、n = 17) よりも低いと報告されている。 雌犬の栄養状態、家畜流行病の発生、子犬間の競争、および捕食などの要因に加えて、異なる同腹子数の値は、品種によって年齢に応じた繁殖力が大きく異なることや、調査対象グループの年齢構成が異なることによって説明できるかもしれない。

野生のオオカミの平均同腹子数は 4.0 から 6.5 (MECH 1970) であり、その推定値のほとんどはイヌと同様、分娩後の同腹子の最初の観察に基づくものであると推定されている。 MECH (1977a) は、授乳中の雌の活動的な乳頭数と、真夏と冬の子犬の観察に基づいて、1 腹あたり 3.0 から 3.4 頭の子犬の平均産子数を報告しており、平均よりも低い推定値は、集団が直面していたかなりの栄養ストレスと関連していると推定した。 しかし、餌の有無が繁殖雌の出産率に影響するのか、生後間もない子犬の生存率に影響するのか、あるいはその両方に影響するのかは、まだ不明である。

オオカミの子供の生存率は、栄養不良の状態では一般に低く (MECH 1970, VAN BALLENBERGHE & MECH 1975, SEAL et al. 1975)、集団内の補助動物の数と正の相関があるようだ (HARRINGTON et al. 1983)。 野犬 (feral dogs) の生存率は、オオカミと比較して一般的に低い。つまり、 BOITANI et al. (in press) によると、40頭の子犬のうち、生後70日以内に28頭 (70%) が死亡、120日以内に9頭 (22.5%) が死亡、1年以内に1頭 (2.5%) が死亡、1歳まで生存したのは2頭 (5%) だった。 これらの値は、NESBITT (1975), SCOTT & CAUSEY (1973), DANIELS & BEKOFF (1989b), MACDONALD & CARR (in press) によって発見された同様の値と比較される。 BOITANI et al. (in press) が発見した生後4ヶ月の生存率の低さ (7.5%) は、死亡率の大半がこの自立初期の時期に発生していることを明確に示しており、本稿の目的に関連する以下の 4 つの要因によるものと思われる。

  1. 共同体の助けがない場合、子犬はしばしば巣穴に放置され、捕食のリスクが高まる
  2. 生後 6~8 週目くらいから、大人の監視なしに巣穴の周辺を探索するようになり、この場合も捕食の危険性が高まる
  3. 母親が新しい発情周期に入ると、子供への関心が低下する可能性が高く、また
  4. 年 2 回の不定期な繁殖サイクルのため、天候不順の時期に生まれる子も少なくない。 したがって、早期死亡率についてはさらなる研究が必要であるが、野犬 (feral dogs) の繁殖効率の低さは、繁殖生態の以下の 2 つの関連する側面がほとんど影響しているようである。
  5. 子孫の共同養育のための補助動物を提供しないグループの社会環境、および
  6. 雌の発情周期の回数や時期など、生殖生理に関すること。 このような状態が自然環境に移されると、生殖障害と子孫/幼体の死亡率が高くなる。

人口統計学的に見ても、1歳まで 5% しか生存していないことは、放し飼いの犬 (free-ranging dogs) が個体数レベルを維持できない理由の理解に寄与する。 このことは、都市の犬研究 (BECK 1973, DANIELS 1983a) ですでに強調されており、アリゾナ州の野良犬については DANIELS & BEKOFF (1989b) が未解決のままであった。 BOITANI et al. (in press) が調査した地域では、野犬 (feral dog) グループは、外部からの新しいグループメンバー (すなわち、放し飼い (free-ranging) や野良犬 (stray dogs)) の継続的なメンバー補充なしには、観察された集団レベルを維持できなかったと思われる。

性比 (Sex ratio)

BOITANI et al. (in press) が野犬 (feral dogs) で観察した負の人口バランスに寄与する一連のパラメータの重要な構成要素は、歪んだ性比である。 都市部および農村/郊外の犬の集団は一般に雄に偏った性比を示し、1.6:1 から 5:1 の範囲で雄が有利である (BECK 1973, DANIELS 1983a, BOITANI & RACANA 1984, DANIELS & BEKOFF 1989b, WHO 1988)。 MACDONALD & CARR (in press) は、BOITANI et al. (in press) が 2:1 から 1.5:1 (様々な段階でのグループ構成、グループの成犬のみを考慮) の性比を報告したイタリアの同じ調査地域の村で、4:1 と 2.6:1 の雄を支持する比率を示した。 これらの調査結果の考えられる理由はすでに議論されている (BECK 1973, DANIELS & BEKOFF 1989b)。 つまり、都市部の犬の性比は、ペットとしてオスが直接選ばれることと、望まない妊娠を避けるために一時的に、あるいは新生児として殺すことで永久的にメスを集団から選択的に排除することに起因している。
しかし、雄雌の死亡率に差が出ることは、人為的な干渉以外では起こり得ないと考えられる。 また、DANIELS & BEKOFF (1989b) は、前述の都市部に隣接するアリゾナ州の野犬 (feral dog) 集団において、雌雄比が 3.5:1 であることを報告している。 つまり、彼らは、野犬 (feral dogs) の重要な供給源が都市や農村部から排除された雌の遺棄であると示唆することによって、この結果を説明している。 これは、新生児の歪んだ性比、または性別間の生存率の差に関する証拠が得られなかったため、弱いながらも唯一の論理的な説明のように思われた。

これらの結果は、 BOITANI et al (in press) によって発見された全体的な同腹子の組成が、雄に有利に大きく歪んでいる (3.2:1) ことを考慮すると、さらに議論が難しくなる。 オオカミの場合、MECH (1975) は、栄養が乏しい場合や成獣間の餌の競争が激しい場合に、子オオカミの性比がオスに偏ることを発見し、これが個体数の調整過程に寄与する可能性を示唆した。 犬の同腹性比が雄に有利であることは、野犬 (feral dogs) が同様の、しかし未知の生理学的メカニズムを保持していることを示唆している可能性があるが (MECH 1975)、同腹性比を成犬の性比と比較すると、雌の生存率が高いことが唯一の説明となる。 このことは、以下の 2 つに関係している可能性がある。

  1. 雄の子犬が巣穴の周辺を探索する傾向が強いこと、および
  2. 異なる性別の子に対する母親の養育の違い。 両性の生存率と栄養状態、定住性の傾向、母犬の養育との関係については、さらなる研究が必要である。

空間利用形態 (space use patterns)

行動圏 (Home-range)

野犬 (feral dogs) の空間利用は、他の多くの野生イヌ科動物 (wild canids) と違いはなく、生活史的活動のために明確で伝統的な領域 (行動圏) を利用し、その程度、強度、可変性は様々だが、侵入者から防衛する傾向がある (すなわち、テリトリー) (SCOTT & CAUSEY 1973, CAUSEY & CUDE 1980, GIPSON 1983, DANIELS & BEKOFF 1989a, BOITANI et al. in press)。 イヌ科動物 (canids) (KLEIMAN & BRADY 1978)、特にイヌの生物学的な答えに影響を与えるには、行動圏のサイズと構成を決定するいくつかの環境要因に加えて、人間の活動が強力な役割を果たすことができる。

WBOITANI et al. (in press) は、57.8km2 の行動圏の中で、新しい食物資源 (すなわち、大型家畜の腐肉) の発見、人間の存在による妨害、巣作り活動、新しく補充した犬の以前の空間使用パターン、ゴミ捨て場の食物利用率の予測できない変動、オオカミによる妨害の可能性などの要因に応じて、コアエリアを移動しながら一度に小さな部分を使用していたことを明らかにした。 これらの要因は季節的な予測はできず、グループヒストリーの中にランダムに出現する。 DANIELS & BEKOFF (1989a) は、調査した 2 つのグループのうち 1 つについて、従属する子犬の存在に関連する季節的な変化を報告したが、もう 1 つはそのコアエリアの使用に変化を示さなかったという。 2 つのグループの行動の理由として、エネルギー要求量の違いが示唆された (DANIELS & BEKOFF 1989a)。 SCOTT & CAUSEY (1973) も、子犬の存在に応じてコアエリアが変化することを発見した。

都市部のキツネでは、個体群構造や餌の利用可能性の急激な変化による社会的不安定の結果として、漂流範囲が記録されている (DONCASTER & MACDONALD 1991)。 BOITANI et al. (in press) は、季節的な範囲の漂流は、直接的な環境の変化だけでなく、新しいグループのメンバーがその地域について以前に知っていたことの影響も反映していると指摘している。 コアエリアのランダムな変更は、3 つの主要な代替エリアと長期的な同じ境界線内で維持され、エリア使用の伝統がよりランダムな移動を防いでいることを示している。

行動圏の推定は、採用した手法の結果として非常に異なる結果をもたらすことがあり、異なる研究のデータを解釈する際にはこれを考慮する必要がある (MACDONALD et al. 1980)。 さらに、テレメトリー技術は、生息域や生息地の利用範囲を評価する上で、他の種類の情報 (目視による観察、雪上の足跡など) と比較することが難しいデータ群を生成する。 これらの考慮事項は、これまでに報告された野犬 (feral dogs) の行動圏サイズのばらつきの大部分を説明する可能性がある (レビューについては、BOITANI et al. in press を参照)。 無線テレメトリー調査に限定すると、野犬 (feral dogs) の行動圏サイズは、アラバマ州中東部の 3 つの異なるグループで 4.44〜10.4km2 (SCOTT & CAUSEY 1973) から、アラバマ州の 18.72 km2 (CAUSEY & CUDE 1980)、アラスカの 70 km2 (GIPSON 1983) まで報告されている。 BOITANI et al. (in press) は、行動圏サイズの決定に大きな役割を果たすと考えられる要因、すなわち、巣穴、ゴミ捨て場、休息 (避難) 場所の相対距離について、グループサイズとはほぼ無関係であることを論じた。

都市部や郊外の犬の生息域は、2~11ha から 61ha とかなり狭いことが報告されている (BECK 1973, FOX et al. 1975, DANIELS 1983a, BERMAN & DUNBAR 1983, SANTAMARIA et al. 1990)。 食料の入手可能なパターン、小さなグループサイズ、社会的接触の減少は、おそらくこのような行動の決定要因であり、野犬 (feral dog) のデータで示唆されているメカニズムを確認するものである。

オオカミの平均的なテリトリーサイズは、オオカミが主にオジロジカ (Odocoileus virginianus) を捕食する地域の 78km2から (FULLER 1989)、ムース (Alces alces) とカリブー (Rangifer tarandus) を主食とする高緯度地域の 2.541km2 (BALLARD et al.1987) に及ぶと考えられる。 テリトリーサイズに見られる多くの変動は、いくつかの要因に依存していると解釈されているが、その中でも最も関連性が高いと思われるのは、群れのサイズ (PETERSON et al.1984, MESSIER 1985, BALLARD et al. 1987)、獲物密度 (MESSIER 1985)、オオカミ集団密度 (FRITTS & MECH 1981) とされている。 これらすべての要因がテリトリーサイズに及ぼす影響は、地域のオオカミ集団に対する人間の搾取の度合いにも依存するようだ (PETERSON et al.1984, BALLARD et al.1987)。 オオカミのテリトリー内では、夏には巣穴や待ち合わせ場所に子オオカミがいるため、冬には獲物の捕食効果を高めるために、その利用が変化することが報告されている (FRITTS & MECH 1981, MESSIER 1985)。 このように、野犬 (feral dogs) の空間利用に見られる柔軟性は、野生の祖先と同じ戦略である可能性があり、地域的な条件によって、テリトリーの利用が資源利用や生存を最適化する傾向にあると考えるのが妥当であろう。 実際、BOITANI et al. (in press) が野犬 (feral dogs) を調査したのと同じ地域で、放射性同位元素で標識されたオオカミは同様のテリトリー利用パターンを示している (CIUCCI 1994)。

縄張り意識 (Territoriality)

野犬 (feral dogs) の縄張り行動は、巣穴の周辺だけでなく、コアエリア全体や年間を通じて見られることから、BOITANI et al. (in press) は、これまでの報告 (SCOTT & FULLER 1965, BEKOFF 1979, DANIELS & BEKOFF 1989a, BERMAN & DUNBAR 1983, BOITANI & RACANA 1984) よりも安定して観察できた。 さらに、このパターンは MACDONALD & CARR (in press) からも同じ地域で報告を受けている。 テリトリー防衛は、直接の遭遇 (同種の侵入者を追いかける、あるいは向かい合う)、声による宣伝 (吠える)、同じテリトリーに他の安定した犬群が調査期間中にいないことの観察から推察される。 においつけの痕跡があっても、オオカミで行われてきたような縄張り維持のためのマーキングの役割を明らかにする試みは行われていない (PETERS & MECH 1975, ROTHMAN & MECH 1979)。

BOITANI et al. (in press) が報告した縄張り行動の頻度が高いのは、グループ内での統合度が高いこと、他の犬からの隔離度が高いこと、食料資源がゴミ捨て場の局所的なパッチに多く集中していることが関係しているのかもしれない。 また、同じ調査地域にある 2 つのオオカミの群れのテリトリーと一部重なったことで、犬の全般的な警戒心やテリトリー行動が高まったのかもしれない。 さらに、テリトリー行動に対する犬種の影響も考慮する必要がある。 なぜなら、観察された縄張り意識の程度は、野犬 (feral) グループの繁殖史において優勢なタイプの一つであるマレンマ犬 (Maremma dog) の典型的な特徴を部分的に反映していると思われるからである。

野犬 (feral dogs) とオオカミが直接競合している証拠はないが (オオカミに殺された可能性が高い 1 頭を除いて)、テリトリーが部分的に重なっており、イタリア中部でほぼ同じニッチを共有していることから (BOITANI 1983)、餌と場所をめぐる競合の可能性は高い。 このように、オオカミの存在は、犬の行動圏を形成し、その場所と維持を決定する重要な要素であった可能性がある。 野犬 (feral dogs) のコアエリアがオオカミのコアエリアよりも人里に近く、隣接する 2 つのオオカミのテリトリーの狭間に位置していたことから (CIUCCI 1987, BOITANI et al. in press)、犬のグループは人間の存在から独立して成功できるほど効率的に競争していなかったと考えられる。

オオカミの縄張り行動は調査され (たとえば、PETERS & MECH 1975, HARRINGTON & MECH 1979)、種内密度や餌の豊富さに関連し (たとえば、MECH 1977a, 1986)、人口調節のメカニズムとして解釈されてきた (PACKARD & MECH 1980)。 縄張り行動の直接要因はイヌとオオカミで似ているかもしれないが (すなわち、縄張り内の資源の防衛)、野犬 (feral dogs) ではそれが人口調節のメカニズムとして働くとは考えにくい。 というのも、実際、そうであるためには、野犬 (feral dog) 集団は繁殖的に自立しており、集団内の性行動は社会的コントロールに敏感であると予想される (PACKARD & MECH 1980)。 しかし、BOITANI et al. (in press) が調査したグループでは、これら 2 つの条件は満たされていない。 野犬 (feral dogs) の縄張りパターンやメカニズムの進化をさらに調査し、飽和状態のオオカミ集団に典型的な群間の遭遇を最小化するルールを探すことは興味深い (たとえば、PETERS & MECH 1975, HARRINGTON & MECH 1979)。 これにより、匂いマーキングや発声行動の進化、およびそれらの形成に自然淘汰と人口淘汰が果たす役割の理解に貢献することが期待される。

行動パターン (activity patterns)

夜行性および薄明薄暮性活動の傾向は、BECK (1973) が都市部の犬について初めて報告したもので、夏期には主に午後 7 時〜 10 時と午前 5 時〜 8 時の 2 回に限定されたものだった。 BERMAN & DUNBAR (1983) は、カリフォルニア州バークレーの犬について、同様の活動分布の二峰性モデルを発見した。 HIRATA et al. (1986) の報告によると、日本のいくつかの町の犬は午前 0 時から 6 時までが最も活動的で、午前 6 時の直前と前後がピークであった。 夜明けのピークが優勢であることは、バージニア州の放し飼いの田舎犬 (free-ranging rural dogs) ですでに観察されており (PERRY & GILES 1971)、二峰性の分布は野犬 (feral dogs) に関するいくつかの研究によって確認されていた (SCOTT & CAUSEY 1973, CAUSEY & CUDE 1980, BOITANI & RACANA 1984, DANIELS & BEKOFF 1989a)。 NESBITT (1975) は、同様の時間的パターンについて、野犬 (feral dogs) は一日中活動し移動することができるが、人間との接触を避けるために夜行性および薄明薄暮時間に制限されることを示唆した。 BOITANI et al. (in press) は、NESBITT の仮説を裏付けるような同様の結果を発表した。 つまり、人間の存在感が薄いときには、雌犬は主に昼間に移動し、その後、村に近いより「危険」なゴミ捨て場を訪れるときには夜行性の習慣を再開した。 人間を避けることは夜行性の活動の説明にはなるが、すべての犬、すべての季節に見られる二峰性のパターンを説明することはできない。 17種のイヌ科動物 (canids) のうち9種は夜行性である (BEKOFF et al.1981 を参照): また、二峰性の活動パターンは、非常に多くの肉食動物で知られており (Vulpes fulva: ABLES 1975; Crocuta crocuta: KRUUK 1972; Chrysocyon brachyurus: DIETZ 1984)、生物学的に共通のパターンである。 ASCHOFF (1966) はこれを「bigeminus pattern (二峰性パターン)」と呼び、環境圧力とは無関係な生得的な行動特性であることを示唆した。 ASCHOFF (1966) は、2回目 (明け方) のピークが低くなることを指摘しているが、BOITANI et al. (in press) の研究ではそのようなことはなく、常に明け方に最大活動レベルが観察されている。

オオカミの行動パターンは、人間の干渉を含むさまざまな環境条件の影響を大きく受ける。 北米のオオカミの活動は、主に直接観察によって研究されてきたため、ほとんどのデータは基本的に日中に限定されている。 しかし、ラジオテレメトリーデータ (KOLENOSKY & JOHNSTON 1967, BALLARD et al. 1991) やその他の直接観察 (MURIE 1944, JOSLIN 1966, BALLARD et al. 1991) は、オオカミの夜間活動パターンを確認する傾向があり、薄暮時間 (明け方と日没) が巣やランデブーサイトへの到着と出発の最も可能性が高い時間帯となる。 それにもかかわらず、他の著者は、オオカミは日中も活動する傾向があり、この活動 (移動、旅行、狩猟) の割合は冬期に高くなる傾向があり、また、オオカミの栄養状態と間接的に相関していると報告している (MECH 1977b, PETERSON et al. 1984)。 西ヨーロッパの研究では、24時間の監視サイクルに基づき、日中のオオカミの活動はほとんどなく、日没から夜明けにかけて主に活動すると描かれている (BOITANI 1982, URIOS et al. 1993, VILA et al. 1993, CIUCCI 1994)。 スペインでは、オオカミの活動を分析した結果、夜間の二峰性のパターンが確認された (URIOS et al. 1993, VILA et al. 1993) が、イタリアの人口の多い地域では、夜間の活動はほとんど一峰性で、夜間に活動が低下する期間がない (CIUCCI 1994)。 人為的干渉の多い地域では、夜明けと日没に活動のピークがあるため、オオカミと人間の遭遇の可能性が高くなり、特にオオカミの避難場所や餌場が人間の集落に点在しているような場所では、このようなことが予想される (CIUCCI 1994)。

野犬 (feral dog) の 24 時間活動パターンに関する今回の研究は、基本的に記述的なものであり、活動の環境相関 (餌の豊富さ、種内・種間干渉、気候・生理的要因など) は、より深い調査に値するが、イヌ科動物 (candis) の生来のリズム性は、人口淘汰によって大きく変化しておらず、その野犬 (feral dog) の活動パターンは彼らの祖先の柔軟性を反映しているだけかもしれないと確認する傾向にある。

食料源 (food sources) と捕食 (predation)

野生動物や家畜を捕食する可能性があることから、野犬 (feral dogs) の研究が始まった。 つまり、野犬は、北アメリカではシカを、イタリアでは家畜を捕食していると一般紙から非難されてきたが、その裏付けはほとんどない (オオカミと犬の競争に関する短い総説は、BOITANI 1983 を参照)。 BOITANI et al. (in press) と SCOTT & CAUSEY (1973) は、家畜に対する捕食の証拠を見つけられなかった。 NESBITT (1975) の 5 年間の調査では、家畜の略奪は 1 件も記録されていない。 この最後の状況は、BOITANI et al. (in press) が発見した、牛が地域の大部分で放し飼いにされていたにもかかわらず、干渉が観察されなかった状況に似ている。 一方、NESBITT (1975) の調査では、放し飼いのペットの犬 (free-ranging pet dog) がその地域で 3 頭の子牛を殺したと報告されている。 これは、私たちの一人がイタリアの他の地域で記録することができた、放し飼いの飼い犬 (free-ranging owned dogs) による家畜への深刻な被害 (L. BOITANI 未発表) に匹敵する。 このように、いくつかの証拠は、家畜の略奪の主な原因が基本的に放し飼いの飼い犬 (free-ranging owned dogs) と野良犬 (stray dogs) であることを示唆しているが、このテーマについてはさらなる調査が必要である。 野生動物の捕食については、BOITANI et al. (in press) によると、この地域に存在する唯一の有蹄類であるイノシシ (Sus scrofa) が犬の糞から発見されることはほとんどなく、生きたイノシシを捕食したという証拠はまだ収集されていないと報告されている。 野犬 (feral dogs) は、その食生態に関する過去のすべての研究によって、野生動物にほとんど影響を与えないことが報告されている (PERRY & GILES 1971, SCOTT & CAUSEY 1973, GIPSON & SEALANDER 1977, CAUSEY & CUDE 1980)。 無線標識を付けて訓練した犬を使ったさまざまな実験的狩猟では、シカの狩猟が成功することを証明できなかった (PROGULSKE & BASKETT 1958, CORBETT et al. 1971, SWEENEY et al. 1971, OLSON 1974)。 一方、HAWKINS et al. (1970) はイリノイ州で、LOWRY & MACARTHUR (1978) はアイダホ州で、それぞれ狩猟成功の割合が少なかったと報告している。 最も重要なのは、コロラド州の DENNEY (1974) とバージニア州の GAVITT et al. (1974) が、野犬 (feral dogs) に殺されたシカを報告していることである。 家畜については、代替食糧資源の有無 (およびその安定性と予測可能性)、犬のグループサイズと品種、採餌の伝統、畜産技術、野生動物の分布と密度、人間の迫害レベルなど、地域の条件によって、これらの明らかに矛盾する結果が説明できるだろう。 これらのすべての要因が何らかの形で生来の捕食性向をさまざまな程度に調節し、それはグループ内の優勢な品種タイプの態度 (人工淘汰の影響) にも強く依存していると仮定するのが妥当であろう。 その他、グループ内のある個体の過去の経験など (すなわち、文化的伝統)、何気ない要因がグループ全体の食習慣に影響を与えるかもしれない。 つまり、獲物への曝露、捕食実験の成功、文化の継承は、狩猟技術、態度、獲物の種類の好みを決める重要な要素である。

SCOTT & CAUSEY (1973) and BOITANI et al. (in press) は、短時間で、明らかに協調性のない、狩りの失敗した追跡を報告しており、その間犬は常に吠えていた。 つまり、野犬 (feral dog) グループにおける捕食傾向は、長期的には、協調的で有効な狩り技術の欠如による試みの失敗によって低下すると考えられる。 もしこれが本当なら、代替食がある場合、犬のグループはより柔軟な食生活を送り、単体で獲りやすいものを食事に取り入れるようになると考えられる。 あるいは、彼らの食性はより安定していて、予測可能かもしれない。 これは、詳細は報告されていないが、野犬 (feral dogs) がげっ歯類やウサギなどの小動物を狩って食べていることが、複数の著者によって報告されている。 ガラパゴス諸島でウミイグアナ (Amblyrhynchus cristatus) を捕食する野犬 (feral dogs) (KRUUK & SNELL 1981, BARNETT & RUDD 1983)、ベネズエラのリャノスでカピバラ (Hydrochoerus hydrochaeris) を捕食する野犬・準野犬 (feral and semi-feral) (MACDONALD 1981) について、特殊な捕食状態の詳細説明がなされた。 BOITANI et al. (in press) and MACDONALD & CARR (in press) は、野犬 (feral dogs) の行動圏にあるいくつかのゴミ捨て場にあるゴミが野犬にとって重要であることを強調している。

オオカミの子の狩猟効率の向上には、親からの教育、獲物との接触、成功体験が重要であることは、古くから報告されている (MECH 1970)。 オオカミの同じ集団生活は、他の捕食者 (たとえばハイエナ: KRUUK 1972) でも示唆されているように、より体格の大きな獲物を克服するための方法と解釈されてきた (MECH 1970)。 実際、各個人が効率的な狩猟ユニット内に統合されるのは、オオカミの群れと同じ社会構造である。 しかし、リーダーシップに疑問があり、個体間の社会的結びつきがより柔軟な野犬 (feral dogs) グループでは、捕食傾向があったとしても、その効果は低く、ほとんどが非調整的で、厳しい制限 (殺傷率、獲物の種類とサイズ、エネルギー的コストと利益のバランス、機能反応までの時間など) があると予想される。 したがって、野犬 (feral dogs) の社会構造を考えると、より小型で捕獲しやすいものを含む多様な食性 (上記参照) を期待するのが合理的と思われる。 これがオーストラリアのディンゴ (dingo) にも当てはまるように見えることを報告すること (CORBETT 1989) は注目に値する。 しかし、野生動物を捕食するこれらの犬のグループ (DENNEY 1974, GAVITT et al. 1974) については、ほとんどのオオカミ-捕食システム (MECH 1977a, 1977b; PETERSON 1977; NELSON & MECH 1981; MESSIER 1985) を制御するのと同じメカニズムが有効とは期待できず、野犬 (feral dogs) 生態は自己制御的ではない生物特性 (たとえば、生産性や生存) によって規定されているようである。 特に、犬が野生動物を捕食することが知られている地域や、より予測しやすい食料源 (つまり、ゴミ捨て場) がない場合には、さらなる調査が必要である。

結語 (CONCLUDING REMARKS)

人間との接触を避けるという行動傾向に支配された野犬 (feral dogs) の生態は、一方では祖先の柔軟性にまだ似ているが、他方では本来の適性を満たしていない複雑な生物学的特徴によって形成されているようである。

野犬 (feral dogs) の生存戦略には、集団生活の傾向、縄張り意識、捕食本能、生態学的な高い柔軟性など、祖先の特徴がある程度残っている。 これらの形質のほとんどは適応的価値がないように見えるが (我々の仮説が仮定したように、「進化の慣性 (evolutionary inertia)」または人工淘汰の付帯徴候 (epiphenomena) として)、犬の祖先の柔軟性は、食習慣、空間使用パターン、活動パターンに多く反映されているようだ。

犬の柔軟性は、行動学的および形態学的形質の両方において、家畜化プロセスによって強化された。 特に、家畜化された環境において重要な適応的価値 (たとえば、攻撃性が低い、人間への依存度が高い、性成熟が早い、服従しやすい) を持つ幼獣の特徴を成獣になっても保持すること (つまり、ネオテニー (neoteny)) は、行動発達においてより大きな可塑性をもたらした (GINSBURG & SCHOTTE 1978, FRANK 1980, FRANK & FRANK 1982, PRICE 1984)。 自然淘汰の圧力を完全に逃れることで、犬は緩和された選択を通じてより大きな可塑性を獲得した。 オオカミと比較して犬のこの強化された柔軟性は、犬が自然淘汰を乗り越え、自然環境の中で生き残ることを部分的に可能にする重要なメカニズムであると思われる。 一方、家畜化プロセスは、いくつかの行動特性の反応閾値を変化させ、観察能力を低下させ、認知メカニズムに影響を与え、「安全な」環境で何世代も生活することにより、環境変化に対する全体的な反応性を低下させることによって、適性の損失に大きく関わっている (PRICE 1984)。 野犬 (feral dogs) の場合、このような量的な変化は、現在でも様々な程度で見られる。

現在、野犬 (feral dogs) のデータは限られており、社会生態学的に最も重要な形質が適応的でないことが確認されているにもかかわらず、私たちの最初の仮説を十分に検証することはできない。 つまり、野犬 (feral dogs) は繁殖的に自立しておらず、幼少期の死亡率が高く、食料、共同利用可能な個体、場所を間接的に人間に依存しており、その人口動態は確率的で予測不可能なメカニズムに支配されているようである (BOITANI et al. in press)。 自身の生態の一部を人間に依存している野犬 (feral dogs) は、人間の活動に関連した何らかの選択の影響を受けている可能性があることは注目に値する (BECK 1973, BRISBIN 1977, DANIELS & BEKOFF 1989c)。 したがって、野犬 (feral dog) の生態は、様々な生息地や生態条件 (つまり、犬の人間への依存度の違い) で大きく異なる可能性がある。 これに加えて、一貫した基準に基づき、明確な時間的スケールに言及した野生状態の運用上の定義がないため、異なる研究間の比較が困難である。 しかし、一般的な分析レベルでは、野犬 (feral dogs) の特徴とそれに見合わない適応的価値は、主に以下の 3 つの生物学的側面から分類することができる。

1. 群居本能

野犬 (feral dogs) の社会集団がオオカミの群れのように機能しないのは、全体に明確な支配・被支配関係がなく、グループのメンバー全員が強固な社会的絆で結ばれていないためである。 このことは、潜在的なグループサイズ、繁殖システム、機能単位としてのグループの効率 (狩猟、縄張り防衛、共同での子育ても含む) に直接影響する。 適合性の観点で最も関連性の高い結果は、以下の 6 つである。

  1. グループサイズの増加に伴い、社会的単位の効率性と機能性に潜在的な限界がある (つまり、グループサイズの潜在的上限)
  2. 個体数の急激な変動の可能性がある。 野犬 (feral dog) グループの社会構造とその発現は、環境的および生態学的条件に関連した、効率的な個体数調整のメカニズムを実現するものではない。
  3. 潜在的な非再生産性の「補助動物」の利用不可能性
  4. 繁殖雌の負のエネルギーバランス
  5. 子犬/若年犬の高い死亡率
  6. (新メンバーの) 補充率の低さ

2. 生理学

人工淘汰の影響を受ける主な形質のうち、犬の生殖は、他の多くの家畜種と同様、繁殖能力の向上と世代時間の短縮に強い影響を及ぼしてきた。 このプロセスが生理学に及ぼす影響は明らかで、雌の繁殖周期の頻度、光周期の同期および社会的統制からの明らかな逃避 (すなわち、生殖の遅延) から推測されるかもしれない。 さらに、十分な証拠はないが、飼い犬 (domestic dog) の免疫防御システムは自然環境では限界があり、子犬や亜成犬の死亡率が高いことが示唆されている (FRANCISCI et al. 1991)。 これら全てが野犬 (feral dogs) の繁殖、生存、メンバー補充に直接影響し、適応度に関して最も重要な結果は以下の 3 つである。

  1. 繁殖雌の負のエネルギーバランス
  2. 子犬/若年犬の高い死亡率
  3. (新メンバーの) 補充率の低さ

3. 行動

個体行動と社会行動の両面で、狩猟、テリトリー防衛、文化継承、繁殖などのグループ活動の有効性は、ある程度制限されているようだ。 適応度の観点で最も関連性の高い結果は、以下の 6 つである。

  1. 低い捕食態度
  2. 低い殺傷率 (捕食効率)
  3. 獲物のサイズの潜在的な制限
  4. 人間への間接的な食料依存
  5. 人間への間接的な空間依存
  6. 子犬に対する同種親の世話の効率の低さまたは欠如

結論として、今回の議論は、オオカミの最も関連性の高い社会生態学的特徴の適応的価値が自然史であることを分析し、野生に戻った犬に対する人口淘汰の影響を評価するための一般的な枠組みを提供すると考えている。 古今東西の自然淘汰圧および人口淘汰圧が混在する結果として、形質の適応的価値を評価するという究極の目標は、達成不可能であると証明されるかもしれない。 また、この議論は、数世代にわたって野生で生活している野犬 (feral dogs) に適用されることがほとんどであることを強調しておく必要がある。 したがって、私たちの結論は、自然淘汰の影響下で何百年も生きてきた野犬 (feral dog) の集団 (たとえば、パリア犬 (pariah dogs) やディンゴ (dingoes)) には当てはまらない、つまり、家畜の祖先から生殖的に隔離される期間が長いと、表現型のばらつきが小さくなり、遺伝的に決定される可能性のある行動上の違いが生じる可能性がある。

野犬 (feral dog) の生態を、異なる生態条件、より長い世代的な時間軸で調査することで、ここで論じた問題に対する深い洞察が得られるかもしれない。 将来の研究では、野犬 (feral dog) グループのさまざまな優勢な品種タイプと、それらの雑種の歴史が、分析された社会生態学的特性の表現 (性質、量、頻度) に果たす役割にも対処する必要がある。 この点で、今後の研究が、我々の議論で強調された作業仮説のいくつかから恩恵を受けることを期待している。

謝辞

中央イタリアの野犬に関する研究に貢献した F. Francisci と G. Andreoli に大いに感謝する。
また、本原稿の初期バージョンに多大なコメントをいただいた F. Dessì-Fulgheri、J. Clutton-Brock、匿名のレフリーに感謝する。 本論文は、Regione Toscana の助成金により一部支援された。

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訳注


  1. 「野犬 (feral dogs)」は、一般には「ヤケン」と呼ぶが、鳥獣保護法では「ノイヌ」と呼ぶ。詳細は、ノイヌ を参照。 ↩︎

2.6 - Earliest evidence for commensal processes of cat domestication

論文 “Earliest evidence for commensal processes of cat domestication” の日本語訳です。

Yaowu Hu, Songmei Hu, Weilin Wang,, and Changsui WangAuthors Info & Affiliations

December 16, 2013

111 (1) 116-120

https://doi.org/10.1073/pnas.1311439110

https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1311439110



ネコの家畜化の共生過程に関する最古の証拠

意義

イエネコは世界中で最も人気のあるペットの 1 つだが、その家畜化についてはほとんど知られていない。 この研究は、5,300年前に中国の泉福村で生活していたネコを対象としたもので、ヒトとネコとの相互依存関係を示す最古の証拠となる。 同位体データから、人間、齧歯類、そしてネコが相当量のキビ (millet) ベースの食品を食べ、ネコは穀物食の動物を捕食していたことがわかった。 1 匹は老ネコで、1 匹は他のネコに比べて肉が少なくキビを多く食べていたことから、残飯をあさったり、餌をもらったりしていたと考えられる。 さまざまなデータから、貯蔵穀物に対する齧歯類の脅威が示され、農家にとってはネコが有利であり、一方、村の食べ物はネコにとって魅力的であることが示された。 これらの発見は、ネコの家畜化の共生過程についての証拠を提供する。

概要

イエネコは世界的に最も人気のあるペットの 1 つだが、その家畜化の過程はよく分かっていない。 近東のヤマネコは、初期の農業集落の食料源に引き寄せられ、家畜化されるに至った経緯があると考えられている。 人間とネコが密接な関係にあったことは、約9,500年前のキプロス島で人間の近くに埋葬されたヤマネコから判明しているが、最古のイエネコは4,000年前のエジプト美術からしか判明していない。 9,500年から4,000年前のネコの家畜化の重要な時期に関する証拠は不足している。 中国陕西省泉户村 (Quanhucun in Shaanxi) の初期農業村に、5560-5280 cal B.P.と直接年代測定されたネコがいたことを報告する。 これらのネコは、近東ヤマネコの野生範囲から外れており、生物学的に小さいが、イエネコのサイズ範囲内であった。 人間と動物の骨コラーゲンの δ13C 値と δ15N 値から、人間、齧歯類、ネコがキビベースの食品を大量に摂取していることが明らかになった。 仰韶村 (Yangshao) では、貯蔵穀物の脅威を示すネズミ除けの陶器製貯蔵容器があった。

同位体と考古学のデータを総合すると、ネコは古代の農民にとって有利な存在であったことを示している。 また、同位体のデータから、あるネコは予想よりも肉を食べず、キビを使った食品を多く摂取していることがわかり、ヒトの間で拾い食いをしていた、あるいはヒトから食べさせてもらっていたことがわかった。 本研究は、ヒトとネコの共生関係を示す最古の証拠となり、ネコの家畜化について新たな視点を提供するものである。


ネコの家畜化によって、ネコはペットとして広く飼われるようになり、人間の居住地では齧歯類や小動物の捕食者として活躍し、ネコの生息域と個体数は世界的に拡大した。 現在、世界中には 5 億匹以上のネコがいるが、現代世界におけるネコの重要性と人間との長い歴史にもかかわらず、ネコの家畜化に関する考古学的証拠は驚くほど少ない。

現代のヤマネコとイエネコのミトコンドリア DNA の研究により、古代のリビアヤマネコ (Felis silvestris lybica) の集団がイエネコの母系祖先であったことが証明されている (12)。 クリモナス (Klimonas) 遺跡から出土したヤマネコの指骨は、紀元前 11000 年から 10500 年 (すべての年代は現在より前の較正年数で報告されている) にキプロスに持ち込まれたことを示し、人類とネコとの最も古い関係を示している (3)。 キプロスのシルロカンボス (Shillourokambos) 遺跡では、約9,500年前に人間の隣に若いヤマネコが埋葬されている (4)。 エリコ (Jericho) (5) などの近東遺跡から孤立したネコの骨が発見されているが、9000年前から4000年前までのネコの家畜化の重要な時期についてはほとんどわかっていない。 上エジプトの ヒエラコンポリス (Hierakonpolis) にある約5,500年前の墓に埋葬された若いジャングルキャット (Felis chaus) の前肢の骨折が治癒したことから、古代エジプト人がヤマネコを積極的に世話したことがわかった (6, 7)。 しかし、イエネコの最初の証拠は、中王国時代のエジプト美術に基づくもので、その年代は ca. 4000 B.P. (15) とされている。 古代エジプトではネコの売買は禁止されていたが、約3000年前にギリシャに輸出され、そこからヨーロッパに渡った (5)。 ネコが初めて中国に現れたのは、約2000年前と考えられている (1)。 この地域には以前からネコがいたという主張があるが (Table S1)、正確な日付や詳細な生体測定がないため、これらを評価することは困難であった。

現在の考え方では、家畜化は人間と動物の相互主義的な関係であり、人為的な環境あるいは人間のニッチにおいて、自然および人間の指示による選択によって微小進化がもたらされると考えられている (89-10)。 古代のヤギ、ヒツジ、ウシの淘汰や、年齢や性別のプロフィールの研究を通じて、家畜化に至る獲物の経路はよく知られている (11)。 方向性のある経路は、輸送動物の管理を示す病理や囲い (penning indicative) に反映されており、最近では古代の搾乳の証拠にも反映されている (1112)。 イヌ、ブタ、ネコが家畜化されるまでにたどった経路は、「共生経路 (commensal pathway)」だと考えられている (11)。 縄張り意識の強いヤマネコは、穀物貯蔵庫に集まる齧歯類を捕食するため、また人間のニッチにある通年の食料源を利用するために、初期の農村に引き寄せられたという仮説がある (4, 5, 9-10, 13, 14)。 現代社会では、ネコの縄張り行動や単独行動と人間環境における選択過程との関係はよく理解されているが (18)、家畜化に至る共生経路に関する考古学的証拠を見つけることは困難であることが判明している。

中国陕西省泉户村 (Fig. S1) の遺跡で、仰韶文化 (Yangshao Culture) の中晚期 (6000-5000 B.P.) 層からネコ科動物の遺骨が発見され (15)、考古学的データを用いて初期のヒトとネコとの関係を考察する貴重な機会となった。 中国初期のネコ科動物は野生か家畜かという問題に答えるため、また、仰韶村 (Yangshao) におけるネコの役割を調べるため、泉户村 (Quanhucun) のネコ科動物の骨を学際的に分析した。 ここでは、ネコの骨の加速器質量分析 (AMS)-14C 年代測定、ネコの骨格要素の生体計測、人骨・獣骨の炭素・窒素同位体分析について報告する。

考古学的背景

仰韶文化 (紀元前 7,000 〜 5,000 年) は、中国新石器時代の最もよく知られた文化の 1 つで、主に陝西省、山西省、河南省の領土内に分布している。 仰韶村は、家、墓地、集落で構成されており、多くの場合、長期間にわたって大勢の人々が使用していた。 アワ (Setaria italica) やキビ (Panicum miliaceum) が栽培され、家畜化したイノシシ (Sus scrofa) やイヌ (Canis familiaris) が飼われていた (16)。 泉户村遺跡 (北緯 34°32′53″, 東経 109°51′40″) (図S1) は、中国陝西省華県泉户村 (Quanhucun) に位置している。 土器の類型分析から、ほとんどの遺跡は3つの文化段階 (15-17) を持つ仰韶文化 (6000〜5000 B.P.) 中後期のものであることがわかった。 以下に述べる考古学的コンテクストは、すべて仰韶 (Yangshao) 時代に属する。

遺跡からは、住居、貯蔵穴、大量の土器、花や動物の遺体などが発見されたが、人間の埋葬はほとんどなかった。 植物化石や炭化した種子から確認された作物は、主にキビで、米 (イネ、Oryza sativa) も一部含まれていた (18)。 ケープノウサギ (Lepus capensis)、ブタ (S. scrofa)、イエイヌ (C. familiaris)、ニホンジカ (Cervus nippon)、ノロジカ (Capreolus capreolus)、ネコ科 (Felis sp)、トラ (Panthera tigris)、魚 (Pices) とキヌゲネズミ科 (Cricetidae) の 32 種の動物分類が存在した。

8 つのネコ科動物の骨格要素を 表1 にリストし、選択した要素を 図1 に掲載した。 ネコ科動物の骨は、H172、H35、H130 の 3 つのゴミ穴の灰の母材の中で、動物の骨、陶器の破片、骨器、いくつかの石器とともに発見された。 ネコ科動物に加えて、泉户村 (Quanhucun) には齧歯類が存在することを示すいくつかの証拠がある。 また、中国のモグラネズミ (Myospalax sp.) など、キヌゲネズミ科の骨が確認され、齧歯類の直接的な証拠となった (15)。 齧歯類と食糧の関係は、古代の齧歯類の巣穴が穀物貯蔵庫に通じていることから判明した(15)。 また、図S2 に描かれた作物貯蔵容器は、齧歯類が入り込みにくい特殊なデザインで、他の仰韶遺跡でも知られている (15)。

表1.

泉户村 (Quanhucun) 遺跡から出土したネコ科動物の骨格標本 (測定可能な要素を含む部分骨格が複数の穴の状況に分布している部分骨格の存在を示している)

骨格要素場所
左下顎H172D:1Fig.1A
無傷の右上腕骨H172D:1Fig.1B
右骨盤H172D:1
左脛骨近位部H172D:1
左大腿骨遠位部H172D:1
右上腕骨近位部H35D:2
無傷の左骨盤H35D:3図1C
左脛骨近位部H130D:1図1D

図1.

図1 泉户村 (Quanhucun) 遺跡から出土したネコ科動物の標本。主要な体の部位と、歯列が摩耗した高齢の動物の存在であることがわかる。 (A) 第4小臼歯と第1大臼歯が摩耗した左下顎骨、 (B) 右上腕骨、 (C) 左骨盤、 (D) 左脛骨近位部。

結果

AMS-14C 年代測定

AMS-14C 年代測定のために、異なる地層から2つのネコ標本をサンプリングした (表2)。 H130:1 のネコは 5320〜5280 cal B.P.、H172:1 のネコは 5560〜5470 cal B.P. と、SD を一つ採用した場合、それぞれ年代が判明する。 簡単に説明すると、これらのネコは、ca 5,300年前にさかのぼり、200年以上の期間にわたっている。

表2.

泉户村 (Quanhucun) 遺跡から出土した 2 つのネコの標本について、AMS-14C 年代測定データによる早期直接年代を示した。

研究所番号場所14C 年代測定 (B.P.)調整された年代 (cal B.P.)
1σ (68.2%)2σ (95.4%)
BA110854H130:14580 ± 255440∼5420 (7.6%)5450∼5410 (12.7%)
5320∼5280 (55.7%)5330∼5280 (61.8%)
5160∼5140 (4.9%)5170∼5130 (11.5%)
5110∼5070 (9.4%)
BA110855H172:14765 ± 305590∼5570 (8.2%)5590∼5460 (91.0%)
5560∼5470 (60.0%)5380∼5330 (4.4%)

動物考古学的分析

本研究では、従来の形態観察と生体計測を用いたネコの識別と老化に焦点を当てた。 8 個の標本 [識別可能な標本数 (NISP) = 8] は、ネコ科 (felidae cf. Felis sp.) と同定された [訳注1]。 左脛骨近位部2本を基準に最小数 (MNI) を2個体とした。 しかし、遺跡のさまざまなエリアで発掘された穴の骨の分布を考慮すると、研究サンプルには 2 個以上の個体が含まれている可能性がある。 ピット H172D:1 (図1A) の左下顎には、非常に摩耗した第 4 前臼歯と第 1 大臼歯 (肉幹部) が保存されており、高齢の動物であることがわかる。 左上腕骨 (図1B)、左骨盤 (図1C) を含む他の無傷のネコの骨格要素の生体測定値は、表3 に示されている。

[訳注1]: felidae および Felis sp. は「ネコ科」と訳されるが、felidae cf. Felis sp. の正式な役目は分からなかった。

表3.

泉户村 (Quanhucun) のネコ、古代エジプトのネコ (6)、ヨーロッパヤマネコとヨーロッパイエネコ (19) の形態学的比較から、ヤマネコよりもイエネコに近いサイズであることがわかった。

生体パラメータイエネコ (mean ± standard deviation mm)ヨーロッパヤマネコ (mean ± standard deviation mm)泉户村 (Quanhucun) のネコ (mm)古代エジプトのテルエルダバ (Tel el-dab’a) のネコ (mm)古代エジプトのエルカブ (el Kab) のネコ (mm)
Humerus GL96.46 ± 4.89 (n = 62)119.08 ± 4.89 (n = 19)105.6112
Humerus Dp20.32 ± 1.31 (n = 62)24.66 ± 1.85 (n = 19)21.5
Humerus Bd17.91 ± 1.16 (n = 62)22.18 ± 1.63 (n = 19)18.220.5
Humerus SD6.64 ± 0.68 (n = 62)8.04 ± 0.52 (n = 19)7.1
Pelvis GL43.59 ± 2.59 (n = 63)52.7 ± 2.49 (n = 20)79
Pelvis LAR10.96 ± 0.81 (n = 63)12.92 ± 0.79 (n = 20)1113.514
Pelvis SH10.9 ± 0.9 (n = 63)13.18 ± 0.94 (n = 20)9.5

ステップヤマネコ (Felis sylvstris ornata) や中国ヤマネコ (Felis sylvstris bieti) など、アジアのヤマネコの骨格は、世界的にも珍しい。 古代ネコの測定も珍しい。 そこで、泉户村 (Quanhucun) のネコ科動物のサイズを、カルパティア山脈西部の現代ヨーロッパヤマネコ (Felis sylvestris sp.) (19)、チェコスロバキアのブルノ地域の現代イエネコ (19)、古代エジプトのテルエルダバ遺跡とエルカブ遺跡 (6) のネコ科動物の上腕骨と骨盤の標本の公表データ (表3) と比較した。

泉户村 (Quanhucun) H172D:1 のネコの上腕骨の最大長は、ヨーロッパのイエネコよりも大きいが、ヨーロッパのヤマネコよりも小さく、その範囲外であり、エルカブ遺跡の古代イエネコよりも小さい。 その他の上腕骨の寸法、たとえば近位端の最大深さ、遠位端の最大幅、骨幹部の最小幅は、ヨーロッパのイエネコの範囲に収まり、ヨーロッパのヤマネコやエルカブ遺跡のネコ標本の寸法よりもかなり小さい。 このパターンは、H35D:3 から骨盤内で繰り返される。 これらの形態データを総合すると、飼いネコであることが示唆される。 しかし、同定を確実にするためには、アジアヤマネコのサイズ変異の範囲や古代の DNA の証拠に関する追加情報が必要である。 泉户村 (Quanhucun) における人間とネコの関係を理解する上で、食物網の同位体データは重要な鍵となる。

同位体分析

動物と人間の食物網には明確なパターンがあった。 図2 では、ニホンジカ、ノロジカ、ケープノウサギなどの草食動物が最も低い δ13C と δ15N 値を示し、おそらく植物の葉や C3 草から C3 植物を消費していることがわかる。 今回調査した草食動物の δ13C と δ15N の平均値は、それぞれ -21.0 ± 1.3‰ (n = 7) と4.2 ± 0.8‰ (n = 7) で、家畜の食性の理解のための同位体ベースラインが設定されたことになる。 未確認魚類の平均 δ15N 値 6.9±0.4‰ (n = 3) は草食動物よりも高く、これは淡水域の食物連鎖が陸上生態系よりも長いためと考えられる (20)。 ブタとイヌの δ13C と δ15N の値はかなり似ており、同じ食料資源を共有していた可能性があることがわかる。 全体として、10 頭のブタと 3 頭のイヌを含む家畜の平均 δ13C と δ15N の値は、それぞれ -8.9 ± 1.3 % (n = 13) と 8.0 ± 0.8 % (n = 13) で、これは、彼らが C4 ベースのタンパク質を大量に消費したことを示唆している。 また、家畜と草食動物の平均 δ15N 値の間隔 (3.8%) は、栄養段階における窒素同位体分別 (21) の範囲 (3〜5%) 内にあり、彼らの食事は動物性タンパク質が不足していることが示唆された。 この発見は、ブタやイヌの食事が人間の食べ残しや排泄物に基づいていたことを示唆している。

図2.

図2 泉户村 (Quanhucun) のヒトとその他の動物の δ13C と δ15N 値の散布図。 ヒト、ブタ、イヌの食事には C4 ベースの食品が独占的に寄与しているが、野生の草食動物は C3 食品に大きく依存していることがわかる。 ネコの δ13C と δ15N の値から、ネコは C4 ベースのタンパク質を相当摂取していたことがわかる。 特に1匹のネコは δ13C 値が低く、農産物への依存度が予想以上に高いことがわかる。

ヒトの骨コラーゲンの δ13C 値 (-11.2%) と δ15N 値 (11.5%) が高いことから、C4 ベースの動物性タンパク質を大量に摂取していたことが推測される。 δ13C 値もブタとイヌの平均値 (-8.9±1.3%、n = 13) に対してマイナスであり、このヒトは魚などの δ13C 値の低い動物性タンパク質も摂取していたことが原因だと思われる。

モグラネズミ (Zokor) はブタやイヌと同様に δ13C (-8.5%) と δ15N (8.5%) が高く、同様の食性を持っていることがわかる。 ネコの δ13C 値は -16.1% から -12.% 、平均 -14.0±1.1% (n = 3) であり、これは、C4 ベースの食品がかなり食事に含まれていることがわかった。 δ15N 値は 5.8% から 8.9% の範囲で、平均は 7.6±0.9% (n = 3) であった。 1 匹のネコは特に δ13C 値が高く (-12.3%)、δ15N 値が低い (5.8%) ことから、他のネコに比べて C4 ベースの植物性タンパク質を多く含む食事であったと考えられる (図2)。

ディスカッション

キビ農業と貯蔵穀物に対する齧歯類の脅威

同位体データの解釈は、中国北部の C3 および C4 植生の古代の分布に基づいている。 黄土高原の古層土の土壌有機物の炭素同位体比は、完新世に C3 植生が優勢だったことを示す (22, 23)。 C4 光合成経路を持つ植物には、イネ科、カヤツリグサ科、ヒユ科の植物が含まれる (24)。 キビの栽培は 1 万年以上前の古代華北で始まり (2526)、关中 (Guanzhong) 盆地では紀元前 6000 年から 2100 年にかけてキビが唯一の C4 作物として広く栽培された (1618)。 アワの δ13C 値は -12.5%、キビの δ13C 値は -13.1% である(27)。 したがって、C4 シグナルが強いヒトまたは動物のコラーゲンの δ13C 値は、キビ穀物、キビ副産物、キビごみの直接または間接的な摂取に起因すると考えられる(28)。

ヒトコラーゲンの同位体分析は、仰韶 (Yangshao) 時代までにキビが中国北部に住む人々の主な食物資源になったことを示唆している (2829)。 多くの仰韶 (Yangshao) 遺跡から出土した家畜のブタ、イヌ、ヒトの同位体比が同じであるのは、ブタやイヌがキビの副産物、人間の残飯、ゴミ、糞などを食べていたことを示す(28, 30, 31)。 泉户村 (Quanhucun) の研究結果は、華北で発展したキビ農業というより大きな文脈の中に位置づけられる。 ニホンジカ、ノロジカ、ケープノウサギなどの野生草食動物の同位体比は、それらが主に C3 植物に依存していたことを示し、遺跡周辺の植生が大部分が C3 植物で構成されていたとの仮定を裏付けている。 ヒト、ブタ、イヌの骨の高い炭素同位体値は、キビを原料とする食品がヒトと動物の食生活に大きく貢献していたことを示している。

キビ農業が高度に発達し、キビ食品の調理や貯蔵が行われたため、泉户村 (Quanhucun) には齧歯類の片利共生動物が集まってきた (9, 11, 32)。 また、野鳥も畑のキビを食べていた可能性がる。 しかし、古代の齧歯類の骨、穀物貯蔵穴から発見された巣穴、齧歯類を排除するために特別に設計された独特の角度と質感を持つセラミック製の穀物貯蔵容器の使用によって、この遺跡の穀物貯蔵に対する特定の齧歯類の脅威が実証された (15)。 さらに、一般的な中国のモグラネズミ (Zokor) は、キビ製品または調理済み食品の消費を示す高い δ13C 値(-8.5%) を示した。 また、現代の五丈溝 (Wuzhangguoliang) 遺跡から出土した一般的な中国のモグラネズミ (Zokor) (-11.6%) やドブネズミ (Rattus norvegicus) の骨コラーゲン (-9.%) にも高い δ13C 値が観察されており (31)、穀倉や作物を食べる齧歯類が仰韶 (Yangshao) 村に広く分布したことを示している。

共生生活とネコの家畜化

キビ栽培の普及と常在する齧歯類の個体数が相まって、ネコを引き寄せ、農村がネコを支援する動機となった。 泉户村 (Quanhucun) のネコの個体群は数百年生存しており、私たちが調査した個体の 1 匹はかなりの年齢まで生きたことから、ネコの生存に適した環境であったと考えられる。 1 匹だけ突出して δ13C 値が高く (-12.3%)、 δ15N 値が低い (5.8%) ことから、農産物を大量に食べ、齧歯類などの小動物に思ったほど食糧として依存していなかったことがわかる。 これらのデータは、このネコが狩りをすることができず、捨てられた人間の食べ物を漁っていた可能性や、ヒトに見守られて餌をもらっていた可能性を示唆する興味深いものである。

これらの知見は、ヒトのニッチにおける共生関係、選択過程、ネコの家畜化のメカニズムについて、ユニークな直接情報を提供する。 ネコは、泉户村 (Quanhucun) で得られる多様な食料源に依存していた。 窒素同位体から肉食であることがわかったが、ネコは義務的肉食動物であるにもかかわらず、少なくとも 1 匹はかなりの量の穀物を摂取していた。 また、老年期まで生き延びたものもいた。 これらの結果から、ネコは集落の中で、相互扶助的な狩猟者やゴミ漁りから、奨励動物すなわちペットにまで、さまざまな役割を担っていた可能性が考えられる。 貯蔵穀物と食料安全保障に対する齧歯類の脅威が証明されていることを考慮すると、この関係が人間にとって有利であることは明らかである。 ネコにとって、人里は一年中食料を供給する場所だった。 泉户村 (Quanhucun) の人間環境では、環境選択と弱い方向性選択の両方がネコに作用した。 構築された環境で狩猟やゴミ漁りとして成功するネコや、人間に対して人なつっこく愛着を持つネコが選択されたのである。 ヒトとネコの相互扶助的な家庭内関係は、結果的に個体数を増やし、人為的にネコの世界的な拡散を促しました。

私たちの研究は、5,300 年前にさかのぼる中国の初期の農村にネコがいたことを証明するものである。 この結果は、現代のネコ科動物のミトコンドリア DNA 研究から、すべてのイエネコの祖先とされるリビアヤマネコ (F. s. lybica) の範囲外であることがわかった [訳注2]。 また、この年代は、これまで中国に登場したと考えられていたイエネコよりも 3000 年以上早い (1)。 この発見は予想外であり、ネコの家畜化と普及の軌跡に疑問を投げかけるものである。

近東のヤマネコがイエネコの祖先であり、5,000 年以上前に中国北部にネコが出現したとすれば、他の動物 (羊や牛) の東アジアへの伝播と同様の役割を果たした複雑な交換・貿易ネットワークを通じて、ネコが西アジアから運ばれた可能性があると考えるのが妥当である (33)。 しかし、これらのイエネコが中国に出現した時期やそのプロセスについては、まだコンセンサスが得られていない (33, 34)。 一方、アジア野生ネコ (F. s. ornataF. s. bieti) (35) は、イエネコと交雑し、あるいは現地で家畜化されていた可能性がある。 これらの問題を検証するには、今後の古代 DNA の研究が必要である。

総合すると、泉户村 (Quanhucun) の同位体データと考古学データは、ヒト、キビ、齧歯類、ネコの間の食物網に関する補足的な情報と、初期の農村におけるヒトとネコの片利共生関係および相利共生関係の証拠を提供する。 このサイトは、ネコが人間の食物網内で摂食するという独自の証拠を提供し、ネコの家畜化への共生経路に関する仮説を裏付けている。

[訳注2]: F. s. lybicaFelis silvestris lybica のことであるが、これの訳名が見つからなかったため、学名 Felis lybica の「リビアヤマネコ」と訳した。

素材と方法

ネコ科動物の骨と歯の生体測定

ネコ科動物の骨格を注意深く調べ、無傷または一部無傷の骨格要素の形態学的パラメータを記録した。 測定はカリパスを用い、von den Driesch (36) に記載されたプロトコルおよびコードに従って行った。 また、測定値はこれまでに発表された生体データ (413) と比較し、今回調査したネコが野生のネコまたはイエネコの変動範囲に収まるかどうかを判断した。 その結果を 表2 に図解している。

AMS-14C 年代測定

北京大学では、2つの穴から採取されたネコ科動物の骨2点を選び、AMS-14C による年代測定を実施した。 日付のキャリブレーション (較正) には、IntCal04 較正曲線と OxCal v3.10 較正プログラムを使用した (37, 38)。 結果は 表3 に記載されている。

コラーゲン抽出と安定同位体測定

ケープノウサギ、モグラネズミ (Zokor)、ネコ、イヌ、家畜のブタ、ニホンジカ、ノロジカ、未同定の魚などの動物の骨と、人骨 1 体を選び、炭素と窒素の同位体分析を行なった。 標本の色や保存状態は安定しており、安全な考古学的文脈を採取することができた。 サンプル情報の詳細は、表S2 に記載されている。

骨コラーゲンの抽出は、以下のプロトコルに従って実施した。 外側と内側の骨の汚染物を除去した後,0.5 mol/L HCl で脱灰し,骨が柔らかくなり気泡が出なくなるまで2日ごとにリフレッシュした. 残留物を脱イオン水で中性まで洗浄し、0.125 mol/L NaOHで20時間洗浄した後、再度脱イオン水で洗浄した。 この遺体を 0.001 mol/L HCl で洗浄し、70 ℃ で 48 時間ゲル化した。 濾過後、残渣を凍結乾燥し、ゼラチン化コラーゲンを得た。

コラーゲンの炭素、窒素含有量 (重量% C、N) および C、N 安定同位体の測定は、Cario 元素分析器を搭載した Finnigan MAT Delta plus で行なった。 CとNの含有量を測定するための標準物質として、C8H9NO を使用した。 IAEA-N-1 および USGS 24 は、それぞれスチールボトル内の N2 (AIR が標準) および CO2 (PDB が標準) の規格化に使用された。 δ13C と δ15N の分析精度は、それぞれ 0.1% と 0.2% であった。 C と N の含有量とその安定同位体データを 表S2 に示す。

一般に、後述の骨コラーゲンの平均 C 含有量は 47.7±4.7%、平均 N 含有量は 15.7±1.4%、原子 C/N 比は 2.9-3.6 の範囲で、現代の骨 (C 含有量 41%、N 含有量 15%、C/N 比 2.9-3.6) (39, 40) と同様だったため、すべての試料で生体内同位元素標識はそのまま残っていたことがわかった。

謝辞

査読者の方々の洞察に満ちたコメントと原稿を改善するための提案に感謝します。 本研究は、中国科学院戦略的重点研究プログラム (Grant XDA05130303)、中国科学院・マックスプランク協会パートナーシップ グループプロジェクト、中国国家科学基金 (41373018) の支援を受けている。

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2.7 - Killing cats, rats and foxes is no silver bullet for saving wildlife

論文 “Killing cats, rats and foxes is no silver bullet for saving wildlife” の日本語訳です。

ネコ、ネズミ、キツネを殺すことは、野生動物を救うための特効薬 (銀の弾丸) ではない

Published: June 12, 2015

[Tim Doherty, Edith Cowan University](https://ro.ecu.edu.au/do/search/?q=author_lname%3A"Doherty" author_fname%3A"Tim"&start=0&context=302996)Follow [Chris Dickman](https://ro.ecu.edu.au/do/search/?q=author_lname%3A"Dickman" author_fname%3A"Chris"&start=0&context=302996) [Dale Nimmo](https://ro.ecu.edu.au/do/search/?q=author_lname%3A"Nimmo" author_fname%3A"Dale"&start=0&context=302996) [Euan Ritchie](https://ro.ecu.edu.au/do/search/?q=author_lname%3A"Ritchie" author_fname%3A"Euan"&start=0&context=302996)

Publisher

The Conversation Media Group Ltd

School

School of Science

Comments

Doherty, T., Dickman, C., Nimmo, D., & Ritchie, E. (2015). Killing cats, rats and foxes is no silver bullet for saving wildlife. The Conversation. https://theconversation.com/killing-cats-rats-and-foxes-is-no-silver-bullet-for-saving-wildlife-42754

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ネコ、ネズミ、キツネがオーストラリアの野生動物や生態系に大打撃を与えている。 「侵略的哺乳類捕食者 (invasive mammalian predators)」と呼ばれるこれらの種は、本来の生息域外で個体群を形成している。

ヨーロッパではアメリカミンク、ニュージーランドではオコジョやフェレット、多くの島ではマングースなど、世界中で多くの絶滅をもたらした種である。

一般的な解決策の 1 つは、これらの捕食者を殺すこと (殺処分) である。 しかし、今週『Biological Conservation』誌に掲載された 研究 は、それよりもはるかに複雑であることを示している。 侵略的な捕食者を殺すことはしばしばうまくいかず、時には在来の野生動物にとってかえって悪い結果を招くこともある。

保全のための殺処分 (駆除)

生物多様性を脅かす侵略的捕食者の管理は、致死的なコントロールによってその個体数を減らすことに重点を置いており、 これには毒餌、捕獲、射殺などが含まれる。

これらのプログラムは、特定の地域や島嶼部では成功したこともある。 しかし、これらのプログラムは 非常にコストがかかり、また、より大きなスケールで在来動物の 減少 を食い止めることができないことが多い。

このような管理プログラムは、生態系に影響を及ぼしている他の脅威とどのように相互作用するかをほとんど考慮せずに行われることが多い。 このため、侵略的捕食者対策は予測不可能な結果を招いている。 うまくいかないこともある し、最悪、野生動物にとって マイナスの結果 になってしまうこともある。

主要な擾乱

火災、大型草食動物による放牧、土地開墾、獲物の個体数の変化、上位捕食者の減少、人間による資源補助 (餌や避難場所の利用可能性の増加など) の 6 つの撹乱が、侵略的捕食者の影響を強くする可能性があることを特定した。

これらの擾乱は、主に3つの方法で侵略的捕食者と相互作用する。

第一に、火災、放牧、開墾などの撹乱によって植生が失われ、獲物が 捕食されやすくなる ということがある。

たとえば、西オーストラリア州北部キンバリー地域の 小型哺乳類 は、パッチ状に焼けた地域と焼けない地域に比べ、激しく焼けた地域では野良猫による捕食が多くなった。 家畜による放牧も同様に、保護の覆いを取り除いてしまう。 研究 によると、ノネコは狩りの成功率が向上するため、こうした場所で狩りをすることを好むことを示している。

第二に、餌の増加や 競合する上位捕食者 の減少により、侵略的捕食者の個体数が増加し、その結果、在来種への影響が大きくなる可能性がある。

たとえば、オーストラリアのウサギなどの移入された獲物種は、より大きな捕食動物の個体数を支えることができる。 その結果、在来種に対する捕食圧が高まり、「ハイパープレデーション (hyperpredation)」と呼ばれる現象が発生する可能性がある。

マッコーリー島の インコ の絶滅は、このプロセスに起因するとされた。 インコは 60 年以上野良猫と共存していたが、1879 年にウサギが島に持ち込まれたことをきっかけに急速に減少し、絶滅した。 ゴミや ハンターの死骸捨て場 などの資源補助は、より大きな捕食者集団を支え、捕食圧を高めることにつながる。

第三に、これらの攪乱の多くは在来種にも直接的な影響を与え、侵略的な捕食者によりさらに悪化する。 たとえば、生息地の喪失により、生息地の断片化が 多くの在来種の個体数を減少させる。 そのため、侵略的な捕食者による捕食の増加は、悪い状況をより悪化させる可能性がある。

正しく理解する

私たちの総合的な結果は、侵入捕食者の管理は、より統合されたアプローチを採用することで恩恵を受ける可能性が高いことを示している。

生息地の複雑さと餌生物種のための避難場所を維持することは、侵入捕食者の影響を軽減する方法の一つである。 これには、火災と放牧の管理の改善が含まれる。 むらを残す低強度の火災は、在来種に対する火災の捕食関連の影響を軽減できる可能性がある。 このようなアプローチは、オーストラリア北部のネコのように、効果的な捕食者対策が存在しない場合に最適な選択肢となる可能性がある。

ヨーロッパや北米のオオカミ、オーストラリアのディンゴなど、在来種の上位捕食者 は、外来種の捕食者を抑制する効果がある。 これらの種が減少した一部の場所では、「再野生化」が選択肢となる。 在来の捕食者が家畜生産者と対立する場合、致死的なコントロールの代わりに、保護動物 が家畜を捕食から守れることが多い。

資源補助の削減 は、侵略的な捕食者集団の食糧資源を削減する簡単な方法である。

致死的防除を行う場合は、慎重に適用する必要がある。 生態系から個々の有害生物種を選択的に除去することは、善よりも害をもたらす可能性がある。 複数種のアプローチは、そのような予期せぬ事態を回避する最良の方法であり、種を除去する 順序 は重要な考慮事項である。

保全管理者は、単一のプロセスに注目するのではなく、ストレスを受けた生態系で作用する複数の撹乱を考慮し、これらの脅威に一体的に対処する管理措置を用いるべきである。 これ以上の絶滅を回避するためには、このような統合的なアプローチが不可欠である。

2.8 - Overview of the Impacts of Feral Cats on Australian Native Fauna

論文 “Overview of the Impacts of Feral Cats on Australian Native Fauna” の日本語訳です。

Christopher R. Dickman, “Overview of the Impacts of Feral Cats on Australian Native Fauna”,

May 1996, Australian Nature Conservation Agency, (ISBN: 0 642 21379 9).

ResearchGate

本冊子の 7ページ、“2. DEFINITIONS” から引用する。

ii). Domestic cat. This is a pet or house cat living in close connection with a household where all its ecological requirements are intentionally provided by humans (Moodie, 1995). Domestic cats may still impact on native fauna by their predatory activities, but do not rely on hunting for food. iii). Stray cat. This is a cat that relies only partly on humans for provision of its ecological requirements (Moodie, 1995). Stray cats may obtain food or shelter that has been provided intentionally or otherwise by humans, and include animals kept on farms for rodent control, dumped animals, and cats living in urban fringe situations such as garbage dumps. Moodie (1995) notes that urban strays, purposely fed by humans but which live independently in other ways, are often referred to, confusingly, as feral cats in the literature. iv). Feral cat. This is a free-living cat which has minimal or no reliance on humans, and which survives and reproduces in self- perpetuating populations (Moodie, 1995).

Note that ii) to iv) provide operational definitions of cats that are based primarily on the degree of use that is made of human- derived resources. Individual cats can potentially move between categories during their lifetimes (Moodie, 1995), as has been exemplified by Newsome (1991). v). Impact. The impact of any organism introduced to a new environment may be negative, positive or neutral with respect to its effects on native species. In the case of the cat, an immediate negative impact on native fauna could be brought about in three ways. In competition, impact would occur from depletion of important resources shared by the cat and by native species; in predation the impact would be from direct consumption of native species; and in amensalism the impact would occur via transmission of disease, parasites or pathogens to native species with no net effects on the cat (Dickman, 1992b). It is important to note that, while each of these processes affects individuals, this may not translate to any detectable impact on native fauna at the level of either the population or community. For example, predation of native fauna by cats can be demonstrated readily by analyses of cat diet, but there may be no impact on populations of the prey species if harvesting rates are low, if non-reproductive individuals are consumed or if compensatory breeding or survival occur. In this report, I consider that cat-induced impact on native fauna is demonstrated only if it has detectable effects at the population level. These effects can be on population size or on extent of geographical range. Following initial review of the literature, I consider further that impacts can be classified as minor or major depending on the magnitude of their apparent effects. Formally, I define a minor impact of cats as one which produces a decrease of 25% or less in the population size or geographical area occupied by a native species, and a major impact of cats as one which produces a decrease of 75% or more in the population size or geographical area occupied by a native species. The latter definition includes cat-induced extinctions. The dichotomy between minor and-major impacts appears justified because of the apparent lack of `intermediate’ impacts in the literature. I note that impacts may be produced rapidly (e.g. within days) or over periods of many years, and can occur at the scale of local, regional or entire species populations, and hence distinguish these, where information is available. I note also that impacts may sometimes be attributed jointly to cats and to other threatening processes, and evaluate these where data permit. Finally, although immediate impacts of cats on native fauna could be potentially neutral or even positive, few appear to have been reported. Long-term, evolutionary impacts of cats (e.g. Marshall, 1962; Stone et al., 1994) have been little studied in the Pacific region, but could be expected to be small due to the recent arrival of cats. Hence, such impacts - are not considered further in this report.

上記の部分のみを翻訳すると、下記のようになる。

用語意味
ii) 飼いネコ (Domestic cat)ペットすなわち飼いネコ (house cat) として家庭と密接な関係を持ちながら生活し、その生態学的要件がすべて人間によって意図的に提供されているネコのこと (Moodie, 1995)。 飼いネコは捕食活動によって在来の動物相に影響を与える可能性はあるが、食料を狩りに頼ることはない。
iii) ノラネコ (Stray cat)生態学的な必要条件の提供の一部のみを人間に依存しているネコのことである (Moodie, 1995)。 ノラネコは、人間が意図的またはその他の方法で提供した餌やシェルターを得ることができ、ネズミ駆除のために農場で飼われている動物、捨てられた動物、ゴミ捨て場など都市の周辺に住むネコなどが含まれる。 Moodie (1995) は、人間が意図的に餌を与えるが、それ以外の方法で自立して生活する都市の野良猫を、文献上ではしばしばノネコと混同して呼ぶことがあると指摘している。
iv) ノネコ (Feral cat)人間にほとんど依存せず、自己永続的な集団で生存・繁殖する自由生活型のネコのことである (Moodie, 1995)。

また、上記定義に対する備考を下記に訳出する。

ii) から iv) は主に人間由来の資源をどの程度利用しているかに基づいて、ネコを論文で区別するための便宜上の定義を提供していることに留意する必要がある。 個々のネコは、Newsome (1991) が例示したように、生涯のうちにカテゴリー間を移動する可能性がある (Moodie, 1995)。

v). 影響。新しい環境に導入された生物の影響は、在来種への影響に関して、否定的、肯定的、中立的のいずれにもなりうる。 ネコの場合、在来動物に対する直接的な負の影響は 3 つの方法でもたらされる可能性がある。 競争では、ネコと在来種が共有する重要な資源の枯渇から影響が生じ、捕食では、在来種を直接消費することから影響が生じ、片害共生 (amensalism) では、病気、寄生虫または病原体の在来種への伝達によって影響が生じ、ネコには正味の影響がない (Dickman, 1992b)。 これらのプロセスはそれぞれ個体に影響を与えるが、個体群や地域社会のレベルでは在来動物に検出可能な影響を与えない可能性があることに注意することが重要である。 たとえば、ネコによる在来動物の捕食はネコの食餌の分析によって容易に証明できるが、捕獲率が低い場合、非繁殖個体が消費される場合、代償繁殖や生存が起こる場合、餌生物種の集団に影響がないこともある。 この報告書では、ネコが在来動物に与える影響は、個体群レベルで検出可能な影響がある場合にのみ実証されると考えている。 これらの影響は、個体数または地理的範囲の広さに対して影響を与える可能性がある。 文献の初期レビューに続いて、私はさらに、影響はその明白な影響の大きさによって軽微なものと重大なものに分類できると考えている。 正式には、在来種の個体数または占有面積の 25 %以下の減少をもたらすものを「ネコによる小さな影響」、75%以上減少させるものを「猫による大きな影響」と定義している。 後者の定義には、ネコによる絶滅も含まれる。 文献に「中間的な」影響がないことが明らかなため、小さな影響と大きな影響という二分法は正当化されるように見える。 影響は、急速に (たとえば数日以内に) 発生することもあれば、何年もかけて発生することもあり、また、局所的、地域的、あるいは種全体の個体群の規模で発生する可能性があるため、情報が入手可能な場合にはこれらを区別する必要がある。 また、影響がネコと他の脅威のプロセスの両方に起因する場合もあることに留意し、データが許す限り、これらを評価する。 最後に、ネコが在来の動物相に与える直接的な影響は、中立的であるか、あるいは肯定的である可能性さえあるが、報告されているものはほとんどないようである。 ネコの長期的な進化への影響 (Marshall, 1962; Stone et al., 1994 など) については、太平洋地域ではほとんど研究されていないが、最近になってネコが到着したため、小さいと予想される。 したがって、この報告書ではそのような影響についてはこれ以上検討しない。

2.9 - IUCN World Heritage Evaluations 2018

報告書 “IUCN World Heritage Evaluations 2018” の中の “Japan- Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island” の日本語訳です。

IUCN 評価報告書 2018 (日本語訳)

WHC/18/42.COM/INF.8B2, IUCN World Heritage Evaluations 2018, IUCN Report for the World Heritage Committee, 42nd Session, Manama,

Bahrain, 24 June 4- July 2081.

https://whc.unesco.org/archive/2018/whc18-42com-inf8B2-en.pdf

“Japan- Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island”, p37-50.



奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島 - 日本

P37-50


世界遺産委員会への IUCN 勧告: 自然な基準の下でノミネートされた遺産登録を延期する

運用ガイドラインの重要な段落: 段落 77: ノミネートされた資産は、世界遺産の基準 (ix) を満たしていないが、基準 (x) を満たす可能性がある。 段落 78: 推薦された資産は完全性要件を満たしていないが、保護および管理要件を満たしている。


1. ドキュメンテーション

a) IUCN がノミネーション (世界遺産への推薦) を受け取った日:

2017年3月

b) 締約国から公式に要請され、提供された追加情報:

IUCN に従う効果的な生物多様性保全。サイエンス 342 現地調査団、補足情報を求める書簡が 2017 年 10 月 26 日に IUCN から送信された。 特に地元コミュニティとの協議において情報が求められた。 返還された北部訓練場 (NTA) の指定に関する現在の状況、計画、スケジュール。 推薦された地域内の私有地に関する詳細情報。 観光基本計画の作成と実施について。 推薦地への新たな侵略的外来種 (IAS) の侵入を防ぐための措置について。 2017 年 11 月 28 日に IUCN から回答が得られた。 IUCN 世界遺産パネルの後、2017年12月20日に進捗報告書が締約国に送付された。 この書簡は、評価プロセスの状況について助言し、境界に関する説明を含むさまざまな問題についての回答/説明を求めた。 将来の拡張の可能性。 推薦地域の管理全般。 そして、ノネコ問題。 回答は2018年2月28日に受領され、締約国の代表もこの回答の内容を説明するために IUCN を訪れた。

c) 追加で参照した文献:

以下のような、さまざまな情報源。 Amori, G., S. Gippoliti and K.M. Helgen. 2008. Diversity, distribution, and conservation of endemic island rodents. Quaternary International 182: 6-15. Belle, E., Y. Shi and B. Bertzky. 2014. Comparative Analysis Methodology for World Heritage nominations under biodiversity criteria: A contribution to the IUCN evaluation of natural World Heritage nominations. UNEP-WCMC, Cambridge, UK and IUCN, Gland, Switzerland. Bertzky, B. et al. 2013. Terrestrial Biodiversity and the World Heritage List: Identifying broad gaps and potential candidate sites for inclusion in the natural World Heritage network. IUCN, Gland, Switzerland and UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Ito, Y., K. Miyagi and H. Ota. 2000. Imminent extinction crisis among the endemic species of the forests of Yanbaru, Okinawa, Japan. Oryx 34 (4): 305-316. Japan Tiger and Elephant Fund (JTEF). 2017a. Statement on the Nomination of Iriomote Island for inscription on the World Heritage List from the aspect of conservation of Iriomote cat. September 2017. Japan Tiger and Elephant Fund (JTEF). 2017b. What is the “holistic approach” to address increasing tourism/visitors pressure in Iriomote Island? November 2017. Le Saout, S. et al. 2013. Protected areas and effective biodiversity conservation. Science 342 (6160): 803-805. Mittermeier, R.A., P. Robles Gil, M. Hoffmann et al. 2004. Hotspots Revisited. CEMEX, Mexico City, Mexico. Natori, Y., M. Kohri, S. Hayama and N. De Silva. 2012. Key Biodiversity Areas identification in Japan Hotspot. Journal of Threatened Taxa 4 (8): 2797-2805. Olson, D.M., E. Dinerstein, E.D. Wikramanayake, et al. 2001. Terrestrial ecoregions of the world: A new map of life on Earth. BioScience 51 (11): 933-938. Olson, D.M. and E. Dinerstein. 2002. The Global 200: Priority ecoregions for global conservation. Annals of the Missouri Botanical Garden 89: 199-224. Safi, K., K. ArmourMarshall, J.E.M. Baillie, N.J.B. Isaac. 2013 Global patterns of evolutionary distinct and globally endangered amphibians and mammals. PLoS ONE 8(5): e63582. Stattersfield, A.J., M.J. Crosby, A.J. Long and D.C. Wege. 1998. Endemic Bird Areas of the World: Priorities for Biodiversity Conservation. BirdLife International, Cambridge, UK. WWF Japan. 2010. Nansei Islands Biological Diversity Evaluation Project Report. WWF Japan, Tokyo.

d) 相談: デスクレビューを10件受けた。 現地調査団は、環境省の代表者を含む幅広い利害関係者と会談した (環境省、本部、那覇自然保護事務所、各島の自然保護レンジャー事務所より) 林野庁 (本庁、九州森林管理局、2 管区森林管理局)、 鹿児島県、沖縄県、関係12市町村、各種非営利団体 (NPO)

e) 現地視察: Bastian Bertzky と Scott Perkin、2017 年 10 月 11 ~ 20 日

f) 本報告書の IUCN 承認日: 2018年4月

2. 自然的価値の要約

推薦地「奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島」は、ノミネーション (推薦文) で「琉球列島」と称される 4 つの島にある 37,946 ヘクタールの亜熱帯雨林が含まれている。 このシリアルプロパティには、北東から南西まで 700 キロメートルにわたって伸びる 4 島のクラスターにグループ化された 24 の完全に陸地の構成部分が含まれる。 この島弧は、東シナ海とフィリピン海の境界に位置し、多数の大きな島と数百の小さな島で構成されている。 推薦地の最高地点は、奄美大島の湯湾岳で標高 694m である。

島クラスター構成パーツ面積 (ha)緩衝地帯 (ha)
奄美大島911,53714,468
徳之島22,4342,852
沖縄本島北部115,1333,083
西表島218,8355,542
合計2437,93925,945

表1 推薦地を構成する 4 島のクラスターの概要

この地域の過去2,000万年にわたる地質および環境史は、島々の種と生態系の進化を形成し、今日の島々の特徴である高い種の固有性と豊かさをもたらした。 推薦地の陸上生物相は、以下の 2 つのパターンで特徴付けられる。 第一には、全体的に多数の固有種 – どちらも、かつては大陸全体に広く分布していた近縁種の固有種を残しているが、現在は列島の中央部でしか見られない (長い間隔離されていたため、西表島にはそのような種は存在しない)「残存固有種」と、隔離された後にさらに種分化した「新固有種」の両方が存在することである。 第二には、中央と南の島々、あるいは個々の島や島々の間で、固有種のパターンに顕著な違いがあることである。 したがって、これらの複雑な地質、環境、進化の力によって形成された多様でユニークな島の生物多様性が認められ、この地域は「東洋のガラパゴス (Galápagos of the East)」と呼ばれることがある。

地質学的な起源は共通しているが、現在、島々は北から南へと生物地理学的な階層化が顕著であり、亜熱帯、熱帯、温帯の種が混在する、旧北区とインド・マレー領域の間の重要な生物地理学的移行帯に位置している。 推薦された地域は、生物地理学的に Udvardy (生物地理区分) の 2 つの地区 (province) 内にある 1。 奄美大島、徳之島、沖縄本島は旧北区に位置し、Udvardy の琉球諸島生物地理地区 (RIBP 2) に属し、西表島はインド・マレー界に位置し、Udvardy の台湾生物地理地区 (TBP) に属している。 また、最新の分類法では、インド・マレー地域の「熱帯・亜熱帯湿潤広葉樹林」群系 (biome) 内の「南西諸島亜熱帯常緑樹林」陸上エコリージョン (ecoregion) に属している。 推薦地の優占植生は、常緑広葉樹林、雲霧林 (標高 400~694m の最高峰)、渓流地帯、マングローブ林 (奄美大島のみ、特に西表島のみ) などの亜熱帯雨林生態系から構成されている。 推薦地の大部分は、4島の人里離れた山間部の内陸部にあり、人里離れた沿岸部の低地にはないが、西表島では、推薦地は南部と西部の海岸にも広がっている。 頻繁に発生する台風は、島の生態系に大きな影響を与えており、島特有の森林生態系と生物種は、この大きな自然撹乱体制に適応してきた。

日本全体が世界 36 カ所の陸上生物多様性ホットスポットの 1 つとして認識されており、推薦地は国内で最も多様でユニークな生態系の一部であることを示している。 推薦地は、グローバル200の陸域優先エコリージョンである「南西諸島群島森林」内にあり、「南西諸島固有鳥獣保護地域」に属しています。 推薦地には3つの重要鳥獣保護区と少なくとも2つの絶滅ゼロのための同盟 (Alliance for Zero Extinction) が含まれ、これらはすべて種の保全にとって世界的に重要であることが確認されている。

推薦地には、絶滅危惧種を含む多くの固有種や世界的に絶滅の危機に瀕している種が生息しており、また、古代の系統を代表し、世界のどこにも生存している近縁種がいない多くの残存固有種[すなわち「生きた化石」の アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi - EN 3) やケナガネズミ (Diplothrix legata - EN) など]が存在する。 推薦地の哺乳類5種、鳥類3種、両生類3種は、EDGE(Evolutionarily Distinct and Globally Endangered)種として世界で確認されている。候補地には、絶滅危惧種を含む多くの固有種や世界的に絶滅の危機に瀕している種が生息しており、また、古代の系統を代表し、世界のどこにも生存している親類がいない多くの残存固有種[または「生きた化石」: アマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi - EN 3) やケナガネズミ (Diplothrix legata - EN) など]が存在する。 推薦地の哺乳類5種、鳥類3種、両生類3種が、EDGE (Evolutionarily Distinct and Globally Endangered) 種として世界で確認されている。

推薦地とその周辺地域は、日本の国土面積の 0.5% に満たないにもかかわらず、日本の動植物の中で極めて大きな割合を占めており、以下の生物が存在する (括弧内の割合はすべて日本全体に対する相対値)。

  • 1800種以上の維管束植物 (vascular plant taxa) (日本の26%)、うち185種が推進種とその周辺地域の固有種
  • 6148種の昆虫 (日本の20%)、うち1062種が固有種、19種が世界的絶滅危惧種
  • 22種の陸上哺乳類 (20%)、うち固有種13種 (31%)、世界的絶滅危惧種10種 (42%)
  • 鳥類394種 (62%)、うち固有種4種 (36%)、世界的絶滅危惧種12種 (66%)
  • 両生類21種 (30%)、うち固有種18種 (30%)、世界的絶滅危惧種12種 (60%)
  • 陸上爬虫類36種 (50%)、うち固有種23種 (49%)、世界的絶滅危惧種5種 (56%)

全体として、日本の生物多様性ホットスポットの陸生脊椎動物の 58% が推薦地とその周辺地域に生息しており、その中には日本の固有種の脊椎動物の 44% と世界的に絶滅の危機に瀕している脊椎動物の 30% が含まれている。 多くの種群において固有性のレベルも非常に高く、推薦地内の両生類の 86%、陸生爬虫類の 64%、陸生哺乳類の 59% が固有種である。

推薦地は、4つの島において、次のような国指定の比較的厳しい保護地域または保護地域ゾーンで構成されている。 3つの国立公園の特別保護区と第1種特別地域 (IUCN 保護地域管理カテゴリー II 以上に相当)、2つの森林生態系保護区 (IUCN カテゴリー Ib) の保護区、いくつかの国立野生生物保護地域 (IUCN カテゴリー IV) と国立自然記念物 (おそらく IUCN カテゴリー III) である。

これらの推薦地を合わせると、列島に生息する多くの固有種や絶滅危惧種の約 90% が生息し、その最も重要な生息地が含まれる。 また、推薦地には、現在、列島の中央部と南部に保護されている大規模な原生林がほとんど含まれている。 ノミネーション (推薦) に含まれない唯一の大規模かつ手付かずの森林地帯は、沖縄本島北部の米軍北部訓練場 (NTA) の返還部分と残存部分である。 提供された補足情報の中で、日本が、NTA 内の返還された地域の大部分をできるだけ早く推薦地に含めることを意図していることを明らかにしていることは重要である。 補足情報には、これらの領域を追加することによって、ノミネーション (推薦) がどのように修正されるかを示す情報が含まれている。

推薦地は無人島であり、緩衝地帯内の住民は 15 名しかいないが、推薦地を含む 4 地域 (3島と沖縄本島北部) には 10 万人以上が居住しており、沖縄本島全体では 100 万人を超える住民がいる。 4 島合わせて年間 800 万〜 900 万人の観光客が訪れるが、そのうち推薦地と緩衝地帯を訪れる人はほんの一部 (10〜15% 程度) だと推定される。

3. 他地域との比較

ノミネーション (推薦) に含まれる比較分析はよく練られており、3 つの地理的スケールの比較が含まれている。

日本全体が、世界36カ所の陸上生物多様性ホットスポットのひとつであることが、世界的・地域的に認められている。 世界には 142か所のグローバル 200 陸域優先エコリージョンがあるが、南西諸島群島森林は、特に 推薦地を含み、日本で唯一のグローバル 200 陸域優先エコリージョンを形成している。 このグローバル 200 エコリージョン内ではあるが、列島の北部にある屋久島は、(vii) および (ix) に基づいてすでに世界自然遺産として認定されている。 ウドヴァルディの生物地理学的分類システムでは、屋久島は旧北区の日本照葉樹林生物地理的州に属すが、推薦地はまだ世界遺産リストに記載されていない 2 つの異なる生物地理的州である、旧北区の RIBP と西表島の場合、インド・マレー王国の TBP、に属している。 TBP には自然世界遺産や自然暫定リストはない。 推薦地は、南西諸島固有鳥獣保護地域の一部であり、3つの重要鳥獣保護地域、いくつかの重要生物多様性地域、2つまたは3つの絶滅ゼロのための同盟地域を含み、これらはすべて種の保全にとって世界的に重要であることが確認されている。

2013年に実施された保護地域の代替不可能性に関する世界的な分析は、ノミネーション (推薦) に挙がっている3つの国立公園が設立されたり、現在の範囲に拡大されたりする前に行われたが、当時存在していたはるかに小さな3つの保護地域 (奄美群島準国立公園、沖縄海岸準国立公園、西表国立公園) でも、世界的に非常に高い代替不可能性スコアを達成しており、哺乳類、鳥類、両生類の保護に関して世界で最も代替不可能な保護地域 1000 にランクインした。 この推薦地は、以下のような世界的に非常に高い進化的識別力 (Evolutionary Distinctiveness: ED) ランクを持つ、多くの進化的識別種を支えている。 アマミノクロウサギ (哺乳類中31位)、オキナワトゲネズミ (Tokudaia muenninki - CR) (190)、アマミトゲネズミ (Tokudaia osimensis - EN) (191)、ケナガネズミ (270)。

また、この推薦地は、以下の世界的に絶滅の危機に瀕している多くの種を支えている。 陸生哺乳類10種、鳥類12種、両生類12種、陸生爬虫類5種、昆虫類19種。 その中には、(IUCN レッドリストカテゴリーで) 「危機 (Endangered: EN)」や「深刻な危機 (Critically Endangered: CR)」に指定されているものもある。4 その他にも、まだ世界的に評価されていない種が多くある。

日本には 6 つの Udvardy 生物地理区分の地区があり、かつ日本には基準 (x) で登録された知床に加え、基準 (ix) で生物多様性の価値が認められた自然世界遺産が4つある。 全国規模で見ると、これら 4 つのサイトはそれぞれ異なる Udvardy 生物地理区分の地区を表している。 代表されていない 2 つの地区は、RIBP と TBP である。 後者の生物地理は、確かに世界遺産や暫定リストに登録されている自然遺産がない地域であるが、この地区の日本部分は地区全体と比較して小さいため、ノミネーション (推薦) の要素に関する OUV の技術的論拠は疑問であり、特に基準 (ix) の適用との関連で疑問があると指摘された。

IUCN は、推薦地が日本の生物多様性ホットスポットの中で明らかに重要な価値を保護しようとしており、日本の最も多様でユニークな生態系の一部を表していると考えている。 日本の国土の 0.5% にも満たない面積でありながら、日本の維管束植物の 26%、昆虫の 20%、陸上脊椎動物の 58%、そのうち日本の固有脊椎動物の 44%、世界的に絶滅の危機にある脊椎動物の 30% が生息している。

日本に最も近い 2 つの世界自然遺産のうち、屋久島は生物地理的に異なる地区に属し、九州/日本本土と多くの種を共有しており、全体的には推薦地よりも少ない種が生息している。 ここには日本の広範な固有種が多数生息しているが、狭義の (島嶼) 固有種や遺存固有種は推薦地ほど多くなく、あるいは同様に高いレベルの固有種もいない。 一方、小笠原諸島は海洋性の島であり、推薦地の大陸性の環境と比較すると、種数が圧倒的に少ない。 小笠原諸島には、推薦地とは異なり、脊椎動物がほとんど存在しないが、他の種群では固有性のレベルが高い。

また、日本の生物多様性のホットスポットにおける世界的に重要な「生物多様性の保全の鍵になる重要な地域」 (Key Biodiversity Area: KBA) 5 の最新の分析においても、日本国内における推薦地域の例外的な重要性が確認されている。 その結果、世界遺産のノミネーション (推薦) 地域には、日本で特定された絶滅ゼロ同盟 (Alliance for Zero Extinction) 9 カ所のうち 3 カ所が含まれ、さらに特定された228カ所の KBA のうち、トリガー種の数が多い上位3カ所の KBA が含まれていることが判明した。

日本国内では、科学委員会がノミネーション (推薦) の対象となる地域の特定を行いました。 厳密な評価では、3 つのテーマ別に 8 つの指標を用いて、さまざまな島/島嶼部を採点し、ランク付けした。 その結果、選択された 4 島のクラスターは、ノミネーション (推薦) に関連する固有および/または絶滅危惧植物相の大部分を占め、同じ厳格な選択基準を用いて、これらの島の他の地域または他の島の他の地域で閉じることができる大きなギャップはないことを示している。 IUCN は、これが基準 (x) の適用に関連すると考える。 さらに、後述するように、IUCN は、完全性の考慮事項との関連で、可能性のあるコンポーネントの選択が十分にフィルタリングされていないと考えている。

奄美大島、徳之島、沖縄本島北部は、その歴史の違いから、上記のように多くの遺存固有種が存在する一方、その間に新しい固有種も存在する (3つの島固有のトゲネズミなど)。 一方、南の西表島には、新しい固有種や亜種 (イリオモテヤマネコ Prionailurus bengalensis iriomotensis - CR など) がいるが、遺存固有種はなく、近隣諸国の生物相との強いつながりもある。 しかし、他の種群では、4 つの島すべてに固有種が存在する (たとえば、4 種のハナサキガエル)。

2010年に WWF ジャパンが行った生物多様性詳細評価では、4 つの推薦地が陸域の生物多様性優先地域 (Biodiversity Priority Areas: BPA) に認定された。 また、この 4 つの推薦地域は、屋久島中央部と合わせて、日本のこの地域で最大の BPA であることが示された。

4. 完全性、保護、管理

4.1. 保護

推薦された地域は、長期にわたる適切な法律、規制、正式な制度による保護と管理が行われている。 推薦地域は、様々な国内法令に基づき、比較的厳格に保護された地域から構成され、以下のような国家指定がなされている。

  • 3 つの国立公園の特別保護地区と第一種特別保護地区が決定した。奄美大島と徳之島に2017年に設立された奄美群島国立公園、沖縄北部に2016年に設立されたヤンバル国立公園、1972年に設立され2016年に拡張された西表石垣国立公園、いずれも国立公園法に基づいて環境省が管理している。
  • 2 つの森林生態系保護区の保護区。2013年に奄美大島と徳之島に設定された奄美群島森林生態系保護区と、1991年に設定され2012年と2015年に拡張された西表島森林生態系保護区の2つで、「国有林の管理及び運用に関する法律」に基づき林野庁が管理している。
  • いくつかの国指定鳥獣保護区および国の天然記念物。

緩衝地帯は主に、3 つの国立公園の第 2 種特別区域と 2 つの森林生態系保護区の保全利用区域で構成されている。

様々な保護区を設定又は拡大するための多大な努力に加え、締約国は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づき、多くの固有種及び/または絶滅危惧種を国の絶滅危惧種に指定し、又は文化財保護に関する法律に基づき天然記念物又は特別天然記念物に指定しており、また、絶滅危惧種の法的保護の強化にも大きな努力をしている。 国指定絶滅危惧種の殺傷、捕獲、採取は禁止されており、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナ (Gallirallus okinawae - EN)、イリオモテヤマネコを含む多くの種について保護と回復プログラムが実施されている。

推薦地の 81% は国有地 (64%) または県・市有地 (17%) として公有化されています。 所有者不明の土地も含めた私有地の割合は、全体で 19% だが、島によって異なり、徳之島と西表では 4~5%、沖縄では 7%、奄美大島では 49%となっている。 推薦された地域には伝統的な所有権はない。 奄美大島では、環境省と鹿児島県が民有地を購入し、公有地を 51% から 85% に引き上げるというプロセスが進行中である。

国立公園や森林生態系保護区 (Forest Ecosystem Reserves) の最高保護区域に相当し、資源利用が厳しく規制されているため、推薦された地域で許可される資源利用は非常に限られている。 森林生態系保護区の保護区内 (Preservation Zone of Forest Ecosystem Reserves) では人間の介入は許可されていない。 国立公園の第一種特別地域では、既存の景観を保護する必要があり、ほとんどの人間活動には環境省の許可が必要である。 特別保護区は、野生生物保護区でさらに厳しく保護されており、こちらも許可なく狩猟や伐採ができないように保護されている。

推薦された地域は強力なガバナンス体制を整えている。 このシステムの主な柱は、地域連絡委員会における複数機関によるアプローチ、委員会の準地方会議における地域社会とその他の利害関係者の高いレベルの参加、科学委員会の強力な助言的役割が含まれる。 意思決定は合意に基づき、ボトムアップアプローチで行われ、地域コミュニティやその他の利害関係者が参加する。 現地調査団は、世界遺産のノミネーション (推薦)、包括的管理計画、地域行動計画の作成において、異なるレベルの政府および幅広い利害関係者の間で全体的に良好な協力関係が築かれていることを指摘した。 また、日本政府と米国政府との間には、沖縄の推薦地に隣接する残りの北部訓練場における自然保護 (特に IAS 6 対策と種の監視) への協力に関する基本的な「連携協定」 (2016年12月7日の覚書) がある。

IUCN は、推薦された地域の保護状況が運用ガイドラインの要件を満たしているとみなす。

4.2 境界線

推薦地域は、基準 (ix) と (x) の下で世界的な重要性を表現するために必要な特徴やプロセスを主要な割合で含んでいると思われる。 しかし、沖縄の返還された北部訓練場内の最も重要な地域と、西表島北部および北西部の重要な河川渓谷を含む小規模な拡張がなければ、その「全体性」は十分に満足できるものではないだろう。 しかし、候補地が厳格な選定プロセス (科学的基準、厳格な保護レベル、利害関係者の協議に基づく) を経て選ばれたものであり、いずれも非常にかけがえのない、補完的なものであることに変わりはない。

基準 (ix) に関して、推薦された地域は、島々の独特な森林生態系と種の長期的な保全に不可欠な進化的および生態学的プロセスの重要な側面を示している。 これには、海抜の変化 (西表島と奄美大島の海抜から 4 つの島すべての最高点まで) が含まれ、多様な山岳地形、さまざまな岩石や土壌の種類 (石灰岩地域と非石灰岩地域など)、すべての主要な生態系タイプ (常緑広葉樹林、雲霧林、渓流地帯、マングローブ林)、そして、複雑なパッチシステムと自然再生パッチがあり、その多くは、自然撹乱体制であり、倒木や地滑りを引き起こす台風が頻発していることに起因している。

基準 (x) に関して、推薦地域は生物多様性保全にとって世界的に重要である。 これらの地域には、関連する Udvardy の生物地理区分の地区と「南西諸島の亜熱帯常緑樹林」陸上エコリージョンの特徴である、多様で固有の動物相および植物相を維持するための重要な生息地が含まれている。

推薦地域は、その世界的な重要性を伝える主要な特徴やプロセスを非常によく表現するのに十分な大きさであると思われる。 この 4 島のクラスターは、関連する固有種および/または絶滅危惧種の動物相および植物相の大部分を占めており、同じ厳しい選択基準で、これらの島の他の地域や他の島の他の地域で解決できるような大きなギャップはない。

ノミネーション (推薦) に含まれていない唯一の広大で手付かずの森林地帯は、沖縄本島北部にある米軍北部訓練場 (NTA) の返還された一部と残存部分である。 2016年12月に米軍が約 4,000ha を返還したタイミングにより、締約国は ノミネーション (推薦) 提案書を作成する際にこれを考慮することができなかった。 現在、返還された NTA は、防衛省が主導する「除染」プロセスと、森林生態系保護区としての指定プロセス (必要な協議、計画、区画設定を含む) の両方が進行中である。

締約国から受領した補足情報によれば、環境省は、返還された NTA をヤンバル国立公園及候補地域に可能な限り含めることを計画しており、速やかに (来年中に) 世界遺産にこの地域を追加できる状態にあるとのことであった。 当面の間、残りの NTA は米国の管理下にあるが、推薦地に対する重要な事実上の緩衝地帯として機能し、景観のつながりに貢献するとともに、重要な種の重要な生息地を支えている。 IUCN 現地調査団は、これらの地域が非常に重要であることを一般論として確認しているが、現地調査当時、これらの地域はアクセスが悪く、訪問されていないため、IUCN は現時点ではこれらの地域を十分に評価することができないことを指摘している。

候補地と緩衝地帯の境界案は、既存の保護地域の区画設定に基づいて引かれており、科学的基準、厳格な保護レベル、利害関係者の協議に基づく妥協点を示している。 その結果、この保護区には、10ha 以下の部分が 4 つ、100ha 以下の部分が 11 つと、小さな (場合によっては非常に小さな) 構成部分が多数含まれている。 これらのうちいくつかは、それ自体ではほとんど価値がないように見えるが、単に既存の保護区のうちより厳しい保護区に属するという理由で、一連の地域に含まれることになった。 完全性の面では、IUCN はこれらの地域の多くが連続登録に含めるには小さすぎると考えており、この点に関するノミネーション (推薦) の修正が必要であると考えている。

進化の原動力の一つである島々の連結性は当然限られているが、4 つの島々のクラスター内では、全体的に比較的良好な連結性を持っている。 西表島の推薦地は、基本的に非常に高い接続性を備えた手付かずの森林生息地の 1 つの大きなブロックであり、奄美大島の推薦地域にも比較的高い接続性がある。 徳之島では、2 つの山間部の候補地は低地によって隔てられており、人里やインフラ、農業によって連結性が制限されている。 沖縄では、推薦地域は地図上ではかなり断片的に見えるが、全体的な景観や生息地のつながりは十分にあり、主に返還された NTA の無傷の森林や、現在推薦地域や緩衝地帯に含まれていない残りの NTA を通じて、つながりがある。

結論として、IUCN は、推薦された地域がいずれの基準においても完全性の要件を満たしているとは考えないが、調整すれば基準 (x) については満たすことができるだろう。 したがって、締約国は、登録の可能性の前に NTA の適切な返還地域を追加するだけでなく、OUV の考慮との関連で適切でないいくつかの構成部分を削除するために、ノミネーション (推薦) を修正する必要がある。 NTA に追加される可能性のある地域は、現地調査団が訪問しておらず、新しく作られた保護地域であるため、IUCN はそのような地域はさらなる現地調査が必要であると考えている。

IUCN は、推薦された土地の境界線が運用ガイドラインの要件を満たしていないとみなす。

4.3 管理

責任管理機関には、那覇自然保護事務所を代表とする環境省に加え、4つの地方森林管理局、林野庁 (九州森林管理局)、鹿児島県、沖縄県、地域連絡委員会の代表となる 12 市町村が含まれる。

那覇自然保護事務所は、地域連絡委員会の事務局長および渉外事務局を担っており、そのための専任のスタッフとリソースを有している。 天然記念物を含む文化財の保護を担当する国の主要機関である文化庁も、沖縄県と鹿児島県の教育委員会を通じて関与している。

那覇自然保護事務所、林野庁の各地方事務所、地方事務所、両県、12市町村はすべて、推薦地と緩衝地帯の管理面の一部を担当し、支援する職員を配置している。 しかし、環境省の 4 つの地方森林管理事務所には、徳之島に 2名、西表、ヤンバル、奄美にそれぞれ 6〜8名のスタッフがいるだけで、通常 2 名の国立公園の森林警備隊員をアシスタント森林警備隊員がサポートしている。 また、環境省が運営する奄美、ヤンバル、西表の 3 つの優れた野生生物保護センターにも職員を派遣している。

他の多くの国とは異なり、日本の国立公園の森林警備隊員は基本的に公園管理者と副管理者としての役割を果たしており、現場で過ごす時間は比較的短い。 さらに、すべての国立公園の森林警備隊員が 3 年ごとに別の国立公園に異動することを義務付ける 3 年交代制が義務付けられている。 最近指定された構成要素の一部には、まだ十分な人員が配置されていないものもあり、締約国から受け取った補足情報では、指定された地域の管理に関わる主要組織が、その管理をさらに強化するために追加の人的資源を割り当て、配備する意向が確認された。

パトロールや監視は、環境・国立公園省とのさまざまな協定に基づき、主に地域コミュニティや NPO などの利害関係者が行っている。 しかし、管理当局自体とそのパートナーには法執行能力がない。 たとえば、密猟者を逮捕したり、指定された敷地内の道路で速度制限を強化したりできるのは日本の警察だけである。 このため、指定された敷地内でのパトロール活動の効果が制限され、警察との効果的な協力が必要になる。

ノミネーション (推薦) ファイルには、2016年12月に採択された、4 つの島のクラスターに共通して適用される包括的な管理目標や基本的な管理方針を含む、簡潔ながら十分な「総合管理計画」が記載されている。 この計画は約10年間の計画である。 5年後、10年後に実施状況を評価し、計画の見直しに役立てる予定である。

総合管理計画を補完する形で、奄美大島、徳之島、沖縄北部、西表の 4 つの地域にそれぞれの行動計画がある。 これらの計画は、関連するすべての利害関係者の広範な参加を得て作成されており、具体的な行動項目、実施機関、時間軸と目標領域、具体的な目標や指標を含む望ましい成果がリストされている。

採用された主要な管理指標には、主要な種 (アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなど) の分布と個体数の変化、および IAS、特にマングースとノネコの制御の進捗状況が含まれる。 推薦された地域の全体的な監視計画はまだ保留中だが、既存の保全および管理活動の多くには、すでに定期的な監視が含まれている。

全体として、現在のところ、十分な財源があり、財務上の見通しは比較的安定していると思われる。 推薦された地域とその周辺地域の保全と管理に関与するさまざまなレベルおよび政府機関はすべて、スタッフおよび/または特定の施設、活動などに資金を提供している。 さらに、IUCN 現地調査団は、研究機関、NGO、NPO、その他のパートナーによる活動など、推薦された地域の保存と管理に直接的または間接的に貢献する実質的な追加リソースに注目した。 これらの活動には、優れた環境教育プログラムや意識向上キャンペーンも含まれる。 また、沖縄本島北部の「環境省 ヤンバルクイナ 飼育繁殖施設」や「国頭村環境教育センター やんばる学びの森」など、さまざまな NGO や NPO、地域コミュニティが多くの施設を運営している。

IUCN は、推薦された地域の管理が運営ガイドラインの要件を満たしているとみなす。

4.4 コミュニティ

ノミネーション (推薦) ファイルには、コミュニティ (地域社会) に関する情報がほとんど記載されていなかった。 しかし、IUCN 現地調査団は、保護地域の計画や世界遺産のノミネーション (推薦) プロセスにおいて、地域社会や利害関係者を巻き込むために行われたさまざまな取り組みについて肯定的に報告した。 実際、地域社会の参加と協力は管理目標に掲げられており、地域社会、住民、企業は多くの保全活動に関与しています。 各島の行政当局、地方自治体、関係団体、NPO の代表が参加する地域連絡委員会とその 4 つの準地方会議では、ガバナンスと管理に関わる多くの利害関係者間の合意形成が課題となっている。

しかし、IUCN に送られた書簡の中で、日本のいくつかの NGO は、協議プロセスの欠点があると認識していることを報告した。 推薦地域や緩衝地帯の選定および画定、地域行動計画の策定について、住民やその他の関係者が十分に協議を受けていないと考えていることが指摘された。 沖縄で、候補地から少し離れた場所に建設中の海軍基地に関しても、特別な懸念が提起された。 海軍基地は、地域社会の一部によって反対されており、侵略的外来種に関連したものを含む、沖縄の諸要素を脅かす可能性のある間接的な影響が多数あると主張している。 この問題は、IUCN の 4 年ごとの世界自然保護会議の決議でも取り上げられている。

IUCN の要請に応えて、締約国は地域社会と協議するために行われた取り組みの概要を提供した。 協議プロセスは非常に精緻かつ包括的であるように見え、保護地域の指定、管理、監視の計画と管理、さらにはノミネーション (推薦) プロセス自体に地元コミュニティやその他の利害関係者が高レベルで関与するための強力な基盤を提供している。 IUCN の現地調査団は、世界遺産のノミネーション (推薦) と最近の保護地域/国立公園の指定には、移転や保有権、伝統的なアクセス権や使用権の除外が含まれていないことを明らかにした。 私有地所有者との合意が得られない場合、当該地域は推薦地域から除外され、これが提案された境界線にいくつかのギャップがある理由の 1 つとなっています。

地元の生計、利益分配、権利に関しては、地元の利害関係者が保護地域の指定と管理、およびノミネーション (推薦) プロセスから大きな利益を得ていることがよく知られている。 これには、パトロールや監視、固有種の保全、IAS の制御を支援するための、国立公園、地域コミュニティ、組織間の多くの契約協定が含まれている。

4.5 脅威

ノミネーション (推薦) にあるように、推薦地とその緩衝地帯の一部は、過去に人間活動によって大きな影響を受けており、その多くは伐採と意図的または偶然の IAS の導入であった。 特に戦後の復興期 (1953年に奄美群島が日本に返還され、1972年に沖縄が返還された際) には、農地開発やダムや道路の建設のため、奄美大島、徳之島、沖縄北部の各地で森林が伐採された。 現在、森林の高い再生能力のおかげで、過去に伐採された候補地域のほとんどはほぼ自然な状態に回復したと考えられている。 推薦地内には農業地域はなく、侵入や汚染はなく、推薦地内では現在、伐採と採掘の両方が禁止されています。

推薦地の生物多様性に対する現在および将来の最も重要な脅威は、野良猫や野良犬などの IAS、固有野生生物 (イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナ、アマミノクロウサギなど) のロードキル、野生生物の違法採集 (ラン、カブトムシなどの密猟)、観光による影響である。 外来種のインドマングース (Herpestes auropunctatus - LC) は、これまでに奄美大島と沖縄北部の固有種や絶滅危惧種に大きな影響を与えてきたが、長年にわたる非常に熱心で賞賛に値する防除努力のおかげで、現在は根絶に近づきつつある。 このほかにも、すべての島に外来種の動植物が生息しているが、今のところ大きな被害は報告されておらず、多くの防除活動が行われている。

ノネコ (feral cats) や野良猫 (stray cats) (および程度ははるかに低いですが、犬も) も、一部の推薦地域内およびその周辺の在来種に影響を与えている。 徳之島、沖縄北部、西表島では防除計画が効果的に実施されているが、奄美大島ではまだ実施されていない。 締約国から受け取った補足情報によると、防除プログラムは、緩衝地帯とその周辺に加え、すべての地域に拡大されることが確認されている。

現地調査団はまた、海軍基地に関して提起された疑問を検討する機会を提供し、世界遺産の検討に関連して、この開発が推薦された土地からかけ離れていることを確認した。 世界遺産との関連性をこのように発展させる上での重要な課題は、沖縄の土地所有権を伴う他のプロジェクトと同様に、建設活動や運営に起因する IAS の侵入からの厳格なレベルの保護を確保することである。 IUCN は、世界遺産ノミネーション (推薦) とは別件で、日本政府から要請があれば、この件に関する技術的専門知識を提供する意向を示している。

推薦地域の多くには公道と林道のネットワークが存在する。 近年、すべての島で大規模な取り組みが行われており、いくつかの有望な結果が示されてるが、交通事故は特に一部の公道沿いで問題になっている。 現在行われている取り組みとしては、啓発キャンペーン、スピードバンプ、速度制限、警告標識、特別な道路側溝、フェンス、そして多くのアンダーパスがある。 多くの林道は少なくとも一時的に (夜間など) 一般通行が禁止されているが、その他の多くの林道は依然として開通しており、密猟者や観光客が容易に森林にアクセスできるようになっている。

野生生物の違法採集 (ランや甲虫など) は、沖縄北部における現在の重要な脅威であるが、他の推薦地にも影響を及ぼす可能性がある。 一方、観光や観光関連施設/活動による妨害とその他の影響は、将来の大きな脅威 (西表では現在の重要な脅威) であり、慎重に管理することが必要である。 西表島と沖縄北部にはすでにかなりの観光客が訪れており、西表島は近年劇的に増加しており、地域社会や関係者の間で懸念が高まっている。

観光計画、観光ガイドライン、ツアーガイドの訓練と認証など、さまざまな取り組みが行われているが、より総合的なアプローチで、推薦された島々での将来の観光開発を計画することが急務であるその際、島や地域特有の環境収容力をどのように設定し、監視し、実施するか、現在および計画中の観光施設や活動からの影響をどのように規制し、最小化し、緩和するか、特に敏感な地域を観光開発の悪影響からどのように保護するか、などの問題に取り組む必要がある特に、島々へのアクセスが容易かつ安価になり、クルーズ船を含む訪問者数が劇的に増加する中、これは重要かつ緊急の課題となっている

鹿児島県では最近、「奄美群島における持続可能な観光基本計画」が作成されたが、沖縄県ではそのような最新の計画は存在しないようである。 締約国から受け取った補足情報では、西表島と沖縄北部の観光計画コンセプトの開発、ヤンバルの森の観光振興の全体コンセプト、西表島エコツーリズムガイドライン、竹富町観光ガイド条例など、推薦地域の残りの部分を対象としたいくつかの観光計画イニシアチブが開始されていることが確認された。 さらに、締約国は、奄美大島における大型クルーズ船基地の提案の現状について情報を提供し、特定の場所が選択されておらず、予測される将来において開発計画が意図されていないことを確認した。

全体として、推薦地域は完全性の条件を満たしていない。主に推薦地域の境界線、および保護と管理に関する関連する考慮事項に関してである。 基準 (x) については、これらの懸念を解決するための修正が可能であると思われるが、基準 (ix) に関しては困難である。 推薦された地域は、連続した地域の世界的な重要性を伝える主要な特徴とプロセスを非常によく表現するのに十分な規模を持っている。 しかし、推薦地とその緩衝地帯の境界の一部は、生物多様性保全の観点から不十分であると考えられ、返還された沖縄の北部訓練場 (NTA) を含める計画や、推薦地とその緩衝地帯の境界のいくつかの小さな変更によって、推薦地の完全性と一貫性は大きく向上すると考えられる。 IUCN は、返還された NTA の追加とさらなる境界線の変更は、ノミネーション (推薦) に対する重要な修正となり、現地調査で評価されなかった地域を含むことになるため、さらなる評価調査の実施が必要であると考える。 そのような調査は、修正が行われた後は、行われた修正にのみ焦点を当てることができる。 さらに、締約国からの補足情報にあるように、NTA における地域の追加は、基本的に進行する準備が整っている事項であるとしていることから、IUCN は、締約国によるこれらの地域の提出を新しいノミネーション (推薦) で待つことが正しい手順であると考える。

結論として、IUCN は、推薦された地域は運用ガイドラインの完全性要件を満たしていないが、保護と管理の要件を満たしていると考える。 しかし、緩衝地帯を含む保護と管理は、ノミネーション (推薦) に必要な修正の一環として再検討する必要があるだろう。

5. 追加コメント

5.1 シリアルプロパティに関する考慮事項

a) シリアルアプローチを正当化する理由は何か?

推薦地域は、基準 (ix) および (x) に基づく「連続した国有財産」として提案されており、合計 24 の構成要素を持つ 4 つの島群で構成されている。 このノミネーション (推薦) は、日本列島の北部、中部、南部を区別する枠組みに従っており、推薦された地域がいかに明確に区別されているかを示している。 独特の陸上生物相の進化の物語は注目に値し、個々の島間および島嶼部の異なる部分間の大きな違いを考慮すると、連続的なアプローチを使用してのみ表現することができる このノミネーション (推薦) では、選択された地域は最も重要で、最も手つかずで、最大の森林地域であり、全体として関連する固有種および絶滅危惧種の約90%を占めていると主張している。

シリアルノミネーション を正当化する魅力的なエントリポイントにもかかわらず、現在の推薦地の構成は、シリアルプロパティの以下の 2 つの要件に関して問題がある。

  • このノミネーション (推薦) では、4 島のクラスターについて、その固有の価値、脅威、保護、管理体制を含む明確な記述がなされているが、シリアルプロパティを構成する 24 の構成要素すべてについて、そのような記述がなされているわけではない。 サイト選択の正当性は、ほとんど 4 島のクラスターに基づいているが、24 の個々の構成部分の貢献度を評価することはできない。
  • 4 島のクラスターのそれぞれが、実質的、科学的、容易に定義でき、識別可能な方法で、全体として推薦物件の OUV に貢献していることは明らかだが、これは 24 の個々の構成部分すべてについて当てはまるわけではない。 沖縄、奄美大島、西表にあるいくつかの小さな構成部分は、それ自体では価値や完全性を付加していないが、候補地を特定するために用いられた既存の保護区のうち、より厳しい保護区に属するという理由だけで含まれた。 これらのエリアは、適宜、近くの大きな構成部分とつなげるか、ノミネートから外すのが望ましいであろう。 そうすることで、シリアルプロパティ全体の管理性や一貫性も向上する。

IUCN は、最も重要な進化と生態のプロセス、そしてこの地域の固有で絶滅の危機にある陸上生物多様性を表現するために、原則的にシリアルアプローチが適切かつ必要であると考えている。 しかし、推薦地の現在の構成は、断片化され、切り離された小さな構成要素の生態学的な生存可能性という観点から、深刻な完全性に関連する問題を提起している。

b) 推薦地域の個別のコンポーネント部分は、運用ガイドラインの要件に関連して機能的にリンクされているか?

4 島のクラスターとその個々の構成部分は、a) 共通の地質学的起源、b) 同じ広範な一般的生物地理学的背景、c) 同じ一般的進化および生態学的プロセスを共有するという意味で機能的につながっており、関連する固有および絶滅危惧種の陸上生物多様性の大部分を共に支えているだけである。 島間の特定の自然史、動植物にはいくつかの顕著な違いがあるが、推薦されたすべての地域は非常によく似た常緑広葉樹林によって占められている。 機能的なつながりには、進化的および生態学的なつながりのほか、4.2節で説明したように、各島の景観や生息地のつながりの程度もさまざまである。

c) 推薦された地域のすべての構成要素に対して、効果的な全体管理の枠組みがあるか?

推薦された地域は、すべての構成要素を網羅する効果的な全体的ガバナンスと管理の枠組みを有している。 環境省、林野庁、2県、12 市町村の 4 島で推薦地の管理に携わるすべての行政機関の代表者が参加する「地域連絡委員会」が設置された。 各島の行政当局、地方自治体、関係団体、非営利団体などが参加する4つの準地方会議は、地域連絡委員会をサポートし、他の地域のステークホルダーとも連携および協力しながら、地域アクションプランを策定し、現在も実行している。 科学委員会とその 2 つの地方作業グループは、管理当局に科学的なアドバイスを提供している。 推薦地域には、2016年12月に採択された「総合管理計画」があり、4島のクラスターに共通して適用される包括的な管理目標と管理基本方針 (返還された沖縄北部の NTA と残った NTA を除く推薦地域、緩衝地帯、その周辺地域までを対象としている)。

6. 基準の適用

奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島は、自然基準 (ix) および (x) に基づいて推薦されている。

基準 (ix): 生態系/コミュニティおよび生態学的/生物学的プロセス

選択された 4島のクラスターには、分離と隔離による種分化や多様化など、大陸の島々における進化過程の優れた事例を保護する構成要素が含まれている。 しかし、候補に挙がっているような断片的でバラバラの構成や、いくつかの構成部分のサイズが小さいことで、生態系の存続に大きな懸念がある。 したがって、推薦された地域については、完全性に関する考慮事項が満たされていない。

推薦された地域は、多くの遺存種および/または進化上の個別の種をサポートし、行動適応などの島嶼の生態学的プロセスの優れた例を示し、世界的には比較的珍しい生態系である独特で多様な亜熱帯雨林生態系をサポートしている。 それにもかかわらず、分類に採用された科学的枠組みによっては、特に西表島に代表される価値に関連して、推薦された地域を超えて広がる注目すべき生態学的つながりや進化の過程が存在することになる。

IUCN は、推薦された地域がこの基準を満たしていないと考えている。

基準 (x): 生物多様性と絶滅危惧種

選ばれた 4 島のクラスターには、この地域のユニークで多様な生物多様性を原位置で保全するための最も重要な自然生息地が含まれている。 推薦された地域は、一般的に、多くの種群で小さな島に関連した高い種の豊かさを示している。 この地域には、「深刻な危機 (Critically Endangered: CR)」の絶滅危惧種の数と割合が多く、さらに固有種の数と割合が多く、その中には多くの遺存種および/または進化上の別個の種を含んでいる。 推薦された地域には、世界的に絶滅の危機に瀕している種の保護のために、全体的に世界的にかけがえのない地域が含まれている。 しかし、本報告書の前のセクションで述べたように、返還された NTA には、ほぼ即座にノミネーション (推薦) に追加することが提案されている地域の価値と完全性に大きく寄与する重要な領域と、ノミネーション (推薦) に大きな価値を与えず、完全性の要件を満たさない不適切な小さな領域を取り除くために構成要素の選択に必要な多くの調整、の両方が存在する。

IUCN は、返還された NTA の関連領域を追加し、推薦に価値を与えない不適切な構成部分を削除した後の推薦地域は、この基準を満たす可能性を持っていると考えている。

7. 推奨事項

IUCN は、世界遺産委員会が以下の決定案を採択するよう勧告する。

世界遺産委員会 (The World Heritage Committee) 殿

  1. 文書 WHC/18/42.COM/8B および WHC/18/42.COM/INF.8B2 を調査した
  2. 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島 (日本) の世界遺産リストへのノミネーション (推薦) の審査を延期し、自然基準の下で以下を締約国に許可する。
    1. 推薦された地域の構成を再検討し、構成要素の選択、構成要素間の接続性、種の長期保護の実行可能性など、基準 (x) に特に焦点を当てること
    2. 沖縄本島の北部訓練場 (NTA) の返還地域を、基準 (x) の正当性への寄与を考慮して、適宜、指名物件に統合し、北部訓練場の残りの地域を指名物件の全体計画及び管理に統合するために必要な調整メカニズムをさらに開発すること
    3. 私有地の飛び地を取得し、保護し、指名資産に統合するために採用した戦略と、効果的な意思決定プラットフォームとプロセスを通じて、推薦地域の戦略的かつ日常的な管理への所有者と利用者の関与を確保するための関連取り決めをさらに推進すること
  3. 「奄美大島におけるノネコ管理計画」の採択及び予見された活性化を含む、侵略的外来種 (Invasive Alien Species: IAS) の管理および制御に関する締約国の努力に感謝を持って留意し、IAS に関する既存のプログラムを拡張して、推薦地域の生物多様性に悪影響を及ぼす他のすべての種に対処するよう奨励すること。
  4. 締約国が、観光客への関心と収容力に応じて、主要な観光開発ゾーンと観光地について、適切な観光客管理メカニズム、観光管理施設、通訳システム、監視態勢の設置を含む観光開発計画および観光客管理計画の活性化を追求することを勧告する
  5. 締約国が、人為的および気候変動による直接的な影響だけでなく、絶滅危惧種の状態および傾向に焦点を当てた統合監視システムの開発と導入を完了することをさらに勧告する

脚注 (訳注)


  1. (訳注) Udvardy 生物地理区分については、https://www.env.go.jp/nature/ramsar_wetland/conf22-01/ref03.pdf を参照。 ↩︎

  2. RRIBP と TBP は、本報告書を通して、生物多様性の自然発生に関連して定義された地域である Udvardy の生物地理学的地区を地理的に区別するために使用されている。 ↩︎

  3. これらのコードは、評価時に IUCN の絶滅危惧種のレッドリストに記録されている各種の保全状況を反映している。 詳細については、http://www.ucnredlist.org を参照。 ↩︎ ↩︎

  4. (訳注) IUCN レッドリストカテゴリー https://www.iucnredlist.org/ja ↩︎

  5. (訳注) 記事「【国際】IUCN、生物多様性保護地域指定のための国際基準「KBAスタンダード」発表」を参照。 ↩︎

  6. (訳注)「Invasive Alien Species (IAS)」は、「侵略的外来種」を指す。 ↩︎

2.10 - IUCN World Heritage Evaluations 2020

報告書 “IUCN World Heritage Evaluations 2020” の中の “Japan- Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island” の日本語訳です。

IUCN 評価報告書 2020 (日本語訳)

WHC/21/44.COM/INF.8B2, IUCN World Heritage Evaluations 2020 and 2021, IUCN Report for the World Heritage Committee, 44th Session, 16-31 July 2021, Fuzhou (China). https://whc.unesco.org/archive/2021/whc21-44com-8Binf2-en.pdf

“Japan- Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island”, p5-13.

奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島 - 日本

p5-13.


世界遺産委員会への IUCN 勧告: 自然基準 (x) に基づいて資産を表記すること。

運用ガイドラインの重要な段落: 第 77 項: 推薦された物件は世界遺産の基準を満たしている。 第 78 項: 推薦された物件は、完全性、保護、管理の要件を満たしている。


背景説明

このノミネートは、2017年に初めて提出された。 IUCNは、ノミネート (推薦) された物件が運営ガイドラインの完全性要件を満たしていないとして、ノミネートを延期するよう勧告した。 保護と管理の要件は満たしているが、緩衝地帯を含む保護と管理は、ノミネートに求められる修正の一部として再考する必要がある。 締約国の要請により、2019年に新たなノミネートを提出し、ノミネートを取り下げた (Decision 42 COM 8B.8)。

1. ドキュメンテーション

a) IUCN が推薦を受け取った日: 最初の推薦は 2017 年 2 月に受け取った。新しい推薦は 2019 年 2 月に受け取った。

b) 締約国から正式に要求され、締約国によって提供された追加情報:: IUCN の現地調査の後、締約国は、境界、既存および計画されているインフラ、外来種に対する対策の詳細を含む、推薦された土地に関する追加情報を提出した。 IUCN 世界遺産パネルの後、2019年12月27日に進捗報告書が締約国に送付された。 この書簡は評価プロセスの状況について助言し、木材採取、河川修復、緩衝地帯拡張の可能性、観光管理、気候変動に関する回答と説明を求めた。 締約国は、2020年2月26日に追加情報を提出した。

c) Additional literature consulted: Various sources, including: Itô, Y., Miyagi, K. and Ota, H. (2000). Imminent extinction crisis among the endemic species of the forests of Yanbaru, Okinawa, Japan. Oryx 34(4): 305-316; Jemali, N.J.N.B., Shiba, M., and Zawawi, A.A. (2015). Strategic forest management options for small-scale timber harvesting on Okinawa Island, Japan. Small-scale forestry, 14(3): 351-362; Motokawa, M. (2000). Biogeography of Living Mammals in the Ryukyu Islands. Tropics 10(1): 63-71; Natori, Y., Kohri, M., Hayama, S., and De Silva, N. (2012). Key Biodiversity Areas identification in Japan Hotspot. Journal of Threatened Taxa, 4(8): 2797-2805; Ota, H. (1998). Geographic patterns of endemism and speciation in amphibians and reptiles of the Ryukyu Archipelago, Japan, with special reference to their paleogeographical implications. Researches on Population Ecology, 40(2): 189-204; Ota, H. (2000). The Current geographic faunal pattern of reptiles and amphibians of the Ryukyu Archipelago and adjacent regions. Tropics 10(1): 51-62; Ozaki, K., Yamamoto, Y., Yamagishi, S. (2010). Genetic diversity and phylogeny of the endangered Okinawa Rail, Gallirallus okinawae. Genes and Genetic Systems, 85: 55-63; Saitoh, T., Kaji, K., Izawa, M., and Yamada, F. (2015). Conservation and management of terrestrial mammals in Japan: its organizational system and practices. Therya, 6(1): 139-153; Somiya, K. (2015). Conservation of landscape and culture in southwestern islands of Japan. Journal of Ecology and Environment, 38(2): 229-239; Song, D. and Kuwahara, S. (2016). Ecotourism and world natural heritage: Its influence on islands in Japan. Journal of Marine and Island Cultures, 5(1): 36-46; Sugimura, K., Sato, S., Yamada, F., et al. (2000). Distribution and abundance of the Amami rabbit Pentalagus furnessi in the Amami and Tokuno Islands, Japan. Oryx. 34: 198-206; Suzuki, M., Inoue, E., Ito, K., and Fujita, S. (2017). Assessment of the Impact of Wildlife Tourism on Animals: A Case Study of Amami-Oshima Island. Future Collaboration on Island Studies between Pattimura University and Kagoshima University, p.45; Watanabe, S., Nakanishi, N., and Izawa, M. (2005). Seasonal abundance in the floor-dwelling frog fauna on Iriomote Island of the Ryukyu Archipelago, Japan. Journal of Tropical Ecology, 21(1): 85-91; WWF Japan (2009). Nansei Islands Biological Diversity Evaluation Project Report, Tokyo: WWF Japan; Yamada, F. (2008). A Review of the Biology and Conservation of the Amami Rabbit (Pentalagus furnessi). In: Alves, P.C., Ferrand, N., Hackländer, K. (eds) Lagomorph Biology. Springer, Berlin, Heidelberg.

d) 相談: 2017 年の指名に関する 10 件の机上レビューに加えて、5 件の机上レビューを受け取った。 現地評価ミッションは、環境省(および各島のレンジャー)、林野庁(国および地方)、日本野生生物研究センターの高官、推薦地域の全12市町村長および鹿児島県と沖縄県の高官、この地域に運航する航空会社のシニアマネージャー、エコツーリズムや非営利団体の代表者など幅広い関係者と会談し、沖縄米軍環境部長との短い会談を行った。

e) 現地訪問: Ulrika Åberg と Wendy Strahm、2019年10月5日から12日

f) 本報告書の IUCN 承認日: 2020年5月

2. 自然な価値観の要約

推薦地「奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島」は、日本の南西部に位置する 4 つの島に広がる 42,698 ヘクタールの亜熱帯雨林を含んでいる。 連続した本候補地は、北東から南西に 700km 以上にわたって広がる 4 つの島に、5 つの陸上部を有しています。 この島弧は東シナ海とフィリピン海の境界に位置し、900 以上の島 (約 70 島に人が住んでいる) で構成されている。 候補地の最高点は奄美大島の湯湾岳 (標高 694 メートル)。

地区推薦された構成要素面積 (ha)ノミネート時の緩衝地帯 (ha)補足情報で修正された緩衝地帯 (ha)
鹿児島県奄美大島11,64014,50514,663
徳之島 (a)1,7241,8131,813
徳之島 (b)791999999
沖縄県沖縄本島北部7,7213,3983,398
西表島20,8223,5943,594
合計42,69824,30924,467

表1. 推薦地の構成部分、奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島

島々の沿岸地域の大部分は高度に改変されているが、山地や丘陵には比較的広い範囲の亜熱帯雨林が残っている。 これらの森林は、歴史的に激しい搾取を受けてきたため、原始的なものではないが、保護措置の後、森林は急速に回復し、良好な状態になっている。 人口島 (沖縄は南部を中心に140万人、奄美大島7万3千人、徳之島1万2千人、西表2300人) の水源地として欠かせない森林であるため、構成部分にはダムや河川改修が多数行われている。

しかし、推薦地域は、緩衝地帯のほぼ全域と同様に、人間が全く住んでいない。 固有種の割合が非常に高く、生物多様性の価値が高く、大部分が保存されている。 推薦された土地の生息地には多くの世界的に絶滅の危機に瀕している種が生息しており、各構成地域には独自の特徴的な固有種が存在する。 これらの島々は北から南まで顕著な生物地理的階層を示しており、亜熱帯、熱帯、温帯の種が混在する旧北極圏とインド・マレー圏の間の重要な生物地理学的移行帯に位置している。 推薦地域は、Udvardy の 2 つの生物地理学的地域に位置している。 奄美大島、徳之島、沖縄本島は旧北極圏に位置し、Udvardy の琉球列島生物地理区 (RIBP) 内にあり、西表島はインド・マレー圏にあり Udvardy の台湾生物地理区 (TBP) 内にある。

この推薦地は、日本の狭い面積しかカバーしていないが、日本の動植物の非常に大きな部分を支えている。 最も重要なことは、植物、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、内陸の水魚、十脚甲殻類などの固有種が高い割合で生息していることである。 これらには、例えばアマミノクロウサギ (Pentalagus furnessi - EN) やケナガネズミ (Diplothrix Legata - EN) が含まれており、これらは古代の系統を代表し、世界中のどこにも生きた親戚がいない。 推薦地内の哺乳類 5 種、鳥類 3 種、両生類 3 種は、世界的に進化上絶滅危惧種 (EDGE) に指定されている。 また、それぞれの島に限定された、他の候補地では見られないさまざまな固有種が存在する。 また、この連なった地域は、3 つの生物多様性の保全の鍵になる重要な地域 (KBA) と 2 つの絶滅ゼロ同盟 (AZE) のサイトと重なっている。

当初の推薦と比較した主な変更点は、第一に、2018年の IUCN の勧告に沿って、基準 (ix) での登録を提案しなくなり、基準 (x) のみに焦点を当てたことである。 第二に、新たな計画には、24 の小規模で分散した構成要素を 5 つのより大きな構成要素に統合することと、米国から日本に返還された軍事区域である北部訓練場の一部を沖縄本島の構成部品に統合することが含まれている。 当初の推薦に関する詳細は、IUCN 世界遺産評価 2018 (IUCN World Heritage Evaluations 2018、WHC/18/42.COM/INF.8B2) に掲載されている。

境界線の変更により、この推薦は接続性を改善して、上記の自然の価値をより効果的に表現し、保護することを目的としている。

3. 他の地域との比較

IUCN は 2018 年の評価で、推薦地域は日本の生物多様性ホットスポットの中で明らかに卓越した重要性を持つ価値を保護しようとしているとみなした。 委員会の注意は以前の比較分析に向けられているが、簡潔にするためにここでは繰り返さないが、修正された推薦地域との関連性は依然として残っている。

新しい推薦書類の比較分析では、日本の他の4つの自然世界遺産、および他国の11の自然世界遺産と比較し、地域的・世界的な比較をしている。 全国比較では、ほとんどの分類群 (昆虫、両生類、爬虫類、鳥類) において、推薦された地域は他の地域よりも多くの種を記録している。 維管束植物では屋久島に次ぎ、陸生哺乳類では知床 (生態系が大きく異なる) に次ぐ。

この推薦では、植物に加えて、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、内地の水魚、昆虫、内水十脚甲殻類を含む、高い生物多様性価値を持つ 7 つの動物グループに焦点を当てた。 ただし、比較分析は EDGE 種 (世界的に進化上絶滅危惧種、すなわち哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類) のみに焦点を当てており、水生種は除外されている。 より包括的な分析は、推薦によって強調されたように、他の場所と比較した淡水生物多様性の重要性を理解するのに役立ち、推薦された土地の水生種に関する完全性の問題を理解するのに関連していただろう。

IUCN は、国連環境計画世界自然保護モニタリングセンターと共同で、2017 年に補足的な比較分析が行われたことを想起する。 今回変更された候補地は、哺乳類、鳥類、両生類の保護において、世界で最もかけがえのない上位1%に含まれる2つの保護区と 95 %以上重なっている。 つまり、西表島は西表国立公園と、沖縄本島北部は金作原と重なる。 ただし、推薦地域と重なる可能性のある最近指定された国立公園は、世界保護地域データベース (WDPA) にまだ統合されていないため、代替性の分析に含めることができないことに注意する必要がある。

推薦地域は、世界遺産リストに 1 件しか登録されていない「南西諸島の森」陸域グローバル 200 優先エコリージョンに位置していおり、この地域には、基準 (vii) と (ix) で登録された世界遺産「屋久島」(日本) がある。 屋久島は、列島の北に位置し、Udvardy の生物地理上の別の地区 (日本の常緑樹林) に属している。 また、この推薦地域は、すでに世界遺産に登録されている屋久島を代表とする固有鳥獣保護地域 (EBA) である南西諸島に属している。 この EBA は、九州と台湾の間にあるすべての島々で構成されている。

国連環境 WCMC の分析では、推薦された土地の種数を、同じ地球上のホットスポットおよび同様の規模の熱帯または亜熱帯の島々にある世界自然遺産と比較した。 この推薦地域には、比較対象のどの世界遺産よりも多くの植物や鳥類が記録されており、哺乳類と魚類では 2 種を除くすべての種で高くなっている。 推薦地の昆虫の生物多様性も注目に値し、4 つの島には合計 6,148 種が生息しており、そのほとんどが甲虫目 (甲虫) と鱗翅目 (蝶と蛾) で、昆虫種の数の半分を占めています。

要約すると、前回の推薦の評価にも留意しながら、IUCN は、基準 (x) に関連して、比較により登録の正当性が強く裏付けられると考えている。

4. 完全性、保護、管理

4.1. 保護

推薦された地域の大部分は、3 つの国立公園 (IUCN カテゴリー II 以上) の最も厳格な保護区 (クラス I および特別保護区) に位置し、より小さなエリアは、クラス I の保護下にある「保護区」および「森林生態系保護区」内にあります。 いくつかの小さな地域はクラス II 保護区に含まれていますが、地主がこれらの地域にもクラス I 保護を設けることに同意していると、締約国は述べている。 したがって、推薦された地域は日本の保護区制度において最高の国家保護を受けることになる。

緩衝地帯も法的に保護されており、非常に良好な状態である。 多くの場所では、推薦地の中核地域と緩衝地帯を区別することは不可能であり、いくつかの緩衝地帯はおそらく候補地に含まれていた可能性がある。 しかし、締約国は、最も高度に保護された地域のみを中核地域に含めることに細心の注意を払ってきた。

沖縄県、徳之島、西表島の推薦地の構成部分のほとんどは公共団体 (国または地方公共団体) が所有・管理する公有地であり、民間または所有者不明の土地はわずか 4% に過ぎない。 奄美大島は現在、私有地が 33% と多いが、徐々に公有地に移行するプロセスが進行中であることが明記されている。 緩衝地帯については、合計 49% が公有地で、残りは私有地となっている。 私有地はほとんどが林業会社のものであるが、所有者は国立公園が課す林業管理システムの制約に同意しているとされる (4.5 項参照)。

IUCN は、推薦された地域の保護状況が運用ガイドラインの要件を満たしているとみなす。

4.2. 境界線

2017年の指名で特定された境界線とデザインの問題は、最初の評価で徹底的に検討され、最初の評価以降、これらは、元の現地調査者からの意見も受けた締約国によって検討されている。

当初の指名に続く助言の過程では、沖縄の米国北部訓練場から日本に返還された土地も候補に含めるよう勧告された。 現在はジャングル戦訓練センター (JWTC) と呼ばれる北部訓練場の半分以上が 2016 年 12 月に日本に返還され、2,793ha が推薦地域に組み込まれた。 しかしながら、沖縄の構成部分の構成には異常があり、JWTC の長い帯が指名物件に突出しているが、指名物件には含まれないというものである。

さらに、従来 24 あった推薦の構成部分の数を減らし、連結性を高めるために統合することが推奨された。 これは、元の緩衝地帯の一部を推薦地域に統合し、連結できない小さな孤立した構成部分を削除し、緩衝地帯の構成を改善するために、あまり強く保護されていない地域を追加することで達成された (緩衝地帯に関する運用ガイドラインに準拠している)。 奄美大島の民有地を追加購入し、接続性を向上させた。

補足情報として、締約国は、(a) 屋久勝川河口とマングローブ林、(b) 嘉徳川と隣接する海岸地域を含む、奄美大島の緩衝地帯を158ヘクタール拡張することを確認した。 後者の延長は、集落を保護するためにすでに承認された防潮堤が嘉徳海岸に建設を進めることを条件に、各自治体と地元コミュニティと合意された。 締約国はまた、奄美大島構成部分内の最後の自由流河川である嘉徳川が将来的に河川構造物の新たな建設の対象とならないことを確認した。 締約国は、防潮堤は河川への悪影響を避けるのに十分な距離を置くだろうと指摘した。 建設工事終了後も環境モニタリングは継続され、予期せぬ悪影響が発生した場合には改善計画が立てられる予定である。

全体として、IUCN は、5 つの構成部分の境界が、重要な価値を確実に捉え、推薦された資産全体が高レベルの保護を備えていることを保証するために慎重に選択されていると考えている。 2017 年のノミネートから変更された境界の変更により、接続性が大幅に改善された。 いくつかの妥協点は残るが、結果として、推薦された地域の OUV を保護するための効果的な解決策となる。

IUCN は、推薦された土地の境界が運用ガイドラインの要件を満たしているとみなす。

4.3. 管理

推薦された土地だけでなく、緩衝地帯や周囲の保護地域にも包括的な管理計画がある。 IUCN は、推薦された土地には適切な管理計画があると考えているが、比較的最近保護区に指定されたことを考慮すると、まだ実施されていない行動計画が多数あることを指摘している。 特に固有種や絶滅危惧種、生息地の質、侵略的外来種などの包括的な監視の範囲と資源が問題として取り上げられ、締約国は指名された不動産をどのように監視する予定かを示す補足情報を提供した。 奄美大島と徳之島では 2016 年から「奄美群島持続可能な観光基本計画」が実施されているが、「沖縄本島北部地域持続可能な観光基本計画」と「西表島持続可能な観光客管理基本計画」は 2020 年 2 月に完了したばかりで、いくつかの規制や観光客数を制御する施策はまだ実現されていない。

国立公園の管理は環境省が行っているが、管理する行政機関 (環境省、林野庁、文化庁、鹿児島県、沖縄県、12市町村) が連携する「地域連絡会」を設置し、業務調整を行っている。 この地域連絡会のもと、地元関係者との会合を設け、推薦地域の保全・管理を効果的に行うための地域行動計画を策定している。 また、諮問機関として科学委員会があり、経営判断に寄与している。

財務に関する情報は、国立公園制度と林野庁全体について言及しており、指名された各構成要素の具体的な予算は示していない。 ただし、推薦地は国立公園・森林保護区制度の一部であるため、県や市区町村も資金提供を行っており、資金は確保されているようだ。

IUCN は、推薦された地域の管理が運用ガイドラインの要件を満たしているとみなす。

4.4. コミュニティ

境界線内には人が住んでおらず、緩衝地帯内には奄美大島の 2 つの村があるだけである。 IUCN は、特に西表島において公的な協議と同意が十分でなかったとする多数の書簡を受け取り、西表島には依然として登録に反対する住民が多数いるようだ。 一方、管理当局は公的相談の件数を列挙し、公的相談と情報提供は十分であったと主張した。 IUCN は、一部の利害関係者の懸念は世界遺産登録よりも広範な問題に関係していると指摘している。 2 つの現地調査団からのインプットと締約国とのやりとりに基づいて、IUCN は、この指名に対する地域社会の支持の容認できる証拠があると考えるが、締約国が地域社会と関わり支援し、提起された問題に耳を傾けて対応することが引き続き必要であると指摘している。

4.5. 脅威

推薦された土地の管理は、多くの侵略的外来種やノネコと闘っており、この問題に対処するためにいくつかの対策が講じられている。 20 世紀に導入されたインドグレーマングース (Herpestes edwardsi) は、奄美大島ではほぼ絶滅したが、依然として沖縄の固有種および絶滅危惧種に対して大きな脅威となっている。 西表島ではオオヒキガエル (Rhinella marina) は駆除されたが、隣の石垣島から再侵入する危険性がある。 推薦地に存在する「マイル・ア・ミニッツ (ツルヒヨドリ)」 (Mikania micrantha) や「クリーピング・デイジー (アメリカハマグルマ)」 (Sphagneticola trilobata) など、いくつかの侵入植物種を防除するための行動計画と地域社会の取り組みがある。

ランやショウブ、爬虫類、両生類、甲虫などの動植物の違法採取が問題になっている。 自治体の夜間パトロールや夜間通行止めなどの行動計画が実施されている。 しかし、特に淡水ガメなどの採取については、保全対策の強化・厳格化が急務となっている。

アマミノクロウサギ、イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナ、各種ヘビなどの種が、推薦地を横切る道路で頻繁に殺されている。 推定生息数わずか 100 匹のうち、2018 年には 9 匹のイリオモテヤマネコが交通事故で死亡している。 数多くの警告標識、速度段差、時速 30 km の制限速度、地下道が存在する一方で、依然として多数の絶滅危惧種が殺されている。 保護区内での観光や車両の増加に伴い、ロードキル (交通事故死) のリスクは高まると予想される。

この地域の観光客は増加傾向にあり、2013 年には 700 万人を超え、2017 年には 1,000 万人を超えるまでに増えている。 最も開発が遅れている西表島だけでも、年間平均 35 万 2,000 人の観光客が訪れており、住民 1 人当たりの観光客数は 150 人を超える割合となっている。 西表島ではほとんどの観光客が推薦地を訪れるが、他の島ではそれぞれの推薦地を訪れる人の割合を把握することがさらに難しい。 ロードキル (交通事故死) 以外にも、観光による脅威として、侵略的な外来種の持ち込みや拡散の可能性の増大、絶滅危惧種の野生動物の密猟などが挙げられる。 補足情報として、締約国は、指名ファイルで提供された奄美群島の基本計画に加え、西表島と沖縄本島北部の観光基本計画を新たに完成させた。

締約国は補足情報として、推薦された土地内では林業は許可されておらず、緩衝地帯での伐採は 2 ヘクタールの区画に限られ、まだ再生注の過去の場所には隣接しないことを確認している。 林業と土壌流出が OUV に対する脅威となる可能性はあるが、現時点では、介入レベルが増加したり、推薦地域に近づいて実施されない限り、重大な影響のリスクは小さいと思われる。 IUCN は、緩衝地帯における林業技術の一部が皆伐であると思われることを懸念しており、緩衝地帯における林業を時間の経過とともにさらに制限する必要があると考えている。

締約国は、推薦地に既に存在する既存の施設に加えて新たなインフラを建設する意図はないことを保証した。 奄美大島の嘉徳海岸での防潮堤の建設に関する裁判が進行中であるが、補足情報で確認された境界変更を受けて、現在は緩衝地帯に含まれている (4.2 項を参照)。 一般に、島々の河川は水利と洪水防止のために大きく改変され、自然の淡水プロセスや生息地に依存するいくつかの固有種や絶滅危惧種に悪影響を及ぼしてきた。 しかし、締約国は、自然志向の河川管理を報告しており、最近では、内陸水生種に対するハードエンジニアリングの河川構造の影響を軽減するための対策が進められていると報告している。

全体として、IUCN は、指名物件の OUV に影響を与える可能性のある脅威の数に懸念を抱いているが、それらに対処するための締約国の約束と行動を認めている。 対策の有効性を慎重かつ定期的に評価し、必要に応じて適応的な管理や追加の措置を講じる必要があります。

結論として、IUCN は、推薦された地域の完全性、保護、管理が運用ガイドラインの要件を満たしていると考える。

5. 追加コメント

5.1. シリアルプロパティに関する考慮事項

a) シリアルアプローチを正当化する理由は何か? 基準 (x) については、亜熱帯雨林の大きなブロックの中に、列島の生物多様性価値の十分高い割合を含むものはなく、その OUV を証明することはできない。 したがって、この群島の中央島と南島の固有種および絶滅危惧種の約 90% が含まれる、地質連鎖内の 4 つの島にある 5 つの大規模でほとんど手つかずの亜熱帯雨林地域を提示するという提案は正当化される。

b) 推薦地域の個別のコンポーネント部分は、運用ガイドラインの要件に関連して機能的にリンクされているか? 島と島は離れているが、同じ地質学的な歴史と、非常によく似た亜熱帯林の生息地と関連する植物があることで、つながっている。 これらの構成要素は、同じ一般的な進化・生態学的プロセスを共有することで、関連する固有種や絶滅危惧種の陸上生物多様性の大部分を支えている。

c) 推薦された地域のすべての構成要素に対して、効果的な全体管理の枠組みがあるか? 国立公園の管理は、環境省が担当している。 さらに、管理を担当するさまざまな行政機関を集めた地域連絡委員会が設置され、それぞれの業務を調整している。 ただし、2つの県 (北は鹿児島県、南は沖縄県) 間でより多くの関わりがあることが望ましいと指摘されている。

6. 基準の適用

奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島 (日本) 自然基準 (x) に基づいて推薦されている。

基準 (x): 生物多様性と絶滅危惧種

推薦地には、推薦地が位置する群島の中央部および南部の独特で多様な生物多様性の原位置保全にとって極めて重要な自然生息地が含まれている。 推薦地域を構成する 5 つの構成部分は、地球規模の生物多様性の保全にとって最も重要であると考えられる 200 のエコリージョンの 1 つに位置している。 推薦地の亜熱帯雨林は、この地域に残る最大のもので、少なくとも 1,819 種の維管束植物、21 種の陸生哺乳類、394 種の鳥類、267 種の内陸の水魚、36 種の陸生爬虫類、21 種の両生類を誇る、非常に豊かな動植物を擁している。 これらには、日本の生物多様性ホットスポットの陸生脊椎動物の約 57% が含まれており、その中には日本固有の種の 44% と、世界的に絶滅が危惧されている日本の脊椎動物の 36% が含まれる。

IUCN の絶滅危惧種レッドリストに掲載されている種の中には、奄美大島と徳之島にのみ生息し、世界中に近縁種が存在しない同属の唯一の種であるアマミノクロウサギや、世界のどこにも近縁種が存在しない沖縄本島北部の飛べないヤンバルクイナが含まれる。 トゲネズミは、3 つの島それぞれに固有の 3 種と、西表島にのみ生息するイリオモテヤマネコからなる固有属を形成している。 多くの分類群では種分化と固有性が高くなっている。 たとえば、188 種の維管束植物と 1,607 種の昆虫が、推薦地に含まれる 4 つの島の固有種となっている。 陸生哺乳類 (62%)、陸生爬虫類 (64%)、両生類 (86%)、内陸水産カニ (100%) の固有率も高い。 オキナワトゲネズミ、リュウキュウヤマガメ、クロイワトカゲモドキなど 20 種が世界的に進化上絶滅危惧種 (EDGE) に指定されている。

IUCN は、推薦された地域がこの基準を満たしているとみなす。

7. 推奨事項

IUCN は、世界遺産委員会が以下の決定案を採択するよう勧告する。

世界遺産委員会 (The World Heritage Committee) 殿

  1. 文書 WHC/20/44.COM/8B および WHC/20/44.COM/INF.8B2 を調査した
  2. 奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島 (日本) を基準 (x) に基づき世界遺産リストに登録する
  3. 以下の「卓越した普遍的価値に関する声明」を採択する

簡単なまとめ

奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島の 4 つの島にある 5 つの構成部分 (徳之島は 2 つの構成部分) からなる 42,698ha の連続した陸上地域である。 黒潮と亜熱帯高気圧の影響により、温暖湿潤な亜熱帯気候に属し、主に常緑広葉樹の亜熱帯雨林に覆われている。

中新世後期の沖縄トラフの形成により、ユーラシア大陸から鎖状に分離し、小さな島々からなる列島が形成された。 陸生種はこれらの小さな島々に孤立し、進化して独特で豊かな生物相を形成した。 この地域に含まれる島々には、これらの島々や隣接する陸地の間を渡ることができなかった陸生脊椎動物群や植物の固有種の多くの例が存在する。

したがって、この物件は、多くの固有種や世界的に絶滅の危機に瀕している種の保護にとって世界的に高い価値があり、列島の中央部と南部のユニークで豊かな生物多様性を原位置で保全するための最も重要かつ重要な残りの自然生息地を含んでいる。

基準

基準 (x)

この地には、この地が位置する群島の中央部と南部の独特で多様な生物多様性を現地で保全する上で極めて重要な自然生息地が含まれている。 本推薦地を構成する 5 つの部分は、世界の生物多様性の保全に最も重要とされる 200 のエコリージョン (生態系) のうちの 1 つに位置している。 亜熱帯雨林は、この地域に残る最大のもので、少なくとも 1,819 種類の維管束植物、21 種類の陸生哺乳類、394 種類の鳥類、267 種類の内陸の水魚、36 種類の陸生爬虫類、21 種類の両生類を誇る非常に豊かな植物相と動物相を保有している。 これらには、日本の生物多様性ホットスポットの陸生脊椎動物の約 57% が含まれており、その中には日本固有の種の 44% と、世界的に絶滅が危惧されている日本の脊椎動物の 36% が含まれる。

IUCN の絶滅危惧種レッドリストに掲載されている種の中には、奄美大島と徳之島にのみ生息し、世界中に近縁種が存在しない同属の唯一の種であるアマミノクロウサギや、世界のどこにも近縁種のいない沖縄本島北部の飛べないヤンバルクイナが含まれる。 トゲネズミは、3 つの島それぞれに固有の 3 種と、西表島にのみ生息するイリオモテヤマネコからなる固有属を形成している。

多くの分類群では種分化と固有性が高くなる。 たとえば、この地域内の 4 つの島には、188 種の維管束植物と 1,607 種の昆虫が固有種として生息している。 陸生哺乳類 (62%)、陸生爬虫類 (64%)、両生類 (86%)、内陸水産カニ (100%) の固有率も高い。 オキナワトゲネズミ、リュウキュウヤマガメ、クロイワトカゲモドキなど 20 種が世界的に進化上絶滅危惧種 (EDGE) に指定されている。

完全性

この地域は、この島が位置する列島を最もよく表しており、世界の生物多様性ホットスポットの 1 つである日本で最も豊かな生物相を含んでいる。 5 つの構成部分の境界は、敷地全体が厳密に保護され、重要な価値を捉え、実現可能な限り、概して高度な連結性を示すように慎重に選択されている。 地域の OUV の属性をサポートするために緩衝地帯が積極的に管理され、伐採などの活動が悪影響を及ぼさないようにすることが重要である。

この地を擁する 4 つの島は、手つかずの亜熱帯雨林が連続する山と丘で構成されており、列島の中南部の在来種、固有種、世界的に絶滅の危機に瀕している種の約 90% の特に安定した生息地を確保している。 自然に機能する重要な淡水システムがあるが、一部の自然の価値は、ハードに設計されたインフラの影響を受けており、より自然な機能に復元できる可能性がある。

この地域の 5 つの構成部分には、かなりの規模のエリアを多く含む、手付かずの亜熱帯森林およびその他の生息地が残っている。 これらは、固有種および絶滅危惧種の現在最も重要な分布域および潜在的な分布域を含むように選択されており、この地域の顕著な普遍的価値を表す重要な属性である。

保護と管理に関する要求事項

この地域は、日本の自然環境保全地域制度の中で最も厳しい保護を受けており、環境省が管理する特別保護地区や第一種特別地域、林野庁が管理する森林生態系保護区に指定されている。 また、この地域は、国立野生生物保護地域と天然記念物保護地域に指定されている。 そのため、この物件は十分な管理資源と適切な長期的保護を受けることができる。 アマミノクロウサギ、トゲネズミ 3 種、ヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなどの固有種や絶滅危惧種は、国の絶滅危惧種や国の天然記念物に指定され、法的にも保護されているものがある。

推薦された地域内の 4 つの島には人が住んでおり、住宅地や産業活動は固有種や絶滅危惧種の生息地の近くにある。 緩衝地帯は、主に国立公園の第 2 種特別地域および/または森林生態系保護区の保全利用地域など、敷地に隣接して含まれている。 また、総合管理計画に基づき、本物件とその緩衝地帯を包含する「周辺保全地域」が指定されている。

環境省、林野庁、文化庁、鹿児島県、沖縄県、12 市町村の各レベルの行政が、多層的な保護地域の管理と指定種の保護を促進・調整するために「地域連絡委員会」を設置した。 推薦地域内だけでなく、緩衝地帯や周辺の保全地域も含めた「総合管理計画」に基づいて管理されている。

この土地に対する主な脅威には、西表島を含む一部の地域で野生生物に重大な脅威をもたらす観光による潜在的な影響が含まれる。 さらなる脅威には、小型のフイリマングースやネコなどの侵略的外来種による影響、野生動物の道路破壊、野生の希少種や絶滅危惧種の違法収集などが含まれる。 これらの脅威に対処するため、関係行政機関、民間団体、地域社会等が連携し、様々な対策を講じることにより、資産に対するリスクの予防・軽減を図っている。 近年、観光産業が増加しており、持続可能な観光レベルを十分に評価し、継続的に監視する必要がある。 侵略的外来種やロードキル (交通事故死)、特にイリオモテヤマネコを含む絶滅危惧種に対する交通の重大な影響を及ぼす可能性があるため、極限まで抑え、厳しく監視し、野生希少種や絶滅危惧種の違法採取を防止する必要がある。 可能な限りハードなインフラから、自然ベースの技術やリハビリのアプローチに移行するために、包括的な河川再生戦略を策定する必要がある。 緩衝地帯での活動には、非常に限定的に行われている伝統的な木材の採取も含まれており、継続的な警戒が必要であり、厳しく制限され、監視される必要がある。

  1. この財産の保存に対する締約国の公約と、完全性の問題に対処するために当初のノミネート (42 COM 8B.8) を修正する努力を称賛する。

  2. 締約国に対し、本件地域の保護と管理を改善するために、以下を含む即時の措置をとることを要求する。

a) 特に西表島では、観光の収容力と影響に関する重要な評価が行われ、観光管理計画の見直しに反映されるまで、観光客の訪問レベルを現在のレベルから制限または削減すること

b) 絶滅危惧種 (アマミノクロウサギ、イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナを含むがこれに限らない) の交通事故死を減らすための交通管理対策の有効性を早急に見直し、必要に応じて強化すること

c) 可能な限りハードな人工インフラから、補充、植生、さまざまな種類の生息地の形成などの自然ベースの技術や修復アプローチを採用するために、包括的な河川修復戦略を策定すること

d) 緩衝地帯での伐採作業を、その数と個々の伐採区域の合計の大きさにおいて、現在のレベルより上限を設けるか削減し、伐採が緩衝地帯に厳密に限定されるようにすること

  1. また、締約国に対し、2022年12月1日 までに IUCN による審査のため、これらの行動の進捗状況と結果を世界遺産センターに報告するよう要請する。

2.11 - 用語集 (Glossary)

本項で公開した論文、文献等を翻訳するにあたり利用した「用語集」です。

一般用語

原語訳語補足
a large degree of大きい程度
action plans行動計画
agonistic behaviour敵対行動
Allele frequenciesアレル頻度
allele frequency data対立遺伝子頻度データ
allele frequency spectrum対立遺伝子頻度スペクトル
allele surfing対立遺伝子サーフィングアレルサーフィン
Alliance for Zero Extinction絶滅ゼロ同盟
allometric equationアロメトリック方程式
Alloparental Care同種親の世話アロパレンタルケア
altruism利他主義
amphibian両生類
ancestral traits祖先の特徴
anti-cat猫嫌い派
anticoagulant抗凝血剤
archipelago群島、多島海
artificial selection人為選択
artificial selection人工淘汰
auxiliaries補助の
Aves鳥綱鳥類
baitえさ、餌
Bartonella henselaeネコひっかき病
Barwon Parkバーロン・パーク
Behaviour行動
bigeminus pattern二峰性パターン
bimodal model二峰性モデル
biogeographic生物地理学的
biome群系
brodifacoumブロジファクム
brodifacoumブロディファコウム
ca. (chronological age)暦年齢
calibrationキャリブレーション
calibration curve較正曲線
calipersカリパス
canidイヌ科動物
carbonized炭化する
Carnivora食肉目; 食肉類
carrion腐肉、死肉
casual distribution不定期の分布、偶然の分布
Cattai national parkキャタイ国立公園
cattle barn牛舎
Chiroptera翼手目; 翼手類
clustersクラスター
co-option共連れ
coefficients係数
collaboration agreement連携協定
collinearity problem共線性の問題
commensal共生の
commensal relations片利共生関係
Commensalism共生生活
commitment責任
communal共同の共同社会の
communal care共同養育
Comprehensive Management Plan包括的管理計画
Confinement閉じ込め
confounding effects交絡効果
conservation biology保全生物学
conspecific同種
contagiousうつりやすい、感染力は強くない
crepuscular薄明に活動する
Daily consumed biomass1日消費バイオマス
Dassen Islandダッセン島 (ダーゼン島)
Dating年代測定
decapod crustaceans十脚甲殻類
decontamination除染
demographic balance人口バランス
demography人口統計人口統計学
denning巣作り
dens巣穴
Descriptor記述子
diet analysis食性分析
Diet composition食性構成
diet study食性調査
dissertation学位論文
Distal left femur左大腿骨遠位部
domestication家畜化
Domestication家畜化
domestication家畜化
domesticatory relationships家庭内関係
El Kabエルカブ
endemic animals固有種
Endemic Bird Area (EBA)
endemic prey-species固有種の餌種
endemism固有性
endogenous内因性
epiphenomena付帯徴候
epizootics家畜流行性の
Eradication根絶、撲滅
euthanasia安楽死
euthanasias安楽死
Evolutionarily Distinct and Globally Endangered (EDGE)世界的に進化上絶滅危惧種 (EDGE)
evolutionary inertia進化の惰性
exploitation搾取
extinctions絶滅
extirpations根絶
faeces糞便
falciform fatpad鎌状脂肪板
fauna and flora動物相および植物相
fecundity生産力、多産
feline panleukopenia virusネコ汎血球減少症ウイルス
feralization再野生化
fertilizer化学肥料
filtration濾過
fitness適応度、適合性
fluctuation変動
fluctuations変動
foodwebs食物網
foraging漁り歩く
Forest Ecosystem Reserves森林生態系保護区
Fregate Islandフリゲート島 (フレガット島)
genetic drift遺伝的ドリフト
Great Dividing Rangeグレートディヴァイディング山脈
Gruiformesツル目
Gryllidaeコオロギ科
Guanzhong BasinGuanzhong 盆地
hareノウサギ
herbicide除草剤
Holocene完新世
Home-range行動圏
husbandry畜産
Hygiene衛生
hyper-predationハイパープレデーション
immuno-contraception免疫避妊法
impound押収
impoundments押収
inbreeding depression近親交配の抑制
incisors切歯
industrial farming工業型農業
inland water fish内陸の水魚
inscription登録
Insecta昆虫綱
inter aliaなかんずく、特に
inter-group群間の
introgression遺伝子移入浸透性交雑
Invasive Alien Species (IAS)侵略的外来種(IAS)
invasive carnivorous mammals外来肉食哺乳類
Invasive Rabbits外来ウサギ
Invasive Rabbits侵略的ウサギ
invasive species侵略種
irreplaceabilityかけがえのなさ、代替不可能性
Isotope Analysis同位体分析
Isotopic data同位体データ
Key Biodiversity Area生物多様性の保全の鍵になる重要な地域
Key Biodiversity Areas生物多様性の保全の鍵になる重要な地域 (KBA)
keystone speciesキーストーン種
lactatingほ乳期
Left mandible左下顎
left pelvis無傷の左骨盤
Litterひと腹の子
livestock家畜
loess plateau黄土高原
longevity寿命
Mammalia哺乳類
Mantel testマンテル検定
Markov jumpsマルコフジャンプ
maternal care母の養育
Mitochondrial genealogyミトコンドリア系図
modulate調整する
morale士気
Morphological comparison形態学的比較
mutualistic relations相利共生関係
natal出生の
National Natural Monuments国の天然記念物
National Wildlife Protection Areas国指定鳥獣保護区
native animals在来種
native endemic vertebrates在来種の固有脊椎動物
native fauna在来動物
native species在来種
natural forests自然林
natural selection自然淘汰
natural selection自然淘汰
Neighbor joining method近隣結合法
neighbor-joining treeNJ 法による系統樹
nocturnal夜行性の
nominationノミネーション
nomination file推薦ファイル
oestrus発情発情現象; 発情期
oestrus発情
off-spring子孫
offspring子孫
Okinawa Rail Captive Breeding Centre環境省 ヤンバルクイナ 飼育繁殖施設
optimal reproductive strategy最適繁殖戦略
Orthoptera直翅目
Pairwiseペアワイズ
Palearctic旧北区
Paleocene暁(ぎよう)新世の
paleosols古土壌
parturition出産、分娩
Passeriformesスズメ目
pesticide殺虫剤
philopatry定住性
photosynthetic光合成
Physiology生理学
phytoliths植物化石
Piciformesキツツキ目
Plant植物
plasticity可塑性
population bottleneck集団ボトルネック
population genetics集団遺伝学
population regulation人口調節
Populations集団個体群
Port-Crosポール・クロ
postulate仮定する
prairie草地
predation捕食
Prey species餌種
pro-cat猫擁護派
pro-wildlife野生動物擁護派
propagule pressure散布体の導入圧Introduction effort
propensity傾向
province地区
Proximal left tibia左脛骨近位部
Proximal right humerus右上腕骨近位部
proximate causation直接要因
pup子犬
quantiles分位
rabbit warrensウサギの群れ
rabies狂犬病
radiocollared放射性同位元素で標識された
Ratsネズミ
realmhttps://www.env.go.jp/nature/ramsar_wetland/conf22-01/ref03.pdf
rearing飼育する
recruitmentメンバー補充
Regional Liaison Committee地域連絡委員会
regurgitate吐き戻す
relatives近縁種
relict残存生物[種]
relict endemics遺存固有種
Relocation移転
reproductive physiology生殖生理学; 繁殖生理
Reptilia爬虫綱
right humerus右上腕骨
Right pelvis右骨盤
rodent齧歯類
Rodentia齧歯目
Sanctuariesサンクチュアリ (保護区)
SARS: severe acute respiratory syndromeSARS(重症急性呼吸器症候群)
Scat collectionスキャット収集
scatsスキャット(糞)
Scientific Committee科学委員会
Scientific Committee科学委員会
serial nominationシリアルノミネーション
Sex ratio性比
Shaanxi陝西省
shearwaterミズナギドリ
shrewsトガリネズミ(ジネズミ)
social ecologyソーシャルエコロジー社会生態学
Sociality群居本能、群居性
sodium monofluoroacetateモノフルオロ酢酸ナトリウム
Soricomorphaトガリネズミ目
Special Protection Zones特別保護区
Squamata有鱗目
Stable Isotopic Measurements定同位体測定
stakeholders利害関係者
State Party締約国
stoatオコジョ
stratum地層
sub-local meetings準地方会議
submission服従
Surrounding Conservation Areas周辺保全地域
taxon分類群; タクソン
taxonomic criteria分類学上の基準
Tel el-dab’aテルエルダバ
terrestrial ecoregion陸上エコリージョン
territorialism縄張り意識
Territoriality縄張り意識
Thomas Austinトーマス・オースティン
toll犠牲
tree topologyツリートポロジー
UdvardyUdvardy陸域の生物地理区分
ungulate有蹄類の
ungulate有蹄類の
Unknown不明
vascular plant維管束植物
vertebrates脊椎動物
virus-vectoredウイルスベクター
well-being幸福
Whole Exome Sequencing全エクソームシーケンシング
Wildlife Protection Areas野生生物保護区
woodlot雑木林 (植林地)
Wuzhangguoliang五丈溝
Yambaru Discovery Forest Centre and Lodge国頭村環境教育センター やんばる学びの森
yearlings満 1 年子
zoning区画設定
Zooarchaeological Analysis動物考古学的分析

生物用語

原語訳語学名
Amami jayルリカケスGarrulus lidthi
Amami rabbitアマミノクロウサギPentalagus furnessi
Amami spiny ratsアマミトゲネズミTokudaia osimensis
Amami spotted kamadoumaアマミマダラカマドウマDiestrammena (Diestrammena) gigas
Amami tip-nosed frogアマミハナサキガエルOdorrana amamiensis
Amaranthaceaeヒユ科
Asian house shrewジャコウネズミ
Black ratsクマネズミRattus rattus
blue jayアオカケス
Bonin flying foxオガサワラオオコウモリPteropus pselaphon
Bonin Pipistrelleオガサワラアブラコウモリ
Cane ToadsオオヒキガエルRhinella marina
CanisイヌCanis familiaris
capybarasカピバラHydrochoerus hydrochaeris
Castanopsis sieboldiiスダジイCastanopsis sieboldii
Central Asian wildcatステップヤマネコFelis sylvstris ornata
Cetacea鯨目; 鯨類
chickenニワトリGallus (gallus) domesticus
Chinese desert cat中国ヤマネコFelis sylvstris bieti
Chinese zokorモグラネズミMyospalax sp.
chinquapinスダジイCastanopsis sieboldii
Coleoptera甲虫目
common milletキビPanicum miliaceum
Creeping DaisyアメリカハマグルマSphagneticola trilobata
Cyperaceaeカヤツリグサ科
dingoディンゴCanis lupus dingo
dogsイヌCanis lupus familiaris
dogsイエイヌCanis familiaris (C. familiaris)
domestic catsイエネコFelis catus
domestic dogs飼い犬
domestic pigsイノシシSus scrofa
domestic rabbits家畜のウサギ (イエウサギ)
Eastern barred bandicootヒガシシマバンディクートPerameles gunnii
Emma field cricketエンマコオロギTeleogryllus occipitalis
European rabbitアナウサギOryctolagus cuniculus
European wildcatsヨーロッパヤマネコFelis sylvestris sp.
European wildcatsヨーロッパヤマネコ
F. s. bieti野生ネコの同種Felis silvestris bieti
F. s. LybricaリビアヤマネコFelis silvestris lybica
F. s. ornataアジア野生ネコFelis silvestris ornata
felidネコ科Felis sp.
feral catsノネコFelis catus
feral dogsノイヌCanis familiaris
feral rabbits野生化したウサギ (ノウサギ)
fish魚類Pices
flightless moths飛べない蛾
Foxtail milletアワSetaria italica
Free-ranging cats放し飼いネコFelis silvestris catus
free-ranging dog放し飼いの犬
habu snake沖縄島産ハブProtobothrops flavoviridis
habu snakeホンハブTrimeresurus flavoviridis
hareケープノウサギLepus capensis
hedgehogsジネズミ亜科Crocidura spp.
Herd immunity集団免疫
house mouseハツカネズミ
house mouseイエハツカネズミ
House Rabbitイエウサギ (カイウサギ)Oryctolagus cuniculus var. domesticus
house sparrowイエスズメ
Indian MongooseインドグレーマングースHerpestes edwardsi
Iriomote CatイリオモテヤマネコPrionailurus bengalensis iriomotensis
Japanese bush warblerウグイスHorornis diphone
Japanese bush-warblerウグイスCettia diphone
Japanese river otterニホンカワウソLutra lutra
Japanese white pineリュウキュウマツPinus luchuensis
Japanese white-eyeメジロZosterops japonicus
kestrelチョウゲンボウ
Kuroiwa’s Ground Geckoクロイワトカゲモドキ
leopard catジャイアントキャット
leopard catベンガルヤマネコ
Lepidoptera鱗翅目
lop-eared rabbitsロップイヤーウサギ (たれ耳のウサギ)
lungworms猫肺虫Aelurostrongylus abstrusus
Macquarie's macawマッコリーアオハシインコCyanoramphus novaezelandiae erythrotis
macro-invertebrate大型無脊椎動物
marine iguanasウミイグアナAmblyrhynchus cristatus
Mile-a-minuteツルヒヨドリMikania micrantha
mountain lionクーガー、ピューマ
mouseハツカネズミ
Near Eastern wildcatsリビアヤマネコFelis silvestris lybica
northern harrier北アメリカとヨーロッパの一般のハリヤー
Northern Mockingbirdマネシツグミ
Norway ratドブネズミRattus norvegicus
Okinawa flying foxオキナワオオコウモリPteropus loochoensis
Okinawa railヤンバルクイナGallirallus okinawae
Okinawa spiny ratsオキナワトゲネズミTokudaia muenninki
Okinawa tree lizardオキナワキノボリトカゲJapalura polygonata polygonata
Okinawa white oakオキナワウラジロガシQuercus miyagii
Okinawa woodpeckerノグチゲラSapheopipo noguchii
opossumオポッサム
Orthoptera直翅目; 直翅類
Otariidaeアシカ科、アシカ類
Pale thrushシロハラTurdus pallidus
pale thrushシロハラTurdus pallidus
parakeetsインコ
pet cats飼いネコ
petrelミズナギドリ目の海鳥、(特に)ウミツバメ
Phocidaeアザラシ科、アザラシ目
pigブタS. scrofa
Poaceaeイネ科
Pygmy woodpeckerコゲラDendrocopos kizuki nippon
Quercus miyagiiオキナワウラジロガシQuercus miyagii
ratネズミ
riceイネOryza sativa
rodentsキヌゲネズミ科Cricetidae
roe deerノロジカCapreolus capreolus
Ryukyu Black-Breasted Leaf Turtleリュウキュウヤマガメ
Ryukyu flying foxクビワオオコウモリPteropus dasymallus daitoensis
Ryukyu green snakeリュウキュウアオヘビCycophiops semicarinatus
Ryukyu long-furred ratsケナガネズミDiplothrix legata
Ryukyu long-tailed giant ratケナガネズミDiplothrix legata
Ryukyu robinsホントウアカヒゲLuscinia komadori namiyei
Ryukyu robins亜種アカヒゲErithacus komadori komadori
sheathbillサヤハシチドリ属
shrewトガリネズミ
sika deerニホンジカCervus nippon
Sirenia海牛目
Small Indian mongooseフイリマングースUrva auropunctata
Small Indian mongooseフイリマングースHerpestes auropunctatus
Socorro Mocking birdソコロマネシツグミ
spiny ratトゲネズミ
starlingホシムクドリ
stoatオコジョ
stray dogs野良犬
Sturdee's pipistrelleオガサワラアブラコウモリPipistrellus sturdeei
swamp catジャングルキャットFelis chaus
Thereuopoda cluniferaオオゲジThereuopoda clunifera
tigerトラPanthera tigris
Tip-nosed FrogハナサキガエルOdorrana narina
Tokunoshima spiny ratsトクノシマトゲネズミTokudaia tokunoshimensis
Toxoplasma gondiiトキソプラズマ
Toxoplasmosisトキソプラズマ症
Tropical cricketマダラコオロギCardiodactylus guttulus
Tsushima catツシマヤマネコPrionailurus bengalensis euptilurus
Two-spotted field cricketフタホシコオロギGryllus bimaculatus
venomous snakeホンハブTrimeresurus flavoviridis
voleハタネズミ
Watase’s shrewワタセジネズミCrocidura watasei
weevilsゾウムシ
wild boarイノシシSus scrofa
wild catsヤマネコ
wild rabbits野生のウサギ
wolfオオカミCanis lupus
wood mouceアカネズミ